スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

欧州懐疑派の敵はブリュッセルにあり

マーヴィン・キング前イングランド銀行総裁は、欧州連合(EU)を覆う経済停滞が、欧州議会の置かれたブリュッセルのテクノクラートによる「意図的な」財政緊縮策によってもたらされていると非難した。

例えば、2009年以降のギリシャの景気動向は戦間期の大恐慌の落ち込みよりも激しくなっており、政策に対する幻滅はユーロ圏の通貨統合~財政金融政策の統合をむしろ破壊していく、とテレグラフ紙上で述べた。

ベルギーの首都ブリュッセルは、欧州連合の首都としての役割も持ち、行政府や議会が置かれている。同時にイスラム原理主義過激派のテロリストの温床にもなっている。

Euro depression is 'deliberate' EU choice, says former Bank of England chief 1 MARCH 2016 • 9:46PM The Telegraph

さて、英国にとって有利なEU改革案が通った今、EU離脱を巡る国民投票に対して、独仏から注がれる眼は厳しい。フランス外相は直裁的な表現で、離脱するならば海峡トンネルで越境しようとする不法移民を止めない、と述べた。

英国がEU離脱なら、仏から移民流入させる─仏経済相=FT  2016年 03月 3日 19:24 JST ロイター

英が離脱すればEUは競争力低下の恐れ、国益に適わず=独財務相 2016年 03月 4日 02:36 JST ロイター

英のEU離脱後は「特別待遇」交渉困難に、残留すべき=独財務相 2016年 03月 4日 13:34 JST ロイター

英国では、EU離脱とEU残留それぞれの立場から、続々と声が上がる。大ロンドン市長はEU離脱を支持したが、金融街の中心であるシティー・オブ・ロンドンのマーク・ボリート政策委員長はEU残留を支持した。また、商工会議所代表はEU離脱を支持して辞任した。

英金融街シティーの自治体、EU残留支持を表明 2016年 03月 4日 11:25 JST ロイター

英商工会議所代表がEU離脱支持で辞任、キャメロン首相を批判 2016年 03月 7日 19:31 JST ロイター

EU離脱問題で英中銀が対応策、投票日前後にオペ追加実施 2016年 03月 8日 04:54 JST ロイター

シティーは欧州全体の金融センターとなっており、シティーの利害を代表するシティー・オブ・ロンドンがEU離脱反対なのは当然だろう。EU離脱となれば、本社機能をルクセンブルグなどに移転されて、金融センターとしてのロンドンの地位が低下、人材も流出して、富裕層向けの不動産市場も低迷しかねない。

現在、英国の財とサービスの輸出のうち、45%は欧州向けとなっている。一方、英国は旧植民地のコモンウェルスや米国、中共、日本との間で、EUとは関係なく独自に関税を交渉して決定できるようになるのも確かである。
スポンサーサイト

半抜けブレグジットで迎える国民投票

ベルギーの首都ブリュッセルに集まった欧州連合(EU)の首脳たちは、英国のキャメロン首相が求めていた改革案について、2月18日から19日にかけての30時間に及ぶ交渉の末、EUと英国の間で合意を成立させた。これを受けて、英国は6月23日にEU残留を問う国民投票を実施することも決定された。国民投票は、2015年の総選挙で2017年末までに行うと公約されていた。

ドイツ人の73%が「英国のEU残留は重要」=世論調査 2016年 02月 19日 20:19 JST ロイター

英国のEU残留、全会一致で支持=トゥスク大統領 2016年 02月 20日 08:57 JST ロイター

英首相が6月23日の国民投票実施を表明、EU残留への支持呼びかけ 2016年 02月 21日 16:07 JST ロイター

キャメロン首相が求めていた改革案は大筋で認められた。トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)は英国をEUに繋ぎ止めることを優先したと発言しており、大幅な譲歩がなされた。

1. ほかのEU諸国からの移民に対する社会福祉の制限
移民が著しく増加した場合、最大4年間福祉サービスの受給を制限できる。また、移民の子息が英国国外に居住している場合、その児童手当をその国の物価水準に合わせて減額できる(ただし2020年までは現行水準)。

2. 国家主権の委譲を伴うEUのさらなる政治的統合の不参加
欧州共同体設立条約前文にある「限りなく連合体に近い(ever closer union)」について、英国は適用除外されることを明記する。

3. ユーロ圏と英国間の相互不干渉
シティー及び金融政策に対する規制強化を認めない(ただし、セーフガード措置であり、完全な拒否権ではない)。また、ユーロ圏内で危機が発生しても英国及びその他の非ユーロ圏の加盟国は救済措置に加わらない。

キャメロン首相はこれらの合意を「特別な地位が認められた」とする。しかし、英国の主権を優先する欧州懐疑派にしてみれば、主権が制限されていることに違いはない。

一方、野党の労働党ジェレミー・コービン党首はキャメロン首相が結んだ合意は間違っているが、EU残留そのものは正しいとしている。

残留支持・離脱支持双方にとって、EU離脱(Brexit=ブレグジット)は半抜け状態にあるというべきだろう。この状態で国民投票を迎える。

Cameron Challenged by Johnson as London Mayor Backs ‘Brexit’ February 22, 2016 — 2:06 AM JST Bloomberg Business

Cameron’s deal is the wrong one: but Britain must stay in Europe Saturday 20 February 2016 18.18 GMT The Guardian

主権を重く見る欧州懐疑派は、早速EU離脱を表明し始めている。

大ロンドン(金融街を有するロンドン・シティーではない)のボリス・ジョンソン市長、マイケル・ゴーヴ司法大臣、グレイリング院内総務が離脱キャンペーンに加わった。ほかには極右の英国独立党党首ナイジェル・ファラージ、極左のリスペクト党党首ジョージ・ギャロウェイが離脱を唱えている。

北海油田に沈むスコットランド独立

原油価格のトレンド転換がスコットランド独立の経済的論拠をも破壊してしまった、というテレグラフ紙の記事。イングランドの視点から見ると、独立是非を問うた住民投票のタイミングが2014年9月だったのは、今から振り返ると絶妙だったことになる。イングランド側にとって、単なる幸運と言い切れないのは、原油価格は日米の通貨政策に左右されているということを知っていたか否かで決まる。

変動相場制に移行した以降の1974年~1985年(1バレル48ドル~120ドル)、プラザ合意以降の1986年~2004年(1バレル21ドル~48ドル)、テイラー・溝口介入と円キャリートレードの活発化以降の2005年~2014年(1バレル50ドル~120ドル)のそれぞれのトレンドから見て、2014年のFRBの量的緩和終了と日銀の質的量的緩和第2弾以降、2015年からは1バレル20ドル~50ドルのレンジに入ったと考えられる(2015年1月4日のエントリー参照)。

最低限、約10年間はこのトレンドが続く。となると、スコットランド独立派は原油価格の浮沈に自らの独立を懸けるならば、10年の雌伏を余儀なくされる。1990年代から続いた新興国への資金流入が還流し始めていることを考えると、約30年はこのトレンドが続く場合すらある。

Imagine the mess an independent Scotland would be in right now 7:44PM GMT 04 Feb 2016 The Telegrah

(一部抜粋・意訳)

More generous pensions, a fairer education system, protection from welfare cuts – all bankrolled by huge oil revenues which the SNP expected to come flooding in from the North Sea.

寛大な年金額が支払われ、公正な教育システムが運用され、あらゆる社会福祉予算の削減から守られるために、スコットランド国民党は北海から湯水のように湧き上がる原油の収入によって、これらすべての資金を賄おうとしていた。

Just as the discovery of North Sea oil transformed the prospects for Scottish nationalism in the 1970s, so the collapse of the oil price has destroyed its economic rationale today.

北海油田の発見は1970年代にスコットランド独立運動の見通しそのものを変えた、と同時に原油価格の崩落は現在の独立を担保する経済的合理性をも壊してしまった。

オフショア人民元の次は“ブレグジット”で一稼ぎ

約25年間、グローバリゼーションの進展に伴って、先進国から新興国に向けて資本が投下されてきたが、2014年から資本の還流が始まり、2015年には$735 billionが新興国から先進国に還流した(Institute for International Finance調べ)。この額は誤差脱漏を含んでおり、資本移動規制を掛けている国からの資本流出を含んでいる。

中長期のトレンドとして、新興国から先進国への資本の還流が始まったと考えられる。おそらく1~2年の間に新興国の経済的な没落が急激に進むのではなかろうか。

The world’s most important chart January 21, 2016 Quartz

米国債は手放さず、外貨準備取り崩しの中国-減少幅に大きな開き 2016/01/21 14:28 JST ブルームバーグ

2013年1月10日のエントリーでも触れたように、

オンショア人民元を香港ドルにスワップ出来るオフショア取引が解禁されたら、共産党の高級官僚とその子弟以外の人民も資本流出を加速させ、一気にバブル崩壊が進むものと予想していたが、2015年6月~8月に起きた上海株式市場のバブル崩壊のトリガーは香港と上海の株式市場相互接続による外資の空売りだった。

しかし、現在では英国が画策していたように、オフショア人民元を使って中国共産党から資産を吸い上げていく、という方針に沿った形で上海株式市場のバブル崩壊が進行している。加えて、新興国の通貨下落と原油価格の下落も併せて、新興国を中心に先進国への資本の還流が起きている。これらは市場の乱高下を伴い、ボラティリティが大きいのでロンドン・シティーにとっては利益を得る機会が増えるだろう。

さて、2015年から2016年までに新興国から先進国への資本の還流の第1段階が終わると仮定しよう。

英国としては、特にシティーとしてはカネの儲け話が減る。すると、英国のEU離脱(Brexit=ブレグジット)が彼らの儲け話、云うならば資本の還流の第2段階として浮上してくるのではないか。

英国のEU離脱(ブレグジット)については、そのリスクを周知させるかのように、その危険性を伝える記事が一定期間ごとに配信されている。

アングル:欧州銀行幹部、怖いのはグレグジットよりブレグジット 2015年 06月 26日 13:54 JST ロイター

焦点:「ブレグジット」めぐる対EU交渉で英国に必要な戦術 2015年 10月 21日 19:58 JST ロイター

英格付け、「ブレグジット」で最大2段階引き下げの公算=S&P 2015年 10月 30日 04:19 JST ロイター

焦点:難題山積のEU、来年は英離脱選択なら壊滅的打撃 2015年 12月 21日 14:40 JST ロイター

英国のEU離脱「ブレグジット」に大きな懸念  2016 年 1 月 22 日 13:08 JST WSJ日本版

EU離脱の政治的日程だが、2016年2月頃まで(もっとも延長されるかもしれないが)加盟存続を賭けた条件交渉が続き、2016年夏から2017年末までに国民投票にかけられる予定となっている。

それまでには少なくとも過度な人権擁護の姿勢は修正され、難民危機は収束しているにせよ、なおも不法移民・難民の流入は続くだろう。不法移民・難民の発生源であるスンニ派対シーア派の戦い及びISIS(イスラム国)のテロは継続しているからだ。

このほかにウクライナ危機も継続しているので、ポーランドの右傾化や伝統的なノルディック・バランスの崩壊、ウクライナやグルジアにおける親欧米派と親露派の対立激化など、ロシアと旧CIS諸国と国境を接する北欧・中欧諸国は軍事的緊張の度合いを増す。

欧州の金融中心地であるシティーとしては、こうしたEUの混乱を見極めながら国民投票の政治日程に併せて離脱のリスクヘッジを行う。国民投票で賛成票が上回って、EUから離脱するとしても、その手続きは数年かかる。その過程で、同時進行的にEUの解体が始まり、政治的混乱が発生したり、資本逃避が起きればボラティリティは大きくなる可能性もある。

つまり、EUの資産を吸い上げるために、シティーがEUにとってのオフショアとなるのならば、EU離脱は一定の経済合理性があるということになる。

日英ACSAと綺麗な二枚舌外交

前年に引き続き、第2回の日英外務・防衛担当閣僚級会合(2プラス2)が開催された。ロイター電では、ユーロファイター・タイフーンが参加しての共同訓練が取り上げられているが、重要なのは日英間の「物品役務相互提供協定(ACSA)」締結のための交渉を加速させることで一致した点であろう。

日英両国間では、2013年6月に「防衛装備品等の共同開発等に係る枠組み」と「情報保護協定」が締結・署名され、2014年4月の「防衛装備移転三原則」に基づいて、シーカーの共同研究が始まっている。2014年5月には、「日英外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」の開催合意と「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結交渉開始が決まった。

すでに交渉開始から1年半近く経っている。南シナ海及び東シナ海の情勢悪化を踏まえれば、今年中の締結が望ましい。

各国との2プラス2の進展は以下の通り。

日仏両国間でも、2014年1月には「日仏外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」が初めて開催され、「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結交渉に入ることが決まった。日仏間の「防衛装備品・技術移転協定」は署名されている。

他の太平洋諸国については、安倍首相の日本-ニュージーランド間でも「物品役務相互提供協定(ACSA)」の検討に入っている。日豪間では「経済連携協定(EPA)」の署名がなされ、「防衛装備品共同開発協定」が調印された。

また、太平洋に領土を持たないイタリアとも「情報保護協定」の締結交渉が始まっている。将来的に「日伊外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」や「役務相互提供協定」へとつながっていく。アジア太平洋のみならずNATOとの広範な安全保障の協力関係が構築されていく布石と考えて良いだろう。

この流れに歯向かったのがやはり韓国であった。2012年6月から7月にかけて、韓国側は日韓情報保護協定に仮署名しながらも署名・締結を拒み、日韓物品役務相互提供協定の協議を中断した。同時期に中韓間の軍需支援協定の締結へと進んでいる。

これ以降、経済と安全保障両面で中共への傾斜を進めたが、約3年半で頓挫した。韓国は、英国のように経済面では中共に接近しつつも、安全保障面では我が国に接近するような綺麗な二枚舌外交が出来ていない。

【日英の安全保障協力の進展】
2012年06月 防衛協力覚書締結
2013年07月 防衛装備品協力の協定締結・化学防護服の共同研究開始・情報保護協定署名
2013年10月 日英のNSC定期協議・NSC間のホットライン開設合意
2013年11月 英国海軍HMSデアリングの寄港
2014年01月 日英情報保護協定発効
2014年05月 日英首脳会談でACSA締結交渉開始
2014年07月 空対空ミサイル開発に向けた共同研究開始
2015年01月 日英2プラス2初開催
2016年01月 第2回日英2プラス2開催

英戦闘機が日本で空自と共同訓練へ、英国のアジア関与強化狙う 2016年 01月 9日 18:12 JST ロイター

[東京 9日 ロイター] - 中谷元防衛相は9日、来日中のファロン英国防相と会談し、今年中に英空軍の高性能戦闘機ユーロファイター・タイフーンが参加する共同訓練を日本で実施することを確認した。中国の海洋進出や北朝鮮の核開発などでアジアの緊張が高まる中、日本はこの地域に対する英国の関与を強めたい考え。

中谷防衛相は会談後、記者団に対し、「(日英の)部隊間の交流のみならず、英国のアジア太平洋地域におけるプレゼンスの強化という観点からも有益になる」と語った。その上で、「スクランブル(緊急発進)の対処は英国がすぐれた知見や能力がある。わが国としては参考になる」と述べた。

両国は今後、水陸両用作戦や手製の簡易爆弾への対処など、共同の軍事訓練を増やす方針。自衛隊と英軍が英国と日本を相互に訪問しやすくなるよう、事前に法的地位を定めるなどの方策を議論していく。

このほか両大臣は、昨年10月に発足した日本の防衛装備庁と、英国の貿易投資総省・国防安全保障機構との間で、職員の交流を進めることで合意した。


参考URL:
第2回日英外務・防衛閣僚会合(「2+2」) 平成28年1月8日 外務省

栄光のロイヤル・ネイビーの憂鬱深く

キャメロン政権の財政緊縮政策によって、軍事予算削減が続き、英軍の作戦能力が過去5年の間に3分の1に低下してしまった、と軍事専門家が論評している。

と、2015年11月11日のエントリーで伝えた続報として、

ロシアの戦略原潜に対して、ニムロッドの退役によって充分な対潜哨戒機とその探知能力を持たなくなってしまった英国海軍が難儀しており、フランスとカナダ両海軍の協力を仰いでいる、と云う。

海軍能力の全般的低下はこれだけにとどまらず、戦略原潜基地のあるスコットランド沿岸にロシアの侵入を許してしまっている。これが底流に潜んでいるスコットランド独立運動と重なっていることと、考え併せると事態はさらに深刻である。

英国は早急に米国のP-8ポセイドンか、我が国のP-1を導入しなくてはならないが、上記の予算削減が続くのではまず不可能である。

現状、可能性としては低いが、現在の労働党のコービン党首が政権に就いた場合、その極左的思想の公約に伴って、対潜哨戒機の新規導入どころか自国の戦略原潜すら廃止されかねない。

With no sub-chasing aircraft of its own, UK calls on allies to help find Russian submarine  November 23 The Washington Post

After significantly cutting the size of its military in recent years, the United Kingdom was forced to call on France and Canada to help look for a Russian sub they believed was patrolling off the Scottish coast, according to a report in the Telegraph.

According to the report, the Russian sub was spotted more than a week ago and has yet to be found amid fears that it might be trying to spy on the UK’s Trident program — a sub-based nuclear warhead delivery system stationed in Scotland.

(後略)

ジョンブル魂はあっても手に取る武器がない

キャメロン政権の財政緊縮政策によって、軍事予算削減が続き、英軍の作戦能力が過去5年の間に3分の1に低下してしまった、と軍事専門家が論評している。

では、英国は世界のヘゲモニーに関与するのではなく、スウェーデンのような重武装中立主義の国家の道を目指しているのであろうか。

直近の2015年の英国総選挙の対立軸は、北欧型の福祉国家を志向するスコットランドと欧州大陸からの独立性を保とうとするイングランドの確執へと移行している、のではないかと、2015年5月9日のエントリーでは述べた。

現在、そのスウェーデンですら、ロシアの軍事的再台頭に対応して、フィンランドと軍事協定を結び、NATO加盟のデンマークとも同様の協定を結んだ。

作戦遂行能力を大幅に落としている現代の英国に想うのは、バトル・オブ・ブリテンを戦わざる得ないほど、追い詰められた過去の姿である。ダンケルクから撤退したとき、兵員は救えたが装備はすべて捨ててしまった。金融センターとして育てた上海や香港を潰してでも、本家のシティーと大手の金融グループを守るためにオフショア人民元を囲い込もうとする姿に重なる。

Britain’s armed forces no longer have the resources for a major war 7 November 2015 The Spactator

畢竟、大英帝国とはイングランド銀行とシティーである。かつての海外植民地に張り巡らされた資本と貿易のネットワークが、史上最初の“世界の工場”を育て上げた。しかし、老いた“世界の工場”の存続を諦めたサッチャリズム以降は、インフラから自動車メーカーの商標権ひとつまで、売れるモノはすべて売る姿勢で一貫してきた。

そうした英国にあっても、ロールス・ロイスのコア・コンピタンスであるエンジン技術だけは売らなかった。ジェットエンジンの分野においては、米国のGE、P&W、英国のロールス・ロイスはトップ3の座を守っている。

これに匹敵するのが、戦略原潜の原子炉の鋼鉄製格納容器の技術である。これを製造するシェフィールド・フォージマスターズ・インターナショナル社に中共が食指を伸ばしている、という記事を産経が伝えている。

中国、英軍需企業に食指 原潜部品扱う鉄鋼メーカー買収画策 英紙報道、国防省が警戒 2015.11.11 19:36 産経ニュース

 【ロンドン=内藤泰朗】中国の国有企業が、英国唯一の核戦力である潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「トライデント」を搭載したバンガード級戦略原子力潜水艦の主要部を扱う鉄鋼メーカーの買収に動いていることが分かった。8日付の英日曜紙サンデー・タイムズが報じた。保守党のキャメロン政権の対中経済依存が高まり、軍事費が削減される中、中国が軍事関連企業にも食指を動かしていることが浮き彫りとなった。

 同紙によると、中国が関心を示しているのは、戦略原潜の原子炉の鋼鉄製格納容器の製造技術を持つ英鉄鋼大手シェフィールド・フォージマスターズ・インターナショナル社。1805年創業の同社は、英国が世界の鉄鋼の半分以上を生産していた19世紀を代表する企業の一つとされ、1990年には旧フセイン政権下のイラクへの武器輸出に関係したとして騒がれたこともある。近年は鉄鋼業の衰退で業績が悪化し、外部資本の導入を検討中という。

 ただ、同社は重さ350トンの巨大な鋼鉄の一体成型を行う特殊技術を持ち、英国の核抑止力の一翼を担っているだけに、国防省は中国が格納容器の製造技術を獲得すれば、核抑止力に影響を及ぼしかねないとして強い懸念を示している。

 英国は90年代に、トライデントミサイルを搭載する戦略原潜の4隻体制を確立。キャメロン政権は、4隻が退役する2020年代後半に向けて新型原潜4隻を建造する方針を表明している。

2015年の「Fortress Around Your Heart」

丁度、出始めの頃のCDの音圧や値段に一端の文句を垂れていた、ジャズやソウルのエッセンスが入ったレコードを選ぶようになった1985年。

その年のトップ3を上げるとしたら、スタイル・カウンシルの『アワ・フェイバリット・ショップ』と、シンプリー・レッドの『ピクチャー・ブック』と、スティングの『ブルー・タートルの夢』だった、と思う。

スタイル・カウンシルの曲「シャウト・トゥ・ザ・トップ!」のPVはサッチャリズムと炭鉱ストを扱っていたし、シンプリー・レッドの「マネーズ・トゥ・タイト」の歌詞にはレーガノミクスという単語があったし、スティングの「ラシアンズ」は東西冷戦そのものズバリ指していた。

音楽と政治の関係性すら気にも留めず、オシャレなアクセサリー程度にしか思えなかったが、そのまま大人になっていたらと、そら怖ろしい気分になる。

さて、そんなことすら四半世紀も前のことで、街中にレコード屋さんというものがあって、顔馴染みになっていた初老の店主が、しばらく僕が怪我をして店に来なかったのを心配して、兄伝いに、スティングのアルバム『ナッシング・ライク・ザ・サン』(1987年)をくれたことがあったのを想い出す。もちろんそのレコード屋さんは今はない。

何故か『ナッシング・ライク・ザ・サン』は兄のお気に入りになってしまって、もっぱら『ブルー・タートルの夢』と『ブリング・オン・ザ・ナイト』(1986年)を聴いていた。

『ブルー・タートルの夢』の最後に収められている「フォートレス・アラウンド・ユア・ハート(Fortress Around Your Heart)」は、ベルリンの壁の暗喩かな、彼の意中の人の心が難攻不落なのかな、とか当時思っていた。

当時の結論だったら、心の壁なんか100%無いほうが良いよね、なんて軽口叩くのだろうが、今になってみると、政治的も心理的にも壁はなくならないことに気付かされる。

(「フォートレス・アラウンド・ユア・ハート」歌詞・意訳)

Under the ruins of a walled city
滅び去った城壁と街がある
Crumbling towers and beams of yellow light
崩れ去った塔に黄昏の光彩が貫く
No flags of truce, no cries of pity
掲げる白旗も、哀れな叫びもなく
The siege guns had been pounding all through the night
城壁を打ち破る砲撃が夜通しつづく
It took a day to build the city
街を打ち建てるのに一日と要らない
We walked through it’s streets in the afternoon
ふたりは昼下がりの通りを歩く
As I returned across the field’s I’d known
見覚えのある野原を通りすぎて気づく
I recognized the walls that I once made
ああ城壁は僕が造り上げたものだ
I had to stop in my tracks for fear
足が竦んで歩みを止めた
Of walking on the mines I’d laid
僕が埋めた地雷を踏みしめないかと


And if I built this fortress around your heart
そうだ僕が君のこころの周りに砦を築いた
Encircled you in trenches and barbed wire
塹壕と鉄条網で君を取り囲んでしまった
Then let me build a bridge
どうか橋頭堡を架けさせておくれ
For I cannot fill the chasm
深い淵を埋めることが出来ないんだ
And let me set the battlements on fire
僕を撃ち抜こうとする胸壁を焼いてくれ

Then I went off to fight some battle
それから幾度かの戦いに赴いたが
That I’d invented inside my head
それは僕の頭の中ででっち上げられていた
Away so long for years and years
遠く長く幾年月もの間
You probably thought or even wished that I was dead
僕が死んだとおそらく君が思い願ったように
While the armies are all sleeping
その軍隊は皆が眠りこけている間
Beneath the tattered flag we’d made
破れた旗の下に我らが作り出したものだ
I had to stop in my track for fear
足が竦んで歩みを止めた
Of walking on the mines I’d laid
僕が埋めた地雷を踏みしめないかと

※繰り返し

This prison has now become your home
今やこの檻が君の住まいになった
A sentence you seem prepared to pay
刑罰を受ける心構えはできているようだ
It took a day to build the city
街を打ち建てるのに一日と要らない
We walked through it’s streets in the afternoon
ふたりは昼下がりの通りを歩く
As I returned across the field’s I’d known
見覚えのある野原を通りすぎて気づく
I recognized the walls that I once made
ああ城壁は僕が造り上げたものだ
I had to stop in my tracks for fear
足が竦んで歩みを止めた
Of walking on the mines I’d laid
僕が埋めた地雷を踏みしめないかと

※繰り返し

Map: Europe is building more fences to keep people out October 28 2015 The Washington Post

1989年にはベルリンの壁はなくなったけれど、そのきっかけをつくったハンガリーが主導して、再び欧州連合のあちらこちらに不法移民を防ぐ壁が出来始めている。

ハンガリーの近隣国ではオーストリアとスロベニアが、英仏海峡トンネルのある港町カレーでも、スペインのアフリカにある飛び地セウタとメリリャでも、バルト三国のエストニアやウクライナとロシアの国境にも作られる予定だと云う。

欧州が城塞に取り囲まれた国家群に変わろうとしているのを聞くと、相互確証破壊の恐怖の均衡と、経済と情報の隔絶をもたらすベルリンの壁があることで、むしろ音楽と政治の関係性をアクセサリー以上に考えなくても済んだ四半世紀前が、無知であるがゆえの無垢な、それでいて幸せな時代のように思えてくる。

ジョンブルはオフショア人民元の総取りを狙う

習近平国家主席に米国との国賓待遇のあからさまに違う扱いを(もちろんジョンブルのことなので、分からないように莫迦に)して、オフショア人民元総取りのための総仕上げに入りつつ、安全保障では我が国との協力関係を着々と進める。そんな英国の今までの動きを過去のエントリーから振り返る。

Xi Jinping’s Seattle dinner: Japanese ingredients and cheap wine September 23, 2015 Quartz

冗長で分かりづらいことは謝るにせよ、筆者にとっても読み返すだけの価値はあった。一読されたし。

英国、中国人観光客のビザ要件緩和で「爆買い」期待 2015年 10月 21日 11:21 JST ロイター

中国主席が英議会演説、「友好関係を新たな高みに」 大型商談も 2015年 10月 21日 09:07 JST ロイター

中国人民銀がロンドンで1年物点心債売却、利回り3.1% 2015年 10月 21日 02:51 JST ロイター

英首相、中国の鉄鋼助成金めぐる問題協議へ 習主席訪英中 2015年 10月 20日 02:26 JST ロイター

中英関係は緊密、相互依存強まる=習近平国家主席 2015年 10月 21日 02:00 JST ロイター

2013年6月26日のエントリーの時点では、

米国にLIBOR操作を暴露されて、多国籍企業の租税回避とテロリストの資金洗浄防止でタックスヘイブンに足枷を嵌められたロンドン・シティー。

人のカネから利鞘を抜く自国の金融ビジネスモデルが窮地に陥り、ギリギリ持ちこたえている英国が、このモデル最後の大博打(英中通貨スワップ)に打って出た。

当然、英国は今回の英中通貨スワップ協定締結で、人民銀行、中国四大銀行と国営企業ほか、中国共産党に対して流動性を担保して突然死を防ぐ代償に、支那本土→(人民元オフショア市場のある)香港→(中国上場企業の本社の多い)ケイマン諸島→ロンドン・シティーへと、すべての資本を裏口から吸い上げようとするだろう。

2013年8月11日のエントリーの時点では、

日英情報保護協定の締結の次に、英国との外務・防衛閣僚級会合(2プラス2)の定期開催を提案しているので、安保協議の際に、2プラス2まで合意出来れば良い。

2013年9月16日のエントリーの時点では、

香港行政長官の普通選挙導入に関して、その発言を内政干渉と名指しされているヒューゴ・スワイヤー閣外相は、ジャーディン・マセソンと並び立つコングロマリット、スワイヤー・パシフィックの創業家と縁戚関係にあるのだろうか。

そして、同じく香港有数のコングロマリット、長江実業も支那本土の資産売却を進めている。

2013年10月14日のエントリーの時点では、

安倍首相は日英関係を「ア・プリオリの」パートナーシップである、と先月30日に行われた英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)主催の日英安全保障協力会議の基調講演で発言した。

今回の日英安全保障協力会議の開催、来月予定のHMSデアリングの寄港、合同演習、日英防衛当局間の海上安全保障に関する協議で、さらに日英同盟締結再びは近づくことになる。

2013年10月17日のエントリーの時点では、

つづいて英中は、ポンドと人民元の直接取引に出てきた。中共は人民元のハードカレンシー化をけして諦めてはいない。元切り上げによって、2005年から2008年までに約20%高くなっていた人民元は、2013年現在では2005年と比較して約35%高くなっている。現在のレートは1ドル=約6.14元で推移している。1ドル=6.0元の突破は今年中にあり得るだろう。

共産党政府は他国の資源エネルギーと農産物、優良企業の買収戦略をさらに推し進める。英国はその買収のお手伝いをしましょう、と云っている訳だ。

2013年10月27日のエントリーの時点では、

NSC(国家安全保障会議)発足後、速やかに日英間のホットラインが開設される、と日経と朝日が報道している。両政府間ではすでに日英情報保護協定の締結でも合意している。「特定秘密保全法案」もこれに連動している、と思われる。

2014年4月5日のエントリーの時点では、

シティーを中心としたグレーター・ロンドン周辺の商業用不動産と富豪用の邸宅を富裕な外国人実業家に購入してもらい、実業家のいくらかが拠点を置き、オフショア人民元債券(点心債)やイスラム債券(スクーク)の取引が活発化すればシティーも潤い、金融部門の雇用も増え、不動産開発のためのインフラ建設も同時に盛んになり、英国経済のダイナミズムが動き出す、というのがジョンブルの描いた勝利の方程式だ。

2014年5月5日のエントリーの時点では、

東芝は英国の原発発電会社ニュージェンに、子会社のウェスティングハウス製の加圧水型原子炉3基を納入するため、直接ニュージェンを買収(60%の株式取得)する。納入後はニュージェンの株式を売却する意向。同様に日立製作所も英国のホライズン・ニュークリア・パワーを買収、納入後は株式を売却するスキームを方針としている。

欧州各国(ドイツ~英国~ポルトガル~スペイン~フランス~ベルギー)歴訪中の安倍首相は、英国で日立製作所が納入した鉄道に試乗して、ロンドン・オリンピック会場を視察。また両国間の原子力に関する協力関係を強化するイベントに出席した。

2014年6月18日のエントリーの時点では、

英国は対中LNG供給契約をまとめ、鉄道や原子力などのインフラ整備でも我が国やフランス、イタリアなどに対する競合として中国を引き込んだ。もちろん、英中共同声明には安全保障面での協力についての言及は一切ないが。

李克強首相の訪中で、もっとも重要なトピックはオフショア人民元についてだろう。2013年6月の英中スワップ協定、2013年10月のポンドと人民元の直接取引開始以降、目立った動きがなかったオフショア人民元の活用の具体策として、中国建設銀行を人民元決済銀行とする、と李克強首相が述べた。

人のカネから利鞘を抜く自国の金融ビジネスモデルが窮地に陥り、ギリギリ持ちこたえている英国は、シティーを中心としたグレーター・ロンドン周辺の商業用不動産と富豪用の邸宅を売り物にしているが、まだ支那本土からカネを抜くことを諦めていない。

2015年1月25日のエントリーの時点では、

日英外務・防衛担当閣僚級会合(2プラス2)が初めて開催された。協議されたのは2国間訓練の拡充、サイバー対策、海賊対策、装備品の協力の推進、物品役務相互提供協定(ACSA)の早期締結など。

特に防衛装備品での協力では、化学防護服の性能評価と空対空ミサイル(AAM)の共同研究を行い、加えて哨戒機P1の輸出を念頭に現地生産や技術移転を求めるオフセット取引といった調達方法でも意見交換した。

【日英の安全保障協力の進展】
2012年06月 防衛協力覚書締結
2013年07月 防衛装備品協力の協定締結・化学防護服の共同研究開始・情報保護協定署名
2013年10月 日英のNSC定期協議・NSC間のホットライン開設合意
2013年11月 英国海軍HMSデアリングの寄港
2014年01月 日英情報保護協定発効
2014年05月 日英首脳会談でACSA締結交渉開始
2014年07月 空対空ミサイル開発に向けた共同研究開始
2015年01月 日英2プラス2初開催

2015年2月26日のエントリーの時点では、

日英の防衛協力強化の一環として、海上自衛隊の自衛艦隊司令部に英国海軍将校が連絡官として派遣されることとなった。

HSBC、スタンダード・チャータード、RBSなど主要な英国の銀行は、そろって投資銀行業務と海外業務を縮小・廃止している。金融業主体のモデルを製造業主体のモデルへ転換すべきだろうが、日米両国のようにリショアリングを進めることはできず、シティーを中心としたグレーター・ロンドン周辺の商業用不動産と富豪用の邸宅の売買によるバブルで景気浮揚を図っている。

彼らが英国本土でオフショア人民元を吸い取ろうとしているように、我が国は春節(旧正月)の訪日中国人観光客の「爆買い」で吸い取ろうとしている。吸い取ったあとでならば“対中封じ込め”の政治的障害はより少なくなる。

2015年3月24日のエントリーの時点では、

中国共産党が設立を図るアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関する局面がやや変化してきた。G7であるカナダがAIIBへの参加を検討し始めた。

G7のなかでは初めに英国が参加を表明して、続いて独仏伊が参加を表明しており、この時点で参加表明した独仏伊の欧州大陸3カ国の陣営と英国と豪州のアングロサクソン陣営では、G7ではない豪州は格落ちとなってしまう。

各国の思惑と国益も違う。日米欧の利害の一致が可能ならば中共の主導権を奪えるが、利害調整が出来るか分からない。

英国は不動産バブルが崩壊している中共のカネを抜きにかかる(キャピタルフライトさせる)ことが最上の利益。独仏伊は未だ支那本土への投資を減らしていないため、バブル崩壊の実損を出さないような形でソフトランディングさせるのが最上の利益。日米は不動産バブル崩壊の余波を中国国内に押しとどめるのが最上の利益。

我が国としては万が一、AIIBのルールづくりに積極的に臨むならば調達先の品質規定を厳しくして日本製しか使えないようにすべきだろう。消極的であってもAIIBのルールづくりが紛糾して、実効あるインフラ投資が遅れに遅れることは望ましいし、その間にADBを強化するのも一手だろう。

2015年3月15日のエントリーの時点では、

昨今の中共による横紙破りの例を挙げると、香港ではオキュパイ・セントラル~雨傘革命の余波を受けて、一国二制度の根拠となる「香港問題に関する英中共同声明」が一方的に無効宣言された。また支那本土で外資が2014年10月までに得たキャピタルゲインを遡及法で課税する方針が明らかになっている。

習近平の腐敗撲滅を掲げた経済縮小路線とリコノミクスが相反している状況で、オフショア人民元を抜きにかかっていた英国の投資銀行がこぞって撤退し始めている。辛うじて香港などの華僑・華人系富豪がロンドン・シティーに拠点を移しているが、富豪たちが脱出したあとではバブル崩壊後の底値買いもしづらいだろう。

2015年8月11日のエントリーの時点では、

日英外相会談で両外相は「法の支配」や航行の自由といった原則を確認した。「法の支配」に言及した英国の枠組みつくりの柔軟さには定評がある。

英国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に出資表明した一方、米国以外では最も我が国との防衛協力が深化している。中共を上げて落とすロンドン・シティーと利害を一致させる可能性も充分ある。

労働党、ニューレイバーの退場とハードレフトの登場

労働党は、ブレア政権に代表されるニューレイバー路線を捨てて、新党首に強硬左派(Hard Left)のジェレミー・コービン氏を選出した。彼は筋金入りの反米主義者で、ハマス、ヒズボラ、ベネズエラの反米政権にシンパシーを持っているような人物だ。

中道左派の退潮著しい欧州では、ギリシアの急進左派連合(Syriza)など強硬左派の登場の機会が訪れている。労働党では、未だ中道左派の議員勢力は根強く、労働組合票を背景に選ばれたコービン新党首の党運営は困難を極める、と思われる。

The threat of Jeremy Corbyn’s radically anti-American agenda September 14 at 7:19 PM Washington Post

英労働党、影の財務相に強硬左派の元労組幹部を指名 2015年 09月 14日 16:24 JST ロイター

2015年5月9日のエントリーでは、

英国の総選挙は保守党と労働党どちらも過半数を獲得できないと見られていたが、選挙前の世論調査に反して、保守党が単独過半数を確保した。両党の得票率では保守党は37%、労働党31%で二大政党制は維持された。

移民政策の不満を訴え、注目された英国独立党はスコットランド以外では得票率を上げたものの小選挙区制のため1議席に留まった。それでもイングランド、ウェールズではいずれも英国独立党の得票率は上がっている点には注目したい。

二大政党では、まず保守党はEU離脱の国民投票によって確実に中道右派を取り込んだ。労働党は中道左派以外にも、自由民主党から離反したリベラル層を確保した。連立政権にあった自由民主党は支持を全般的に失い、壊滅的打撃を受けた。

脱工業化、脱労組化、消費者主義化の欧州経済のなか、中道左派が退潮している現状で労働党は踏みとどまったと言えるが、自由民主党の自滅の影響は次回選挙まで続くかは分からない。

独立に関する国民投票のあったスコットランドだけは別次元の結果となり、自由民主党と労働党の地盤をほぼすべてスコットランド国民党が奪い、スコットランド議席配分数59のうち56議席まで確保した。

と、概括した。

さらに2015年5月1日のエントリーで取り上げたように、

ロンドン・シティー周辺の不動産を半ば亡命してくるロシアや支那の富豪に売却して資産ごと移してもらう、といったような現在の経済モデルでは今のところ上層階級の間だけで利益が動くだけに終わり、違う階級間の上層・下層への流動性は高まらず、停滞感が社会全体に漂っていくことになるからだ。

すでに旧来の労働者階級はいなくなりつつあり、労働党も議会で過半数を獲れなくなっている。第1次大戦の戦間期に自由党から労働党へとバトンタッチされたような新しい二大政党の動きもまだ見られない。

スコットランドではスコットランド国民党が、またイングランドでは英国独立党が台頭している。このふたつの政党が象徴するように選挙戦の対立軸は、北欧型の福祉国家を志向するスコットランドと欧州大陸からの独立性を保とうとするイングランドの確執へと移行している。

この対立軸が正しいのならば、労働党はスコットランド国民党との差別化を図るため、連合王国の維持を掲げつつ、スコットランドの選挙区を取り戻そうとする。そのためにスコットランド独立派が望む北欧型の福祉国家への転換を強く打ち出す必要がある。

その点で、コービン新党首の掲げる鉄道や電力会社の再国有化、富裕層に対する増税、反緊縮(量的緩和継続と財政支出拡大)や反核(戦略原潜の廃止)、大学の授業料無料化などはスコットランド人やイングランドの下層階級に訴えるインパクトはあるだろう。

Labour’s Dead Center / Paul Krugman SEPT. 14, 2015 The New York Times

サッチャリズム全否定のコービン新党首の政策はいかにも極左らしい。ただし、欧州連合懐疑派・離脱派でないので強硬左派と呼ばれる。

ともかく労働党のニューレイバーが新自由主義者と同様に緊縮財政を支持したことで、我が国の民主党同様に自滅を招いたことが分かる。ポール・クルーグマンは「Labour’s Dead Center」というコラムで指摘している。

英・アイルランドが協議再開へ、北アイルランド自治政府の危機で 2015年 09月 14日 19:25 JST ロイター

英スコットランド民族党党首、新たな独立投票に意欲=地元紙 2015年 09月 14日 10:59 JST ロイター

英労働党党首にコービン氏 「経済格差と貧困我慢ならない」 反緊縮や反核訴える ノーネクタイのスタイル 2015.9.13 00:51 産経ニュース

【ロンドン=内藤泰朗】英国の最大野党、労働党は12日、新党首に強硬左派のジェレミー・コービン下院議員(66)を選出した。同氏は鉄道や電力会社の再国有化、富裕層に対する増税など急進的な政策を掲げており、1990年代以降、中道路線をとってきた同党は大きな転機を迎えた。英国における左派の急進化は、欧州の政治にも影響を与えるものとみられており、英政権に警戒感を呼び起こしている。

 コービン氏は党首選で59・5%を得票し、ほかの3候補に大差で勝利した後、「現在の経済格差と貧困は我慢できない。平等で自由な世界実現のために力を合わせて戦っていこう」と支持者らに呼びかけた。

 だが、キャメロン政権は「コービン氏の政策は、国家の安全保障にとって危険だ」(ファロン国防相)と憂慮の色を強めている。

 泡沫候補とみられていたコービン氏が一躍注目を浴びたのは、7月初めに最大労組ユナイトの支持を得たため。その後も数々の労組から支持を得て、一気に党内の勢力を拡大した。

 大学は出ておらず、無精ひげにノーネクタイの独自のスタイル。反緊縮や反核、大学の授業料無料化など、キャメロン首相率いる与党・保守党とは根本的に異なる政策を打ち出し、緊縮財政や経済格差の拡大に不満を抱える若者や労働者層らに支持を広げた。

 労働党は94年、ブレア党首が自由主義経済と社会的公正を調和させた「第3の道」を掲げて97年に政権を奪回。欧州における中道左派の流れを主導してきた。それだけに、一部の党幹部らは、最左派のコービン氏が党首になれば、次期総選挙で惨敗し、党の分裂も招きかねないとの危機感を募らせ、中道寄りの候補への投票を呼びかけていた。

 だが、反緊縮など大衆迎合的な強硬左派が財政難に苦しむギリシャやスペインなどに加え、英国でも勢力を伸ばしたことは、欧州の左派にも議論を巻き起こすものとみられている。

 党首選は、ミリバンド党首が今年5月の総選挙で敗れた責任をとって辞任したことに伴い行われた。

フレームワークで勝負する英国

日英外相会談で両外相は「法の支配」や航行の自由といった原則を確認した。「法の支配」に言及した英国の枠組みつくりの柔軟さには定評がある。

もちろん、英国の柔軟性は外交では二枚舌、三枚舌にも繋がる。

しかし、BS 5709から発展したISO 9000のような品質マネジメント・システムの先駆的役割、排出権取引のトレードセンターとしてのシティーの活動、変な兵器を開発することでも悪名を馳せるが同時に戦車や垂直離着陸機の実用化も行っている。

英国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に出資表明した一方、米国以外では最も我が国との防衛協力が深化している。中共を上げて落とすロンドン・シティーと利害を一致させる可能性も充分ある。

【日英の安全保障協力の進展】
2012年06月 防衛協力覚書締結
2013年07月 防衛装備品協力の協定締結・化学防護服の共同研究開始・情報保護協定署名
2013年10月 日英のNSC定期協議・NSC間のホットライン開設合意
2013年11月 英国海軍HMSデアリングの寄港
2014年01月 日英情報保護協定発効
2014年05月 日英首脳会談でACSA締結交渉開始
2014年07月 空対空ミサイル開発に向けた共同研究開始
2015年01月 日英2プラス2初開催

日英外相 東アジアの“法の支配”徹底で連携 8月8日 15時24分 NHK NewsWEB

岸田外務大臣は東京都内で、イギリスのハモンド外相と会談し、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル問題などを念頭に、東アジア地域での「法の支配」の徹底など、国際社会の課題に対し、両国が緊密に連携していく考えで一致しました。
岸田外務大臣は8日、東京都内で、日本を訪れているイギリスのハモンド外相と、昼食も交えながら、およそ2時間半にわたって会談しました。

会談の冒頭、岸田大臣は「さまざまな国際的な課題の解決において連携し、協力していきたい」と述べ、国会で審議されている安全保障関連法案を含め、安倍政権が掲げる積極的平和主義の取り組みを説明し、理解を求めました。

これに対し、ハモンド外相は「法案が成立することで、国際的な平和と安定を堅持するための緊密な協力ができると期待している」と述べ、支持する考えを示しました。

そのうえで、両外相は中国による海洋進出の活発化や、北朝鮮の核・ミサイル問題などを念頭に、東アジア地域での「法の支配」の徹底など、国際社会の課題に対し、緊密に連携していく考えで一致しました。

さらに両外相は、来年、東京で開催する予定の両国の外務・防衛の閣僚会合、いわゆる「2プラス2」で、防衛装備品の共同開発などで具体的な成果を挙げられるように協力していくことを確認しました。


中国経済成長率、実際は公式統計の半分以下か 英調査会社が試算 2015年 08月 7日 14:36 JST ロイター

参考URL:
第4回日英外相戦略対話 平成27年8月8日 外務省

ロンドンまであと何マイル?

カダフィ政権の崩壊後、ふたつの政権が併存して国家の統一すらままならないリビアは密航の起点にされている。不法移民はフランスが軍事介入を続けたサブサハラからやって来る。

現地のツアーガイドは港にある密航船まで手引をして、人身売買業者の一翼を担っている。「われわれは貧しい人々がチャンスのある場所にたどり着くのを手伝っている。これは新たな形のツーリズムだ」と嘯く。

地中海を横断して、イタリアやフランスなどのシェンゲン圏に上陸した不法移民は、ユーロ圏よりも景気の良い英国に不法上陸するために、英仏海峡トンネルのフランス側入り口に当たるカレーに、通称“ジャングル・キャンプ”を張り、街を徘徊し、ときたま線路沿いに歩きながら、列車に飛び乗っては何人かが落ちて死ぬものの、それでも入国しようとする。

英国はシェンゲン圏に属していないため、地元警察首脳は「グルカのライフル連隊を配備してでも阻止すべき」と発言している。

移民・難民の死亡事故、2カ月で9人 英仏海峡トンネル 2015年7月30日00時29分 朝日新聞

英仏海峡トンネルに移民2千人が侵入図る 負傷者も 2015.07.29 Wed posted at 18:55 JST CNN日本版

密航者支援ビジネスで潤うアフリカ辺境の町 2015年7月17日 16:33 JST WSJ日本版

【アガデス(ニジェール)】最も近い都市からでさえ320キロも離れた埃に覆われた辺境の地で、イドリス・ムハンマドさんは20代のころ、旅行者を車でサハラ砂漠に案内することで何とか生活の糧を得ていた。

しかし今では、もっともうかる人々を砂漠に運んでいる。欧州への移住を望む人々だ。

毎週月曜日、ムハンマドさんはセネガルやガンビア、ナイジェリアなどアフリカ諸国からたどり着いた30人ほどを白いトヨタのピックアップトラックにすし詰めにして、砂丘や岩だらけの大地を4日間ほどかけてリビアに向かう。そこで、乗客たちは地中海を渡るスピードボートに乗り込むのだ。

1000マイルに及ぶこの旅は儲かるが、同じくらい危険でもある。ムハンマドさんは銃撃を受けたこともあれば、強盗に遭ったことは何度もある。しかし、彼は5年間で寝室が5つもある家だけでなく、コンビニエンスストアまで購入できるほどの大金を稼いだ。今では新車を何台も購入し、この密航支援ビジネスを拡大している。

最近購入したトヨタのランドクルーザーを停めて、「リビアはもうかる」と話すムハンマドさん。シャツのポケットからは衛星電話がぶら下がっている。「われわれは貧しい人々がチャンスのある場所にたどり着くのを手伝っている。これは新たな形のツーリズムだ」

生活に苦しむツアーガイドから巨大な密航組織の運転手に転身したムハンマドさんの姿は、年間数百億ドル規模に達すると言われる密航支援ビジネスの繁栄を物語っている。

こうした密航者が落とすお金が、世界で最も辺境にある場所を変えつつある。その最たる例がアガデスだ。サハラ砂漠の交易拠点であるこの地は、かつて地中海沿岸の市場に向かう塩を運ぶ人々の中継地として栄えていた。

サハラ砂漠への玄関口に位置するこの土地が今また、にわかに景気づいている。今回は、第二次世界大戦以降で最多の移民大移動の重要拠点としてだ。

この辺りの地域政府の幹部であるアブドウラハマネ・モウサ氏によると、移住者の密航ルートを断ちたいと考えている欧州の政策当局者らが事務所にやってきて、密航の阻止を訴えかけるという。しかし、そうした説得は容易ではない。

モウサ氏は「移住者らがモノを購入し、地域の産物を消費し、経済を活気づかせている」とし、「この土地の人々は恩恵を受けている。どうやってそれを止めることができるだろうか」と話す。

今年は15万人以上の移住者たちが人口14万のアガデスを通過する見通しだという。その数は2011年にリビアで暴動が起きて以来、4倍に増加している。

この土地の当局者らによると、リビアに向かう人々がここで使うお金は、今年だけで1億ドル(約120億円)に達する見通しだ。働くためにリビアに向かう人々もいれば、リビアのカダフィ政権崩壊を利用して、地中海沿岸地域やその向こうの欧州に向かいたいと考える人々もいる。

その途中でこうした移住者たちが落として行くお金が、この辺境の砂漠の町を潤わせている。ニジェールでは大半の人々が1日2ドル未満で暮らしている。

10年ほど前は、地元住民はろうそくで灯りをともした泥レンガ造りの家々の間を物資やお金をラクダやロバの背中に乗せて運んでいた。

それが今では、リビアから入ってくるバイクやセダン、トヨタのピックアップトラックが町中にあふれている。泥レンガの家はセメントでできた新築住宅に取って代わられている。しかもこうした家には太陽光パネルや衛星放送受信アンテナが載っている。ラクダはあまり見当たらなくなった。

10年前にはATM(現金自動預払機)さえなかったこの町で、今では14の銀行や数百に及ぶ送金業者がサービスを提供している。送金業者の中には、アマドゥ・マソーイさんのように一人でやっているところもある。

「この事業に携わる人の多くが結婚し、子供を持ち、家を建て、家族を養うことができるようになった」とマソーイさん。05年に事業を始めたときには町には送金機関は5カ所しかなかった。「今では数百カ所ある」とし、「人々の移動を止めようとしても、受け入れられないだろう」と話す。

ただ、欧米の当局者らの見方はこれと異なっている。今年に入って数カ月のうちに地中海で前例のないような数の移民が死亡したことを受けて、欧州諸国がリビアからの密航者流入を阻止するために海上警備を強化した。密航業者を取り締まるための法律も準備中だ。

ニジェール政府は欧州連合(EU)の圧力を受けて、5月に移住者の密航阻止を目指す法律を制定した。運転手や移住者は身元証明書を所持するよう義務付けられた。

それでも、アガデスでの密航支援ビジネスは繁栄を続けている。この町には、北に向かう次の車を待って、草ぶき屋根の下でセメントのベッドに移民たちが寝泊りする宿泊施設が点在している。

こうした宿泊施設の一つには、リビアでの日雇い労働を探しに出かけるために車を待つ、31人の男性が4日目の夜を過ごしていた。ある出稼ぎ労働者は「今回が5回目」と話し、もう一人は「自分は6回目だ」と話した。

アガデスを過ぎると、砂漠は荒涼としている。彼らの仮の滞在地が中継拠点として発展し、モスク(イスラム礼拝所)やガソリンスタンド、レストラン、自動車部品の補給所、小さな食料品店などがそろっている。

ここから砂漠を横断するのは危険も多い。ジュネーブに本部を置くインスティテュート・オブ・マイグレーションによると、今年地中海を渡ろうとして死亡した2000人超と同じくらい多くの人々がサハラ砂漠を横断している間に死亡した可能性もある。

ニジェールに本部を置く開発機関は、アガデスの好況があっという間に犯罪や暴力の温床に変わりかねないと警告する。

インスティテュート・オブ・マイグレーションのニジェール支部の責任者ギウセップ・ロプリート氏は「移住者が通過する町は、あるパターンをたどることが多い。つまり最初は新興都市のような様相を呈し、多くの人がもうけを得るが、犯罪も増えがちだ。犯罪行為や強制労働、強奪なども同時にみられる」と指摘する。

リビアがカダフィ大佐の「私有物」だったときには、パトカーが移住者を運ぶ運転手を定期的に捕まえていた。リビアの警察を恐れて、ムハンマドさんは一度に5人しか運ばず、彼らをトラックの荷台に横たわらせていた。

しかしカダフィ大佐が殺害されると、トラックの乗客たちが座っていても安全だとムハンマドさんは判断した。回を重ねるごとに、ますます多くの移住者たちをピックアップトラックに乗せた。13年までには彼をはじめとする運転手の多くは大勢の人々を運んでいたため、北に向かう旅の手数料を300ドルまで引き下げることができた。

この価格だと、今では毎週、数千人のアフリカ人がこの地に集まってくる。

ニジェール政府は移住者の密航を阻止するのではなく、それを保護し、それから利益を得ようとしてきた。政府は移住者たちを泥棒や砂漠でののどの渇きから保護する支援のために軍隊のエスコートをつけることに対して密航業者たちに支払いを要求している。しかし、あまり乗り気ではなく、この旅は軍にとっても危険になりすぎていると政府は明らかにした。

ロンドン・シティーに復讐するケルト文化

保守党の勝利に終わった英国の総選挙だが、中道左派の敗北と中道右派の勝利の背後で進んでいる政治的な地殻変動にも目を向けて見るべきだろう。

スコットランドではリベラルと民族主義を兼ね備えたスコットランド国民党が勝利し、イングランド、ウェールズでは英国独立党が10%程度の得票を得た。ここには従来のリベラルの退潮と同時に旧来の地域文化を基盤とする保守の台頭がある。

新しい対立軸はロンドンのシティーを中心とした大英帝国としての保守的勢力とローマの支配やノルマン・コンクエスト以前から続くコーンウォール地方やウェールズなどが保っているケルト文化を背景とした保守的勢力の相克と考えられる。

英首相「住民投票再実施ない」、スコットランド民族党党首と会談 2015年 05月 16日 00:00 JST ロイター

英総選挙「接戦」?世論調査が大外れの理由は… 2015年05月15日 08時42分 読売新聞

Does Northern England really want to join Scotland? MAY 14, 2015 The Christian Science Monitor

I do not want to be English – and any attempt to create an English identity will fail Sunday 10 May 2015 20.00 BST The Guardian

2014年4月5日のエントリーでも触れたように、

シティーを中心としたグレーター・ロンドン周辺の商業用不動産と富豪用の邸宅を富裕な外国人実業家に購入してもらい、実業家のいくらかが拠点を置き、オフショア人民元債券(点心債)やイスラム債券(スクーク)の取引が活発化すればシティーも潤い、金融部門の雇用も増え、不動産開発のためのインフラ建設も同時に盛んになり、英国経済のダイナミズムが動き出す、というのがジョンブルの描いた勝利の方程式だ。

このダイナミズムがロンドン以外のイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに波及しない。もしくは波及するにしてもタイムラグが生じると、大英帝国的な保守勢力とケルト的な保守勢力の戦いが深刻化する。利害対立が起きる前に、もしくはそれが発生しても利害収拾できるかが連合王国の存続か解体かを決定するだろう。

大英帝国を突き詰めると、ロンドン・シティーとポンド(イングランド銀行)に集約される。初めに勅許状があり、次第に金融拠点が信用を担保するようになり、世界中で交易を行うことで帝国が形成されたのであり、そこにケルト的文化特性がどう作用したのかは筆者には未だ分からない。

フランス革命以前に国民国家として成立した英国は階級と異なる法体系を持つ地域の民族と文化によって多層的に構成されており、国語として国民を統合する英語の力すら弱い。階級・階層が違うとコックニー訛りのようにまるで言語が異なって聞こえる。かつての産業革命において工業を担ったマンチェスターや石炭などを供給したスコットランドなどとシティーの結びつきがなくなっていることが地域的分裂を加速させる要因となっている。

大英帝国はインド皇帝の冠を失ったとき名目上滅び、スエズ紛争の敗北によって実質上滅んだ。形骸としての大英帝国と実体としてのケルトをどう結合するかが今後の英国の課題となる。

来たる英国のスウェーデン化

英国の総選挙は保守党と労働党どちらも過半数を獲得できないと見られていたが、選挙前の世論調査に反して、保守党が単独過半数を確保した。両党の得票率では保守党は37%、労働党31%で二大政党制は維持された。

移民政策の不満を訴え、注目された英国独立党はスコットランド以外では得票率を上げたものの小選挙区制のため1議席に留まった。それでもイングランド、ウェールズではいずれも英国独立党の得票率は上がっている点には注目したい。

二大政党では、まず保守党はEU離脱の国民投票によって確実に中道右派を取り込んだ。労働党は中道左派以外にも、自由民主党から離反したリベラル層を確保した。連立政権にあった自由民主党は支持を全般的に失い、壊滅的打撃を受けた。

脱工業化、脱労組化、消費者主義化の欧州経済のなか、中道左派が退潮している現状で労働党は踏みとどまったと言えるが、自由民主党の自滅の影響は次回選挙まで続くかは分からない。

独立に関する国民投票のあったスコットランドだけは別次元の結果となり、自由民主党と労働党の地盤をほぼすべてスコットランド国民党が奪い、スコットランド議席配分数59のうち56議席まで確保した。

2015年5月1日のエントリーでも述べたように、

選挙戦の対立軸は、北欧型の福祉国家を志向するスコットランドと欧州大陸からの独立性を保とうとするイングランドの確執へと移行している。英国の内政の最優先課題は連合王国の分裂を防ぐという最低限の線であって、世界秩序への貢献と構築どころではない。

この課題を克服できないとスコットランド抜きの英国(イングランドとウェールズ、北アイルランドの連合王国)は将来、スウェーデンのような重武装中立主義の国家となり、スコットランドはスウェーデンから分離独立していったノルウェーやフィンランドのような高福祉国家になるだろう。

英国2015年総選挙結果(総数:650、過半数:326)
保守党(Conservative) 331
労働党(Labour) 232
スコットランド国民党(Scottish National Party) 56
自由民主党(Liberal Democrat) 8
民主統一党(Democratic Unionist Party) 8
シン・フェイン党(Sinn Fein) 4
プライド・カムリ(Plaid Cymru) 3
社会民主労働党(Social Democratic & Labour Party) 3
アルスター・ユニオスト党(Ulster Unionist Party) 2
英国独立党(United Kingdom Independence Party) 1
緑の党(Green) 1
諸派(Other) 1

キャメロン英首相が組閣、オズボーン財務相ら主要閣僚再任 2015年 05月 9日 03:40 JST ロイター

英国のEU改革案を精査、市民の移動など交渉不可=欧州委員長 2015年 05月 9日 01:37 JST ロイター

英総選挙、保守党が実質過半数獲得 スコットランド民族党も躍進 2015年 05月 8日 20:06 JST ロイター

[ロンドン 8日 ロイター] - 英国で7日に行われた下院総選挙(定数650)では、キャメロン首相率いる与党保守党が予想外に票を伸ばし、実質的に単独過半数を獲得した。一方でスコットランド民族党(SNP)も大幅に躍進した。

640議席が確定した時点で、保守党の獲得議席は325議席、労働党は228議席。最大野党の労働党は、影の財務相だったボウルズ氏が落選するなど議席を伸ばすことができず、ミリバンド党首は辞任を表明した。

キャメロン保守党党首は、8日にエリザベス女王と会い、組閣に着手する。

保守党が単独過半数を獲得したことで、2010年以来連立を組んでいた自由民主党と組む必要がなくなる。自民党も大幅に議席を減らし、クレッグ党首は党首辞任を表明した。

かつて労働党の牙城だったスコットランドでは、SNPが59議席中すでに56議席を獲得、スコットランド独立をめぐる住民投票を求める機運が再び高まる可能性がある。

保守党の勝利により、欧州連合(EU)加盟継続の是非を問う国民投票が2年以内に実施される可能性が高まった。

オズボーン英財務相はBBCラジオのインタビューで「われわれは今回の総選挙におけるスコットランドの結果を尊重し、スコットランドの人々が力強い英国の一部であると感じられるために何ができるのか考える必要がある」と述べた。

反EUを掲げる英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は落選し、辞任を表明した。UKIPは2014年5月の欧州議会選挙で英国の第1党となったが、この1年間に人気は低下。今回獲得したのはわずか1議席だった。


コラム:英国の「分裂マグマ」、総選挙で増大=田中理氏 2015年 05月 8日 21:28 JST ロイター

田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

[東京 8日] - 近年まれに見る大接戦が予想された7日の英国下院総選挙(定数650議席)は、政権与党の保守党が事前予想を大きく上回る325議席超を獲得して大勝した。

投票に参加しない議長と北アイルランドのシン・フェイン党の4議員を除けば323議席が実質過半数となる。保守党は現政権で連立を組む自由民主党や北アイルランドの地域政党である民主統一党(DUP)の協力を得ずに、単独で政権を発足する可能性が高まった。

政権奪還を狙った野党・労働党は、大票田としてきたスコットランド選出議席を根こそぎスコットランド民族党(SNP)に奪われたほか、接戦の選挙区を落とし、230議席程度と伸び悩んだ。移民増加への不満票を取り込み、昨秋の補欠選挙で議席を獲得した英国独立党(UKIP)は、選挙戦終盤での失速が響き、大政党に有利な選挙制度にも阻まれ、数議席を獲得するにとどまった。自由民主党は保守党との連立入りで政策面での独自色を発揮できず、改選前の57議席から8議席程度に大幅に議席を失った。

他方、昨秋のスコットランドの英国からの独立投票後に一段と支持を伸ばし、今回の選挙戦で台風の目となったのがSNPだ。スコットランド選出59議席のうち56議席程度を獲得し、改選前から大幅に議席を上積みした。

下馬評では、保守党が第1党の座を死守するものの、政権発足に必要な議席を確保できず、第2党の労働党がSNPなどの協力を得て政権発足にこぎ着けるとの見方が多かった。また、保守党・労働党のどちらが勝利した場合も、安定過半数の確保が難しく、連立協議の難航が予想され、政権発足までに時間がかかることや、近い将来に再選挙が必要になる恐れがあることも指摘されていた。

予想外の選挙結果をもたらした背景には、労働党とSNPによる連立政権誕生への英国民の不安があったのだろう。保守党が単独政権を発足する可能性が高まったことを受け、金融市場では安心感が広がっている。1)選挙後の政権運営が不安定化することへの警戒姿勢が和らいだこと、2)保守党は労働党に比べてビジネス・フレンドリーな政策を志向する傾向があることに鑑みれば、株高・債券高・ポンド高の初期反応もうなずけよう。

ただ、保守党党首のキャメロン首相は2013年1月の演説で、次期総選挙で保守党が勝利した場合、欧州連合(EU)との関係見直し協議を行ったうえで、2017年末までに英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票を実施することを約束している。恐らく金融市場では、離脱投票が予定される2017年までは相当な時間があり、相場に織り込むには不確定要素が大きすぎると受け止められたのだろう。

だが、投票に反対する自由民主党と連立を組む可能性が遠のいたことで、投票実施はほぼ確定的となった。保守党内の強硬な離脱論者が近年勢いを増しており、投票が2016年に前倒しされる可能性も出てきた。

また、保守党による単独政権となれば、自由民主党との連立政権に比べて、財政健全化を重視する傾向が高まる。緊縮的な財政運営により、イングランド銀行(英中央銀行)は利上げを急ぐ必要がなくなり、利上げ時期が後ズレする可能性も出てきた。ポンド高の初期反応は今後修正される展開も想定されよう。

<EU離脱投票とスコットランド独立のリスク>

もちろん、国民投票が実施されても、英国のEU離脱はさすがにないだろうとの漠然とした安心感が漂っており、今のところ金融市場参加者の間で、この問題に対する危機意識は高まっていない。世論調査によれば、キャメロン首相が投票実施を打ち出した2013年頃は離脱派が残留派を一貫して上回っていたが、その後は両者が拮抗(きっこう)し、最近では残留派が優勢との調査結果が増えている。

ただ、昨年9月のスコットランドの英国からの独立投票では、投票日が近づくにつれて独立賛成派が勢いを増し、金融市場に動揺が広がったことは記憶に新しい。また、ギリシャ不安が再燃するたびに、同国のユーロ離脱懸念が蒸し返されている。いざ投票が近づけば、英国やEUの将来をめぐる不透明感が増し、金融市場は身構えざるを得ない。

EU諸国の間では近年、英国の「いいとこどり」への不満も広がっており、EUとの関係見直し協議が英国の望み通りに進まない可能性もある。その場合、英国民の間でEUへの不満が一段と広がり、離脱派が再び勢いを増すリスクも無視できない。

SNPの勢力拡大による波紋にも注意が必要となる。保守党政権が誕生する可能性が高まったことで、SNPが労働党政権への協力と引き換えに、スコットランドへのさらなる権限移譲や独立投票の再実施を求める可能性は遠のいた。だが、SNPは他の地域政党とも連携強化を模索しており、今後、国政での影響力を増すことは確実だ。

保守党政権がEU離脱投票を推し進める際には、親EU色の強いスコットランドは英国から独立したうえで、EUに加盟することを目指す可能性が高い。結局、SNPの躍進によりスコットランドへのさらなる権限移譲や、それに付随した地方分権議論が沸き起こることが予想される。

英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの自治州政府によって構成されている。1990年代に北アイルランド議会、ウェールズ議会、そして約300年ぶりにスコットランド議会が復活し、地域主権に関わる立法権限が英国議会から移管されたのに対し、イングランド議会は今も存在していない。そのため、英国議会でイングランド固有の政策を審議する際に、スコットランド選出議員の投票権を制限すべきとの声が再燃することも予想される。

また、スコットランドは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドと比べて手厚い財政移転を受けている。権限移譲と引き換えに、こうした傾斜配分の見直しを求める声も今後さらに強まるかもしれない。

総選挙の結果を受け、現政権の継続が決まったことで金融市場ではひとまず安心感が広がっているが、英国ではEUからの離脱を求める遠心力と「内なる分裂」のマグマが静かに、だが着実に蓄積している。

世界秩序の構築から遠ざかる英国

保守党と労働党のいずれもが下院(庶民院)の過半数を獲れない、と予想されている英国の総選挙。その選挙戦において、世界秩序への貢献を謳った外交政策にまったく焦点が当てられていない事実に対して、大英帝国の衰退を見て取る識者が多い。これについて、英国と米国のアングロサクソン同盟の将来に暗雲が立ち込めているのではないか、という論評がニューヨーク・タイムズの記事に載っている。

Britain’s Drift From the Global Stage Becomes an Election Issue APRIL 27, 2015 NY times

サッチャリズム以降の富と階級の流動性に一段落が着いて、英国社会が今までの活力を失いつつあることは事実だろう。

ロンドン・シティー周辺の不動産を半ば亡命してくるロシアや支那の富豪に売却して資産ごと移してもらう、といったような現在の経済モデルでは今のところ上層階級の間だけで利益が動くだけに終わり、違う階級間の上層・下層への流動性は高まらず、停滞感が社会全体に漂っていくことになるからだ。

すでに旧来の労働者階級はいなくなりつつあり、労働党も議会で過半数を獲れなくなっている。第1次大戦の戦間期に自由党から労働党へとバトンタッチされたような新しい二大政党の動きもまだ見られない。

スコットランドではスコットランド国民党が、またイングランドでは英国独立党が台頭している。このふたつの政党が象徴するように選挙戦の対立軸は、北欧型の福祉国家を志向するスコットランドと欧州大陸からの独立性を保とうとするイングランドの確執へと移行している。英国の内政の最優先課題は連合王国の分裂を防ぐという最低限の線であって、世界秩序への貢献と構築どころではない。

英総選挙、スコットランド独立派のSNP党首に注目集まる 2015年 05月 1日 20:24 JST ロイター

また英国の現在の経済モデルは、米国の指向する脱金融経済モデルと齟齬を来しつつあるし、同盟関係に害をもたらしている。

たとえば人民元のハードカレンシー化に協力して、上海と香港から富を吸い上げようとすれば、中共の東シナ海~南シナ海~インド洋での米国の覇権に対する挑戦を助力することになる。キプロス経由などで富を吸い上げようとするロシアと英国の関係もまた同様で、ウクライナ危機に対して米国や独仏ほどは積極的な介入姿勢は見られない。

UK Election Notes: Foreign Policy Opportunities – Security Cooperation with Japan 23 April 2015 Chatham House

シンクタンクのチャタムハウスは、過去3年間の安倍政権の動きと連動して日英の防衛協力を進めるべきだと提言しているが、連合王国の分裂を防ぐのに一定の成果が挙げられるまで目立った動きはできないと思われる。

連合王国の分裂か再統合か

来たる英国の庶民院総選挙は二大政党の保守党(Conservative)と労働党(Labour)どちらも過半数を獲得できない、と予想されている。背景には連合王国を構成する4つのカントリー(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)ごとに民族主義的な地域政党が台頭していることと、サッチャリズム以降の富の再分配とともに階級が再構成されて既存の二大政党の支持基盤が失われていることが挙げられる。

保守党は2010年の庶民院総選挙の時点で既にスコットランドでは支持を伸ばすことが出来ておらず、スコットランドの小選挙区ひとつを獲得するに留まっている。さらに今回の総選挙では、労働党は地域政党の煽りを受けてスコットランドでの支持を拡げられていない。全体としてスコットランド人は北欧的な福祉国家を志向しており、都市部に住む旧来の労働者階級が減るなかで新興の中間層は自由民主党(Liberal Democrat)を支持、加えて独立を求める人々はスコットランド国民党(Scottish National Party)を支持するようになっている。

一方、イングランドではEU懐疑派の支持を受けた保守党が強い。保守党がEU離脱の賛否を問う国民選挙を実施しようとしているのはイングランド人の意向を反映している、と云える。イングランド人は欧州から距離を置いた伝統的な勢力均衡を図り、連合王国の維持を願っている。このスコットランドとイングランドの思惑の違いを利害調整して妥協することが今後の英国政治の課題になる。

この課題を克服できないと、バルト帝国を築きながらもロシアとの長い抗争に敗れフィンランドを失い、ウィーン体制下で同君連合となったノルウェーを20世紀になって失ったスウェーデンのような重武装中立主義の国家を長期的に目指さざるを得なくなる。

ちなみに2010年庶民院総選挙(総数:650、過半数:326)のイングランド議席(配分数:533)の内訳は、保守党が298、労働党が191、自由民主党が43、緑の党(Green)が1、となっている。

スコットランド議席(配分数:59)の内訳は、労働党が41、自由民主党が11、スコットランド国民党が6、保守党が1、となっている。

連合王国以前に併合されたウェールズ議席(配分数:40)の内訳は、労働党が26、保守党が8、自由民主党が3、ウェールズの地域政党のプライド・カムリ(Plaid Cymru)が3となっている。

紛争に悩まされてきた北アイルランド議席(配分数:18)の内訳は、統一を支持するユニオストの民主統一党(Democratic Unionist Party)が8、アイルランド併合を支持するシン・フェイン党(Sinn Fein)が5、カソリック系の社会民主労働党(Social Democratic & Labour Party)が3、ユニオストとナショナリストから距離を置く北アイルランド同盟党(Alliance Party)が1、諸派が1、となっている。

Election 2010 National Results after 650 of 650 :BBC

英スコットランド世論調査、民族党が労働党に対するリード拡大 2015年 04月 13日 20:33 JST ロイター

[ロンドン 13日 ロイター] - 調査会社TNSが13日公表した英スコットランドにおける世論調査の結果によると、英国からの独立を目指すスコットランド民族党(SNP)の労働党に対するリードが28ポイントと拡大した。

SNPの支持率は52%となり、前月から6ポイント上昇。一方、労働党は6ポイント低下の24%となった。

5月7日の英国総選挙までは1カ月を切っている。


英保守党、労働党を僅差でリード=コムレス世論調査 2015年 04月 10日 17:32 JST ロイター

[ロンドン 9日 ロイター] - 英調査会社のコムレスによれば、同社の実施した世論調査でキャメロン首相率いる与党・保守党が野党・労働党をわずかに1ポイントリードした。5月7日の英国総選挙までは1カ月を切っている。

民間放送ITVニュース(ITV.L: 株価, 企業情報, レポート)と英紙デイリー・メールから委託された同世論調査によれば、保守党の支持率は前回より2ポイント下落の34%、ミリバンド党首率いる労働党は1ポイント上昇の33%となった。

連立を組む自由民主党の支持率は3ポイント上昇の12%と、前回から横ばいのEU離脱を訴える英国独立党(UKIP)に並んだ。イングランド・ウェールズ緑の党は1ポイント下落し4%だった。


焦点:「内向き」の英総選挙、国際社会での存在感低下を反映 2015年 04月 8日 16:05 JST ロイター

[ロンドン 7日 ロイター] - 激戦が予想される5月の英総選挙では、英国と欧州連合(EU)との関係や国内問題が争点となっている。一方、国際舞台で英国がどのような役割を担うべきかという点はほとんど議論されておらず、国際社会での英国の存在感低下を映し出している。

7党の党首が参加して2日に行われたテレビ討論会では、英国の財政赤字や移民問題、拡大する公共医療サービスなど、主に国内問題に議論が集中した。

英国統治時代における最後の香港総督として知られるクリストファー・パッテン氏は、非営利組織(NPO)プロジェクト・シンジケートに寄せたコメントで「世界のいたるところで混乱が起きている時に、英国がどのような国際的な役割を果たすべきかという議論がほとんどない」と指摘する。

外交政策について唯一議論が交わされたのは、移民の受け入れに制限を設けるべきかや、EUから離脱すれば状況は良くなるのか、といった点だった。

キャメロン首相は、再選を果たした場合、イギリスとEUとの関係についてEUと再交渉したうえで、離脱の賛否を国民投票で問う方針を示している。一方、労働党のミリバンド党首は、EU離脱に反対しており、基本的に国民投票は行わない方針。つまり、総選挙の結果次第で、EU離脱の賛否を問う国民投票が行われるかどうかが決まる。こうした国民投票は1975年以降行われていない。

<薄れる存在感>

英国は依然、国際社会で大きな影響力を持つ。英国の国防費はEU内で最大。国連の安全保障理事会の常任理事国であり、経済規模は世界で6番目に大きい。

2011年には、カダフィ政権を倒すためのリビア空爆に参加。昨年までアフガニスタンで軍を展開していた。西アフリカで感染が拡大したエボラ出血熱の対策で英国の拠出金は世界最大規模だ。

ただ、その影響力は明らかに低下している。

米国主導の過激派組織「イスラム国」との戦いは、フランスが参加して初めて英国も加わった。ウクライナ問題では、フランスやドイツが積極的にロシアのプーチン大統領と交渉にあたる一方で、キャメロン首相の存在感は薄い。

こうした背景には、2008年の金融危機以降の財政問題があるとみられる。キャメロン首相は財政赤字を削減するために緊縮財政を行った。その結果、2010年から予算は実質ベースで約6分の1削減された。使える予算の多くは外交分野には回されず、通商促進に充てられた。

英国はこれまで、北大西洋条約機構(NATO)中で、国内総生産(GDP)の2%を国防費にあてている数少ない国であることを誇っていた。ただ、総選挙を前に、キャメロン首相も労働党も、こうした状況が今後も続くとは公約していない。

オバマ大統領をはじめ米国の政治家や軍幹部の多くは、英国がEUに留まり、防衛費を増やすことを望んでいる。

他の欧州諸国は、キャメロン首相が、ギリシャの債務やフランスの景気低迷といった問題に目を向けず、国内の利点に関連させEUについて議論することで政治的な得点を稼ごうとしていることに、うんざりしている。

あるEU外交筋は「英国の外交政策に何が起こったのだろう」と強い懸念を示した。

(Andrew Osborn記者、 翻訳:伊藤恭子 編集:加藤京子)

“ヴィクトリア均衡”と階級の固定化

英国のキャメロン首相は議会を解散、5月7日に総選挙が行われる。

前回の2010年総選挙と同様に、二大政党の保守党と労働党いずれも過半数に達しないと予想されており、保守党と連立を組む自由民主党は議席をどれだけ維持できるか。また欧州懐疑派としてEUからの離脱を訴える英国独立党(UKIP)とスコットランド独立を唱えるスコットランド国民党(SNP)はどれだけ躍進できるかも注目される。

サッチャリズムによって始まった富と階級の流動性が新しい階級の発生にまで落着した結果、保守党と労働党の二大政党制を揺るがすところまで至ったのだと考えることもできる。

すでに旧来の労働者階級は高年齢層に偏って失くなりつつあり、この意味で労働者階級の英雄(ワーキング・クラス・ヒーロー)は社会的に誕生しにくくなっている。保守党や労働党の変質は階級社会の変化に基づいているのだ。

英国社会にとっては、労働者階級の英雄を増やすよりも中間層に厚みを増すことが望ましい以上、階級の再固定化を促すのではなく富の流動性を保つことが求められる。

量的緩和以降の緩やかなインフレ傾向を覆して、再度デフレに陥るようなことがあれば、ヴィクトリア朝の昔に“ヴィクトリア均衡”と呼ばれたデフレ期、労働者と植民地の人間がコストを負担した時代への先祖返りへとつながりかねない。

この“ヴィクトリア均衡”と階級の固定化を踏まえると、なぜ探偵シャーロック・ホームズの依頼者や犯人に相続財産や株式の配当や債券の金利で生活する人々が多いのかを歴史と経済の面から良く理解できる。

キャメロン英首相、テレビ討論で野党労働党党首と互角=世論調査 2015年 04月 3日 13:32 JST ロイター

英企業100社超の幹部がキャメロン政権支持、新聞に公開書簡 2015年 04月 1日 18:29 JST ロイター

英議会解散、5月総選挙へ火ぶた 数十年来の接戦に 2015年 03月 31日 06:27 JST ロイター

英階級システムに細分化の現象、15%が最下層に=調査 2013年 04月 4日 11:21 JST ロイター

[ロンドン 3日 ロイター] 英BBCなどが行った英国民の階級意識に関する調査で、同システムが従来より細分化されていることが分かった。研究者らは7つの新しいカテゴリーに分類できると指摘している。

同調査はBBCが16万1400人、調査会社GfKが1026人から得た回答を基に、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)、マンチェスター大学などの研究者が分析し、新たなクラス分けを行った。

回答者の収入、資産、社会的関係などを分析した結果、従来の上流・中流・労働者階級に属するのは英国民の一部だけであり、新たに「エリート」(6%)、「定着した中流階級」(25%)、「技術系中流階級」(6%)「新興富裕労働者」(15%)、「伝統的労働者階級」(14%)、「緊急サービス労働者」(19%)、「プレカリアート(不安定なプロレタリアート)」(15%)の7つに分類できるとした。

「定着した中流階級」が25%と最も多く、その多くは小都市や地方に居住していることが分かった。また、最下層となる「プレカリアート」も15%とかなりの規模になることが判明した。

研究者らはトラック運転手や掃除人などが含まれる「伝統的労働者階級」に属する人の平均年齢が65歳と最も高かったことにも注目。「この点において、伝統的労働者階級の現代的意義は薄れつつある」と指摘した。


参考URL:
19世紀のデフレーションはなぜ始まり、なぜ終ったのか September 2003 内閣府・経済社会総合研究所(PDFファイル)

アジアインフラ投資銀行を賭けたゲーム

中国共産党が設立を図るアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関する局面がやや変化してきた。G7であるカナダがAIIBへの参加を検討し始めた。

G7のなかでは初めに英国が参加を表明して、続いて独仏伊が参加を表明しており、この時点で参加表明した独仏伊の欧州大陸3カ国の陣営と英国と豪州のアングロサクソン陣営では、G7ではない豪州は格落ちとなってしまう。英国にとっては、AIIBのルールづくりでの不利を挽回するには、カナダを入れることでバランスを取る必要が出てきた。

当事国が増加して、利害関係が複雑になればなるほどに中共の外交手腕では解決できなくなる、と思われる。

我が国としてはアジア開発銀行(ADB)もあり、即座にAIIBに加わるには国内外の利害調整も要る。例えば、米国に誘われる形でならば、AIIBのルールづくりに参画することも容易だろうが、オバマ政権の力量では難しいかもしれない。

各国の思惑と国益も違う。日米欧の利害の一致が可能ならば中共の主導権を奪えるが、利害調整が出来るか分からない。

英国は不動産バブルが崩壊している中共のカネを抜きにかかる(キャピタルフライトさせる)ことが最上の利益。独仏伊は未だ支那本土への投資を減らしていないため、バブル崩壊の実損を出さないような形でソフトランディングさせるのが最上の利益。日米は不動産バブル崩壊の余波を中国国内に押しとどめるのが最上の利益。

我が国としては万が一、AIIBのルールづくりに積極的に臨むならば調達先の品質規定を厳しくして日本製しか使えないようにすべきだろう。消極的であってもAIIBのルールづくりが紛糾して、実効あるインフラ投資が遅れに遅れることは望ましいし、その間にADBを強化するのも一手だろう。

カナダがアジアインフラ投資銀への参加検討-日米は懸念強める 2015/03/24 07:57 JST ブルームバーグ

(ブルームバーグ):カナダが中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を検討している。最終決定すれば、主要7カ国(G7)で態度を保留しているのは日本と米国だけになる。

中国はAIIBの創設メンバーになるには3月31日までの文書署名が必要だと各国に伝えている。今月に入って英国とフランス、ドイツ、イタリアが参加の意向を表明。AIIBの統治や環境保護姿勢に疑問を投げ掛ける日米当局者は懸念を強めている。

カナダ財務省報道官は電子メールを通じた声明で、「カナダは現在この構想を検討している」と説明。中国当局はAIIBについて大まかに概要を示したのみで、「同行の目的や統治機構、運営方法に関する既存メンバー間の議論は継続中」で、こうした作業には「数カ月かかる見通しだ」との見解を示した。

原題:Canada Weighs Joining China-Led Bank Amid U.S., Japan Concerns(抜粋)

アジア開発銀行VSアジアインフラ投資銀行

中国共産党・習政権の発案と主導によって、今年度中に発足予定とされるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加することを表明した。英国はAIIBに出資し、自国の影響力を高めて、国益を確保する目論見であろう。アジア開発銀行(ADB)に対して、自国の影響力を行使できない英国の立場と現状を考えれば、国益を追求するのは頷ける。

大蔵省の意向が反映されたアジア開発銀行(ADB)は、総裁は大蔵省~財務省出身者で固められ、出資比率は日米両国が同率でまとまったものの、本部はどこにするかで揉めて、当時のマルコス大統領の仲介によってフィリピンのマニラに置かれた経緯がある。

とは云え、AIIBに対して苦心惨憺ルールをつくってガバナンスに気を配っても、中共が最大株主にとどまる限り、すべてひっくり返されることは大いにあり得る。

昨今の中共による横紙破りの例を挙げると、香港ではオキュパイ・セントラル~雨傘革命の余波を受けて、一国二制度の根拠となる「香港問題に関する英中共同声明」が一方的に無効宣言された。また支那本土で外資が2014年10月までに得たキャピタルゲインを遡及法で課税する方針が明らかになっている。

習近平の腐敗撲滅を掲げた経済縮小路線とリコノミクスが相反している状況で、オフショア人民元を抜きにかかっていた英国の投資銀行がこぞって撤退し始めている。辛うじて香港などの華僑・華人系富豪がロンドン・シティーに拠点を移しているが、富豪たちが脱出したあとではバブル崩壊後の底値買いもしづらいだろう。

AIIBへの対抗策としては、ひとつに日米主導のADBは出資金を増額する。ひとつに我が国はロシア制裁を付き合い程度に留めるか、もしくはロシアとの迂回貿易国としてモンゴルや旧ソ連圏の中央アジア諸国などを活用すべきだろう。欧州ではフェロー諸島がロシア向け迂回貿易地になっているからだ。

韓国、人民元とウォンの先物取引を開始へ=関係筋 2015年 03月 13日 13:06 JST ロイター

中国主導のアジアインフラ投資銀、英国がG7で初めて参加表明 2015年 03月 13日 14:54 JST ロイター

[ロンドン 12日 ロイター] - 英国が、中国の主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーへの参加を検討していることが分かった。オズボーン財務相が12日明らかにした。主要7カ国(G7)の中で初めての参加表明となる。

オズボーン財務相は声明で「AIIBに創設時から加わることで、わが国およびアジア地域の投資と成長のため、無類の機会を創出することができるだろう」と述べた。同国は今月、ガバナンスなどの指針について他の創設メンバーと合意する予定だという。

AIIBについては、中国が昨年10月、設立に関して支持国と覚書を交わす式典を北京で行った。アジア諸国のインフラ建設などの投資支援を目的とし、年内の発足を予定している。

ただアナリストの間では、目的が世界銀行およびアジア開発銀行(ADB)と重複しているとの見方があるほか、米国ではガバナンス基準に対する懸念も出ている。

米国家安全保障会議(NSC)のスポークスマンは、AIIBに十分なガバナンス基準や環境・社会基準があるか懸念していると発言。「英国の主権に基づく決定だ」としながらも「英国が発言力を利用して、高い基準の採用を進めることを期待する」と述べた。

中国財政省は英国の決定を歓迎すると表明。「すべてが順調に行けば、英国は3月末までにAIIBの創設メンバーになる」との声明を発表した。

AIIB設立に向けた覚書に署名したのは21カ国。インドネシアは後から参加表明したが、日本やオーストラリア、韓国などは立場をまだ示していない。

韓国企画財政省の次官は12日、記者団に対し、中国などと参加の可能性を引き続き協議していると明らかにした。同省の関係者は、統治体制や運用上の透明性をめぐる懸念への対応策が示されていないため、決定を見送っていると述べた。

関係筋の1人は、中国の出資比率が50%と伝えられており、それが本当なら韓国の意向があまり反映されなくなるとの懸念を示した。

*内容を追加します。

英国の静かなる本邦への帰還

日英の防衛協力強化の一環として、海上自衛隊の自衛艦隊司令部に英国海軍将校が連絡官として派遣されることとなった。2015年1月25日のエントリーの続報となる。

【日英の安全保障協力の進展】
2012年06月 防衛協力覚書締結
2013年07月 防衛装備品協力の協定締結・化学防護服の共同研究開始・情報保護協定署名
2013年10月 日英のNSC定期協議・NSC間のホットライン開設合意
2013年11月 英国海軍HMSデアリングの寄港
2014年01月 日英情報保護協定発効
2014年05月 日英首脳会談でACSA締結交渉開始
2014年07月 空対空ミサイル開発に向けた共同研究開始
2015年01月 日英2プラス2初開催

自衛艦隊司令部に英海軍から初の連絡官 2月17日 7時03分 NHK NewsWeb

海上自衛隊の主要な部隊を指揮する自衛艦隊司令部に、17日からイギリス海軍の将校が連絡官として配置されることになりました。

自衛隊がアメリカ軍以外から国内の基地に連絡官を受け入れるのは初めてです。

神奈川県の横須賀基地にある自衛艦隊司令部は、護衛艦や哨戒機など海上自衛隊の主要な部隊を指揮する司令部で、同じ横須賀を拠点とするアメリカ第7艦隊とも情報交換を行ってきました。

この自衛艦隊司令部に、17日からイギリス海軍の中佐が、連絡官として配置されることになりました。

この中佐は、これまでアメリカ第7艦隊の連絡官として派遣されていましたが、17日からは、自衛艦隊司令部との連絡調整や情報交換にも当たることになります。

今回の連絡官の配置は、去年5月の日英首脳会談で、安倍総理大臣とキャメロン首相が、安全保障の分野での協力拡大で合意したことを受けたもので、自衛隊がアメリカ軍以外から国内の基地に連絡官を受け入れるのは初めてです。


英RBS投資銀行事業縮小、14年は54億ドルの損失計上 2015年 02月 26日 21:04 JST ロイター

みずほ、RBSの北米企業向け融資枠など約4兆円分を3500億円で買収 2015年 02月 26日 18:41 JST ロイター

HSBC、スタンダード・チャータード、RBSなど主要な英国の銀行は、そろって投資銀行業務と海外業務を縮小・廃止している。金融業主体のモデルを製造業主体のモデルへ転換すべきだろうが、日米両国のようにリショアリングを進めることはできず、シティーを中心としたグレーター・ロンドン周辺の商業用不動産と富豪用の邸宅の売買によるバブルで景気浮揚を図っている。

彼らが英国本土でオフショア人民元を吸い取ろうとしているように、我が国は春節(旧正月)の訪日中国人観光客の「爆買い」で吸い取ろうとしている。吸い取ったあとでならば“対中封じ込め”の政治的障害はより少なくなる。

スイスリーク事件公開のタイミング

トルコのイスタンブールでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されている折、HSBCのスイス部門で200カ国以上の顧客の脱税を幇助していた情報がICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)によってネット上に公開された。

口座残高の総額は1190億ドル(約14兆円)に上る。HSBCに勤務していたファルチアニ氏が内部告発のために機密を持ち出したことにより発覚した。すでに各国の税務当局は知っている情報で、日本国籍のパスポート保持者296人、596口座、4億2000万ドルも存在する。おそらく日本人についてはHSBCの香港、シンガポール経由のものだろう。

2009年にスイス政府が秘密銀行口座の制度改革を発表して以来、プライベートバンクの伝統的な守秘義務が崩れ始めていった。2013年からG20にスイスが参加しているのもその現れだ。

租税回避につながる利益移転(BEPS)と税源侵食の対応策は今回のG20でも討議されており、タックスヘイブンも租税条約を締結するようになっている。

HSBC、スイスでの脱税ほう助疑惑で新たな詳細 2015年 2月9日 23:04 JST WSJ日本版

英金融大手HSBCが「脱税ほう助」、世界に波紋 2015年02月10日 07:01 AFPBB NEWS

【2月10日 AFP】英金融大手HSBCが富裕層顧客の巨額の脱税をほう助していたことを示す機密文書がインターネット上で公開されたことを受けて9日、世界中に波紋が広がり、超富裕層の金融取引に注目が集まっている。

 通称「スイスリークス(SwissLeaks)事件」と呼ばれるこのスキャンダルで暴露された極秘ファイルには、著名人や武器商人とみられる人物、政治家などの名前も含まれている。ただリストに名前が載っているからといって必ずしも不正行為に関与したとは限らない。

 公開された文書によると、HSBCのスイス部門が200か国以上の顧客の脱税をほう助したとされる。それらの顧客の口座残高の総額は1190億ドル(約14兆円)に上るという。

 欧州最大の銀行であるHSBCでIT担当だったエルベ・ファルチアニ(Herve Falciani)元社員が2007年に多数のファイルを盗み出し、フランス当局に提出していた。このファイルが一般公開されたのは今回が初めて。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists、ICIJ)はこれらのファイルを仏紙ルモンド(Le Monde)経由で入手し、世界中の45社を超えるメディアに提供した。

 ICIJによると、HSBCが国際的な犯罪者らや実業家、政治家、著名人らにスイス口座を開設させていたことがこの文書から分かるとしている。

 節税は合法だが、脱税は違法だ。今回の暴露により、富裕層や多国籍企業による巧妙な脱税の摘発を求める声が強まった。

 ICIJは、「HSBCは、アフリカで迫撃砲弾を少年兵らに運ぶ武器商人や第三世界の独裁者の金庫番、『紛争ダイヤモンド』の密売人、その他の国際犯罪者らと取り引きを行って利益を得ていた」と伝えた。

■著名人の名も

 このファイルには、ロシアやインド、アフリカ諸国の元職や現職の政治家、サウジアラビア、バーレーン、ヨルダン、モロッコの王族、さらにはオーストラリアのメディア王だった故ケリー・パッカー(Kerry Packer)氏の名前も含まれている。

 大きな波紋が広がった今回の暴露を受けて、HSBCを捜査するようスイス当局に求める声が強まっている。同行はフランスとベルギーではすでに訴追されている。これまでのところスイス当局は、今回のスキャンダルの核心となったファイルを盗んだファルチアニ元社員についてのみ捜査している。

 これらのファイルは、脱税者らの摘発のためフランス政府によって活用され、2010年に他国の政府とも共有された。これによって一連の訴追につながった。英税務当局は9日、これらのファイルに基づいて1億3500万ポンド(約240億円)以上の税収があったと発表した。

 HSBCスイス部門のフランコ・モッラ(Franco Morra)代表はAFPの取材に対し、「HSBCのスイスプライベートバンキング部門は2008年から、提供するサービスが脱税や資金洗浄に悪用されないよう根本的な変革に着手している」と電子メールで回答。さらに、「同行の高い基準に適合していなかった」顧客の口座は閉じ、「現在は強力なコンプライアンス(法令順守)体制ができている」と訴えるとともに、今回の暴露により「スイスのプライベートバンキングの古いビジネスモデルはもはや許容されないことが再確認された」と認めた。


参考URL:
EXPLORE THE SWISS LEAKS DATA

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳) 2015年2月9-10日 於:トルコ・イスタンブール 財務省

始まりの日英2プラス2

日英外務・防衛担当閣僚級会合(2プラス2)が初めて開催された。協議されたのは2国間訓練の拡充、サイバー対策、海賊対策、装備品の協力の推進、物品役務相互提供協定(ACSA)の早期締結など。

特に防衛装備品での協力では、化学防護服の性能評価と空対空ミサイル(AAM)の共同研究を行い、加えて哨戒機P1の輸出を念頭に現地生産や技術移転を求めるオフセット取引といった調達方法でも意見交換した。

安全保障面での協力を積み重ねて、最終的には日英安保共同宣言まで繋げてもらいたい。そうすれば英国(英連邦の五ヵ国防衛取極めと連携)~インド~豪州~日本~米国で、すべての海洋国家の同盟が再構築され、“対中封じ込め”は決定的となる。

日英、防衛装備で協力拡大 初の2プラス2 2015/1/22 0:13 日経

【日英の安全保障協力の進展】
2012年06月 防衛協力覚書締結
2013年07月 防衛装備品協力の協定締結・化学防護服の共同研究開始・情報保護協定署名
2013年10月 日英のNSC定期協議・NSC間のホットライン開設合意
2013年11月 英国海軍HMSデアリングの寄港
2014年01月 日英情報保護協定発効
2014年05月 日英首脳会談でACSA締結交渉開始
2014年07月 空対空ミサイル開発に向けた共同研究開始
2015年01月 日英2プラス2初開催

初の国産哨戒機、日本が英国に売り込み検討 2015年 01月 7日 21:19 JST ロイター

[東京 7日 ロイター] - 防衛装備品の輸出規制を緩和した日本が、初の国産哨戒機であるP1を英国に売り込もうと検討している。

政府はP1を広く世界に輸出したい意向だが、武器市場に参入したばかりの上、実戦経験のない日本の装備は認知度が低い。英国という武器先進国に採用されれば国際的な評価が高まり、その後の輸出に弾みがつくとにらんでいる。

日英の政府関係者は昨年7月、ロンドン近郊で開かれたファンボロー国際航空ショーで防衛装備の協力について協議。次期戦闘機F35用ミサイルを共同研究することで合意した。関係者によると、この場でP1の輸出も話題に上ったという。

両国は次回の実務者協議を来月にも開く予定で、P1も議題の1つになるとみられる。また、1月12、13日にロンドンの王立防衛安全保障研究所で開催される日英安全保障協力会議で、日本の政府関係者が同機をアピールする見通しだ。

<最有力はボーイングのP8>

英国では配備から40年以上たった哨戒機ニムロッドが、2011年に退役。英BAEシステムズ(BAES.L: 株価, 企業情報, レポート)が後継機を開発していたものの、計画の遅れと予算超過で2010年に中止へと追い込まれた。今年5月の英総選挙後に、後継機導入の選定が本格化する可能性がある。

しかし、最有力候補はP1ではなく、民間機B737をベースにした米ボーイング (BA.N: 株価, 企業情報, レポート)のP8とみられている。実績のある世界的なメーカーが手掛け、同盟国の米軍がすでに配備している。関係者によると、英国にとってリスクの少ない選択肢だという。

それでも日本が英国の要望に沿った機体を競争力のある価格で提案できれば、P8の対抗馬になる可能性があると、複数の関係者は話している。P1は20機まとめて購入したとして1機当たり約190億円。一方のP8は、昨年2月に米軍が1機当たり1億5000万ドルで16機を追加調達している。

また、P8はプログラムコードが厳密に管理されている一方、日本はP1の機体のみを提供し、英側が作ったシステムを搭載する共同開発も視野に入れている。英国にとっては、自由に仕様変更ができるなどのメリットがある。

「たとえ候補に上がっただけだとしても、英国が真剣に検討してくれることに意味がある」と日本の政府関係者は期待を示す。「P8と競合する機種であるということが、国際的に認知される」と同関係者は話している。

<ニュージーランドやカナダにも>

P1は川崎重工業 (7012.T: 株価, ニュース, レポート)を中心に、日本企業だけで初めて手掛けた国産哨戒機。4発のジェットエンジンを搭載する。米ロッキード・マーチン(LMT.N: 株価, 企業情報, レポート)からライセンスを取得して自衛隊向けに生産した現行のP3Cに比べ、速度と航続距離がそれぞれ1.3倍、1.2倍に向上している。

ただ、開発途中で翼や胴体に強度不足が見つかり、計画より1年遅れて2013年3月に配備が始まった。自衛隊は今後5年間で23機の調達を計画している。

日本は昨年4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出や他国との共同開発を認める防衛装備移転三原則を導入した。これまでに決まった主要案件は、米国へのミサイル部品の輸出と、英国とのF35用ミサイル共同研究。政府は防衛産業の維持・育成の観点から完成品の輸出も推進したいと考えている。

「(P1は)英国以外にも、ニュージーランドやノルウェー、カナダなど広い領海を持った国々が輸出先になる可能性がある」と、日本の英国大使館で武官を務め、現在は軍事コンサルタントのサイモン・チェルトン氏は語っている。

(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)

スタンチャートの撤退と中国共産党の金融改革

香港ドルの発券銀行の一つ、スタンダード・チャータード(スタンチャート)は株式部門の閉鎖とリテールバンキング部門の縮小を発表した。

支那本土→(人民元オフショア市場のある)香港→(中国上場企業の本社の多い)ケイマン諸島→ロンドン・シティーとカネを吸い上げるはずの銀行が撤退するということは、これまでの吸い上げが終わったのか、これからの吸い上げを諦めたのか。

2013年6月に英中通貨スワップ協定締結、2014年11月に香港と上海の株式市場相互接続などと金融改革が進められる支那本土から吸い上げる仕組みが出来ていただけに、中国共産党とのビジネスそのものを止めるようにも思われるが。

UPDATE 1-英スタンチャート、株式部門閉鎖 リテールバンクで4000人削減 2015年 01月 9日 02:26 JST ロイター

[香港 8日 ロイター] - 英銀大手スタンダード・チャータード(スタンチャート) は、コストカットに伴い、株式部門を世界的に閉鎖し、リテールバンキング部門で4000人を削減すると発表した。

株式部門では、株式売買、株式調査、株式上場に関する部署を世界的に閉鎖する。エクイティ・キャピタル・マーケット業務からの全面撤退は世界の大手銀行で初めて。閉鎖に伴い200人を削減するが、ほとんどがアジア地域での削減となる。

(後段省略)


中国、金融改革を推進すべき─李首相=現地紙 2015年 01月 7日 11:40 JST ロイター

香港・上海株式市場の相互接続、11月17日開始 2014年 11月 10日 20:55 JST ロイター

香港・上海の株式相互取引、EU内の規制当局が懸念 投資に影響 2014年 11月 26日 21:46 JST ロイター

中国、金融改革の取り組み強化へ=首相 2014年 09月 26日 23:10 JST ロイター

参考URL:
中国金融改革は難航するのか 三井住友信託銀行 調査月報 2013年1月号 (PDFファイル)

中国の金融改革の進展と課題 環太平洋ビジネス情報 RIM 2014 Vol.14 No.55 (PDFファイル)

金融の正規化を進める中国金融当局 2015年1月号 NRI

慣性として続くグローバリズムが徐々に止まる

慣性として続くグローリゼーションが徐々に止まり、ナショナリズムへと反転していく。実際には、世界がひとつになったものを完全に分裂状態に戻すことはできないので、むしろ法規制を一律化させるグローバリズムが進んでいくとも云える。

アイルランドが「ダブルアイリッシュ」の廃止を予算案に組み込んだのがその一例。この税制改正を議会に諮っており、さしたる変更も抵抗もなく通過すると見られる。「ダブルアイリッシュ」は、ソフトウェアなどの無形資産や特許を持っていた米国のIT企業が利用してきた。

例えばアップルもしくはグーグルは、アイルランドに現地法人をつくり、米国で開発しているソフトウェアなどの無形資産の費用分担契約を結ぶ。そのアイルランド法人の管理のための法人を英領バミューダにつくると、アイルランドには実際に居住していない法人格として非課税になる。

次いで無形資産をシェアしているアイルランド第一の法人は、非居住者で実態の動きなしであるがゆえに非課税という建前を守るため、もうひとつのアイルランド法人をつくり、同社とライセンス契約を結ぶ。このアイルランド第二の法人が米国以外の世界各国からライセンス料を受け取る。すると、ライセンス料の課税税率は米国の半分以下になる。税引き後利益は税免除がされる時期に米国へ所得移転される。

またライセンス料が課税されないことになっているオランダ法人をつくり、アイルランド第一の法人は同社とライセンス契約を結び、ライセンス料を受け取る。さらにアイルランド第一の法人の一次代理店となっているオランダ法人はアイルランド第二の法人とサブライセンス契約を結び、今度はライセンス料を受け取る。このライセンス料のやりとりは非課税となる。この利益も米国に所得移転される。

これが「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチサンドウィッチ(Double Irish With a Dutch Sandwich)」と呼ばれている節税の仕組みだ。

アイルランド、租税回避策「ダブルアイリッシュ」に終止符 2014 年 10 月 15 日 01:15 JST WSJ日本版

アイルランド政府は14日、「ダブルアイリッシュ」と呼ばれ、世界的に知られる法人税の抜け穴をふさぐ動きをとった。米国のハイテク企業の租税回避を取り締まる過程でこの制度に注目が集まっていた。

 ヌーナン財務相はこの日、2015年度予算案を議会に提出した際、税制改正を併せて発表した。この税制改正では国内に登記するすべての企業に対し、アイルランドを税務上の居住国とするよう義務付ける。税務上の居住国を他国に置くことで法人税の課税を回避できるダブルアイリッシュの仕組みに終止符を打つのが狙いだ。

 財務相は「多国籍企業の挑戦的な節税策は世界中の政府から批判され、多くの国の評判を傷つけた」と述べた。

 新たな税制は来年1月から施行される。だが、現時点でこの仕組みを利用している企業は2020年末まで適用を免れるという。


アイルランド、多国籍企業が利用する税の抜け道廃止へ 2014年 10月 15日 07:16 JST ロイター

UPDATE 1-米アッヴィ、シャイアー買収を見直し 課税逃れめぐる規制強化で 2014年 10月 15日 18:59 JST ロイター

(情報を追加しました)

[ロンドン 15日 ロイター] - 米バイオ医薬品大手アッヴィ は、アイルランドの製薬会社シャイアー の買収計画(550億ドル規模)を見直す方針を示した。

買収が実現すれば、アッヴィは法人税率の低い英国に税法上の本社を移転することが可能になるが、米政府は先月、課税逃れ目的で海外に本社を移転する「インバージョン」取引の防止に向けた新規制を公表している。

アッヴィの発表を受け、シャイアー株は27%急落。買収計画浮上前の水準に下落している。

(後略)


参考URL:
Appleの節税戦略~ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ 2014年1月 太陽グラントソントン(PDFファイル)

グラスゴーから始まるスコットランド紛争

スコットランド独立が投票によって否決されたあとに、グラスゴーでは賛成派と反対派の間で小競り合いが起きて逮捕者が出た。スコットランドが民族自決権を主張続けるならば、おそらくアイルランドと同じような経緯を辿るだろう。

第1次大戦中のイースター蜂起(1916年)、大戦終結後のアイルランド独立戦争(1919年~1921年)とアイルランド内戦(1922年~1923年)、カソリック(ナショナリスト)とプロテスタント(ユニオスト)の対立を軸とした血の日曜日事件(1972年)などのテロの応酬が見られた北アイルランド紛争(~1998年)と言った具合に。

エリザベス女王が、即位60周年を記念してIRAの元指導者と歴史的会見を行ったのは、つい先年の2012年のことだった。

ただでさえ英国はロンドンの金融と不動産に経済を頼りきっている。今後、利権再分配の不公平感をカソリックとプロテスタントなどの宗教的相違が助長して、それがさらに真の不公正に変化するならば、北アイルランド紛争と同じことがグラスゴーから始まるだろう。

Arrests in Glasgow as loyalists attack pro-independence supporters Saturday 20 September 2014 The Guardian

Six people were arrested amid angry scenes in Glasgow on Friday night as a group of young pro-union supporters clashed with pro-independence supporters who had been gathering in George Square throughout the day.

Police acted to separate a small group of pro-independence supporters from a group of skinheads believed to have marched from the loyalist pub the Louden Tavern in nearby Duke Street.

Individuals argued over the referendum result and a chorus of Rule Britannia was countered by Flower of Scotland.

As the evening wore on, and the yes supporters dispersed, more loyalists converged on the square, many of them draped in union flags.

A number were teenagers, and clearly drunk. At one point a section of the crowd broke through police lines and marched up the central shopping area of Buchanan Street, chanting the words to Rule Britannia. Some shouted loyalist slogans and racist abuse, and appeared to make Nazi salutes.

The subway station at the top of Buchanan Street was temporarily closed, as police herded the marchers back towards the square. As mounted police attempted to contain the crowd, flares were thrown.

Sam Tonks, an engineer from Uddingston, said he had driven into the city with his wife and daughter because he wanted to celebrate the referendum victory with other no supporters, but had been greeted by something much uglier.

"It's on both sides," he said. "The city is divided by religion already and to be honest I think the union jacks and saltires are a bit of an excuse."

Six people were arrested, police said. Social media reports indicated that trouble continued into the early hours of the morning, but a Police Scotland spokesman said groups had dwindled to sets of two and three people by about 1am.
He said: "Six people have been arrested so far in relation to the incident in George Square. Retrospective inquiries will be carried out which may lead to further arrests."

スコットランド、税源移譲と交付金削減の既視感

スコットランド独立の賛否を巡る投票は独立反対・現状維持が勝利した。とは云え、根底には利権分配に対する不満がある以上、要諦となるスコットランドへの権限移譲は欠かせない。

ただし、税源移譲がなされれば、セットで交付金削減される。我が国のデフレ下での三位一体の改革とそれ以降の地方経済の推移を想起する。

加えて、再度の独立要件は厳しくなるだろうから、一概にスコットランドの自治権拡大は好ましいとも思えない。痛し痒しといったところだろう。

情報BOX:スコットランド住民投票の開票状況、2地区除き結果判明 2014年 09月 19日 16:03 JST ロイター

[エディンバラ 19日 ロイター] - 英国からの独立の是非を問うスコットランド住民投票の開票が始まった。現時点の開票状況は以下の通り。

行政区 (有権者比率) 賛成票(%)反対票(%)

Orkney Islands 0.41 33 67

Shetland Islands 0.43 36 64

Eilean Siar 0.53 47 53

Clackmannanshire 0.93 46 54

Inverclyde 1.46 49.9 50.1

Stirling 1.61 40 60

Midlothian 1.62 44 56

West Dunbartonshire 1.66 54 46

Argyll & Bute 1.68

East Renfrewshire 1.70 33 67

Moray 1.75 42 58

East Lothian 1.91 38 62

East Dunbartonshire 2.03 39 61

Angus 2.18 44 56

South Ayrshire 2.21 42 58

Scottish Borders 2.23 33 67

East Ayrshire 2.33 47 53

North Ayrshire 2.66 49 51

Dundee City 2.77 57 43

Perth & Kinross 2.80 40 60

Falkirk 2.86 47 53

Dumfries & Galloway 2.92 34 66

Renfrewshire 3.14 47 53

West Lothian 3.23 55 45

Aberdeen City 4.10 41 59

Highland 4.45

Aberdeenshire 4.82 40 60

South Lanarkshire 6.09 45 55

North Lanarkshire 6.27 51 49

Fife 7.05 45 55

Edinburgh, City of 8.81 39 61

Glasgow City 11.35 53.5 46.5


コラム:スコットランドの独立否決、英国めぐる不安は晴れず 2014年 09月 19日 17:53 JST ロイター

(前略)

英国の投資家や企業は住民投票の結果にほっとするだろう。英国の人口と国内総生産(GDP)の約1割を占めるスコットランドが残留となれば、恐れられていた経済、金融や通貨での混乱は回避される。金融大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)(RBS.L: 株価, 企業情報, レポート)を含むスコットランドに本拠地がある銀行が拠点を移すこともないだろうし、イングランド銀行(英中央銀行)の管轄にとどまることになる。

政治的にも英国は惨事を免れた。ユーロ採用に好意的で労働党支持者が多いスコットランド人が残留すれば、英国が欧州連合(EU)を離脱する可能性も低くなる。よりユーロ懐疑的な与党保守党が2015年の総選挙で敗北する可能性も高くなる。

保守党が総選挙後に政権にとどまり、約束通りEU残留か離脱かを問う住民投票を実施した場合でも、スコットランドを含む英国は残留を選ぶ公算が大きいだろう。英当局者らはスコットランド分裂ではなく、EU加盟でより有利な条件を引き出すための交渉に時間を割くことが可能になる。

それでも、今回のスコットランド住民投票は英国を変えることになる。英主要政党は、住民投票前の世論調査で独立賛成派が勢いを増すなか、独立反対を訴えるために数々の前例がないような譲歩を余儀なくされている。

現在、スコットランド議会は支出の5割以上について決定権があるが、関連する課税については約1割しか決定権がない。英主要政党の党首らによる公約では、権限は大幅に拡大されるとみられる。英政党の権限移譲に関する公約が本当ならば、スコットランドは課税に関し5割以上の決定権を獲得する可能性がある。

ただ、英主要3政党の党首らは権限移譲の時期については合意していても、移譲すべき権限が何なのかはまだ明確にしていない。

さらなる混乱の種となり得る問題は、英政党の党首らが今月16日に、スコットランドに支給される国の一括交付金を決定する「バーネット・フォーミュラ」を維持すると示唆したことだ。この公式の下でスコットランドは現在、平均よりも厚めの予算配分を受けている。ただ、スコットランドが課税でさらなる権限を付与された場合は、理論上は交付金は減らされることになる。

(後略)


参考URL:
Scotland Independence Referendum : Thomson Reuters

可塑性を持った社会の融通無碍

スコットランド独立の可能性が高まるにつれて、スペインのカタロニア独立支持派の動きも釣られて高まる。EUとNATO加盟国から分離独立した国家が速やかにEUとNATOに再加盟できるのであれば、ベルギーのワロンとフラマンは完全に分離独立し、北部イタリア(パダニア)も独立の列に加わるだろう。

しかし、この独立運動の列にバイエルンの名が聞こえることはない。ドイツ、オーストリア、そして(EUではないが)スイスのドイツ語圏だけがEUの勝利者となっている証左だろう。

戦間期に外貨不足と財政危機に苦しみ、果てはナチスの狂瀾に自らを巻き込んだ死せるドイツ人は、ヴァルハラから甦り刮目して見よ。バトル・オブ・ブリテンが始まったのだ。平野耕太原作の『HELLSING』の少佐の演説の一節「そしてゼーレヴェは遂に大洋を渡り陸(おか)へとのぼる」が実現するかも知れぬ。

もしくはマクスウェル大司教のように第九次十字軍を結成し「バチカンが英国を異教徒どもから奪還」して、ジャコバイトの王がついにスコットランドに君臨する好機かも知れぬ。

コラム:スコットランド独立でポンド弱体化は本当か=山本雅文氏 2014年 09月 12日 19:06 JST ロイター

コラム:スコットランド独立を支持しない「10の理由」 2014年 09月 12日 15:17 JST ロイター

スペインのカタルーニャ州で大規模デモ、独立問う住民投票求め 2014年 09月 12日 13:49 JST ロイター

閑話休題。

本題としてスコットランド及び英国の動きは、バブルが崩壊してデフレが起きる、もしくは緩やかなインフレが起きて実質賃金は下がる、といった経済的な激変が起きたとき、それぞれの社会が図る類型的な解決策のひとつではなかろうか。

個人主義的色彩の強い社会では再分裂しながらダイナミズムが発生して収斂する。合衆国ではゲーテッド・コミュニティが盛んにつくられ、富裕層が郡から市を分離独立して税収を総取りし、果ては州の分離独立運動が起きる。連合王国を構成するカントリーの独立運動も類似したものだ。

家父長制が強い社会では軍事独裁的な指導者が現れる。分散した富を富裕層から収奪して再分配する。ロシアと中国共産党がそうした動きを採り、家父長制といとこ婚を優先する社会にまで至ると、行動様式すべてを宗教的規範で縛りながら再結集と分配を図る。シリアからイラクにかけて台頭している「イスラム国」がそうだ。

我が国やドイツの社会は英米やロシアの中間地点に立っている。長子相続優先社会だった両国では長い停滞から突如、疾風怒濤が巻き起こり、伝統回帰を唱えながらその実、革命に近い変革を起こすことがある。

そうして我が国は“失われた二十年”を耐えに耐え忍んだが、リーマン・ショックから間を置かず、量的緩和を行っても英米はこれだけの激動を見せる。可塑性を持った社会の融通無碍と捉えるか、単なる社会秩序の破壊と見るかは属する社会によって見え方が異なる、と云えるだろう。

シティーとイングランド銀行だけが大英帝国

意外に思われるかもしれないが、ソビエト連邦には各共和国に離脱の自由があったが、アメリカ合衆国には各州に離脱の自由はない。そして、連合王国にも一応離脱の自由はある。

スコットランド独立の場合、英国(イングランドとウェールズ、北アイルランド及び王室領土)が絶対に譲らないのは通貨同盟だろう。ロンドン・シティーとポンド(イングランド銀行)を守ることこそ肝要であって、金融拠点とハードカレンシーの発行権の2つだけが今や大英帝国と云える。

スコットランド独立で予想される英国側の対応は、大まかにまとめてみた。

1.スコットランド・ポンドとGBP(スターリング・ポンド)の通貨同盟は認めない。エディンバラにあるスコットランド・ポンドの発券銀行のロイヤル・バンキング・オブ・スコットランド(RBS)、スコットランド銀行(ロイズ・バンキング・グループ傘下)、クライズデール銀行(ナショナル・オーストラリア銀行傘下)もシティーに本拠地を移す。

2.独立の細目を決める交渉の過程で、北海油田権益の比率を増やそうとする。スコットランド独立政府の財政基盤を弱めるとともに、油田埋蔵地に当たるシェトランド諸島の独立運動を使嗾する。

3.安全保障政策ではスコットランドは戦略原潜を持たない=核保有しないと主張しているので、そのまま呑む。何らかの条項を挟み込んで、軍事侵攻の余地を残しておくだろう。またスコットランドのNATO加盟を先延ばしさせるよう働きかける。保有もしくは開発していた核兵器を放棄した独立国家がどうなったか。過去の南アのボーア人政権、イラクのフセイン政権、リビアのカダフィ政権は崩壊し、ソ連から独立したウクライナも激動の渦中にある。

4.スコットランドのカソリックとプロテスタント、ハイランドとローランドの対立を顕在化させる。北アイルランドと同じような紛争が惹起される可能性も否定できない。その場合、グラスゴー辺りで最初の衝突が起きる。

5.スコットランドのEU加盟方針と違い、これで英国のEU脱退が加速する。スコットランド含む総選挙では民意を反映しないので、スコットランド独立決定後は再選挙が道理となる。スコットランド喪失にもかかわらず、逆バネで保守党と自由民主党が勝利の可能性大。すると、国民投票でEU残留派が敗れる公算が高い。かと言ってスコットランドはすぐにEUに加盟できないし、ユーロも採用できない。

ブレント原油先物が99ドル割り込む、供給増と需要の弱さ重し 2014年 09月 10日 19:59 JST ロイター

英首相がスコットランド入り、「家族」引き裂くべきでないと訴え 2014年 09月 10日 16:50 JST ロイター

スコットランドの銀行、独立決定に備え対応協議 2014年 09月 10日 10:46 JST ロイター

英首相が急きょスコットランド訪問へ、独立に現実味 2014年 09月 10日 01:37 JST ロイター

スコットランド通貨同盟、国家主権と両立せず=英中銀総裁 2014年 09月 10日 00:57 JST ロイター

[ロンドン 9日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は9日、18日に予定されるスコットランド独立の是非を問う住民投票に関し、独立賛成派が勝利した場合のスコットランドと残りの英国との通貨同盟は、国家主権と両立しないとの見解を示した。

総裁は労働組合代表との会合で、通貨同盟が成立するには税制と政府支出、銀行業の規則に関する国境を越えた合意が必要とした1月の自身の発言に言及した。

また、独立賛成派のスコットランド国民党(SNP)が提案している独立スコットランドと残りの英国との通貨同盟に対し、英国の主要3政党が反対していることにも触れた。

「この事情に鑑みると、総合的に考えれば通貨同盟は国家主権と両立しない」とした。


スコットランド独立、ある程度の対応策用意=英金融当局幹部 2014年 09月 10日 00:08 JST ロイター

コラム:英国分割に現実味、ポンド急落は「前兆」か 2014年 09月 9日 09:15 JST ロイター

個人主義と大家族主義の悪しき相互作用

「イスラム国」や「ボコ・ハラム」が女を人身売買するのと同じ事例がイングランドの片田舎でも起きた。

他者の差異を認識したときには軋轢が生じる。差異を認めた他者を融合するか、分断するか、撲滅するかは、それぞれの社会が判断する。

英国社会では階級間の断層はあるが、それぞれの階級内での外国人同士の“交友・会食・婚姻”は行われている。“交友・会食・婚姻”の3つが行われている場合、その社会に差別はないと言って良い。英国は階級内での人種間差別はないが、階級間差別はある。また、サッチャリズムのときに階級の流動化が起きたが、再編されたのちも階級間差別は残っている。

1400人の英少女が性的標的、パキスタン系が白人狙い売買 報告がイスラム社会に衝撃 2014.8.31 19:06 MSN産経

 【ロンドン=内藤泰朗】英中部ロザラムで、昨年までの16年間に1400人以上の子供が組織的な性的虐待を受けていたとの調査報告が公開され、地元政治家や警察への批判が高まっている。主に白人の少女を狙い人身売買をしていたとして、パキスタン系の男ら約10人が訴追されており、英国内のイスラム移民社会にも動揺が広がっている。

 独立した専門家がまとめて8月26日に公開された報告書によると、虐待者たちは性的な欲求を満たすため、家族と離れ、施設に入れられた白人の少女たちに接近。贈り物や酒、麻薬を与えて強姦した後は、暴力を振るったり銃を突きつけて脅したりして口を封じていた。ガソリンをかけて火を付けると脅迫したり、11歳の少女を多数で強姦した例もあったという。

 被害者にはパキスタン系など非白人の少女たちもいるが、報告書は、イスラム社会での村八分を恐れて告発できない可能性があるとして改善を求めた。

 問題が長く放置されてきた背景については、ロザラムのパキスタン系地方議員らが問題解決を妨げていたと説明。議員らは、事実を公にすれば人種差別をあおり、反移民など過激な政治勢力が台頭すると懸念を示していたという。

 しかし、英メディアは「地元当局が人種問題を避け、対応を怠ってきたことが問題を深刻化させた」などと批判している。

 人口約25万のロザラムで、パキスタン系は約3%を占める。


英米のアングロ・サクソン人の社会は、近い血縁の家族内ですら本質的に出生年齢順の差異による不平等ではなく個人の能力としての差異による不平等が認められ、完全に自由を強制される。一方、パキスタン人は大家族制度と兄弟間の平等、合理性よりも慣習を尊び、いとこ婚の優先と女性への教育を重視しない特徴を持つ。

イングランド、サウス・ヨークシャー州にある25万人の小さな地方都市ロザラムで、人身売買が長期間露見しなかったのは、アングロ・サクソン人の個人主義による子供への無関心とパキスタン人の大家族主義による秘密保持が相互作用した結果といえる。彼らにとっては同じ家族共同体にいない人間に対してのシンパシーが育つ契機がないことも人身売買を助長している。

また、英国の下層階級の10代少女が家出しても、シングルマザーになれば、優先的にカウンシルフラット(公営住宅)が斡旋され、生活保護も支給される。子供には満足な教育はなされず、下層階級が再生産される構造が出来上がっている。個人主義の行き着くシングルマザーの増加を目の当たりにすると、親元にすべての男兄弟家族が生活するムスリムにしてみれば、社会秩序の否定そのものに見える。

こうして、英国に移民したパキスタン人が直面する“完全なる自由”は心理的当惑を生み、アイデンティティの危機を誘発する。ところがジョン・バニヤンの『天路歴程』の通り、家族を捨てて、ただただ己の救済を求めて遁走するのが、アングロ・サクソン人の宗教的態度としての正道なのだ。

一度、完全な自由人を要求されて、社会のただ中に放り出される。“完全なる自由”は著しい不平等を容認する。心理的当惑による精神的彷徨を経験するうちに、当人の努力によって不安を止揚克服し、不平等を受容し、英国では階級のいずれかに組み込まれるか、米国では人種のいずれかに組み込まれるかを選択しなければならない。

それ以外の方法はムスリム回帰となる。英国生まれのパキスタン系、それらと結婚して改宗したムスリムが「イスラム国」に兵士として参戦するのは、心理的当惑からムスリムへと回帰した人々の論理的帰結となる。

上記エントリーについては、2012年5月3日のエントリー2013年5月30日のエントリーを一部、再構成した。参考にされたし。

緩やかなインフレ下の実質所得減少

内需の大宗を占める個人消費性向を左右する実質賃金がマイナスな上に、企業は賃金上昇分の多くを所定外給与と特別給与で対応している。これでは個人消費が短期的要因で変動する可能性が高くなり、企業も正規雇用ではベアを上げずに、非正規雇用ではその比率を高めるだろう。すると、量的緩和中の英国のようにインフレになっても実質賃金が下がるトレンドが続くかもしれない。

と、2014年7月12日のエントリーで述べたように、先んじて量的緩和を行なってきた英米でも、下記ロイター電の通り、緩やかなインフレ下での実質所得の伸び悩み、もしくは所得減が起きている。

失業率は回復する。生産性も上昇する。インフレも緩やかに進む。しかし所得は増えない。もしくはインフレの分だけ実質所得は減る。

金融政策で量的緩和を行なっている各国に共通したこのトレンドを打ち破る必要性があるだろう。今のところ、財政出動しか考えられないが、消費税増税8%の失敗を認められない安倍政権は補正予算を組みづらい状況にある。ただし防衛費ならば、状況次第で可能になる。ある意味で中国共産党に期待せねばならないかもしれない。

米雇用回復の一方で賃金は低下、製造業など23%減少=調査 2014年 08月 12日 10:24 JST ロイター

[11日 ロイター] - 世界的金融危機に伴うリセッション(景気後退)後の米国では、雇用が伸びる一方で賃金は低下していることが、11日公表された全米市長会議(USCM)の報告書で明らかになった。リセッション時に雇用者数が減少した業種の賃金は、当時に比べて平均23%減少したとしている。

人口が3万人以上の都市で構成するUSCMの報告書によると、金融危機に見舞われた2008─09年に雇用が失われた製造業や建設業などの業種の当時の平均年収は6万1637ドル。その後、2014年第2・四半期末にかけて雇用者数は増加したが、平均年収は4万7171ドルと約23%減少した。これは、賃金所得が930億ドル減少したことになるという。

都市圏では年収3万5000ドル以下の世帯が73%を占めるという。

米雇用は7月まで6カ月連続で20万人を超えるペースで拡大しているが、民間セクターの賃金はほとんど増えていない。


焦点:英中銀の段階的利上げ計画にリスクも 2014年 08月 18日 13:06 JST ロイター

(前略)

英国経済はことし、約10年ぶりの高成長を遂げる見通しの上、失業率は過去5年で最も低い6.4%まで下がっている。

しかし一方で国内総生産(GDP)の規模は金融危機前の水準を回復したにすぎず、賃金の上昇ペースはあまりにも遅い。インフレ率もBOEの目標を下回っており、今後もその水準で推移するとみられており、多くの市場関係者は低金利が長期間続くと確信している。

カーニー総裁は英国の金利の「ニューノーマル(新たな正常水準)」が2.5%前後と、危機前の約半分の水準に下がったとの見通しを示した。

<融資に慎重>

金利が以前より低くなるとする根拠は、確かに豊富だ。銀行は貸し出し姿勢を慎重化させているため、BOEの政策金利と銀行の貸出金利との差が開き、実質的な金利が高くなっている。

高い家計債務水準と、長年にわたる低い賃金上昇率という組み合わせは、家計のやりくりが危機前より苦しくなったことを意味する。つまり金利の上昇による消費支出への影響はかつてより大きくなっている。

(中略)

英国の物価圧力は今のところ小さく、力強い経済成長と失業率の低下にもかかわらず賃金は低いままだ。

BOEは2015年と16年に賃金上昇率が上向くが、長期平均ほどの伸びは示さないと予想している。これは、職に就きたい人の数が過去最高を更新するとの見通しなどに基づいている。

労働者の生産性伸び率の上昇も、賃金の伸びによるインフレ圧力を抑える役割を果たしている。

これらの条件がそろって初めて英国は高成長と低インフレ、すなわち段階的かつ限定的な金融引き締めを可能とする環境を享受している。しかしBOEは過去1年間、労働市場の基調の予測に苦心し、失業率の大幅な低下を予想できなかった。

(後略)


焦点:長期政権へ進む安倍首相、「安保より経済」の成果が急務 2014年 08月 20日 13:02 JST ロイター
プロフィール

vanshoo

Author:vanshoo
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。