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ポピュリズムを育むリベラル

右派のポピュリズム政党、ドイツのための選択肢(AfD)は、既存政党の失策に乗じてドイツ各州議会での議席を獲得し続けている。

Angela Merkel's CDU suffers German state election setbacks 13 March 2016 BBC NEWS

ドイツ州議会選、反移民政党が躍進 政権与党は後退 2016年 03月 14日 08:00 JST ロイター

独州議会選で与党失速、各方面から首相に政策転換求める声 2016年 03月 14日 20:54 JST ロイター

AfDは欧州債務危機を契機にユーロ圏からの脱退を掲げて誕生した。

この新しい政党は、連邦議会選挙では比例代表制の5%阻止条項を突破できずに議席を獲得できていなかった。一方、州議会選挙では5%阻止条項を突破して、ハンザ同盟に由来する自由都市ブレーメンとハンブルク及び経済基盤の弱い旧東ドイツ各州で議席を獲得していた。

ドイツのイスラム化に反対するペギータ(西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者)との共闘関係を巡り、分裂したことで党勢が衰えるかに見えた。しかし、その後のムスリムによる難民危機の発生に伴って、その支持はドイツ全土に拡大しつつある。

2016年3月の州議会選挙は、AfDが強い旧東ドイツのザクセン=アンハルト州(得票率24.2%)にとどまらず、南部のバーデン=ヴュルテンベルク州(得票率15.1%)、ライン川に面したラインラント=プファルツ州(12.6%)でも議席を獲得した。

ザクセン=アンハルト州では、メルケル連邦首相の政権与党であるキリスト教民主同盟(CDU)に次いで、州議会の第2党に躍り出た。

おおよそポピュリストの伸長を招いているのはリベラル的政策の失敗である。現在、ドイツ連邦議会では第1党キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)と第2党社会民主党(SPD)による大連立政権が組まれており、批判票は新しいポピュリズム政党AfDに流れる選択肢しかない。

リベラルは外部環境の変化を理由に政策転換を行えば良い。しかし、政策の失敗と追及されるのを嫌がるために現状維持を選び、批判票の受け皿としてポピュリズムが育まれる。保守的なポピュリズムが勢力を伸ばす場合、排外主義者と非難することで自己のスタンスを守ることは出来るが、政策転換の機会は狭まっていく。
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波及する“個別のインティファーダ”

ドイツのハノーバー中央駅でISIS(イスラム国)に触発された15歳のモロッコ人少女が、パレスチナで頻発している一匹狼型のナイフテロを起こし、誰何した鉄道員に重傷を負わせた。

少女はトルコ-シリア国境に滞在中に過激派思想に感化されて、ドイツに住む母親の元に返されたあと、凶行に及んだ。

リベラル系のメディア報道が婦女子を前面に押し出して世論の同情を買おうとしたり、難民と不法移民の群れが有刺鉄線の前に婦女子を連れ出して国境を突破しようと試みている。

しかし、弱く哀れなイメージを抱きやすい婦女子もまた、テロリストとなるのでは難民受け入れの機運が萎むのも当たり前だろう。

Police Officer Stabbed By 15 Year Old Girl In ISIS Inspired Palestine-Style Kitchen Knife Attack 3 Mar 2016 Breitbart

2015年9月以降、パレスチナのヨルダン川西岸地区とガザ地区双方で、若者によるテロが頻発している。

イスラエル軍高官の話では、平日で平均15回、週末に平均40回の暴動が発生している。そのほとんど、約95%は組織的ではなく単独犯行であり、若年層の失業者など、将来に展望がなく追い詰められた一匹狼型の性質を有している。

例えば、ハサミを持って攻撃を試みたパレスチナ人の女学生に、10発の弾丸を撃ち込んで制圧する、といった事例も起きている(2015年12月3日のエントリー参照)。

一匹狼型の性質から“個別のインティファーダ”("Intifada of the Individuals")、台所にありそうな凶器で犯行に及んでいることから “ナイフ・インティファーダ”("Knife Intifada")と呼ばれている。

そして、リベラルの水晶は砕けた

ケルンの集団暴行事件、この蛮行を境に難民受け入れを求めるリベラルの論調は変わらないものの、一方的な擁護論は通じなくなった。

筆者は、これを21世紀の“水晶の夜”と見たが、どうやらリベラルの理想主義と、それらに対する全面的支持と、沈黙を余儀なくされた保守の従属とが砕け散ったように思われる(2016年1月12日のエントリー参照)。砕けた“水晶の夜”以後では、左右両派の先鋭化した対立が始まるだろう。

不幸で哀れな弱い難民というリベラルが抱く観念が崩れて、野蛮で愚かな犯罪者の群れにしてテロリスト志願者という保守が抱く観念と見事に合致して、難民受け入れの拒否という右派の主張がようやく正当化されるようになったからだ。

この観念の反転は、欧州のリベラルとムスリムが互いのポリティカル・コレクトネスを唱えて、むしろ事態を悪化させたことにも原因がある。今まで覆い隠されていたムスリム系移民の性的暴行の事例とその嗜好性が報道されるようになり、イスラムフォビアは一挙に拡大した。

ポーランドの雑誌の表紙には、“欧州をレイプするイスラム”を擬人化したセンセーショナルな絵が描かれて批判を浴びたが、ポリティカル・コレクトネスによって縛られていた反感は事件を契機に噴出して、外交にも影響を及ぼすようになった。

例えば、ベルリンで起きたロシア系ドイツ人少女を移民と見られる外国人男性数人が暴行したとされる、その疑惑を巡って、ドイツとロシアは外交的に舌戦を繰り広げた(2016年1月30日のエントリー参照)。その後、疑惑は少女の狂言であったと露見している。

'ISLAMIC RAPE OF EU
ROPE': POLISH MAGAZINE'S COVER CONTROVERSY ON 2/17/16 AT 7:55 AM Newsweek


Swedish police warn Stockholm's main train station is now overrun by migrant teen gangs 'stealing and groping girls'  13:45 GMT, 25 January 2016 Daily Mail

Parents: 15-year-old was murdered because he protected a Swedish girl from sexual harassment from an Arab student 14 januari 2016 kl 23.03 Fria Tider

そして、ケルンの集団暴行事件から約2ヶ月、難民キャンプを抱えるトルコと難民危機に見舞われているEUとの間で、なおも膨れ上がる難民・不法移民を送還する仮合意がなされた。

この合意を受けて、スロベニア政府はドイツに繋がる難民・不法移民の流入ルートを事実上閉鎖した。セルビアも同様の措置を採った。オーストリア政府はアフガニスタンにおける大規模な「難民・不法移民を受け入れない」キャンペーンを打って、同地からの難民・不法移民の流出を牽制している。

スロベニアやオーストリアの方針変更を見る限り、セルビアとの国境に不法侵入用のフェンスを築いて難民・不法移民の流入に否を突きつけたハンガリーのオルバン政権、もしくはレバノンの新聞に「移民を歓迎しない」という広告を出稿したり、キャンプに収容された難民から金品を使用料として没収しているデンマークの中道右派政権には先見性と構想力があったということになる。

逆に大連立政権となっているドイツの政策は合意形成が遅れがちになり、当座を凌ぐ場当たり的なものとなっている。

シリア内戦の停戦合意、トルコへの難民・不法移民送還の仮合意、バルカンルートの閉鎖などによって、難民・不法移民はバルカンルート上にある諸国に分散して、暴動や治安悪化を引き起こし、それに伴い被害を被る諸国の財政悪化とさらなるナショナリズムを誘発し、EU内の政治的不和を促進する、と思われる。

スロベニア 内務省「難民流入認めず」バルカンルート閉鎖 2016年3月9日 10時38分 毎日新聞

トルコ、送還難民受け入れ EUと大筋合意 2016年3月9日03時30分 朝日新聞

EU、移民送還実現へ加速 トルコのシリア難民移住も 2016.3.8 10:55 産経ニュース

ドイツ地方選控え、反移民政党に勢い 3州とも支持3位=世論調査 2016年 03月 4日 15:02 JST ロイター

オーストリア 難民流入抑止へ アフガンのメディアに広告 2016年3月2日 20時53分 毎日新聞

ドイツでの難民申請者、13万人が所在不明 政府 2016年02月26日 22:20 AFP BB NEWS

カトリックと正教会の敵は原理主義とリベラル

バチカンのフランシスコ教皇とロシア正教のモスクワ総主教の共通の敵は、アラブ・中東のイスラム原理主義と西欧で脱宗教化を進めるリベラルであって、彼らは保守的な宗教勢力として反撃の狼煙をキューバで挙げた、と考えられる。

これは1054年以来の東西教会の分裂を修復したものと見るよりも、教皇ヨハネ・パウロ2世(在位1978年~2005年)が1989年の東欧革命を扇動して、1991年のソ連崩壊を促進して、欧州の共産主義を滅ぼした流れと同様、 クリスチャンフォビア(Christianophobia)に抗する動き、と見るべきだろう。

この反撃に失敗すると、バチカンは中南米へとシフトせざるを得ない。史上初のイエズス会出身、南米出身としても初のフランシスコ教皇がローマ教皇となった意味では背水の陣に例えられるのかもしれない。

Joint Declaration of Pope Francis and Patriarch Kirill 12/02/2016 23:00 Vatican Radio

Pope meets Orthodox patriarch but reunion of churches unlikely, Tokyo priests say FEB 13, 2016 The Japan Times

グローバリズムを体現してきたはずのカトリックや正教会が、他のグローバリズム的な勢力に押しまくられる形で共同戦線を張っている。ここに北米の福音派も加わるだろう。

欧米各国で同性婚が合法化されていくなか、伝統的な婚姻や家族などの価値観を訴えるカトリックや正教会、福音派は共通の利害関係を持っている。

しかし、左右両派が急進化していく中で、穏健なグローバリズムという立ち位置は難しく思える。

キリスト教への嫌悪と脱宗教化は西欧と米国のリベラル以外にも広がりつつあり、フランスの国民戦線は極右と称されているが、同性婚を容認するまでになっている。国民戦線はもともとカトリック的な価値観を持っていたにも関わらず。

また、中欧諸国のカトリックやウクライナなどの東方典礼カトリックは、難民危機やウクライナ危機に際して、当然ながらナショナリズムへ傾き始めている。

Austria switching to 'plan B,' fortifying borders against refugee influx Published time: 16 Feb, 2016 20:50 RT

難民危機に関しては、カトリックの多いバイエルン州やオーストリア、スイスなどのドイツ語圏が難民・不法移民の流入規制を始めている。

日米欧は技術的特異点を超えられるか

FRBの利上げを見越した投機的資本が一挙に引き揚げられたために、中国経済と人民元の先行き不安=ハードランディングの恐怖が一気に増してキャピタル・フライトが止まらない。

中共が“爆食”を担っていたコモディティの需要は減り続け、価格下落の直撃を喰らう産油国は安全保障と社会保障の予算を維持するため、ソブリン・ウェルス・ファンドを取り崩す。にも関わらず、産油国を代表するロシアやサウジアラビアの周縁部では紛争が収まる気配がない。

新興国経済が総崩れになって、資本還流を受ける日米欧の経済も彼らの不調に巻き込まれる形で成長鈍化に陥ろうとしている。

そして、欧州系の銀行は偶発転換社債(CoCo債)を発行して、投信に組み込み販売して、一般投資家にリスク移転を図った。これは全世界的に家計の悪化をもたらす可能性がある。

と、同時に資本還流が続く先進国経済には投下される資本に見合う成長が果たせるか、それを産み出すイノベーションが起こせるか、イノベーションによって変化する社会構造を支える予算を捻出できるか、その予算の捻出に国民的合意がなせるか、かなりの難問が降りかかってくるだろう。

What’s Going On in the Markets? 5 Theories to Explain the Chaos Feb. 10, 2016 11:58 p.m. ET WSJ

中国の銀行が被る損失、サブプライム危機時の米銀の4倍超-バス氏 2016/02/11 14:09 JST ブルームバーグ

ドイツ銀のCoCo債保有者、リスク移転の当局の意図にやっと気付く 2016/02/11 18:10 JST ブルームバーグ

コラム:問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債 2016年 02月 12日 18:04 JST ロイター

2016年のドイツ銀行が2008年のリーマン・ブラザーズと同じ役割を担うのか、という懸念もある。が、より本質的には冷戦終結以降、約25年間続けられていた先進国から新興国への資本投下が終わり、資本還流が始まったために混乱が始まっているのではないか。経済成長に見合ったイノベーションが日米欧に起きるかに、世界の安寧が懸かってくるように思われる。

この世界の安寧と大きな関わりを持ってくると思われるのが、イノベーションがもたらす技術的特異点(シンギュラリティ、Singularity)という概念であろう。数学者ヴァーナー・ヴィンジと人工知能の権威レイ・カーツワイルは、2029年までに人類と同じレベルの人工知能が生まれ、2045年までに技術的特異点が訪れる、としている。

「技術的特異点」を恐れてはいけない理由と恐れるべき理由[2014/1/16] Social Design News

この概念が実現する際の衝撃は社会構造と政治的機構、あるいは宗教思想や通俗的習慣などの大幅な変革を余儀なくさせる。

グローバリゼーションの進展に伴って、先進国から新興国に向けて資本が投下されてきたが、2014年から資本の還流が始まり、2015年には$735 billionが新興国から先進国に還流した(Institute for International Finance調べ)。

新興国への資本投下が約25年間続いたように、先進国への資本還流も四半世紀続くのではないか。還流する資本の力はイノベーションを促進して、技術的特異点に到達して、先進国と新興国の文明の差を埋めがたいものにするだろう。

互いのポリティカル・コレクトネスが内戦を招く

ドイツのケルンで起きた不法移民・難民の集団暴行事件によって、メルケル政権の与党キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)の支持率は36%にまで低下した。

政府の対応に不満を持つ国民の受け皿として、最右派のドイツのための選択肢(AfD)は10%まで支持率を伸ばしている。なお、CDU/CSUと大連立を組むドイツ社会民主党(SPD)は25%の支持率を獲得している。最新の世論調査では40%がメルケル首相は難民問題に関連して辞任すべき、と回答した。

Forty percent of Germans say Merkel should resign over refugee policy: poll Fri Jan 29, 2016 4:03pm EST Reuters

これに反応してCDUと統一会派を組むCSUは難民受け入れの厳格化などを要求してきた。CSUの地盤は、難民流入の最前線に当たるバイエルン州であり、難民国の認定変更、難民と不法移民を厳しく選別するなどの政策変更を求めてきた。

下記のロイター電にある、国境付近に新しい難民収容所を建設するかどうか検討を始めたのもその一環と思われる。

Merkel's party, sliding in polls, weighs German 'border centres' Sun Jan 24, 2016 1:47pm EST Reuters

German right-leaning AfD leader calls for police right to shoot at refugees  30.01.2016 DW

難民収容所などの建設や維持には、当然ながらコストが掛かる。目下、最終受け入れ国となっている北欧諸国やドイツなどの難民受け入れのコストを、IMFが対GDP比で試算している。2016年時点で、オーストリアが0.31%、デンマークが0.57%、フィンランドが0.37%、ドイツが0.35%となっている。

The Refugee Surge in Europe: Economic Challenges January 2016 IMF(PDFファイル)

さらに、ケルンに在住しているイスラム教の指導者(イマーム)Sami Abu-Yusufは、集団暴行事件に対して「女性が半裸で香水を付けて歩いていたのだから、彼女らがその責任を負う」とイスラム的に正しい発言(一種のポリティカル・コレクトネス)をして、火に油を注いでいる。

Kölner Imam erklärt die Übergriffe "Frauen sind selbst schuld an Sex-Attacken" Donnerstag, 21. Januar 2016 N-TV

まるで、欧州のリベラルとムスリムが互いのポリティカル・コレクトネスを唱えながら、ある種の内戦に向かっていくかのようだ。もちろん、これに類似した現象は日米両国でも、極左・極右の両派でも垣間見られるものではあるが。つとに政治的利害から離れて独善に繋がる一方では、互いの死闘によって決着をつけるまで解決策が見つからないのではないか。

人間を狂わすのは恐怖や貪欲や名声であるが、これらを利用するばかりの彼らの正義は実に弱い。そして弱いがゆえに先鋭化する。だから、自らが攻撃心を煽っていながらも、自らに刃が襲いかかることを一切理解せず、それすらも悪と断じて、さらに激昂する。

こうした互いの正義が巻き起こす戦いにリアリズムを持った諸外国が煽っていくと、抜き差しならぬ紛争に発展していく。そうした火種としては、ベルリンで起きたロシア系ドイツ人少女を移民と見られる外国人男性数人が暴行したとされる、その疑惑を巡るドイツとロシアの対立が好例だろう。

独と露、ベルリンの少女暴行疑惑めぐり非難の応酬 2016年01月28日 12:25 AFP BB NEWS

【1月28日 AFP】ドイツの首都ベルリン(Berlin)で今月にロシア系の少女(13)がレイプ被害を訴えた事件をめぐり、両国政府が非難の応酬を繰り広げている。ロシア側は、ドイツ当局が事件の隠ぺいを図った可能性を示唆。これに対し、ドイツ側はロシアが事件を「政治利用」しようとしていると反発している。

 少女は11日、通学途中に失踪したとされ、帰宅後に警察に被害届を提出。両親は捜査当局に対し、少女はベルリン東部の鉄道駅で外国人の移民とみられる男3人に拉致された後、アパートに連れていかれ、レイプされたり殴られたりしたと説明したという。だがドイツの警察当局は先週、少女が性的暴行を受けた証拠はないと発表していた。

 事件は激しい怒りを巻き起こし、極右系ウェブサイトやロシアメディアはドイツ当局が意図的に少女の主張を葬ったとの批判を展開。ロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相も26日、ドイツ当局が少女の失踪を「隠していた」と主張し、少女の言い分は信頼できるとの立場を示した。

 対するドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)外相は、ロシア側の見解はすでにドイツ国内で激しい論争を巻き起こしている難民問題の「炎上」を図ったものだと非難。さらに政府報道官も27日、「この問題を政治利用する道理などないし、そうすることは実際に許容できない」と反論した。

(後段省略)

21世紀の“水晶の夜”

難民危機のもたらした事件が、難民を受け入れさせた政治的原動力となった人道主義そのものを揺るがしていく。今までの趨勢を変えてしまいかねない意味で、ケルンの集団暴行事件は21世紀の“水晶の夜”と云えるのかもしれない。

Chaos and Violence: How New Year's Eve in Cologne Has Changed Germany January 08, 2016 – 06:43 PM SPIEGEL ONLINE

German Police Are Too Soft, Really JAN 8, 2016 11:45 AM EST Bloomberg View

This Is What Really Happened The Night Women Were Sexually Assaulted In Front Of Police posted on Jan. 9, 2016, at 4:32 a.m. BuzzFeed News

ナチス・ドイツ政権下、ユダヤ人の迫害の一環として行われたとされる“水晶の夜”では、ユダヤ人の経営する商店やシナゴーグが焼き討ちされた。多くの犯罪は摘発もされなかったが、ユダヤ人女性を強姦した場合は、ユダヤ人との結婚を禁止していたので処罰された。

“水晶の夜”に見られるようにナチス・ドイツの政権下では、異人種間の結婚が異人種間の性行為、さらにレイプにまで拡大されて忌避されている。婚姻は異なる人種と民族、異なる宗教と文化、異なる階級と階層を越えて、社会の不平等や差別を是正する。異人種間のレイプそのものを禁じようとするのは、その社会が婚姻を通じて、差別を是正しようとするのを拒否しているからだ。

現在のドイツはどうだろうか。第2次大戦後に流入してきたトルコ系ドイツ人は、ムスリムという異人種として分類されて、ほかのドイツ人との結婚が避けられるようになった。昨年の大晦日にドイツ・ケルンで起きた集団暴行事件では、イスラム圏から流入してきた難民と不法移民がドイツ人女性を強姦したが、これは異人種間の婚姻を忌避するドイツ社会とは真逆の行為となる。

つまり、イスラム圏ではドイツ社会のように異人種間の婚姻を忌避する、ということは起きない。ムスリムの間の平等を達成させる一方で、女性の平等に制限を加えることで全体のバランスを保とうとしているが。

婚姻と平等から見たムスリムの社会的通念と慣習はドイツと決定的に衝突する。異なる人種と民族との結婚に、それほど忌避感のないフランスですら、宗教を国家の名の下(ライシテ)に排する姿勢は変えられず、ムスリムのテロが頻発している。これを考えれば、フランスより融和姿勢の劣るドイツの社会的混乱は加速度を増す。

認識のズレが世界の違いを生む

ドイツ第4の都市ケルンで昨年の大晦日、100人超規模の被害者が出る強盗強姦事件が起きた。スイス、フィンランドでも同様の集団暴行事件が起きている、と報道された。ドイツ国民にとっては難民危機における最大のターニングポイントとなるだろう。

大みそかの性犯罪、スイスやフィンランドでも 難民申請者が計画か 2016年01月08日 10:44 AFP BB NEWS

もともと多文化主義そのものが文化の受容を拒んできた。究極の寛容が究極の不寛容を生んだのであって、多文化主義とは、人種間の婚姻・交友・会食を拒んだ一種の人種隔離政策だった、と想うのが自然だ。しかし、もはや隔離が不可能なほどの難民の奔流が押し寄せている。

文化背景と民度が違う移民と難民に対して、イスラム圏から来た男性の移民を対象に「女性の扱い方講座」が開かれている、という話は2015年12月20日のエントリーで取り上げた。フランスのように同化政策へと転換しても、テロは起きる。多文化主義もダメ、同化政策もダメ、となれば放逐しかあるまい。

ムスリムの群れは、人間の欲求を宗教的規範で抑制しようとしたために、その規範と通俗概念が結びついて犯罪を正当化させている。脱宗教化している西欧の人道主義と相容れない。お互いの認識のズレが女性の扱い方のズレにつながり、社会不適合者が出来上がる。

異人種が異国の文明社会との融合を果たしていくかは、異人種間の婚姻・交友・会食があるかが指標であって、特に婚姻が社会階層の移動と密接に繋がっているかが鍵となる。例えば、日本人女性が白人男性と結婚すると社会階層上昇の機会が高くなるから白人男性はモテるのであって、白人女性が日本人男性にモテないのは結婚しても社会階層上昇はなく、トロフィー・ワイフにもならないからであろう。

2014年11月にはジュリアン・ブランク(Julien Blanc)なるナンパ師が、“白人男性が日本人女性をナンパする”セミナーを開催することが物議を醸し、オーストラリアから国外退去処分を受けたことを思い出す。まともに婚姻して社会と同化する意志があるなら、こうした行動様式にはならない。つまり、難民受け入れ側も難民側も、多文化主義を望んでいるのだが、流入する人口から多文化主義を保証する隔離は不可能であり、国外退去しか選択肢がなくなっていく。

ドイツ圏への編入を拒む中欧諸国

チェコのゼマン大統領は国民に向けてクリスマス演説を行い、1年間で約100万人が流入した難民危機に警告を発し、彼らは難民などではなく組織化された侵略者であり、英国などに行き着いて社会福祉を受け取ろうとしているだけで、自国の独立と自由のために銃を取ろうとしない、と述べた。

Czech president Zeman says refugee wave is 'organized invasion' 26.12.2015  Deutsche Welle

Poland’s constitutional crisis goes international 12/24/15, 5:30 AM CET Politico

旧ソ連圏に属していた中欧諸国は、自国の民主化とロシア圏からの脱出のために、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に入ったが、西欧のリベラル的思想に完全に馴染んだ訳ではなく、ロシアの悪影響よりもドイツの悪影響が目立てば、バランスを取るのは自明の理だろう。

従ってポーランドとチェコ、スロバキア、ハンガリーでは共通して、欧州連合への懐疑とカトリシズムの尊重とナショナリズムへの回帰という現象が起きる。

EUは、ポーランドの新政権が法の精神を蔑ろにした政権運営を行っているとして、危惧を抱いている。首都ワルシャワの街頭でも新政権に抗議するデモ隊が行進した。曰く憲法の危機が訪れ、democratorship(民主独裁制)を敷いている、と非難している。

ポーランドでは、旧ドイツ帝国と旧ワイマール共和国領に相当する西部では前政権を担った「市民プラットフォーム」の支持が強く、ドイツから遠い東部では現政権を担う「法と正義」の支持が強い。

2015年5月の大統領選では、農村部の有権者の62%がドゥダ現大統領に投票し、コモロフスキ前大統領は都市部の票の59%を獲得していた、とされる。

投票結果から、都市と農村の分断が明らかにされる。グローバリゼーションの恩恵とリベラル的思想の洗礼が両者の分断を生んでおり、EUの危惧や首都でのデモ行進に繋がっている。

難民の通り道となったハンガリーとチェコと通り道ではなかったポーランドが、揃ってナショナリズムへの回帰している事実から、ドイツの悪影響を回避したいという心理が働いているのが分かる。中欧諸国がドイツ圏への編入を拒み始めた、と云えるだろう。

欧州懐疑派に転向したポーランド

ポーランドでは大統領、上下両院の過半数の議席、政権すべてが中道右派~保守の政党「法と正義」の手に移った。右傾化と欧州連合(EU)に対する懐疑的姿勢が特徴である。

首都ワルシャワで、政権への抗議デモが起きている。デモ隊は、「法と正義」がdemocratorship(民主独裁制)を敷いている、とシュプレヒコールを上げる。ポーランドと欧州連合の旗を振りながら、我々が求めるのは憲法の遵守であって革命ではない、と。

確かに「法と正義」の姿勢と政権運営は、ハンガリーのオルバン政権のようにナショナリスティックであり、EUやNATOとの軋轢を生みかねない。しかし、大統領選、議会選ともに勝利していることは揺るがせない。だからこその党派性を露わにした抗議デモなのだろう。

Thousands march against Polish government as constitutional spat drags on Sat Dec 12, 2015 8:04pm EST Reuters

ポーランドの前政権で外相とEU議長を務めたラデク・シコルスキは、2011年11月にベルリンのブランデンブルクで演説した。それは通貨ディナールの分裂から始まったユーゴスラビア連邦の滅亡を引き合いに出して、通貨ユーロの先行不安から欧州連合の滅亡が起きるのではないか、と危惧して、欧州国民の創生のために改革のスピードが肝要であると説いた。

そして、改革できなかったために政権交代が起きた。

「法と正義」率いる現政権を批判するデモ隊は、前政権が進めた欧州統合の方向性を支持している。しかし、統合を進めるドイツとフランスが、難民危機とテロで混乱に陥っている今、広範な支持を得ることは出来ない。

2015年 ポーランド下院総選挙結果(定数:460 過半数:231)
法と正義(中道右派~保守) 235
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 138
Kukiz'15(ポピュリズム~右翼) 42
. Modern(リベラル~極左) 28
ポーランド農民党(中道右派) 16
ドイツ少数民族党(中道) 1

2015年 ポーランド上院総選挙結果(定数:100 過半数:51)
法と正義(中道右派~保守) 61
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 34
ポーランド農民党(中道右派) 1

※ポーランドでは上下両院が同時に総選挙を行う。

“プラハの春”は遠くなりにけり

冷戦後、中欧のポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーはヴィシェグラード・グループ4ヵ国(V4)という地域協力の枠組みをつくった。民主化と市場経済を導入し、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟してきた4ヵ国は、欧州債務危機と難民危機に際して、徐々に利害関係の一致を見出しづらくなっている。

ハンガリーに続き、ポーランドも中道右派~保守の政権に代わった。両国はドイツに対抗する姿勢を強めていくだろう。スロバキアも移民受け入れ枠に反対している。そんな中、チェコはEU諸国で唯一、抗日戦争勝利70周年記念パレードに国家元首を送った。

China and the 'Three Warfares' December 18, 2015 The Diplomat

チェコの対中接近では、中国共産党の三戦(Three Warfares)が効果を挙げている。心理作戦を戦略的に行い、メディアを顕在的・潜在的に使い、戦略や防衛政策や海外における対象者の認識を操作するのが、彼らの三戦のコンセプトである。さらに合法的な買収や便宜供与によって、政策と人事を左右している。

例えば、香港にあるChina Energy Fund Committee (CEFC)の傘下にChina Huaxin Energy Co. Ltd.があり、この企業を通じて大統領府近くの代表的な不動産を購入した。またCEFC会長は、チェコの大統領の公式顧問に選ばれており、チェコの内外政策に影響を及ぼそうとしている。この投資の結実のひとつが、抗日戦争勝利70周年記念パレードへの参加であった。

多文化主義は人種隔離をもたらす

政治学者のジョージ・フリードマンが、欧州の多文化主義の失敗と現在の難民危機への対応失敗は彼らをゲストとして扱ったことにある、と述べている。

もとより、多文化主義そのものが同化を求めていない。ドイツに最初に流入したトルコ系移民はガストアルバイターと呼ばれたのだから。

北欧ではその傾向が顕著に見られる。移民の文化は純粋に保持され、現地民への同化を促す契機はない。加えて現地民側にも受け入れる機運は求められない。つまり、そこには文化を受容する際の葛藤もなければ、そこから生まれる新たな文化の可能性もない。

多文化主義そのものが文化の受容を拒んでいる。究極の寛容が究極の不寛容を生んだのであって、多文化主義とは、人種間の婚姻・交友・会食を拒んだ一種の人種隔離政策だった、と想うのが自然だ。

Merkel, Muslims and the Problem of Multiculturalism Dec. 15, 2015 Geopolitical Futures

多文化主義の失敗と弊害をすでに認識しているドイツやスウェーデンにおいて、文化背景と民度が違う移民と難民は知らず知らずに、事実上のゲットーに追いやられるだろう。フランスのように大真面目に同化政策を採用せず、隔離していくと思われる。現状、それしか経済規模を増やしつつ、社会の安定を保つ合理的方法がない。

隔離という意味では、米国のゲーテッド・コミュニティの形成も同じである。たしかに異なる人種、異なる階層、異なる宗派間の接触がなくなれば社会的な摩擦も起きない。必然、それを解決しようという社会的なダイナミズムも起きなくなる。

むしろ、社会が従前の差別を維持して秩序を安定させるために、多文化主義による隔離を選択したと云える。米国でも公民権運動によって、黒人に選挙権が与えられると同時に多文化主義が提唱されるようになったのだから。

ドイツ経済界は、1990年代に事実上の東ドイツ吸収を経て、ユーゴスラビア内戦の難民を受け入れ、古くは1960年代にトルコからガストアルバイターの受け入れをしてきた。

トルコ系やユーゴ難民、旧東ドイツの人間から成る移民のオールドカマーと、それに対して欧州債務危機と難民危機以降に入ってきた難民と不法移民のニューカマーが対立する構図が生まれるはずだが、ここに多文化主義を導入するとどうなるか。

ムスリムという区分は差異の記号に転化して、トルコ系移民の差別につながる。トルコ系移民及びムスリムを差別することで、ユーゴ難民、旧東ドイツの人間を差別せず、ドイツ社会に受容することができるようになる。

「Walls Come Tumbling Down!」から30年

パリ同時多発テロの首謀者のひとりが、ハンガリーへ出向いて難民をテロリストにリクルートしていたことをハンガリー政府高官が明らかにした。

難民危機とパリ同時多発テロを直接結びつけることができれば、ハンガリーが先導してきた難民流入防止フェンスの設置など、ドイツに対抗してきた政策の正しさと、難民の中にテロリストが侵入しているのではないか、という蓋然性が高かったことが証明される。

ガーディアンの記事では、1989年のベルリンの壁崩壊と2015年の難民に対する壁設置を対比しつつ、中欧諸国のキリスト教的価値観(Christianity)が、難民受け入れを拒む心理的障壁として現れており、ユーロ圏もしくはシェンゲン圏の中に欧州債務危機であらわになった南北格差だけでなく、東西格差もあらわになった、と指摘している。

そして格差云々よりも、パリ同時多発テロによって欧州の難民受け入れの機運は一気に萎んでしまった。約3ヶ月程度で政治的潮流が逆転したことになる。

スロバキア政府は、EUによる難民割当を不服として訴訟を起こした。一方で、EUはギリシア政府に難民流入を抑制するように圧力を掛けている。

ハンガリーのオルバン首相は、ドイツとトルコが50万人の難民受け入れの秘密交渉をしている、と非難した。交渉が存在しているとすれば、ハンガリーにはこれを潰す意図があった、と考えられる。

フランス治安当局は、パリ同時多発テロを受けて、複数のモスクを閉鎖した。モスクの捜索でジハーディストの関連文書を発見した。内務大臣は非常時であることを強調しているが、ムスリムの宗教共同体の拠点に政治権力が入ったことは大きい。

壁は崩れ落ちる、と唄っていたスタイル・カウンシルの「Walls Come Tumbling Down!」(1985年)から30年を経た。壁は今まさに再び打ち立てられている。そこに世界の有為転変と、少しばかりの皮肉を感じざるを得ない。

Europe’s walls are going back up – it’s like 1989 in reverse Sunday 29 November 2015 19.44 GMT The Guardian

France shuts mosque, arrests man in crackdown after attacks Wed Dec 2, 2015 10:19am EST Reuters

Slovakia files lawsuit against EU quotas to redistribute migrants  Wed Dec 2, 2015 10:27am EST Reuters

EU presses Greece over migrants, weighs Schengen threat  Wed Dec 2, 2015 6:37pm EST Reuters

Hungary's Orban Says Germany Struck `Secret' Turkey Refugee Deal December 2, 2015 — 7:32 PM JST Bloomberg

パリ同時テロ首謀者、ハンガリーで移民を勧誘か 2015年12月04日 09:57 AFP BB NEWS

【12月4日 AFP】先月起きた仏パリ(Paris)同時テロ事件の首謀者とされるサラ・アブデスラム(Salah Abdeslam)容疑者が、ハンガリーに渡航して同国を通過中の未登録の移民から「グループを採用」していたことが分かった。ハンガリー政府高官らが3日、明らかにした。

 ハンガリーのオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相のヤーノシュ・ラザール(Janos Lazar)首席補佐官は、首都ブダペスト(Budapest)で開いた定期記者会見で、「パリ同時テロの首謀者の一人がブダペストにいた」と述べた。

 同補佐官はこの人物の名前やハンガリー滞在時期、またこの人物に採用された者がパリの同時テロ事件に関与したか否かについては、明らかにしなかった。

 ラザール補佐官によると、この人物はブダペスト東駅(Keleti Station)で「ハンガリー当局による登録を拒否した移民の中からグループを採用した」後、「このグループと一緒に出国した」という。

 AFPの取材に匿名で応じた政府関係者は後に、この人物は同事件の主要容疑者で現在も逃走中のアブデスラム容疑者だと認めた。(c)AFP

“エガリテ”に抗する中欧のカトリシズム

独仏の主導する人権重視の難民受け入れに最初の叛旗を翻したのは、「汎ヨーロッパ・ピクニック」でベルリンの壁を壊す引き金を引いたハンガリーだった(2015年6月19日のエントリー参照)。

筆者は、人的移動の制限を外すのに先鞭をつけたハンガリーが再び、“鉄のカーテン”を設置する。冷戦終結以降の歴史の大きな転換点における象徴的な出来事として、これを理解するべきだろう、と指摘してきた(2015年7月9日のエントリー参照)。

ハンガリーが先鞭をつけたこの方向転換に続いたのスロバキアだった。

スロバキア政府は急増している難民の受け入れ条件にキリスト教徒であることを掲げた。この場合の対象者はシリアから亡命してくるシリア正教会やアッシリア東方教会などのキリスト教徒に限られる。つまり、事実上の受け入れ拒否となる(2015年8月22日のエントリー参照)。

そして、ドイツの周縁部に当たる中欧諸国にナショナリズムへの回帰現象が見られる。

教皇フランシスコが難民救済を訴える教書を出したが、ハンガリー南部の司教Laszlo Kiss-Rigoは、
“They’re not refugees. This is an invasion,”
「彼らは難民などではなく、これは侵略だ」
“They come here with cries of ‘Allahu Akbar.’ They want to take over.”
「彼らはアッラーアクバルと叫びながら、この地を接収しに来た」
と、公然と教皇に歯向かった発言をしている。
ただし、教皇は人道を唱える一方で、“反グローバリズム”を唱えているが。

オルバン首相は、憲法に
“the role of Christianity in preserving nationhood”
「国家の一体性にキリスト教的価値観が役割を果たしている」
という条項を組み入れた(2015年9月16日のエントリー参照)。

また、2015年9月27日のエントリーでも取り上げたが、

ハンガリーのオルバン首相は、ドイツのメルケル首相の採っている人道的姿勢に、一見美しい道義を振りかざして、難民の受け入れを強要し、かつ他の国を影響力に置いて、欧州に君臨する帝国の発露を見出して、非難した。

ハンガリーは、ドイツに反発する欧州各国の糾合役になりつつある。“難民の行軍”に互いに苦慮するハンガリーとクロアチア、難民受け入れ分担に反対するスロバキアは、かつてハンガリー王国の領域であった。まるで聖イシュトヴァーンの王冠に集いて、ドイツに反旗を翻しているかのように見える。

そして、上下両院の総選挙で政権交代が予定されているポーランドでも、新閣僚は「難民受け入れ枠に反対する」、「シリア難民をシリア解放軍としての組織化を行うべきだ」との発言を行っている。

筆者は、欧州連合によって独仏が半ば一体化している現代、21世紀の小協商“プチ・アンタンテ”は、バルト海に面したポーランドからアドリア海に面したスロベニアまで拡がるかもしれない、と2015年10月27日のエントリーで述べた。

フランスの“エガリテ”に抗する、中欧各国のカトリシズムも、また欧州連合の性格を大きく変えるものになるだろう。

ポーランド、難民分担の合意撤回か 「実行に移す余地はなくなった」と新閣僚が言及 2015.11.15 09:38 産経ニュース

 近く発足するポーランド新政権の欧州担当相に内定しているシマンスキ氏は、パリ同時多発テロを受け、9月に欧州連合(EU)内相理事会で決定した難民の各国での受け入れ分担について「実行に移す余地はなくなった」として合意を撤回する考えを示した。欧州のメディアが14日伝えた。

 ポーランドのコパチ政権は今後2年間で7500人の受け入れに同意していたが、10月の総選挙で敗北。保守政党「法と正義」のシドゥウォ政権が発足する見通しで、同党は難民の受け入れに反対している。

(共同)


シリア難民を訓練して「祖国解放軍」に、ポーランド新外相が提案 2015年11月16日 17:14 AFP BB NEWS

【11月16日 AFP】ポーランドのビトルド・バシュチコフスキ(Witold Waszczykowski)新外相は15日、公共テレビの番組で、欧州に殺到するシリア難民に訓練を施して軍隊として組織化し、帰国させて祖国を「解放」させることが可能だと発言した。

 16日にポーランド新政権の外相に就任するバシュチコフスキ氏は、この方法ならば、ドイツの首都ベルリン(Berlin)の目抜き通りをはじめ欧州の各都市でコーヒーをすすっているしかない難民たちが、給金の得られる仕事に就けるとも主張した。

「数万人の若者たちが(米アップルのタブレット型端末)iPad(アイパッド)を手に、ゴムボートから上陸してくる。彼らは、飲食物を乞うのではなく、どこへ行けば携帯電話の充電ができるかを尋ねてくる」と新外相は指摘。「われわれが支援することで、彼らは祖国を解放する戦いへ赴くことができる」と述べた。

 バシュチコフスキ氏はまた、「われわれが自国の軍隊をシリアでの戦闘に派兵し、その一方で数十万人ものシリアの若者たちが(ベルリンの目抜き通り)ウンターデンリンデン(Unter den Linden)でコーヒーを飲んでいる」ような事態を避けるため努力していると語った。

 ポーランド新政権では、欧州担当相に就任するコンラト・シマンスキ(Konrad Szymanski)氏が14日、フランス・パリ(Paris)で129人が死亡した連続襲撃事件を受けて、難民を欧州各国で分担して受け入れる欧州連合(EU)の計画を検討する「政治的な可能性」はもはやなくなったと発言していた。(c)AFP

21世紀の小協商“プチ・アンタンテ”

戦間期(1919年~1939年)のフランス第三共和政は、ワイマール共和国の復讐とオーストリア=ハンガリー帝国の復辟を怖れて、新たに独立したポーランド、チェコスロバキア、ユーゴスラビアなどと小協商“プチ・アンタンテ”と呼ばれる対独包囲網を形成した。

もともとセダンの戦いで敗れた第二帝政が呆気無く倒れ、血みどろのパリ・コミューンを鎮圧して成立したフランス第三共和政は、深刻かつ幅広い左右対立のなかで、内政の安定しない政体だった。

王朝復辟を主張する者は、それぞれブルボン家(レジティミスト)を、オルレアン家(オルレアニスト)を、ボナパルト家(ボナパルティスト)を推す勢力に分かれ、農村に地盤を持つカソリック教会と、都市に地盤を持つ資本家、何より軍部が保守勢力として存在し、左翼は社会民主主義からマルキスト、ラジカリスト、インターナショナリストに分かれていた。

相対的に安定したのは、ブーランジェ事件とドレフュス事件で軍部のクーデターの危険性が遠のいたためであった。第三共和政(1871年~1940年)は述べ110人の首相によって内閣を組織されたが、戦間期(1919年~1939年)は33もの内閣が入れ替わる始末だった。

賠償金支払いをめぐってルール地方を占領して、ドイツのハイパーインフレを起こす原因を作り、ナチスが政権を獲ってからはラインラント進駐、オーストリア併合(アンシュルス)を防げず、ズデーテンラント割譲要求に屈し、ポーランドを見殺しにし、小協商を自ら壊してしまう有様だった。そして、機甲師団にアルデンヌの森を突破されて、第三共和政は滅びた。

かつてのフランス第三共和政の左右両翼の乱立に比べれば、現在のポーランド(第三共和国)の二大政党は、中道から中道右派と保守を主張して、むしろ安定している。

今回、政権を明け渡すことになった「市民プラットフォーム」は、旧ドイツ帝国~ワイマール共和国領に地盤がある。一方、政権を取り返した「法と正義」は、戦間期のポーランド第二共和国領に地盤がある。

興味深いのは、欧州債務危機から難民危機を経て、ドットモダン(. Modern)という極左政党と、Paweł Kukizというミュージシャン個人が立ち上げたポピュリスト政党が、既存のリベラルと中道左派政党を喰った形で台頭している点だろう。

欧州連合によって独仏が半ば一体化している現代、21世紀の小協商“プチ・アンタンテ”は、バルト海に面したポーランドからアドリア海に面したスロベニアまで拡がるかもしれない。

2015年 ポーランド下院総選挙結果(定数:460 過半数:231)
法と正義(中道右派~保守) 235
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 138
Kukiz'15(ポピュリズム~右翼) 42
. Modern(リベラル~極左) 28
ポーランド農民党(中道右派) 16
ドイツ少数民族党(中道) 1

2015年 ポーランド上院総選挙結果(定数:100 過半数:51)
法と正義(中道右派~保守) 61
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 34
ポーランド農民党(中道右派) 1

※ポーランドでは上下両院が同時に総選挙を行う。

アングル:ポーランド右傾化で高まるEUとの対立懸念 2015年 10月 27日 16:17 JST ロイター

[ブリュッセル 26日 ロイター] - ポーランドで25日に実施された総選挙で、欧州連合(EU)に懐疑的な姿勢を示し、難民受け入れに反対する保守系野党「法と正義(PiS)」が圧勝し8年ぶりに政権交代する見通しとなったことを受け、EU指導部に懸念が広がっている。

ポーランドは2004年にEUに加盟したが、法と正義が2005─07年に政権を担っていた当時、ポーランドがリスボン条約に反対し批准を遅らせたことや、域内での議決権拡大を要求したことなどをEUは忘れていない。

EU当局者は「状況は一段と厳しくなるだろう」と指摘した。

欧州では多くの国で反移民感情の高まりを背景に、極右のポピュリスト(大衆迎合的)政党への支持が急拡大しており、難民の大量流入が続いた場合、他の国でも政権交代につながる恐れがある。

法と正義のカチンスキ党首は、穏やかな口調のシドゥウォ副党首を首相に指名したが、権力を維持してEUに戦いを挑む見通しだ。

焦点となる難民問題だけでなく、ユーロや財政政策、中央銀行の独立性、気候変動、エネルギー政策、人権などの問題でもポーランドとEUは対立する可能性がある。

EU当局者によると、ポーランド新政権は、同国とチェコ、スロバキア、ハンガリーの4カ国(ビシェグラード4カ国)にルーマニア、ブルガリアを加えて中東欧諸国を総動員し、欧州委員会が計画する難民受け入れ枠の義務化に反対する可能性もあるという。

<ハンガリー首相の政策がモデルか>

法と正義は、今後4年間にユーロを導入することはないとの立場で、銀行やスーパーマーケットチェーンへの新税導入によって社会的支出の拡大を賄う方針を表明している。これはハンガリーのオルバン首相が取った措置に似ている。

EU当局者は、カチンスキ党首が中銀や司法機関、その他の政府機関に支持者を送り込み、オルバン首相の政策モデル「非自由主義的民主主義」を模倣するため、憲法改正を目指す可能性があると指摘する。

ポーランドの政権交代はまた、英国が目指すEUとの関係見直しにも影響しそうだ。新政権は、英国に住む70万人以上のポーランド人が英国人と同等の扱いを受けられるよう権利の擁護に動くとみられる。

キャメロン英首相は移民の福祉手当などを4年間給付しない措置の導入を目指している。

またポーランドは、英国がEUとの関係で例外を認められた場合、それに便乗しようとする可能性があり、交渉を複雑にして、統合深化に向けた取り組みが一段と逆行するリスクも懸念されている。

(Paul Taylor記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)

ミンスク合意に潜むウクライナ解体の危機

ドイツが難民政策に修正を加えようとしている現在、“難民の行軍”を押しとどめてきたハンガリーはもっと評価されても良いだろう。

このドイツの外殻部に当たる中欧のヴィシェグラード・グループのV4(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)各国は、フォルクスワーゲンの排ガス不正に始まる欧州自動車産業の混乱にも直撃されるだろう。

しかし、忘れてはならないのは独仏が手を引きつつあるウクライナ危機に、V4がどのように介入して影響を与えていくのか、という視点である。

かつて、1938年のミュンヘン会談によって、チェコスロバキアのドイツ人居住地域であったズデーテンラントは無血でナチス政権のドイツに割譲された。

戦間期のチェコスロバキアは、ボヘミア(ベーメン)とモラビア(メーレン)に住むチェコ人とスロバキア人、そしてルテニア人の住むカルパティア・ルテニア(現在のウクライナ領ザカルパッチャ)から成る連合国家であった。

ズデーテンラントを失った当時のチェコスロバキア第一共和国(Československá republika)政府は、統一国家としての求心力も失い、各地域が自治政府を立ち上げて、第二共和国政府として再編された。

しかし、歴史的領域の回復を目指すドイツとハンガリー、ポーランドの挟み撃ちを喰らい、最終的にチェコとスロバキア北部はドイツに、スロバキア南部とカルパティア・ルテニアはハンガリーに、シレジア(シュレジェン)の都市テッシェンはポーランドに、とバラバラに解体されて、それぞれの保護領や従属国となるか自国領として併合されて、チェコスロバキア第二共和国(Česko-Slovenská republika)はわずか1年で滅亡した。

ちなみに、チェコとスロバキアの間にハイフンが入っているか否かは、冷戦終結によるビロード革命後の国名を巡るハイフン戦争から、分離独立を指すビロード離婚にまで繋がっている。

中国懸念を切り抜けた中欧諸国、選挙やVW不正が次のリスクに  2015年 10月 15日 19:24 JST ロイター

さて、たびたび筆者は1939年を2015年に比定してきた。

人民戦線に与して敗れたカタロニア人や共和主義者がピレネー山脈を越えてきたスペイン内戦と比べるには、アサド政権の暴虐に苦しんだクルド人やスンニ派がエーゲ海を渡ってくるシリア内戦だろうか。

では、英仏に捨てられてズデーテンラントを失ったチェコスロバキアと比べるには、独仏に捨てられてクリミア半島を失ったウクライナだろうか。

ウクライナ政府は、停戦合意「ミンスク2」を履行するためにはアクロバティックな政権運営を迫られる。

クーデターの立役者でもあった強硬派の右派セクターやスヴォボダを排除しながらも、国民の支持率を回復させて強硬派のクーデターや勢力伸長を押しとどめて「ミンスク2」を履行したい。

親露派に実効支配されているドンバス地方の一部(ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国)での選挙を実施しながらも、殺される覚悟のある親露派以外の候補を擁立させて発言権を持てる程の有効票を得たい。

米国やカナダの財政支援や投融資をつなぎとめるために第二公用語として英語を普及させながらも、現在のウクライナ危機の発端となったロシア語話者を減少させてロシア語公用語化の芽を摘みたい。

EU連合協定を締結して欧州とロシアの中継貿易で利益を上げつつも、厳しい冬を乗り切るためにロシアの安い天然ガスを確保したい。

これらは、ほとんど実現不可能の羅列に過ぎない。

独仏の経済と政治の混迷はそのままポーランドやハンガリーに波及して、それぞれの国のナショナリズムを醸成させていく。すでにハンガリーでは右派政権が確固たる基盤を築いている。ポーランドでも右派政党が支持を伸ばしている。

ミュンヘン協定とズデーテンラントの割譲でチェコスロバキア第一共和国が混乱に陥ったように、ウクライナではミンスク合意の履行と、クリミア半島とドンバス地方の失陥が響き、ガリツィアはポーランドの影響力が増し、カルパティア・ルテニアはハンガリーの影響力が増していくかもしれない。

難民危機に対する“ミュンヘン一揆”

ようやくドイツは難民受け入れの制限措置に踏み出しつつある。そのドイツの政権与党は、CDU(ドイツキリスト教民主同盟)/CSU(キリスト教社会同盟)の統一会派である。

CSUはバイエルン州(かつてのバイエルン王国)のみの地域政党であり、カソリックの多い保守的・地方分権的な地盤に支えられている。

Merkel Under Fire: German Conservatives Deeply Split over Refugees October 09, 2015 – 06:02 PM SPIEGEL ONLINE INTERNATIONAL

ドイツを最終目的地とする“難民の行軍”の最初の関門がドイツで一番保守的な地域、つまりハンガリーと親和性を持っていたことは、無制限の難民流入を容認するかのようなメルケル連邦首相の方針を変える一助となった。

州政府は難民の受け入れ上限を定めないメルケル政権に対して、州の自治を保証した憲法に違反するとして連邦憲法裁判所に提訴する可能性を示唆した。CSUは内閣に4人おり、対立は政権与党の権力闘争に発展する怖れがあった。

この対立を解消するために、ドイツ連邦議会は経済難民と不法移民の国外退去促進法案を審議している。

German parliament readies to vote on new asylum laws 14.10.2015  Deutsche Welle

Deutsche Welleの伝えるところ、CDU/CSUの提案内容は難民審査のためのトランジットゾーンを設け、48時間の審査で振り分け、現金などの給付を制限、アルバニア、コソボ、モンテネグロは難民対象国から除外、該当しない経済難民と不法移民は送還措置まで収容施設に送り、長期滞在許可の出る難民には社会保障カードを与える、というものだ。野党のドイツ社会民主党(SPD)は法案に反対しているが、法案は通過する見込み。

“道義的帝国”ドイツを襲う5つの危機

裾野の広い自動車産業が打撃を受けることを考えると、いずれドイツ政府はフォルクスワーゲンとアウディ、関連する部品メーカーの救済措置を取らざる得なくなるだろう。

フォルクスワーゲンとアウディの海外子会社はもちろん、共通プラットフォームとエンジンを搭載して、バッジエンジニアリングをしているシュコダ(チェコ)、セアト(スペイン)も当該国政府が救済せざる得ない。

リーマン・ショック後のGMとクライスラーの運命がダブって見える。いやむしろ1970年代以降、日本の自動車メーカーとの競争に敗れて、政治力に頼りだしたビッグ3の凋落と同じだったというべきか。

フィナンシャル・タイムズが指摘するところでは、ドイツには大きく分けて5つの危機が同時進行で襲いかかる。シリアからの難民危機、欧州債務危機、ウクライナ危機、中共のバブル崩壊に代表される新興国の経済危機、そしてフォルクスワーゲンの不正と犯罪がもたらす欧州の自動車関連産業の危機、である。

ハンガリーのオルバン首相が、ドイツに対して「『道義的帝国』はあってはならない」と、非難していた。曰く難民は受け入れなければならない。曰く南欧の人々は怠け者だからもっと働かなければならない、といった道義的帝国の価値基準を他者に強要した瞬間、足元でモラルハザードが炸裂した。

情報を握っていた米国が明らかにしたタイミングは絶妙だった。折しもVWとスズキの提携解消訴訟の和解直後、フランクフルト・モーターショーの開催中に不正が露見した。

今後、雇用吸収力のある自動車関連産業がリストラをすれば、移民と難民を雇うどころか、社会保障が膨れ上がり、ウクライナ危機などによる軍事費の増大と併せて、財政を圧迫する。オルバン首相の言及する道義的帝国としてのドイツは早速、危機に瀕している。

5つの同時危機でカオスの域に入る欧州 2015.9.29(火) Financial Times/JBPress

欧州は同時進行する5つの危機と奮闘している。いずれも、異なる発展段階にある不測のショックだ。シリアからの難民、ユーロ圏周縁国の債務、世界的な景気減速、ロシアのクリミア併合とその余波、そしてフォルクスワーゲン(VW)の犯罪と不正行為である。

 カオス理論の人気の比喩は、世界の別の地域で竜巻を引き起こす蝶の羽ばたきだ。

 欧州の罪のない危機の引き金は、シリアからの難民にドイツを開放することにしたアンゲラ・メルケル首相の道義的な決断だった。

 大半のドイツ国民は熱狂的にこの決断を歓迎したが、首相は来るべき事態に向けて、政治的、物理的に自国と他の欧州諸国を備えなかった。

■難民受け入れを決めたドイツの英断の代償

 ベルリンとハンブルクでは、住宅事情があまりに絶望的なため、当局が人が住んでいない私有アパートを接収する法律を準備しており、ハンブルクでは商業用不動産も対象になっている。

 地方政府が難民に住まいを提供するために、公営住宅の入居者の賃貸契約を打ち切った事例も複数ある。公的部門がこのように振る舞う時、外国人嫌いの気運はものの数ナノ秒で頭をもたげる。

 ドイツでは、メルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党でバイエルン地方の保守派の地域政党・キリスト教社会同盟(CSU)党首、ホルスト・ゼーホーファー氏以上に素早く国民のムードの変化を感じ取る人はいない。

 同氏は、ドイツは長期にわたり、メルケル氏の政策がもたらす結果の代償を払うことになると言う。かつて重力に逆らうほど高かったメルケル首相の支持率は最近、低下した。

■純輸出に依存する経済、ドイツの財政黒字が消えたら・・・

 この状況に関する筆者の読みは、難民危機は恐らく他のどんな単独の出来事にも増して、ドイツが動く余地を狭める結果になる、というものだ。だが、難民危機は唯一の要因ではない。さらなる制約は世界的な景気減速だ。ユーロ圏に対するそのインパクトは今は目に見えないが、その状況も近く変わるかもしれない。

 シンクタンク、欧州改革センター(CER)のサイモン・ティルフォード氏が最近論じたように、ユーロ圏が世界的な景気減速を払いのけられるわけがない。

 なぜなら、欧州の危機後の回復戦略は純輸出に依存しているからだ。

 ユーロ圏は今年、域内総生産(GDP)比3.5%の経常黒字を計上する見込みだ。一般的にユーロ圏のような大規模な経済が近隣窮乏化的な政策に依存することは賢明でない。近隣――つまり諸外国――が病気になった今、プランBは存在しない。

 景気減速と難民危機の組み合わせは、ドイツの財政黒字を小幅な赤字に変えるだろう。これは通常の状況下であれば、結構なことだ。ドイツはユーロ圏経済を支えるために小幅な赤字を出しているべきだからだ。

 だが、ドイツは憲法で、景気サイクル内での財政均衡を義務づける定めを自らに課した。ひとたび黒字が消えたら、裁量的な政策行動を取る政治的、法的余地が消えることになる。ありていに言うなら、ドイツ国民はギリシャではなく難民に黒字を費やすことを決めたのだ。

■再燃必至のギリシャ危機

新たに再選を果たしたギリシャ政府は間もなく、合意された経済改革を始めるふりをする。よくても、政府は不承不承、それも不完全な形で改革を実行するだろう。

 政府がそれを行ったら、最初のプログラム評価がそれで十分だったかどうかを決める。

 結果がネガティブであれば、グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)が再び議題に上ることになる。だが、たとえ評価がポジティブであったとしても、結果はさほど変わらないかもれない。

 その場合、ギリシャ政府は債務減免を要求する。国際通貨基金(IMF)も債務減免を求めるだろう。IMFはすでに、「extend and pretend」式の債務の繰り延べはもう受け入れないと明言している。だが、筆者が見るに、ドイツが譲歩していいと思っているのは、せいぜいこのような債務繰り延べだ。我々は再び、行き詰まりを迎えることになる。ブリュッセルでの長い夜が待っている。

 その時点で、我々は再度、どちらの側も信じていない救済合意の不道徳を思い出させられることになる。

 救済はうまくいった可能性もあるが、そのためには、正しいタイプの経済改革と緊縮の縮小とさらなる債務減免という政治的に不可能な3本柱が必要だった。

 ギリシャとその債権者は恐怖から合意に至った。メルケル氏としては、グレグジットの責任を負わされたくなかった。ギリシャのアレクシス・チプラス首相は並行通貨を恐れており、その段階で、合意文書に署名する以外に選択肢を見いだせなかった。

■VWのスキャンダルが追い討ち

 それ以降起きた唯一の変化はドイツの財政の余地だけであり、VWのスキャンダルはその余地を一段を狭めることになる。

 発生する可能性が高い罰金・制裁金は優にグレグジットの仮定上の損失に匹敵し得る。そして、この損失もまた、最終的にドイツの納税者が負担しなければならないかもしれない。

 メルケル氏の才能の1つは、複雑な問題を個々の構成要素に分解する能力だが、欧州の5つの同時危機でこれをやるのは容易ではないと筆者は危惧している。我々は正真正銘のカオスの域に入っている。何が起きてもおかしくないのだ。

By Wolfgang Münchau


Volkswagen under fire: Former CEO under investigation Sep 28,2015 CNBC

ドイツ検察、詐欺容疑で前CEOの捜査着手 VW不正 2015年9月28日22時48分 朝日新聞

独VW、「メードインチャイナ」が抱える別の問題 2015年9月28日 19:54 JST WSJ日本版

VWのディーゼル車めぐる不正で影響受ける部品会社 2015年9月28日 13:10 JST WSJ日本版

VW board suspends R&D heads of core brand, Audi, Porsche -sources Mon Sep 28, 2015 9:42am BST Reuters

VW「違法のおそれ 4年前に社内で指摘」 9月27日 19時26分 NHK NewsWEB

VW不正、ドイツで警告が無視された背景 政府と業界が癒着か 2015年 9月27日 09:49 JST WSJ日本版

VW Facing 'Tsunami' of Legal Trouble in Emissions Scandal Sep 27, 2015, 7:57 AM ET ABC NEWS

EU、2年前にVWの不正把握か 規制運用問われる  2015/9/27 1:41 日経

Five concurrent crises push Europe into the realm of chaos September 27, 2015 1:39 pm FT

VWの排ガス不正、新興国攻略にも影 2015/9/27 0:47 日本経済新聞

As Volkswagen Pushed to Be No. 1, Ambitions Fueled a Scandal SEPT. 26, 2015 The New York Times

Volkswagen wasn't the only company rigging emission levels, says expert Saturday 26 September 2015 22:32 BST Independent

Claims Cameron delayed emission limits on Merkel request Sat, Sep 26, 2015, 18:54 Irish Times

Could Volkswagen scandal be diesel's death knell? Sep 26, 2015 5:00 AM ET CBC NEWS

Can the carmaker's new boss drive it out of trouble? Sep 25th 2015 Economist

The Guardian view on the VW scandal: punish the guilty Friday 25 September 2015 19.04 BST The Guardian

Volkswagen’s deception tarnishes big business September 25, 2015 6:14 pm FT

Volkswagen scandal leads palladium to best weekly gain in 4 years Sept 25, 2015 3:26 p.m. ET Market Watch

The Real Winner in the VW Diesel Scandal? Hybrid Cars 09.24.15 7:11 PM WIRED

Did Merkel cover up Volkswagen scandal? As car maker's boss quits, German leader accused of accepting trickery 'with a wink' 22:53 GMT, 23 September 2015 Daily Mail

聖イシュトヴァーンの王冠に集いて

ハンガリーのオルバン首相は、ドイツのメルケル首相の採っている人道的姿勢に、一見美しい道義を振りかざして、難民の受け入れを強要し、かつ他の国を影響力に置いて、欧州に君臨する帝国の発露を見出して、非難した。

ハンガリーは、ドイツに反発する欧州各国の糾合役になりつつある。“難民の行軍”に互いに苦慮するハンガリーとクロアチア、難民受け入れ分担に反対するスロバキアは、かつてハンガリー王国の領域であった。まるで聖イシュトヴァーンの王冠に集いて、ドイツに反旗を翻しているかのように見える。

ハンガリー政府が、セルビアとの国境に不法侵入用のフェンスを築いた結果、ギリシア~マケドニア~セルビア~ハンガリー~オーストリア~ドイツのルートを採っていた難民と不法移民は、セルビア~クロアチア~スロベニア~オーストリア~ドイツのルートを採った。

クロアチア政府は直ぐに対応に行き詰まり、ハンガリー政府と問題を押し付け合い、対立へと発展していた。しかし、9月18日になって、何らかの合意がなされて、バスに乗せた難民をクロアチア~ハンガリー~オーストリアにピストン輸送し始めた。この日、オーストリアに入った難民は1日で1万3千人に達した。

ハンガリー政府は、非常事態宣言の期限を延ばすとともに、クロアチアとの国境にも総延長41キロのフェンスを設置し始めた。同様にオーストリアとの国境にもフェンスは設置される。

ハンガリー、オーストリア・クロアチアとの国境にもフェンス 難民危機 2015.09.19 Sat posted at 15:33 JST CNN日本版

オーストリアに押し付け=クロアチアとハンガリー-欧州難民 2015/09/20-14:46 時事ドットコム

同じくルート変更で“難民の行軍”に晒されているスロベニアの警察は催涙弾で対応し始めている。スロベニア政府は「回廊」の設置を仄めかし、オーストリアへの速やかな移送などの緊急措置を考えている、と思われる。一方、オーストリア政府はスロベニアとの国境検問を強化する、と述べた。

セルビア政府は、クロアチアがセルビアとの国境管理を強化したのに反発して、クロアチアからの物資・車両の入国禁止措置を採った。

スロバキア政府は、欧州連合(EU)全体の難民12万人受け入れ分担案を提訴、分担を履行しないと宣言している。この分担案に関して、バイエルン州を訪問したオルバン首相は「『道義的帝国』はあってはならない」と、ドイツのメルケル首相を非難した。

EU難民分担を賛成多数で決定、チェコなど東欧4カ国反対 2015年 09月 23日 04:48 JST ロイター

スロバキア、難民分担拒否で提訴へ=ハンガリー、対独批判 2015/09/23-22:41 時事ドットコム

難民巡りセルビアが対抗措置 混乱広がる 9月24日 22時28分 NHK NewsWEB

かくてシェンゲン協定の精神は死んだ

“難民の行軍”に辟易した欧州各国の方針に少しずつ変化が見られる。難民と不法移民の供給も絞り、自由な移動も防ぐ方針へと変わりつつある。

まず、リビアルートの密航船対策に関しては、臨検から拿捕・破壊に軍事作戦が格上げされた(2015年5月21日のエントリー参照)。欧州連合(EU)は、シリア内戦による難民など蓋然性の高い人々以外を、徐々に排除する方針へと傾いていく、と思われる。

EU、密航業者対策で軍事行動計画を承認 2015年09月14日 20:34 AFP BB NEWS

そして、もう一つのルート、トルコ~ギリシアからの陸路で行軍してくる難民と不法移民の群れに対して、催涙ガスを浴びせたマケドニア、フェンスを作ったハンガリーの非人道的姿勢をドイツやオーストリアは非難してきた。

マケドニアは正教会とイスラム教の分断線上にあり、今年5月9日、マケドニアの都市クマノボでコソボ出身の武装集団が警察と銃撃戦を行った(2015年5月14日のエントリー参照)。

ドイツと共同歩調にあったオーストリアのファイマン首相は、ハンガリーのオルバン首相をナチ呼ばわりした。しかし、突如としてドイツとオーストリア両国ともに一時的な国境閉鎖・検問を開始した。すでに難民受け入れのキャパシティを突破して、苦境に立つバイエルン州首相はメルケル首相を非難し始めていた。

Austria's Faymann likens Orban's refugee policies to Nazi deportations Sat Sep 12, 2015 11:09pm BST Reuters

Europe Fortifies Frontier as Germany Imposes Border Controls September 14, 2015 — 4:49 PM JST Bloomberg

独南部の暫定の国境検問、数週間は継続=バイエルン州内相 2015年 09月 14日 19:05 JST ロイター

オーストリアが軍2200人投入 ドイツ“限界”で流入制限受け 2015.9.14 23:20 産経ニュース

非常措置と云えども、これでシェンゲン協定の精神はひとたび死んだ。

今後、ハンガリーはルーマニアとの国境にもフェンスを設置し、不法入国する難民を逮捕投獄する方針を示している。

難民と不法移民、その中にはISIS(イスラム国)にシンパシーを持つテロリスト予備軍やアサド政権に与したアラウィー派民兵が混じっている可能性も出てきた。彼らが認定国に定住したあとで、戦争犯罪や人道に対する罪を問えるのか、テロを企てたときに速やかに準備集合罪で捕らえることができるのか。

“難民の行軍”は、従来の侵略の概念にはない、領土の一体性保全を脅かす事例として記憶すべきかもしれない。他の民族が自国の領土を侵犯して占拠しているのだから。

いずれにせよ、セルビア-ハンガリー国境で足止めされている“難民の行軍”は、迂回ルートを探してクロアチアやスロベニア経由でドイツに入ろうとする。ハンガリーが“難民の行軍”を押しとどめている間に、ドイツとオーストリアは難民受け入れの体制を整える時間を稼げるのだ。

利益を被りながら、ハンガリーの努力と貢献を安易に非難するのは不当であろう。そもハンガリーは歴史的転換点の先頭に立って苦闘している可能性がある。

1989年の「汎ヨーロッパ・ピクニック」によって、ベルリンの壁を壊してドイツ統一から西欧と東欧の一体化に先鞭をつけた、そのハンガリーが、2015年の今、難民受け入れを防いで、EU統合からナショナリズムの高揚とキリスト教的価値観の回帰へと変ろうとしている。

中道左派やリベラルの色眼鏡だけで、現在の動きを否定的に捉えるのは間違いだろう(2015年7月9日のエントリー参照)。

コラム:難民危機、メルケル独首相の「遺産」となるか 2015年 09月 15日 14:09 JST ロイター

難民殺到で「危機状態」宣言=国境管理、さらに強化-ハンガリー 2015/09/16-07:39 時事ドットコム

セルビアに入った移民ら、ハンガリーを避けてクロアチア国境へ 2015年09月16日 15:28 AFP BB NEWS

シリア難民、高スキル保持も厳しい社会統合 2015年09月16日 17:42 AFP BB NEWS

ハンガリー司教に見るキリスト教的価値観への回帰

ドイツの周縁部に当たる中欧諸国にナショナリズムへの回帰現象が見られる。

ポーランドは、かつて自由と寛容に満ちた多文化主義の先駆的国家だったポーランド・リトアニア共和国の領域に含まれていたリトアニア、ウクライナとともに、対ロシアを見据えた合同旅団を結成した。

またハンガリーは、かつてのオスマン帝国の防壁ともいうべき過去の役割を思い出したかのように、レバントからアナトリア半島を経て、陸路押し寄せる不法移民防止のフェンスをセルビア国境に設置した。

Hungarian bishop says pope is wrong about refugees  September 7 2015 Washington Post

BUDAPEST — Pope Francis’s message Sunday couldn’t have been clearer: With hundreds of thousands of refugees flowing into Europe, Catholics across the continent had a moral duty to help by opening their churches, monasteries and homes as sanctuaries.

On Monday, the church’s spiritual leader for southern Hungary — scene of some of the heaviest migrant flows anywhere in Europe — had a message just as clear: His Holiness is wrong.

“They’re not refugees. This is an invasion,” said Bishop Laszlo Kiss-Rigo, whose dominion stretches across the southern reaches of this predominantly Catholic nation. “They come here with cries of ‘Allahu Akbar.’ They want to take over.”

The bishop’s stark language reflects a broader spiritual struggle in Europe over how to respond to a burgeoning flow of predominantly Muslim men, women and children onto a largely Christian continent.

(中段略)

Hungary’s major national holiday still commemorates the country’s turn to Christianity, which dates back over a millennium. And nationalists often cite the country’s 17th-century defeat of its Ottoman occupiers as proof that Hungary is a critical European safeguard against malign influences to the east.

Orban has played the Christian card before, introducing a clause in the constitution that cites “the role of Christianity in preserving nationhood” and promoting religious education in the schools.

(後段略)


教皇フランシスコが難民救済を訴える教書を出したが、ハンガリー南部の司教Laszlo Kiss-Rigoは、
“They’re not refugees. This is an invasion,”
「彼らは難民などではなく、これは侵略だ」
“They come here with cries of ‘Allahu Akbar.’ They want to take over.”
「彼らはアッラーアクバルと叫びながら、この地を接収しに来た」
と、公然と教皇に歯向かった発言をしている。
ただし、教皇は人道を唱える一方で、“反グローバリズム”を唱えているが。

ハンガリーのオルバン政権はナショナリズム的な政策を採っており、司教の発言は政権の動向と符合している。殺到する難民を蹴飛ばして、解雇されて、刑事告訴が検討されている女性カメラマンの行動の心理的背景も同様であろう。徐々にハンガリー国民の新たなナショナリズムが醸成されているのだ。

オルバン首相は、憲法に
“the role of Christianity in preserving nationhood”
「国家の一体性にキリスト教的価値観が役割を果たしている」
という条項を組み入れた。

1956年のハンガリー動乱、1989年の「汎ヨーロッパ・ピクニック」と、欧州の歴史の転換点において、先鞭をつけてきたハンガリーのナショナリズム高揚をけして局地的な動きと見るべきではない。

オールドカマーとニューカマーの対立と見えざる隔離

ドイツに移民が殺到して、一定数の人口が増えれば、一定の割合で生産=消費も増える。しかし、労働市場では労賃の叩き合いが起きる。

ドイツ経済界は、1990年代に事実上の東ドイツ吸収を経て、ユーゴスラビア内戦の難民を受け入れ、古くは1960年代にトルコからガストアルバイターの受け入れをしてきた。彼らはシリア難民をある程度の学歴能力を持つ低廉な労働資源と見ている節がある。

その思惑とは別に、トルコ人やユーゴ難民、旧東ドイツの人間から成る移民のオールドカマーと、それに対して欧州債務危機と難民危機以降に入ってきた難民と不法移民のニューカマーが対立する構図が生まれる。

我が国における支那人・韓国人のオールドカマーとニューカマーの対立を想起すれば良い。

普段、対立しているスキンヘッドの下層階級とトルコ系2世・3世は、ここでは同じく既得権益を持つ側であり、新たに参入してくる大卒のシリア難民に職を奪われる役回りとなる。もしかすると、ネオナチとトルコ系の暗黙の共闘が見られるかもしれない。

時事電にあるような、ウルグアイに逃れた自称シリア難民は仕事も支援も少なく、血縁も地縁も宗教的風土もないところからは出て行きたいと抗議している。

戦争と政治的抑圧による生命の危険からの一時避難のために、難民を人道的に救済するのであって、この主張は経済難民=不法移民と解釈されても仕方がない。原則、難民の出自や政治的経歴を問えないし、悪質な場合、証拠も捨てているか持ち合わせようとしない。

そこには低廉な労働力を求める者とそれを与える者同士の歪な共存関係しか見えない。

さらに、下記のウォール・ストリート・ジャーナル日本版の記事にもあるように、アサド政権の出身宗派のアラウィー派以外の高学歴、中間層以上の人々が“難民の行軍”の主体であって、カネも係累も学歴も体力もない人々は難民キャンプに留まっている。

記事に登場するモハメドという人物が、シリア国内のパレスチナ難民でありながら、高等教育を受けていた点に留意しなくてはならない。アラブ社会主義のシリアは、宗派の異なる国民にも教育の機会を与えていた意味で、スンニ派の原理主義的傾向の強い湾岸産油国より優れていた面もあったのだ。

例えば、産油国で働くパレスチナ難民はGDPには換算されるが、一人当たりのGDPには表れず、国籍も教育も与えられず、家族を呼び寄せることももちろん出来ない。

一方、ドイツでは家族を呼び寄せることもできるだろうし、国籍も教育も与えられる。

しかし、多文化主義の失敗と弊害をすでに認識しているドイツやスウェーデンにおいて、文化背景と民度が違う移民と難民は知らず知らずに、事実上のゲットーに追いやられるだろう。フランスのように大真面目に同化政策を採用せず、隔離していくと思われる。現状、それしか経済規模を増やしつつ、社会の安定を保つ合理的方法がない。

大抵、ドイツやスウェーデンのロックフェスやイベントではムスリム系を見かけない。フランスや英国では見かけられる。

その違和感の正体は、多文化主義そのものがローカライゼーションを拒む政策だという隠された事実だ。移民の文化は純粋に保持され、現地民への同化を促す契機はないのだ。多文化主義そのものが他の文化の受容を拒んでいる。究極の寛容は究極の不寛容に繋がっているのを忘れてはならない。

独首相の支持率が2012年12月以来の低水準、難民対応に批判 2015年 09月 4日 20:32 JST ロイター

ドイツ、移民流入による今年の経済負担予測1兆3200億円 2015年09月06日 09:35 AFP BB NEWS

難民を動かす欧州の「格安密航ルート」… 1人13万円まで下落 2015.9.9 07:00 Sankei Biz

「貧しく死にたくない」=再出国求め抗議-シリア難民 2015/09/09-14:48 時事ドットコム

焦点:難民は「未来の熟練工」、ドイツ高齢化の救世主か 2015年 09月 11日 15:54 JST ロイター

難民2家族、ドイツに至る苦難の道のり 2015年9月7日 10:18 JST WSJ日本版

オーストリア・ウィーン西駅の混雑したプラットホームで、ぶかぶかの冬物の上着を羽織った少女がシャボン玉を吹いている。少女の妹はプラスチック製の黄色い風船を持って走り回り、空気を押し出しては笑い声をあげる。

「ここに来られて本当にうれしい。ハンガリーで過ごした7日間は拷問のようでした」。そう語るのは2人の少女のおじで、「一家の大黒柱」だという19歳のモハメドさんだ。彼らは5日夜、ハンガリーからの最終列車でウィーンに到着した。

戦火のシリアやアフリカ、アフガニスタンから逃げてきた難民らは4日にハンガリーを出発。西欧の入り口、オーストリアに到着すると、喜びを爆発させた。一部の難民らはトルコからギリシャ、バルカン諸国、ハンガリーを経由してオーストリアにたどり着くまでの道のりについて語り始めた。

モハメドさん(本人が苗字を明かさないことを希望した)は姉、そして姉の9カ月から9歳までの4人の子どもたちと共にシリアの首都ダマスカスのヤルムーク・パレスチナ難民キャンプからやって来た。「私はそこで育ちました」。

両親はモハメドさんが「地獄」だというキャンプに残ったが、モハメドさんと姉、4人のめいたちは1カ月半をかけて「自由」を勝ち取った。旅はまだ終わっていないが、最終目的地のドイツまではたった数時間のところにいる。彼らがドイツを目指すのは、オーストリアより「ドイツのほうが難民申請が早く処理されるから」だそうだ。モハメドさんは、自分と家族は必ず難民として認められると信じていると語った。

アラビア文学を学ぶ学生だったモハメド氏はシリア軍の徴兵を回避しようとしていたときに、誰にも気づかれずにトルコに入国する方法を見つけた。トルコからはギリシャのコス島まで小型のボートで渡った。オーストリアまでの道のりで一番恐ろしい思いをしたのはこのときだったと言う。

密航業者は1時間で着くと言ったが、彼らはどこに向かっているのかも分からないまま約4時間、漂流した。モハメドさんは「恐怖以外の何物でもなかった」と振り返った。

波でボートが浸水し始めると、一家はもうおしまいだと思った。しかし、間もなく海岸線が見えて、なんとか無事に岸にたどり着いた。

ギリシャ本土に渡ると、一家は鉄道でマケドニアに入り、セルビアとの国境まで歩いた。

セルビア国境からはバスで首都ベオグラードに行き、「森の中を通って」ハンガリー領内に入った。それから首都ブダペストまで鉄道で移動し、難民らであふれかえるケレティ駅(ブダぺスト東駅)で1週間を過ごしたという。

「5日間は地面で、その後2日間は列車の中で眠らなければなりませんでした。ミュンヘンまでのチケットを買いましたが、あとで偽物だったと分かりました」と、モハメドさん。ハンガリーでは、当局が指紋を採取して登録手続きをとろうとしたが、一家はハンガリーでの難民申請を希望していなかったため、拒否したという。

モハメドさんはオーストリアに「来られて本当にうれしい」と言った。ウィーンでは、女性が1晩、一家を泊めてくれたそうだ。一家は6日、ドイツに向かう予定だ。

シリア出身の英語教師、ジャノッソ・ハサカさん(32)は5日、ドイツ・ミュンヘンの鉄道駅を出ると満面に笑みを浮かべた。荷物は小さなバックパック1つだけ。ハサカさんは「戦争のせいでシリアには希望がない」と言う。過激組織イスラム国(IS)の戦闘員から逃れてきたそうだ。

「8月初めに父と母を置いて家を出た」ハサカさんはギリシャに渡ったが、そこで2度逮捕され、パスポートも学位証明書も取り上げられたという。

ハサカさんと弟、いとこの3人は1人当たり8000ユーロ(約100万円)を密航業者に支払い、ハンガリーとセルビアの国境からバンでウィーン入りした。バンには彼らを含めて17人が乗りこんだ。

ミュンヘン見本市センターの保護施設に向かうバスに乗る前、ハサカさんは親戚がいる「(ドイツの)ドルトムントに行きたいと思っていました」と語った。「安らぎを求めています。両親はまだシリアにいますが、いつかここに連れてきます」

難民流入が独仏亀裂の種を蒔く

ドイツに流入する難民は前年の4倍の約80万人に達する、とドイツ政府が見通しを示した。この数字が政治難民、経済難民、不法移民を合わせたものかは分からない。

さて、難民流入に伴う短期的な混乱はともかく中長期的に見て、欧州連合(EU)を支えるドイツとフランスという二大国の人口動態が変化して、EUに修復不可能な亀裂が入ることを忘れてはならない。

1年間約80万人に達するドイツへの難民流入数は、1年間約70万人のドイツ国内の出生数を上回る。年間約80万人のペースがピークであったとしても、ここ数年続くフランスの景気低迷から、政治難民と不法移民はドイツを目指す傾向は変わらないものと思われる。

難民・移民数の増加はそのまま10年~20年後のドイツ国内の出生数を増やす、と考えられる。フランス国内の出生数である1年間約80万人と均衡するか、もしくは凌駕する。さらに移民と難民の流入数を併せると、ドイツとフランスの政治的協調が人口動態からも崩れ去る。

フランスにとって第一次大戦の人的損害が、ベルサイユ体制における強硬姿勢からナチスの台頭と第三共和政の滅亡を招いた。そして、第二次大戦の敗北から独仏協調による欧州の統合を進め、同時にドイツの人口圧力をかわすために現在の家族制度の解体と無制限にも思えるムスリムの移民流入を容認してきた。それらの努力が根底から覆るのだ。

ムスリムを同化できないまま、ドイツの影響力からも脱することができない運命がフランスに待ち受けている。

難民ら1万人超、ドイツ到着 2015年 09月 7日 01:18 JST ロイター

EU、難民受け入れ枠を16万人に拡大へ=関係筋 2015年 09月 7日 20:54 JST ロイター

ドイツの移民純流入数、2014年は55万人で20年ぶり規模 2015年 09月 4日 04:20 JST ロイター

ドイツ、今年流入する難民は過去最多80万人予想 2015年 08月 20日 14:45 JST ロイター

[ベルリン 19日 ロイター] - ドイツ政府は19日、今年流入する難民の数が昨年の4倍で過去最高の80万人に達するとの見通しを示した。1月に示した30万人の予想から2倍以上に増えた。

アジア、アフリカ、中東から戦火や暴力、貧困を逃れてきた難民の多くがドイツを目指し、今年1─6月だけで21万8221人が入国した。ドイツは欧州連合(EU)の他の加盟国がもっと受け入れるべきだと批判する。

(中段略)

1992年に旧ユーゴスラビア紛争の難民など43万8191人を受け入れたのがこれまでの最高。その後の規制強化で2008年には2万8000人まで減ったが、近年は増加の一途をたどる。

(後段略)


ドイツの14年出生率は12年ぶり高水準、人口は依然減少傾向 2015年 08月 24日 13:23 JST ロイター

[ベルリン 21日 ロイター] - 2014年のドイツの出生率は、ここ数年間の堅調な経済成長と政府主導の家族支援策が奏功し、12年ぶりの高水準まで改善した。ただ、死亡率を相殺できるほどではなく、全体の人口は引き続き減少した。

ドイツ統計局が21日発表した統計データによると、昨年の出生者数は4.8%増の71万4966人となり、2004年以来11年ぶりに70万人の節目を超えた。

ただ、死亡者数は86万8373人と、出生者数を上回ったため、同年の人口全体の減少は15万3407人となり、人口の減小基調は14年時点で変わっていない。

政府関係者は、出生者数は再び減少に転じる可能性が高いとみている。旧東ドイツでは1990年の東西ドイツ統合後、経済の激変によって出生率が大幅に低下。「90年以降の出生者数が激減したということは、現在、育児に適した年齢の女性の数が少ないということ」と指摘。

90年に90万6000人だった人口は2011年には66万3000人まで減少した。加えて、出生率は64年に天井を打ち、72年には、死亡者数が出生者数を約500万人上回った。


【中国の視点】ドイツ:真偽難民の判断に頭を抱える、労働力不足解消の狙いも 2015年 09月 8日 08:18 JST ロイター

ドイツは今年1-7月、20万件の難民申請を受け付けた。うち44%はバルカン半島からの難民申請となった。内訳では、コソボ、アルバニア、セルビアの3カ国で約7万1000人、シリアは約4万2000人だった。また、今年はドイツへの難民流入者数は80万人になるとも予測されている。

ドイツ銀行の試算では、80万人を受け入れた場合1年の予算支出が72億ユーロ(約9504億円)になるという結果が示された。難民へのドイツ政府の手厚い待遇を受け、難民を紛れ込んでドイツに入国したバルカン半島の人々は後をただないと報告されている。

こうした状況を受け、ドイツ政府は2014年、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアなどを安全国家リストに組み入れた。ドイツは安全国家の国民に対し、原則的に難民の申請を拒否しており、こうした国々の難民認定率は1%まで低下している。

ハンガリーに続くスロバキアの反逆

スロバキア政府は急増している難民の受け入れ条件にキリスト教徒であることを掲げた。この場合の対象者はシリアから亡命してくるシリア正教会やアッシリア東方教会などのキリスト教徒に限られる。つまり、事実上の受け入れ拒否となる。

スロバキア、受け入れ難民は「キリスト教徒に限定」 2015.08.21 Fri posted at 15:38 JST CNN日本版

欧州難民危機で、スロバキアがイスラム難民の受け入れを拒否 2015年8月21日(金)18時00分 ニューズウィーク日本版

ハンガリーはセルビアとの国境沿いに難民流入防止用のフェンスを設置した。これに続いて、スロバキアもEUの難民政策に同調できなくなっていることを明らかにした。少なくともシェンゲン協定の理念通り、域内のヒトの自由な移動は認めるべきだが、域外からのヒトの自由な流入を認める必然性はない。

また、スロバキアの報道官が述べるように、シェンゲン協定の理念を持ち出すまでもなく、難民の希望する最終受け入れ地はドイツや英国、北欧諸国であって、割当制で彼らを無理強いして居住させたところで、いずれ逃散してしまう。すでに国境地帯や無人地域に押し留めようとしているギリシアやマケドニアでは暴動が発生している。

難民を厳密に審査すれば、内戦が継続しているシリアを除けば、その大半は対象外の不法移民となるのではないか。アラビア語の方言を確認すれば分かると思われる。

すると、EU加盟各国の国民からして見れば、不法移民に対する負担の公平性に疑問が湧く。間違いなく政治的弾圧と内戦を避けてきた難民であったとしても、おおよそ財政の許す限りでしか受け入れられないし、人道上の理念も財政的裏付けがなければ成立しない。こうして積み重ねた政治的反動は選挙結果に反映される。

もちろん、リビア内戦やシリア内戦に対する軍事介入が中途半端に終わったことで、余波としてEU加盟各国に跳ね返っている事情もある。

しかし、すでにカダフィ政権は倒れ、アサド政権は勢力を減じている。いずれも難民流出の抑えにはならない。今さら、内戦に積極的に干渉できないとしても、難民を追い返すのに力を行使することを躊躇しない世論が今後、形成されるだろう。

少なくともハンガリーやスロバキアの政策変更は世論を背後にしているのだから。

シェンゲン協定が“鉄のカーテン”に変わるとき

1989年に自国とオーストリア国境の鉄条網を撤去して、チャーチルが演説して有名になった“鉄のカーテン”の一角を崩し、汎ヨーロッパ・ピクニックを誘発、ベルリンの壁崩壊の直接的契機をつくり出したハンガリーは、セルビア国境との間に難民流入を防止するフェンスを設置する法案を可決した。

人的移動の制限を外すのに先鞭をつけたハンガリーが再び、“鉄のカーテン”を設置する。冷戦終結以降の歴史の大きな転換点における象徴的な出来事として、これを理解するべきだろう。

冷戦当時、東側に属していたハンガリーは、ポーランドと並んで早くから自由化政策を実施していた。1989年には、政治面で一党独裁制の放棄と集会・結社の自由が認められ、経済面では国有企業の株式会社化が進められた。

背景には1956年のハンガリー動乱後も改革派を温存して、彼らも政治的発言権を有していたことと、東側の経済的な行き詰まりがあった。1980年代、ハンガリーもソ連も人民に分配できる利権が萎みつつあった。共産主義政権下ではモノ、特に民生品が恒常的に不足していたために、構造改革に迫られ、最終的には改革それ自身に呑み込まれる形で、政権を自ら手放すか崩壊するかした。

これと同様に現在も、リーマン・ショックを境にした、グローバリゼーションの反転による副作用によって、かつての第三世界の国々において、分配できる利権(カネ)が急速に萎み、利害対立が表面化して、政権交代、革命、テロ、内乱・内戦が勃発して、経済難民と戦争難民が大量に発生している。

近代以降の欧州の歴史の転換点において、先鞭をつけることの多いハンガリーが、移民流入防止に舵を切ったことで、シェンゲン協定の理念は毀損された。

ハンガリー、移民阻止フェンス設置へ セルビア国境175キロ 2015年07月07日 11:04 AFPBB NEWS

【7月7日 AFP】ハンガリー議会は6日、移民の流入を防ぐフェンスをセルビアとの国境に設置する計画を圧倒的賛成多数で承認した。移民申請の厳格化を目指す新法の一環だ。

 オルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相が先月発表したセルビアとの国境175キロにわたって高さ4メートルのフェンスを築く計画は、セルビアのみならず中東やアフリカからの大量難民の流入問題を抱える欧州連合(EU)からも問題視する声が上がっていた。

 ハンガリーのピンテール・シャーンドル(Pinter Sandor)内相は議会での採決を前に「ハンガリー史上例をみない規模の移民急増に直面し、受け入れ能力を130%も超えた状態だ」と訴え、議会は賛成151、反対41でフェンス設置を含む新移民対策法案を承認した。

 新法の下では亡命申請規則も厳格化され、移民の一時収容や移民認定プロセスの迅速化、移民からの不服申し立ての制限なども認められることとなる。

 この2年間、ハンガリーはアフガニスタンやイラク、シリア、コソボなどからドイツやオーストリアを目指す人々の主要経路となってきた。

 セルビアと異なりEU加盟国のハンガリーはEUのシェンゲン(Schengen)協定にも参加しているため、移民もいったんハンガリーへの入国が認められれば旅券(パスポート)なしで加盟国域内を移動することが認められる。(c)AFP

移民のドミノ現象に揺らぐ欧州

地中海での難民遭難事故が相次ぎ、EU各国に2年間で2万人の難民受け入れ枠を割り当てる方針が示された。

受け入れ枠の設定に反対を表明するハンガリーはセルビア国境に壁を作った。受け入れ枠そのものに不参加を表明する英国に密入国しようと、フランス北部のカレーでは不法移民たちのデモが起きている。また、スロバキアの首都プラスチラバでは、難民受け入れ枠に反対するデモが起きて逮捕者が出た。

グローバリゼーションが反転して、経済規模が縮小しているなかで、戦争による難民であれ、不法移民であれ、受け入れられる余裕はなくなっているはずだ。しかし、ヒト・モノ・カネの動きを自由化しているユーロ圏は加盟国が多いだけに意思決定と方針変更に時間が掛かり、被害も拡大する。特に反転しようとする直前の動きは、それだけ反動として目立つ訳だ。

マグレブや中東に近い南欧諸国では若年層の失業率が平均25%を超えている。貧しい国々に不法移民が入るが職はない。もともと移民の流動性は高く、職にありつけなければ少しでも好景気な国に向かう。そのため、ユーロ圏ではない英国に密入国しようとするし、英国政府とその国民は当然、EUからの離脱機運を高める。

失業問題などで政治的混乱が続けば、南欧諸国の中産階級や技術職は、ドイツ語圏へと移住する。このため、ドイツ語圏では中産階級などの給与所得が下降してしまう。さらに知識人や技術者が流出して、移民先に定着するということは内戦などの混乱が収拾しても国家再建に役立つ人材が払底して、内戦後のシリアやリビアなどが弱体化し続ける可能性を高くする。最低の例としてカンボジアが存在するではないか。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のアミン・アワド中東・北アフリカ局長が朝日新聞の記者のインタビューで述べていることは、高度人材を受け入れることは貴国の利益になります、との弁は、中長期的には移民の母国にとっては不利益になります、と云っているにほかならない。

難民受け入れ枠を提案=相次ぐ密航船転覆で対策-欧州委 2015/05/13-22:23 時事ドットコム

豪政府、密航業者に3万ドル支払い疑惑 インドネシアに追い返す? 2015 年 6 月 12 日 18:53 JST WSJ日本版

豪州、密航業者に金支払い船追い返す UNHCR報告 2015.06.13 Sat posted at 16:09 JST CNN日本版

反移民集会、140人逮捕=難民受け入れ枠に抗議-スロバキア 2015/06/21-09:13 時事ドットコム

「難民の日」、欧州各地で集会=ギリシャ緊縮策反対も訴え 2015/06/21-17:07 時事ドットコム

シリア難民受け入れを日本政府に要請 UNHC局長 2015年6月21日11時08分 朝日新聞

急増するシリア難民について、来日している国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のアミン・アワド中東・北アフリカ局長が朝日新聞のインタビューに応じ、「日本もシリア難民を受け入れてほしい」と話し、日本政府に19日、協力を求めたことを明らかにした。

 アワド局長は難民受け入れについて、「日本で『国民が慎重』だから難しいとよく聞くが、そうだろうか。日本政府は国際社会との連帯を示す時だと気づいているはずだ」と述べ、日本の積極的な関与に期待をこめた。

 さらに、「技術者の就労許可や若者が学ぶ間の支援など、期間を決めた難民受け入れもありうる」と提案。4万人のシリア難民受け入れを表明したスウェーデンが、医師や看護師資格をもつ難民らを活用して、人材不足の解消に結びつけている例を紹介し、「優れた技術者らも難民生活を強いられている。彼らが豊かな文化をもたらす側面も忘れないで」と話した。

 長引く紛争と過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で、シリアでは388万人が難民として国外に逃げ、国内避難民は760万人に上る。国連はレバノンやヨルダンなど周辺国での受け入れが限界に達しつつあるとして、各国に難民の受け入れを呼びかけている。(鈴木暁子)

汎ヨーロッパ・ピクニック、その始まりの地に

1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊して、冷戦終結を象徴する出来事となった。その壁崩壊の序章となったのが、その年の8月、ハンガリーで行われた「汎ヨーロッパ・ピクニック」だった。

東ドイツ市民は、ハンガリーが西ドイツとの国境を開放するとの決定を聞きつけ、当局に旅行を偽って申請して、キャンピングカーや自家用車などでハンガリーに大挙入国した。

これは「汎ヨーロッパ・ピクニック」と名付けられ、欧州統合を推進したオットー・フォン・ハプスブルク氏(2011年没)らが主導した。

市民の大量出国に慌てた東ドイツ政府は、西ドイツとの国境を開放する、と決定した。

しかし、スポークスマンは開放日時を知らされておらず、会見で発表後の翌日と述べてしまった。このため、深夜0時から市民が検問所や壁に殺到して、混乱を怖れた東ドイツ政府はそのまま開放させた。これがベルリンの壁崩壊の実際だった。

ベルリンの壁崩壊による自由を演出した最初の立役者だったはずのハンガリー政府が、シリアなどから来る移民の流入を阻止するために、セルビアとの国境に壁を設置する。約25年の自由の結果が再び壁を設置する嵌めに陥った訳だ。

「ハンガリーの壁」設置へ セルビア国境で移民阻止 全長175キロ、高さ4メートル 2015.6.19 15:45 産経ニュース

ハンガリーは19日までに、急激に増加するシリアなどからの移民の流入を阻止するため、セルビアとの国境約175キロに高さ4メートルの柵を設置する計画を明らかにした。ハンガリー通信などが伝えた。近隣諸国から冷戦後の新たな「壁」と批判する声も上がっている。

 オーストリア通信によると、ハンガリーに流入した不法移民は2012年に約2千人、14年に約4万3千人に上り、今年は既に約5万4千人。出身国はシリアやイラク、アフガニスタンが多く、トルコやギリシャ、マケドニアを経由し、大半がセルビアから入国した。ハンガリーのシーヤールトー外務貿易相は「国民を移民圧力から守る。これ以上我慢できない」と強調した。

 一方、欧州連合(EU)欧州委員会の報道官は「欧州の(冷戦の)壁が崩れた後に、再び壁を造るべきではない」と批判。ハンガリーの隣国、オーストリアのフィッシャー大統領も「間違った方向に進んでいる」と不快感を表明した。(共同)

三つ巴のナショナリズムが噴出する

ポーランドでは欧州懐疑派、社会保守主義者、ナショナリストと呼ばれるアンジェィ・ドゥダ氏が大統領選に勝利した。彼の所属する右派政党の「法と正義」は今年10月の次期議会選挙での躍進が期待され始め、一方の現トゥスク政権を支える中道右派の与党「市民プラットフォーム」は、その苦戦を予想され始めた。

ポーランドでも、旧ドイツ帝国と旧ワイマール共和国領に相当する西部では「市民プラットフォーム」の支持が強く、ドイツから遠い東部では「法と正義」の支持が強い。

下記のFT翻訳記事では、農村部の有権者の62%がドゥダ氏に投票し、現職のコモロフスキ大統領は都市部の票の59%を獲得していた、とされる。

ポーランドの大統領には儀礼にとどまらず、法案提出権と議会の法案に対する拒否権を持っている。

ポーランド内部の東西経済格差は、両党の支持基盤をむしろ固くしており揺るぎそうにない。今後の政権交代は東西経済格差を背景として、財政金融政策・社会保障政策・外交防衛政策を大きく変更させる、と思われる。

[FT]右傾化するポーランド、大統領選で政界に激震 2015/5/27 6:30 日経

ハンガリーでは、オルバン政権が不法移民とテロを関連付ける世論調査を始めたことに、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が懸念を表明した。

また、オルバン政権はハンガリー国外のハンガリー人にも国籍付与する法律改正を行っており、旧ハンガリー王国領だったスロヴァキア、トランシルバニア(ルーマニア)、ヴォイヴォディナ(セルビア)、カルパティア=ルテニア(ウクライナ)などに居住するハンガリー人が国籍を取得している。

移民とテロ、関係ある?=ハンガリーの調査に懸念-国連 2015/05/23-21:11 時事ドットコム

ウクライナのガリツィア地方は旧オーストリア=ハンガリー帝国に属していた。第1次大戦後、ポーランド第二共和国領となった。

そのガリツィアに生まれたウクライナ独立運動家ステパン・バンデーラを称える法案をウクライナ議会が通し、大統領承認待ちとなったのだが、これに対してポーランドが激怒している。

彼はポーランドのウクライナ人同化政策に反発して投獄、その後ナチスに協力して、ユダヤ人とポーランド人の10万人虐殺を指揮したとされる。さらにドイツの対ソ戦(ロシアにおける大祖国戦争)のさなか、ドイツからの独立をも宣言しているが、ソ連による占領で故地を逐われて、暗殺されている。その経緯から、親ロシア派と親ポーランド派双方にとって攻撃の的とされる。

Honors for Ukrainian nationalists anger their victims in Poland May,11 2015 The Christian Science Monitor

ウクライナ、対外債務の支払い拒否可能に 議会が法案可決 2015年 05月 20日 11:13 JST ロイター

日本-ポーランド戦略的パートナーシップ

ヴィシェグラード・グループ4ヵ国(V4)のポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの中から先駆けてポーランドと「戦略的パートナーシップ」を結ぶこととなった。ヴィシェグラード・グループ4ヵ国(V4)は、スロバキア以外ユーロ圏ではなく、我が国にとってはユーロ圏への迂回輸出拠点として有望視される。

ポーランドの輸出入先はユーロ圏で約5割、旧ソ連圏で約1割を占める。しかし、ウクライナ危機以降、旧ソ連圏特にロシアとの貿易が一気に縮小しており、日系企業の進出は概ね歓迎される。さらに中間層の育成にもつながるだろう。

ハンガリーは、カルパティア・ルテニアのハンガリー系住民の自治を要求していることもあり、ウクライナ及び支援の姿勢の強いポーランドと利害対立しかねない。するとポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーのヴィシェグラード・グループ4ヵ国の足並みも揃わなくなっていく。

日ポーランド首脳、安保で協力 2015年 02月 27日 21:13 JST ロイター

安倍晋三首相は27日、ポーランドのコモロフスキ大統領と官邸で会談し、防衛当局間の協議を定期化し安全保障分野の関係強化を図ることで一致した。同国が原発の導入を進めている点を踏まえ、原子力を含むエネルギー分野での協力も確認。両政府は会談に合わせ、関係を多分野で深める「戦略的パートナーシップ」と位置付ける共同声明を発表した。

 共同声明では、過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件に触れ、「テロと戦う国際社会に対する責任を毅然と果たす」と明記。ポーランドと国境を接するウクライナ情勢をめぐっては、平和的かつ外交的な手段で解決すべきだとした。


参考URL:
日・ポーランド首脳会談,共同記者発表,夕食会 平成27年2月27日 外務省

ピクニックは現地集合、現地解散で

今から25年前、ベルリンの壁崩壊を知ったのは学校帰りの電車で大人が拡げていた新聞記事だった。その後、世界史を選択していたボクにとって、つづく東欧諸国の革命、ソ連邦の崩壊と新しい「スタン」国の出現と、テキストがコミケのコピー本並みの慌ただしさで増殖して、絶望に陥った記憶がある。

「世界は新冷戦の瀬戸際」=ゴルバチョフ氏 2014/11/09-06:12 時事ドットコム

ベルリンの壁崩壊から25年 2014年11月09日08:28 Market Hack

ちなみにベルリンの壁崩壊はその年の8月、ハンガリーで行われた「汎ヨーロッパ・ピクニック」が要因となっている。

それで想い出したのだが、その年の遠足は全学年合同で挙行された。まあこれもひとつのピクニックですよね。問題なのはそれが現地集合(大船)・現地解散(鎌倉)ということで。

学校に集合するとか、バス貸切するとか、そんなものはない。生徒の自主性って良い響きですね。

まず遠隔地にお住まいの生徒は自主的に欠席する。大船にたどり着く前に雲隠れする生徒もいるが構いません。自主性の発露です。出欠確認もそこそこに最終集合時間確認後はキャッチ・アンド・リリースです。

とりあえず大船駅から出発。それまで東京モノレールか上野動物園のモノレールしか乗ったことしかなかった身には湘南モノレールって怖い乗り物でした。花やしきとあらかわ遊園の乗り物より怖いです。

鎌倉各地に教師が待ち構えるチェックポイントがあるのだが、タクシーをチャーターする生徒が現る。遠足のしおりにそんなルールはないですから。3年生にはそんなチェックポイントすらなく、早速鎌倉駅に到着すると、3年受け持ち担任が駅前の喫茶店でくつろいでいるのと遭遇。

江ノ電でナンパに励む者。シラス丼を探してもなく何故か麻婆丼を喰う者。鎌倉まで来てゲーセンに行く者。よく分からない刀剣店に迷い込む者。

人は自主性重視するだけではなく、ルールや秩序も必要であったと。持て余す自由というのもあるのだと。そんなことを理解した。提案した生徒会側としては、むろん楽だと踏んで受け入れた教師側も大概だが、痛し痒しの遠き日の想い出だったりする。
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