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リベラルの対極にあるイスラム原理主義が反撃する

朝日新聞とのインタビューに応えるエマニュエル・トッドは、先進国における“システムとしての信仰”が失われつつあるのではないか、と危惧を抱いていた。社会全体に信じられる何か、共同体を結合する何かが壊れつつある、と。

信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏 2016年2月11日16時53分 朝日新聞

しかし、リベラルの信じる多様性(ダイバーシティ)が自己崩壊した様にも見える。同性婚を認める波が最高潮に達した余勢を駆って、大量の難民と不法移民を受け入れた結果、一挙に崩壊を招いたように見えるのだ。リベラルが掲げてきた信仰、多様性(ダイバーシティ)の危機にエマニュエル・トッドは嘆いている、というのが正しいのかもしれない。

そもそも信仰とは等しく虚構ではなかろうか。

欧州を統合するグローバリズムとその経済合理性とが手を携えて、欧州のリベラルは他の虚構を追いやってきた。逐われたカトリックは中南米で反撃の機会を伺い、極右扱いされるナショナリズムは中欧と東欧で奮闘している。

かくて欧州の中心部に残った虚構はリベラルとイスラム原理主義のふたつ。リベラルの対極にあるイスラム原理主義とその過激派がリベラルに反撃するのは自然であろう。
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苦悩するリベラル、エマニュエル・トッド

ベルギーの同時多発テロ事件について、CNNが「なぜベルギーは対テロ戦争の最前線なのか」という記事を挙げている。

ジハーディストの温床となったブリュッセルに住むイスラム系移民を襲う疎外感。その疎外感をもたらす背景としての人種差別と若年層の高い失業率がムスリムのギャングスターを作り出し、彼らの行き着く監獄が過激派の養成施設・テロリストの調達先になっている。

テロの温床を一掃するには、欧州に蔓延する若年層の失業を解消していくのが、迂遠なようで確実なのだろう。しかし、相次ぐテロと難民危機によるイスラムフォビアとナショナリズムが結合して、リベラル的な施策の導入を妨げる理由のひとつとなっている。

我が国からすれば右傾化がまだそれほど進んでいない今こそ、リベラル的な経済政策が求められているのに。

Why Belgium is Europe's front line in the war on terror Updated 1243 GMT (2043 HKT) March 24, 2016 CNN

エマニュエル・トッドが新著『シャルリとは誰か?』の発刊を期に朝日新聞のインタビューに応じていたが、後退するリベラルの苦悩を垣間見ることが出来る。

信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏 2016年2月11日16時53分 朝日新聞

彼が従来主張してきたように“移行期の危機”を迎えるアラブ・中東では、反作用としてイスラム原理主義が台頭している。しかし、スンニ派VSシーア派の対立は宗教戦争ではないと述べる。国家間の利害対立が宗教の名を借りているに過ぎない、ということだろう。近代化の中でムスリムの信仰は薄れており、拠り所を求める若者は別の信仰を捜しているうちに、破壊的なニヒリズムを行うISIS(イスラム国)へと惹きつけられている。

また欧米のムスリム観が対応の誤りに繋がっている。国家を統合する力の弱いアラブの独裁を巨視的に容認しなかったのが失敗であって、ブッシュ政権の新自由主義的アプローチがアラブの国家を解体してしまった、と。このアラブと新自由主義の相互作用が主権国家の概念を希薄化させた。

テロ後のフランス社会は変容し、不寛容の時代が訪れた。そもそもイスラム系テロリストはアラブ・中東から見れば欧米人なのだ、と云う。イスラム系テロリストを欧米社会から生まれた亜種として見るか、それともイスラムの亜種と見るかによって、その対応も変わってくるのだが、人々はイスラムフォビアに陥り、政教分離原則によって自己の主張を正当化して、問題はイスラムそのものにあるとするのが大半だ、と指摘する。

大勢としてイスラム系に対する排他的な空気が生まれている。フランスでは、カトリックの強かった地域と中間層、かつてヴィシー政権を支持した地域とその階層がデモの列に加わっている。元々はリベラルを表明するデモの第一列が、右派・ナショナリズムに入れ替わりつつ在る。

欧州でもアラブ・中東でも信仰の衰退と社会の分断が起きている。しかし、本当の危機は欧米と日本の社会に内在している。想起されるのは信仰システムの崩壊である。この信仰とは社会一般に信じられているイデオロギーや社会的規範も含まれる。唯一、信仰として残っているのは経済合理性であって、この反共同体的な信仰は何が良い生き方かは定義しない。

つまりはフィクションとしての宗教がせめぎあっている。キリスト教やイスラム教、グローバリズムやナショナリズムの戦いの中、リベラル的な価値観が欧州では後退せざる得ない、という訳だ。

リベラル的価値観の後退とともに分断される社会で何が起きているかと云うと、フランスでは手厚く保護されている中間層ではなく、労働者階級が崩壊している。多くがここに属するムスリムの若年層がテロを引き起こす。ムスリムはフランス国民ではない扱いを受け始め、テロ関与者からフランス国籍を取り上げようとしている。

ユダヤ系であるエマニュエル・トッドにとっては二重国籍制度はフランスの寛容性の表れであり、現状はユダヤ系から国籍を奪ったヴィシー政権を想起させる。もちろん国籍を奪ってもテロは止まないし、これからのフランス「新共和国」では中間層が下層にある若者を排除するようになる、と指摘する。

移民がいなくても教育などの不平等が格差を生み出す場合もあり、日本の社会には家族制度の延長から、平等と不平等の両方を受け入れる素地がある、とも指摘している。

欧米社会は、自国の内部が危機を生み出しているのを認め、自由・平等・博愛が失われつつあるのにもかかわらず、未だに自由・平等・博愛が存在しているかのような虚偽からの脱却が求められる、と結んでいる。

パリ~ブリュッセル、戒厳令下の掃討戦

2015年12月、2回に渡って行われたフランスの地域圏議会選挙では、極右政党・国民戦線の第1党進出を危惧した内相が「(彼らが勝てば)内戦になる」と、批判した。

しかし、パリ同時多発テロ以降、非常事態宣言(事実上の戒厳令)が発令されて、今また延長されていることを踏まえれば、戦時下にあることは間違いない。

非常事態3カ月延長を可決、仏国会5月末まで 2016.2.17 11:27 産経ニュース

仏下院、対テロ法案可決、再発防止へ治安最優先 2016.3.9 10:19 産経ニュース

国民議会(下院、定数577)は非常事態宣言を5月26日まで延長する法案を可決、元老院(上院、定数348)はすでに通過している。宣言は3度目の延長となる。

さらに包括的な対テロ法案が、国民議会において賛成474、反対32で可決され、法案は元老院に送付される。法案は疑わしい人物を令状なしで4時間拘束することを可能とし、ISIS(イスラム国)支配地域からの帰還者を監視下に置き、スマートフォンのロック機能を解除する権限も含まれる。つまり、非常事態宣言が恒久化されることとなった。

仏テロ捜査中に銃撃戦、容疑者1人射殺 警官4人負傷 ベルギー首都 2016年03月16日 07:03 AFP BB NEWS

テロリストの策源地となっているベルギーのフランス語圏のワロン、もしくは首都のブリュッセルにも捜査の手が伸びている。

ベルギーとフランス両国の警察がブリュッセル南部フォレ地区で家宅捜索中に、発砲されてそのまま銃撃戦となった。現在も追跡中の容疑者のひとり、サラ・アブデスラムはパリ同時テロの襲撃発生から数時間後にベルギー国内に逃亡した。

高速鉄道でパリ~ブリュッセル間は約1時間半、宗教もカソリックが約7割強、インフラ企業ではガス・電気にGDFスエズ、金融にデクシアといったフランス合弁・傘下が多く、ユーロ圏でフランスとの資本の移動が自由である。

ベルギーは、1つの首都(ブリュッセル)、2つの自治地域(ワロンとフランデレン)、3つの言語共同体(ワロン語、ドイツ語、フラマン語)を持つ連邦国家である。連邦制を採用する過程で6つの警察組織が作られ、ブリュッセル首都圏ではフラマンとワロンの対立の中でムスリムが捜査の網をすり抜けていた。

二度の世界大戦において、一度目はドイツ帝国の通路として蹂躙され、二度目はアルデンヌの森を突破する機甲師団の陽動のために蹂躙されたベルギー。そして三度目はドイツの難民政策に振り回され、ベルギーからフランスへとテロリストが攻め込んでいる。

矜持のために敗れるフランス社会党

12月6日と13日に行われたフランスの地域圏議会(Conseil régional)選挙で、辛くも与党・社会党を中心とする左派連合は極右政党・国民戦線の第1党進出を退けた。

しかし、事実上の戒厳令を布く最中にも関わらず、危機バネによる支持率上昇は起きず、サルコジ前大統領率いる共和党を中心とする右派連合が13地域圏のうち7地域圏で過半を制した。5地域圏は社会党、残るコルシカ島は地域政党が獲った。そして、コルシカ島では反イスラムデモが起きている。

仏コルシカ島、3日連続で反イスラムデモ 2015年12月28日 12:44 AFP BB NEWS

フランス極右「国民戦線」は勝利したのか?:地域圏議会選挙 2015年12月18日 15時26分 JST ハフィントンポスト日本版

左派連合が右派連合に過半数を奪われても、国民戦線の第1党進出を防ごうとしたのは、2回目の投票で第1党になった党の名簿トップが地域圏議会の議長になるからだった。中央集権的なフランスにあって分権化を進めた地域圏の議長は行政の執行権を有しており、地域圏の権限を非テクノクラート出身の極右政党の面々に与えたくなかったのだろう。

ブルボン朝の絶対王政と革命の共和政と帝政がいずれもパリに権限を集中させねばならなかったように、もともとフランス人は地域性と党派性が強い。小党乱立による政権短命化から第三共和政が混乱し続けたことから、複数回選挙で擬似的な二大政党をつくる仕組みとなっている。

地域圏議会選挙は拘束名簿方式の比例代表制。大統領選と同様に1回目の投票だけで単一政党が単独過半数を取ることがなく、1回目投票の結果を受けて、2回目投票のための連立協定を組み直し、有権者は最善がなければ次善の候補に投票する。

第1党には定数の25%の議席が与えられ、残り75%の議席は第1党含めて得票率に応じて配分される。

今回の地域圏議会選挙では、国民戦線は第1回投票に際して、12の地域圏中6地域でトップに立ち、党首マリーヌ・ルペンと姪のマリオン・マレシャル・ルペンが出た北部ノール=パ・ド・カレー=ピカルディ地域圏(2016年にノール=パ・ド・カレーとピカルディが統合再編)と南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏で、40%越えの得票を得た。

2回目投票で国民戦線を蹴落とすためにこの2地域で社会党は立候補を取り下げて、共和党に他の地域圏での立候補を取り下げる協力を求めた。オランド大統領は社会党候補を説得して、立候補を取り下げようとしたが、一部の候補は大統領に叛旗を翻した。リベラルメディアは国民戦線叩きに走り、乗せられた有権者は国民戦線以外に投票した。

国民戦線潰しに社会党と共和党が協力したかというとそうではない。立候補取り下げに際して、比例議席の割り振りについて協定を結ぶのが通常なのだが、今回はそれがなく、北部ノール=パ・ド・カレー=ピカルディ地域圏と南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏は結果として、共和党は65%~70%、国民戦線は25%~30%の議席を獲得する一方、社会党及び左派連合の議席は皆無。前回選挙では第1党として議長も出していた社会党は壊滅したのだ。

オランド大統領と与党・社会党は、地域圏議会の少数派となっても、一定の影響力は保持できるし、党の地域組織の維持のためにも必要であった。まるで矜持のために社会党は敗北した。ここまでして地域圏の行政執行権を渡したくなかったのか。国民戦線が地域圏の運営に失敗して支持率を落とす可能性もあったのに、である。

グローバリゼーションの反作用に捕食されるリベラル

アメリカナイゼーション=グローバリゼーションの反作用として、にわかに台頭してきた欧米社会のポピュリストと、イスラム社会の原理主義過激派は、欧米社会のリベラル勢力を喰らいながら、共に成長している。そして、イスラム原理主義過激派(ジハーディスト)がNATOとロシアの直接対決を避ける大義名分になっている。

Trump’s Anti-Muslim Plan Is Awful. And Constitutional. DEC. 8, 2015 The New York Times

米国のイスラム教徒への嫌がらせ激増、ホットライン報告 2015.12.10 Thu posted at 18:33 JST CNN日本版

イスラム教徒入国禁止、共和党支持者で賛否拮抗 2015年12月11日 10:20 JST WSJ日本版

Manuel Valls warns of ‘civil war’ if National Front wins power December 11, 2015 12:20 pm FT

揺れる米国のイスラム教徒「変わる必要あるか」―テロで議論噴出 イスラム教改革論も浮上 2015年12月11日 13:50 JST WSJ日本版

ISが狙う「報復の連鎖」、試される西側社会 2015 年12月11日 14:50 JST WSJ日本版

[FT]本当の危険はトランプ氏ではなくルペン氏 2015/12/11 16:15 日経

The Return of History DEC. 11, 2015 The New York Times

テロを惹起することでイスラム教徒全体への反感を引き起こし、イスラム教徒の欧米社会への融合は不可能であるという共通認識が拡散して定着したとき、イスラム教徒のアラブ・中東地域への“エクソダス”が発生するかもしれない。それは暴動や内乱、内戦を伴う。

ナチス・ドイツの敗北と滅亡は、ドイツ系住民の追放という形で周辺諸国との間の民族問題を解消させたし、イスラエル建国という形で欧州のユダヤ人差別にひとつの決着をつけた。暴力によって棲み分けがなされた事実は揺るがせない。

この事実を軽視する欧米のリベラルは、我が国のリベラルも同様だが、軍事力による実力行使や経済力による利権分配を適切に行えないがために、自分たちの主張とは真逆の方向に進むことを止められない。

策を講じられないので、反対陣営のポピュリストにレッテルを貼って引き摺り下ろそうとするが、自分たちが実際には非寛容で、しかも無能であることには気付かない。

フランスの内相は、国民戦線が勝利すれば“内戦が起きる”と云っているが、これもまた暴言であろう。フランスは、むしろ第三共和政崩壊前夜のようになっているのではなかろうか。

ムスリム系の移民を欧米社会から排除して、イスラム社会に回帰させるダイナミズムが発生することについては、テロを起こす側と起こされる側の利害が一致している場合もある。

すでにISIS(イスラム国)を大義名分に英国、フランス、ドイツ、米国、トルコ、ロシアが中東の紛争に参加している。冷戦時の代理戦争を戦う国家はなく、ISIS(イスラム国)の存在が列強同士の正面衝突を避ける名分になっている。

リベラルはこうした冷徹な現実に目を向けるべきだろう。

極右が穏健リベラルに見える摩訶不思議

フランスの極右政党、国民戦線(Front National)がパリ同時多発テロを受けて、地域圏議会(Conseil regional)の選挙で票を伸ばしている。これに危機感を抱いたオランド大統領の社会党は、第2回投票で自らの立候補者を取り下げて、サルコジ前大統領の率いる共和党との協力を呼びかけている。

かつて、2002年フランス大統領選では、第1回投票で国民戦線のル・ペン前党首(現在の党首マリーヌ・ル・ペンの父親)が第2位に入り、決選投票に際して、左派勢力がデモと集会を繰り返し、中道右派のジャック・シラクへの投票を呼びかけた。この左右両派の協力をもう一度という訳だ。

焦点:仏主要政党、極右阻止で足並みそろわず 2002年と様変わり 2015年 12月 8日 13:18 JST ロイター

ところが左右両派で足並みが揃わない、とされている。原因のひとつに、国民戦線の世代交代とリベラル化に伴う支持層の変化が挙げられるだろう。

もともと前党首ル・ペンの支持層はカソリックの宗教保守であり、彼も人工中絶と同性愛への反対を掲げていた。しかし、マリーヌ・ル・ペンに代わって以降は、人工中絶と離婚、事実婚を容認し、同性愛に一定の理解を示して、カソリックの宗教保守的なスタンスはなくなり、むしろリベラル化している。

経済政策では、サルコジ前大統領が新自由主義寄りであるのに比べ、中小企業や小規模な農民の保護や女性や若年層の福祉に積極的であり、中道左派から左翼寄りになっている。

つまり、現在の国民戦線はポピュリズム政党であることは間違いないが、極右とレッテルを貼るには、その政策がリベラルすぎるように見える。フランスのリベラルが極端に行き過ぎて、彼らが極右に見えるのだとしたら、日本人は皆、極右に見えることだろう。

そして敵は三度、ベルギーから浸透してきた

テロリストの策源地がベルギーのフランス語圏のワロン、もしくは首都のブリュッセルに存在している事実は、フランスとベルギーの一体化と同時にベルギーの国家の統一性の無さを示している。

高速鉄道でパリ~ブリュッセル間は約1時間半、宗教もカソリックが約7割強、インフラ企業ではガス・電気にGDFスエズ、金融にデクシアといったフランス合弁・傘下が多く、ユーロ圏でフランスとの資本の移動が自由である。

ユーロネクスト・ブリュッセルの株価指数BEL20のうち、アジアス(リーマン・ショックで解体されたフォルティスの保険部門の継承会社、フォルティスのそれ以外の部門はBNPパリバとABNアムロに売却)、GDFスエズ(フランス最大のガス供給者であると同時にベルギーでの電気・ガス供給者)、デクシア(フランスの地方自治体向けの銀行と合併)などがフランスの企業と一体化している。

欧州の大国、英仏独の緩衝国家として誕生した経緯のあるベルギーは、統一性に乏しく、1つの首都(ブリュッセル)、2つの自治地域(ワロンとフランデレン)、3つの言語共同体(ワロン語、ドイツ語、フラマン語)を持つ連邦国家である。事実上、フラマンとワロンのふたつの国に分かれた同君連合国家のような状態と云える。かろうじて国王がふたつの国の接着剤となっている。

国民国家としてのベルギーの紐帯はカソリックと、地勢上は必ず中立を必ず破られるがゆえのドイツ軍への抵抗心、ときに人気・不人気のある代々の国王によって辛うじて支えられてきた。

しかし、欧州連合(EU)の中心地としての地位を確立する間に国民国家の性格を薄めていき、もともとの中継貿易地としての性格も相まって、上記の複雑な連邦国家の形態になった。この連邦国家の形態を失敗国家とする記事には、連邦制を採用する過程で6つの警察組織が作られ、ブリュッセル首都圏ではフラマンとワロンの対立の中でムスリムが捜査の網をすり抜ける結果になったことが示唆されている。

二度の世界大戦において、一度目はドイツ帝国の通路として蹂躙され、二度目はアルデンヌの森を突破する機甲師団の陽動のために蹂躙されたベルギー。そして三度目はドイツの難民政策に振り回され、ベルギーからフランスへとテロリストが攻め込んでいる。

Belgium is a failed state 11/19/15, 5:30 AM CET Politico

アングル:ベルギーコネクション、バー店主からパリ自爆犯へ 2015年 11月 17日 16:53 JST ロイター

[ブリュッセル 17日 ロイター] - ベルギーのブリュッセル首都圏モレンベーク区長は2週間前、あるバーの閉店を命じた。このバーが麻薬取引の場となっていたことが、警察の捜査で明らかになったからだ。

このバーの店主だったブラヒム・アブデスラム容疑者(31)は今月13日、過激派組織「イスラム国」による報復攻撃として、フランスのパリにあるカフェで自爆した。

ブラヒム容疑者がなぜバーの経営者から自爆犯になったのかは謎のままだ。バーのマネジャーを務めていた弟のサラ容疑者は指名手配されているが、いまだ行方が分かっていない。

(中略)

<過激な暴力の温床>

モーレンベーク区長は、同地区が「過激な暴力の温床」だとし、若者の高い失業率と過密状態が問題だと指摘。ベルギーの閣僚らも「一掃する」と約束している。

アブデスラム兄弟は失業者ではなかったとみられている。ベルギー紙が最初に報じ、ロイターが調べた公的文書によると、ブラヒム容疑者はブリュッセル生まれのフランス人で、バーを経営するため2013年3月に会社を設立した。

兄弟の家族は、閉店の警告を受けた後の今年9月30日、バーをベルギー南部に住所がある人物に売却。ロイターは同人物と連絡を取ることができなかった。

公的文書に記載されている兄弟の実家は、モレンベーク区庁舎に面した場所にある。警察に拘束されていた弟のモハメドさんは記者団に対し、家族が衝撃を受けているとし、「私たち家族はこれまで、法的に問題を起こしたことなどなかった。両親はショック状態にあり、状況を飲み込めていない」と語った。

(後略)

2015年の『アルジェの戦い』

2015年1月に「シャルリエブド」社が襲撃されたテロよりも、さらに大規模な同時多発テロがパリで起きた。フランスは事実上の戒厳令下に入った。

アルジェリア独立の際に繰り広げられたテロと掃討作戦を想起するとき、地中海を挟んだ対岸のマグレブで行われていた戦いがフランス本土で始まったのだ、と暗澹とした気分にさせられる。

パリ同時多発攻撃、多国籍が絡んだ犯行=検察 2015年 11月 15日 13:24 JST ロイター

パリ同時攻撃で死者120人以上、仏大統領が非常事態宣言  2015年 11月 14日 15:25 JST ロイター

1966年のヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞した名作『アルジェの戦い』は、アルジェリア独立戦争におけるアルジェリア民族解放戦線(FLN)とコロン(ピエ・ノワールとも呼ばれるフランス人入植者)のテロの応酬、そして空挺部隊による掃討戦を描いている。

普段ブルカやベールを被る女性テロリストたちにカスバの検問を突破させるため、ピエ・ノワールのようにメイクやファッションや仕草、言葉遣いで偽装させる手口のリアリティなどは、自身もパルチザンに身を投じた監督ジッロ・ポンテコルヴォの面目躍如というべきだろう。

のちのド・ゴールの第五共和政樹立や五月革命の鎮圧に貢献した大佐(史実ではジャック・マシュー准将)が、全容を把握できないように構築されたテロ組織を自由フランス軍で培ったレジスタンスの経験を下に、ゼネストの一斉検挙と容疑者への拷問によって壊滅させていくのは圧巻だった。

またピエ・ノワールの群衆が目の当たりにしたテロに憤慨して、実行犯でもない現地人の売り子の少年に暴行を加え、警官が救い出す様などはフィクションながら云いようのない不条理を感じさせた。

この不条理な戦いがカスバではなく、首都パリで行われている。第四共和政を滅ぼした植民地の戦いがフランス本土で始まったというべきか。アルジェリア独立戦争でフランス側に協力して、本国を逐われたムスリムの移民が貧困層に落ちて以降、それは運命づけられていたかのように。

“ライシテ(政教分離)”と菜食主義

フランスの公立学校では、食生活の戒律に抵触しない菜食主義(ベジタリアンもしくはビーガン)の給食を採用しようという提案を一議員が行おうとしている。

フランスの“ライシテ(政教分離)”の原則については、2015年5月12日のエントリーを再掲する。

フランス政府の考え方とは「人間は経験しながら理性を獲得してから、何らかの主義主張や宗教戒律を選択して、自ら縛られるのは構わないが、経験が不足して理性の確立していない未成年のうちに、それらを選択してはならない」というものだ。

宗教改革や市民革命の影響が垣間見られるが、幼児洗礼を禁じて信仰告白を優先するかのように、先天的、先験的(アプリオリ)な宗教の強制を拒んでいる。

公的な学校では、生徒の良心の自由を涵養するために一度、あらゆる宗教的な束縛から解放させて無宗教化させる。その場所では宗教的帰属を明らかにするシンボルや衣裳・風俗はすべて主体性を回復させる目的に沿って排除されなけらばならない。

すべての宗教から逃れうるのだという経験を獲得して、初めて真の良心の自由をも獲得するのだという考え方に基づいている。十字架であれキッパであれベールであれ、外せないと拒否するからには宗教的な強制が心理的に作用しているはずであって、それ自体が良心の自由を涵養する妨げになっている、と判断される。

つまり、宗教的なシンボル・衣装・風俗と同様、戒律による食生活の制限も良心の自由の涵養を妨げる原因と断じられる。

フランス革命の成果のひとつ、“ライシテ(政教分離)”はカソリックの“聖俗二元論”から発展した。パウロが残した「カエサルの物はカエサルに」という言葉が教会法と世俗法の分離を生み出した。

外なる権力に服しても、内なる良心の自由は侵されない。聖典の民であっても、カソリックとプロテスタント以外はこの“聖俗二元論”を理解できない。正教会、ムスリムには近代デモクラシー成立の基盤がない。実にロシアとアラブの民主主義の困難さはここに存する。

「給食にベジタリアン料理」、政教分離の解決策に? フランス 2015年09月07日 10:52 AFP BB NEWS

【9月7日 AFP】フランスの公立学校の食堂で、豚肉を出すべきか否か?

 新学期が始まり、3つの町の町長が、教育と宗教を厳しく分離させた同国の厳格な原則を尊重することを理由に、学食での豚肉抜きの選択肢を禁止したことで、この問題が再び表面化し、差別だとする非難の声が上がっている。

 民主独立連合(UDI)のイブ・ジェーゴ(Yves Jego)議員は、世俗主義的原則を迂回(うかい)し、豚肉を食べないユダヤ人やイスラム教徒、一般的に肉を食べない多くのヒンズー教徒などのために、実用的な手段として、学校でベジタリアンの食事を提供することを義務づけるための草案を提出する意向だ。

「カトリックの子どもに、他に何もないからと、(イエス・キリスト(Jesus Christ)が十字架にかけられた)聖金曜日(Good Friday、受難日)に肉を食べろと、ユダヤ人やイスラム教徒の子どもに豚肉を食べろと強要できるのか?」と同議員はインターネットに掲載した請願書で訴え、これまでに12万3000人分以上の署名を集めた。「私は…理由はどうあれ、魚や肉を食べたくない子どもが健康的な食事をすることができるように、全ての学校の食堂に通常の食事の代わりとして、ベジタリアンの食事の提供を義務付ける草案を提出する」と語った。

■「豚肉を食べないだけ」

 学校の食堂で子どもたちに何を提供するかについての論争は、フランスで長年にわたり繰り返されてきた。1905年に国家と宗教を分離する政教分離法が制定された同国は、イスラム教徒やユダヤ人の人口が欧州で最も多い国の一つでもある。

 学校で子どもたちに提供する食事に関する包括的な指針はなく、全国の3万4000人以上の町長・市長が独自に決めている。

 多くの学校では、豚肉など肉料理が提供された際、宗教的な要求を満たすために代わりの料理を提供しているが、イスラム教の「ハラル」やユダヤ教の「コーシャー」食品など、宗教の戒律に従った食品を使った料理は政教分離に反するとして避けている。

 フランス市長連合会(Association of French Mayor)で学校給食の内容を監督するイザベル・マンション(Isabelle Maincion)氏によると、ハラルやコーシャー食品はもちろん、豚肉を提供するかどうかの議論が行われたことはないという。

「私たちは、バランスの取れた食事を提供するという、現在の規則に応えるだけ」で、「政教分離の学校では、それ以外の要求を気に掛ける必要はない」と指摘。「豚肉は頻繁に出されるものではないし、保護者たちもそのことを知っている。豚肉メニューの日は、子どもたちは豚肉を食べないだけで、夕食時に親がタンパク質不足を補う。簡単な話だ」と述べた。

■公立校離れ

 しかし、住民の民族多様性とユダヤ人の多さで知られる、パリ(Paris)郊外サルセル(Sarcelles)のフランソワ・ピュポーニ(Francois Puppon)市長にとって事情は異なる。

「こうした極端な立場を取る人々は、自分たちが求めていることと正反対のことをしていると理解できない」と指摘。「彼らは公立学校と運命を共にするだろうが、そこに残る生徒は誰もいないかもしれない。信仰心の強い人々は去り、公立学校はもはや様々な人々が交流する、あらゆる人々にとっての対話と教育の場ではなくなるだろう」と述べた。

 同市長は、多くのユダヤ人の子どもたちが今、公立学校でコーシャー食品が出されないなどの理由で、私立学校に通っているとし、「子どもたちを公立学校に入れたいが、子どもたちにはコーシャー食品を食べさせたいという保護者は以前からいたが、最近では、イスラム教徒からも同様の意見が出始めている」と語った。

 では、イブ・ジェーゴ議員が提唱するベジタリアンの食事という選択肢はどうだろう?

 費用がかかりすぎ、バランスのよいメニューを作るのが大変で、子どもたちは恐らく避けるだろうとの批判がある。

 しかし、中部サンテティエンヌ(Saint-Etienne)では1月から、ガエル・ペルドゥリオ(Gael Perdriau)新市長が、一部の生徒が宗教的な理由で食べられない食品があることに気づき、保護者などに追加費用を課すことなくベジタリアンの食事を提供している。

 現在は、生徒の15%が、レンズ豆のサラダとニンジンとコメ入りのオムレツ、チーズ、果物といったベジタリアンメニューを選択しているという。「こうしたメニューは、菜食主義や宗教など様々な問題に対処している。もしある種の食品が気に入らないのであれば食べなければいい、などという議論は、私は少し不健康だと思う」と同市長は語った。(c)AFP/Marianne BARRIAUX

フランスは永遠にドイツに呻吟する

フランス第三共和政はナチス第三帝国に滅ぼされた。遡ればフランス第二帝政もプロイセンに滅ぼされた。そのプロイセンはナポレオン三世の帝冠を奪い、ドイツ帝国(第二帝国)となった。

第一次大戦によってドイツ帝国は滅びた。カイザーの巻き起こした戦火は、ルール地方とロレーヌ地方、それにルクセンブルクとベルギーのワロン地方にまたがって存在した一大鉄鋼業のコンプレックスを粉々に砕いた。それだけでなく塹壕戦によって、フランス北東部を焦土にした。

それでもフランスは第一次大戦に勝った。しかし、石炭生産高は戦前比約80%減、鉄鋼生産高及び農産物生産高は約60%減。ヴェルダンの戦いに代表される人類史上最大の消耗戦は、動員兵力の66%以上の損害をフランスに与えた。青年人口の27%が失われ、就労人口の10%が失われた。また、戦傷によって150万人近い身体障碍者が発生して、5万人の子供が孤児となった。

これらの人的損害は人口動態を修復できないものとした。工業基盤の弱体化から税収は不足し、増税せねば財政基盤は弱まる。これを巡って左右対立は進み、終戦から10年間のうちに13回も内閣が入れ替わる有り様だった。国力の低下と内政の混乱は、ワイマール共和国に対する強硬姿勢につながり、ナチス台頭の一因となり、破滅を招いた。

陸軍の動員力を防衛の基礎とする大陸国家の動員力にとって、この出生率に関するトラウマは、現在の家族制度の解体と無制限にも思えるムスリムの流入に繫がっている。

ムスリムをフランスに同化できないまま、ドイツの影響力からも脱することができない運命を前にして、歴史人口学の泰斗エマニュエル・トッドは、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』を著している。

ムスリムをエガリテの名の下にフランス人にさせることが叶わないように、ドイツの人口圧力と工業力を回避・克服するために、フィクションとしての欧州統合を推進したフランスだったが、やはり現実はひっくり返せなかった。

「欧州におけるドイツ」は、「アジアにおける中国」か? 2015.06.10 07:30 本の話WEB

(前段省略)

 最も重要な主題はドイツだが、「日本の読者にきっと役立つ」とトッド氏自身が述べているように、「『ドイツというシステム』は驚異的なエネルギーを生み出し得るのだということを認める必要がある。歴史家として、また人類学者として、私は同じことを日本についても、(略)言うことができる」(三〇頁)などと、随所に直接、日本への言及がある。

 同じ直系家族構造(長子相続と不平等な兄弟関係が特徴)のドイツと日本の比較もある。

「日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も似ており、経済面でも非常に類似しています。産業力が逞しく、貿易収支が黒字だということですね。差異もあります」(一五七頁)

「〔ドイツの〕輸出力が途轍もないとはいえ、技術の面で、たとえば日本のレベルには遠く及ばない」(二一三頁)

「日本の文化が他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれているのに対し、ドイツ文化はむき出しの率直さを価値付けます」(一五七頁)

「最近日本へ行き、津波で荒らされた地域を訪れた(略)。日本人の伝統的社会文化の中心を成すさまざまなグループ──共同体、会社など──の間の水平の連帯関係が、事態に対応できなくなった政治制度に代わって、地域の再建・復興を支えていたのです。ドイツに比べ、日本では権威がより分散的で、つねに垂直的であるとは限らず、より慇懃でもあります」(一六一頁)

 さらに、「現在起こっている〔ウクライナでの〕衝突が日本のロシアとの接近を停止させている。ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある」(七一頁)と、日本の外交についての、より踏み込んだ具体的な指摘もある。

 まずは本書のこういった点が日本の読者の関心を惹くだろう。

 しかし、本書の主題は何と言っても、冷戦終結後のドイツの擡頭が招きよせるヨーロッパの危機である。通常、ドイツに比せられるのは日本である。トッド氏も、同じ家族構造のドイツと日本の文化や経済システムの類似性を指摘しているのは、上に見た通りである。だが、地域の安全保障の問題として考えた場合、ドイツに比せられるのは、日本であるよりも、アジアにおける中国なのかもしれない。

たとえば、「ドイツと比較される東アジアの国といえば、なにかについて日本が対象にされ、日本人自身もなんとなく日独両国の間には共通性が多いと思いこんでいる」と指摘する歴史学者の野田宣雄氏は、次のように述べている。

「だが、実際には、冷戦の終結を境として、日独両国は決定的に異なる道を歩みはじめるようになったと考えた方がよい。(略)統一後のドイツが明らかに『中欧帝国』形成の道を歩もうとしているのにたいして、日本には、東アジアで『帝国』を形成しようとする意志もなければ、そのための地政学的あるいは歴史的な条件も乏しいからである。結論を先にいえば、ヨーロッパにおけるドイツと同様に東アジアにおいて『帝国』を志向しているのは、中国であって日本ではない。(略)もちろん、ドイツのめざす『中欧帝国』と中国が志向する『中華帝国』とでは、その内容も性格も大いに違う。しかし、重要なのは、地域の中心部における『帝国』の建設にともなって、周辺の諸国家が深刻な影響を受けるという点では、ヨーロッパも東アジアも同じだということである。(略)その意味では、現在の日本がおかれている国際的な位置は、ヨーロッパにおけるドイツのそれよりも英、仏、伊といった諸国のそれと比定すべきであろう」(『二十世紀をどう見るか』文春新書)

 トッド氏によれば、ドイツの擡頭は、アメリカ帝国の衰退と連動している。

「一九四五年の勝利の遺産、アメリカによるヨーロッパの制御の鍵、それはドイツをコントロールすることだ(略)。二〇〇三年からのドイツの擡頭を確認すること、それはアメリカ帝国の崩壊の始めを確認することだった」(三一~三二頁)

 こうした地政学的な変化は、ヨーロッパに限られない。アジアも同様だ。「アメリカシステムとは、ユーラシア大陸の二つの大きな産業国家、すなわち、日本とドイツをアメリカがコントロールすることだ」(六一頁)とした上で、トッド氏は次のように言う。

(段落省略)

 しかし、見逃せないのは、擡頭するドイツと中国の接近であろう。

「『ドイツ帝国』は最初のうちもっぱら経済的だったが、今日ではすでに政治的なものになっている。ドイツはもう一つの世界的な輸出大国である中国と意思を通じ合わせ始めている。果たしてワシントンの連中は憶えているだろうか。一九三〇年代のドイツが長い間、中国との同盟か日本との同盟かで迷い、ヒトラーは蒋介石に軍備を与えて彼の軍隊を育成し始めたことがあったということを」(三七頁)

 二〇一五年三月に来日したドイツ首相のメルケル氏。二〇〇五年の首相就任以来、ほとんど毎年のように中国を訪問していながら、来日は実に七年ぶりのことだった。滞在中は、「歴史認識問題」をめぐる発言が話題になったが、訪日の真の目的はどこにあったのか(ロシアへの接近を図りたい安倍政権への牽制という見方もある)、東欧諸国との「和解」をめざした戦後ドイツの「東方外交」も、実は周到な計算にもとづくものではなかったか──こういった動きを読み解く上でも、本書は、多くのことを教えてくれるだろう。

 ここで示したのは、ヨーロッパの危機を主題とした本書を極東の日本で読むための「補助線」のひとつにすぎず、トッド氏の発言から何を読み取るかは、もちろん読者の自由である。

 本書の刊行を快諾していただいたトッド氏と、翻訳していただいた堀茂樹氏に謝意を表したい。

(「編集後記」より)


日仏首脳、安保協力推進を確認 南シナ海の懸念共有 2015/6/7 21:00 日経

【エルマウ(ドイツ南部)=佐藤理】安倍晋三首相は7日昼(日本時間同日夜)、フランスのオランド大統領とエルマウで会談し、防衛装備品の輸出や共同開発を中心に安全保障分野での協力を推進していくことを確認した。中国による南シナ海での岩礁埋め立てについては「懸念を共有する」との認識で一致した。

 首相は「安保、防衛分野の協力が着実に進展している」と強調。国会審議中の安全保障関連法案に触れ「成立すれば日仏協力の余地も拡大する」と説明した。大統領は「日本の取り組みへの連帯を表明する」として支持する考えを示した。

 南シナ海問題に関しては首相から言及した。「中国による埋め立ては急速に進んでいる。フランスと懸念を共有したい」と訴えた。大統領は「南シナ海への安倍首相と日本の懸念を共有する」と応じ、中国の「力による現状変更」に批判的な姿勢を示した。

 両首脳はウクライナ問題を巡り、ロシアを含めたすべての当事者が停戦合意を順守する必要があるとの認識で足並みをそろえた。首相は「圧力とともに対話の継続も重要だ。北方領土問題の解決に向け、ロシアとは首脳間の対話が必要だ」と、日本の立場に理解を求めた。大統領も「ロシアの存在はシリアやイランでの問題解決にも不可欠だ」と、対話を重視していくことに同調した。

 大統領は12月にパリで開く国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)への協力を要請した。首相は「すべての国が参加する枠組みの構築に協力したい」と答えた。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に関して年内の大筋合意に向け協力することで一致した。

“ライシテ(政教分離)”の戦いは続く

フランス北東部の公立学校に通うムスリムの女生徒が、宗教上の理由から体の線を隠す黒い長いスカートを穿いて登校したために出席を断られた。公的機関においては宗教的な衣裳を排除する理由にはフランスの“ライシテ(政教分離)”の原則がある。

フランス国民がフランス国家に帰属するためは「自由・平等・博愛」に表される人間の理性を最重要視する宗教に帰依しなければならない。

フランス政府の考え方とは「人間は経験しながら理性を獲得してから、何らかの主義主張や宗教戒律を選択して、自ら縛られるのは構わないが、経験が不足して理性の確立していない未成年のうちに、それらを選択してはならない」というものだ。

宗教改革や市民革命の影響が垣間見られるが、幼児洗礼を禁じて信仰告白を優先するかのように、先天的、先験的(アプリオリ)な宗教の強制を拒んでいる。

公的な学校では、生徒の良心の自由を涵養するために一度、あらゆる宗教的な束縛から解放させて無宗教化させる。その場所では宗教的帰属を明らかにするシンボルや衣裳・風俗はすべて主体性を回復させる目的に沿って排除されなけらばならない。

すべての宗教から逃れうるのだという経験を獲得して、初めて真の良心の自由をも獲得するのだという考え方に基づいている。十字架であれキッパであれベールであれ、外せないと拒否するからには宗教的な強制が心理的に作用しているはずであって、それ自体が良心の自由を涵養する妨げになっている、と判断される。

この考え方が理解できない限り、フランスのムスリム移民はフランス国民にはなれないだろう。

黒ロングスカートは宗教的?イスラム教女子生徒が出席禁止に、仏 2015年04月30日 16:37 AFP BBNEWS

【4月30日 AFP】フランス北東部の学校で、黒いロングスカートを着て登校したイスラム教徒の女子生徒(15)が「宗教性を誇示した服装」だとして授業への出席を2度にわたって禁止され、非難の声が起きている。

 この女子生徒は今月、仏北東部シャルルビルメジエール(Charleville-Mezieres)にある学校で、校長から授業への出席を禁止された。女子生徒は体の線を隠したいイスラム教徒の女性が一般的に着用する黒い長いスカートをはいていたが、報道によると、このスカートが校長から「露骨に」宗教的だとみなされたという。

 世俗性を厳格に重んじるフランスの法律では、学校内で特定の宗教への信仰が明らかな格好をすることを禁じている。

 地元教育当局のパトリス・デュト(Patrice Dutot)氏は28日、AFPの取材に「女子生徒は排除されたわけではない。宗教色のない服装に着替えてくるよう言われたが、父親が学校に戻らせなかったようだ」と説明した。この女子生徒は、いつも学校の敷地内に入る前にベールを外していたという。

 フランスでは、学校の世俗性を定めた2004年施行の法律により、イスラム教のベールやユダヤ教のキッパ(男性用の帽子)、キリスト教の大きな十字架などを教育施設内で着用することは全面的に禁止されている。ただし「宗教性を控えめに表すもの」は認められる。

 女子生徒は仏日刊紙アルデネ(L'Ardennais)に対し「ありふれた、とてもシンプルなスカートで、これといって目立つ特徴もない。宗教的な意味なんて全然ない」と語った。

 しかし、地元教育当局は声明で、こうしたスカートを着用することが組織的な「挑発」になる可能性もあると指摘。複数の生徒たちによる抗議行動として行われれば、その後に「ベールをかぶるなどのさらに目につく行動」が続きかねないとして、「教育現場における世俗性の枠組みをしっかりと再確認し、確実に行う必要がある」と述べている。(c)AFP


参考URL:
フランス公立学校における「スカーフ事件」について 東京大学文学部 大学院人文社会系研究科(PDF)

欧州全域に拡がる非対称戦

止めどない不法移民の流入を防ぐために移民の出先を豊かにして、予め社会の不安要因を取り除く意味合いで考えれば、支那本土への投融資は充分、所期の目的を果たした。

インバウンドの観光客として富を吸い上げる方が、欧州の政策と比べれば大いにマシといえるし、彼らにモノとサービスの豊かさを実感させることは、中国共産党に対する国内消費重視・社会保障充実への転換圧力にもなるだろう。

しかるにシリアの富裕層が難民化するに至っては、欧州の失敗を強く意識する。

不法移民、前年比2倍超=密航業者が暗躍-EU 2015/01/14-14:32 時事ドットコム

大型化した密航船は大晦日も元旦もEUを目指す 2015.01.14(水)JBPRESS

ペンが与えるかすり傷は、銃が与えるかすり傷より深い 2015年1月15日(木) 日経ビジネス

分断国家で疎外感=イスラム移民、融合進まず-ベルギー 2015/01/19-18:47 時事ドットコム

【ブリュッセル時事】ベルギーで大規模テロ計画が摘発された事件は、過激組織「イスラム国」などに参加し中東から帰国する欧州出身者によるテロの脅威にさらされている状況を浮き彫りにした。背景として、言語圏で分断された同国でイスラム系移民の融合政策が思うように進まず、移民が行政への不満と疎外感を強めていた現状が指摘されている。

 ベルギーの人口は約1100万人と東京都よりも少ないが、シリアに渡った市民の数は400人に上ると推定されている。人口当たりでは欧州でも最も多い国の一つだ。南北でオランダ語圏とフランス語圏に分かれており、オランダ語圏では分離独立を主張する動きが強まりつつある。民族主義的な主張の矛先がイスラム移民に向かい、「移民は市民生活の脅威」と公言する政治勢力もある。


時事電が伝えるところは理想に傾き過ぎだろう。そもそもムスリム移民は職を求めたのであって、同化を求めたのではない。欧州社会はムスリムの同化を求めず、多文化主義による隔離を選んだ。

北欧諸国に典型的に見られたリベラルな政策は押し並べて、ムスリム移民の疎外感と社会的孤立を深め、そして貧困層への固定化を促進した。

結果、移民の二世・三世は貧困の不満解消や自己充足感を得たり、社会的認知を受けるため、ジハーディストとしてテロに参加していく契機となった。

ベルギー警察が過激派掃討作戦で2人射殺、「大規模テロ」計画か 2015年 01月 16日 08:04 JST ロイター

警察施設標的、大規模テロ「数時間から数日内」に迫っていた 一味はシリア帰りの戦闘員 2015.1.16 11:47 産経ニュース

Terror Suspects Planned To Kill Police In Street Friday, 16th January 2015 07:46 LBC

ベルギーではユダヤ人学校が閉鎖、北部の都市Verviersnでテロ直前に容疑者二人を突き止め、射殺。

ドイツではベルギーのテロ未遂事件の後で、イスラム原理主義過激派11人が逮捕された。さらに250人の警官を動員して、5人のトルコ系容疑者を逮捕。

フランスではユダヤ系スーパー事件に関連してISIS(イスラム国)参画していると思われる10人を逮捕、さらにパリ北駅で爆発物の疑いから駅を一時閉鎖。

と、フランス・ベネルクス三国とドイツでイスラム国過激派の摘発が相次いでいる。

我に神を冒涜する権利あり

下記、NHKの記事によれば、テロを受けた「シャルリエブド」の弁護士は、取材に対して「我々は、冒涜する権利も含めて一歩も譲歩しない。そうでなければ多くの犠牲を払った事件の意味が失われる」と、述べた。

信教の自由は“聖書を逆さまに読む自由”=“悪魔を信仰する自由”に行き着く。ここから敷衍すれば、言論の自由は“神を冒涜する権利”を有すると解される訳だ。

フランス第五共和政の憲法の第1条は「フランスとは、不可分にして、非宗教的、民主的かつ社会的な共和国である」と謳っている。憲法に謳われた国家の非宗教性(ライシテ)を否定すると、共和国そのもの(現在の第五共和政)が否定されてしまう構造になっている。

ライシテについては2012年8月12日のエントリーも参照されたし。

つまりは、フランスとは政教分離を完遂せんとするライシテを原理主義とした国家であって、他の宗教はもちろんのこと、過激派を生み出すイスラム原理主義そのものを一切認めない。テロの社会的衝撃は、デモの規模に見る限り、皮肉なことにライシテの原理主義的な力を蘇らせたのだ。

彼らの戦いは、政体の存続(国体護持)を賭けた戦いであって、そうそう止めることができない、ということになる。

仏新聞社 預言者の風刺画を掲載へ 1月13日 20時27分 NHK Newsweb

武装した男らに襲撃され12人が犠牲となったフランスの新聞社「シャルリ・エブド」が、14日の最新号で、イスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画を掲載することになりました。

「シャルリ・エブド」は14日に事件後初めての新聞を発行するのに先立って、その内容をメディアに公表しました。

「生存者の号」とのタイトルが付けられた最新号の表紙には、イスラム教を象徴する緑を背景に「私はシャルリ」というメッセージを持ったイスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画が掲載され、「すべてが許されます」ということばが書かれています。

イスラム教では、預言者の姿を描くことは教えに反し、預言者を冒とくする行為だとされています。

最新号に掲載される風刺画について、新聞社の弁護士はフランスのラジオ局の取材に対し、「風刺画は預言者だ」としたうえで、「われわれは、冒とくする権利も含めて一歩も譲歩しない。そうでなければ多くの犠牲を払った事件の意味が失われる」と説明しました。

この新聞社では、最新号の発行部数をこれまでの6万部から300万部に増やして25か国で販売する予定ですが、今後、イスラム教徒の反発を招くことことも予想されます。

正念場迎えるフランス第五共和政

対テロ戦争の目的を「国内でのテロを防ぐために、国外にあるテロリストの策源地を叩いて、彼らのエネルギーを削ぐ」と考えたとき、米国のアフガニスタン侵攻とイラク戦争は国内のテロを最低限に抑える一定の成果を上げた。

一方、チェチェン紛争を戦ったロシアのように、テロリストの策源地が国内(チェチェン共和国はロシア連邦内)にある場合はその効果が減殺されてしまう。

2011年3月から始まったリビア内戦への軍事介入(2011年3月20日のエントリー参照)を主導したフランスでは、2012年3月にはアルジェリア系フランス人によるユダヤ人学校銃撃事件(2012年3月27日のエントリー参照)が起きている。

リビアへの軍事介入は、マリ北部(アザワド)、コンゴのルワンダ隣接地(ゴマ)と転戦し、中央アフリカまで到達しても未だ終わらない(2013年12月10日のエントリー参照)。

またISIS(イスラム国)への軍事介入のカウンターとしてテロが起き、国内各地にテロリストの策源地、もしくは潜在的なテロリストの居住地が点在すると考えれば、チェチェン紛争時のロシアよりも苦戦することは間違いない。

そして非対称戦・低強度戦争という難しい戦いを続ける中で、敗北という認識を国民が抱くならば、第四共和政を崩壊させ、第五共和政の成立を招いたアルジェリア戦争のように、現在のフランスの政治体制を根底から覆すことになりかねない。

冷徹ながらもずさんな犯行、仏紙銃撃が示す新世代テロリストの姿 2015年01月12日 16:29 AFP BBNews

パリ食品店襲撃の男、ジョギング男性銃撃にも関与か 仏検察 2015年01月12日 13:43 AFP BBNews

相次ぐ反ユダヤ主義の暴力、国外移住も視野に フランス 2015年01月12日 12:38 AFP BBNews

互いに風刺画に命を賭して

風刺週刊紙「シャルリエブド」本社襲撃に始まった一連のテロは、ユダヤ系スーパー籠城で容疑者が射殺され、一応の収束を見た。最初の攻撃目標にされた「シャルリエブド」は警官、つまり政府側に守られていた。政府が言論を弾圧することが、言論の自由に対する攻撃であって、今回の始まりは、もちろん言論の自由に対する脅威ではなくて、単なるテロに過ぎない。

一見したところ、風刺画は大して面白くもなんともない。とは云え、作者たちが風刺画に命を賭したことを侮蔑する気にもならない。対して、(筆者には風刺そのものの価値が見出せない)この風刺画に命を賭すべきだけの価値を持った侮蔑がある、と受け取った者たちがいたのも事実だろう。

言論の自由と関係なく、ある国の君主なり、ある文明の宗教的権威を風刺するリスクは当然ある。当該国の政府か民間団体か否か、その辺の区別を付けずに激烈な反撃を試みる者もいるのだ。違いを解さない意味では、ロイターのコラムにある“文化戦争”なのかもしれない。互いに風刺画に命を賭しているが、その文化的背景はまったく違うからだ。

韓国の李明博前大統領が天皇陛下を侮辱したことで日本国民は静かに憤怒している。この「シャルリエブド」が2020年の東京オリンピックを揶揄して、放射能防護服を着た聖火ランナーが走る風刺画を載せていたが、我々は銃を取らなかった。一方、北朝鮮は映画「インタビュー」の劇中で金正恩(最高指導者)が殺害されたことでサイバーテロを起こした。

これらを想起し、胸にとどめ置くべきだろう。

米国務省が国民に警戒呼びかけ、武装勢力による相次ぐ攻撃受け 2015年 01月 10日 09:45 JST ロイター

仏週刊紙銃撃犯殺害、食料品店の容疑者も死亡・人質4人犠牲 2015年 01月 10日 08:13 JST ロイター

パリのユダヤ教系スーパーで武装男が複数の人質拘束 2015年 01月 9日 22:13 JST ロイター

焦点:仏銃撃事件で炎上か、イスラムめぐる欧州「文化戦争」 2015年 01月 9日 16:34 JST ロイター

[パリ 8日 ロイター] - イスラム教を繰り返し風刺していたフランスの週刊紙「シャルリエブド」の本社銃撃事件は、欧州各地で反移民の機運を一段と高め、宗教や民族的なアイデンティティーをめぐる「文化戦争」を燃え上がらせる可能性がある。

7日にパリ中心部で起きた同事件では、覆面をした複数の人物が建物に押し入り、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら編集者や著名風刺画家ら12人を殺害。事件直後にはフランス国内で、社会の結束と言論の自由を訴える声が沸き上がった。

しかし、経済停滞と高い失業率に苦しむ同国では、そうした動きはあたかも「束の間の停戦」のように映る。フランスは欧州最大のイスラム人口を抱え、国家のアイデンティティーとイスラム教の役割をめぐる激しい議論の真っただ中にある。

欧州大学院の政治学者で中東問題の専門家オリビエ・ロイ氏は、今回の事件で「フランス国内でイスラム嫌悪が一段と強まるのは必至だ」と語る。

フランスの作家でジャーナリストのエリック・ゼムール氏は著書「Le suicide francais(原題)」の中で、大量のイスラム移民が同国の世俗的な価値観を破壊する一因になっていると書いたが、同著は2014年のベストセラーとなった。また、作家で詩人のミシェル・ウエルベック氏は、2022年にはイスラム教徒のフランス大統領が誕生し、宗教学校や一夫多妻制、女性の労働禁止制度を導入するという内容の小説を発表し、年明けに大きな話題を呼んだ。

シリアやイラクで一大勢力を築いた過激派組織「イスラム国」にフランスからも多くが参加していることも、社会の不安を募らせている。治安当局は、イスラム国の思想に染まった帰国者が大量殺りくを起こす可能性に警戒を強めている。

極右政党の国民戦線(FN)は、事件発生から時を移さず、過去数十年で最悪の政治的暴力行為を移民の問題と結び付け、死刑制度の復活をめぐる国民投票の実施を求めた。

一方、フランスのイスラム教指導者は、シャルリエブドの風刺に対する正しい反論の方法は、流血や憎悪を通じてではないと呼びかけた。

<追悼と報復>

世論調査で支持率を伸ばす国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、「イスラム原理主義」がフランスで宣戦を布告したとし、それに対する強力かつ有効な対策が求められると述べた。

ルペン党首自身は、フランス的な価値観を共有する一般的なイスラム教徒と、「イスラムの名を借りた殺人者」を注意深く区別している。ただ、同党創始者でルペン氏の父親であるジャン・マリー・ルペン氏と、同党副代表のフロリアン・フィリポ氏は、もっとあからさまだ。

フィリポ氏はRTLラジオに対し、「イスラム急進主義と移民が一切関係ないと言う人は別の惑星に住んでいる」と語った。

事件から一夜明けた8日、イスラム教指導者らはシャルリエブドの本社の外で祈りをささげ、国を挙げた服喪に参加するよう信者に呼びかけた。

一方、この日未明には事件への報復とみられる襲撃が相次ぎ、同国西部ルマンのモスク(イスラム礼拝所)で発砲があったほか、東部ビルフランシュシュルソーヌでもモスク近くの飲食店で爆発があった。

オランド大統領は先月、移民を経済および文化的な恵みとして受け入れるよう国民に呼びかけ、景気低迷のスケープゴートにしてはならないと強調した。これに対し、政界復帰を狙うサルコジ前大統領は、不法移民の取り締まり強化を求めている。

昨年フランスで実施された調査では、国民は移民が人口の31%を占めていると考えていることが分かった。これは実際の数字の約4倍となる。フランスは民族的もしくは宗教的な人口統計は取っていないが、ピュー・リサーチ・センターによる調査では、同国の人口に占めるイスラム教徒の比率は約7.5%となっている。国民との意識に差はあるが、同数字は、オランダの6.0%、ドイツの5.8%、英国の4.4%を大きく上回っている。

<問われる多文化主義>

「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」と名乗る団体は、ドイツがイスラム教徒によって侵略されていると主張し、ドレスデンで毎週、最大1万8000人が参加する反移民デモを開催している。

メルケル首相ら政界のリーダーは国民に対し、反移民デモとは距離を置くよう呼びかけ、首相はデモ主催者を「心に憎しみを宿している」と強い調子で非難している。

ドイツでのPEGIDAの台頭は、反ユーロを掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進も関係している。そのPEGIDAは仏紙銃撃を、自分たちの考えを正当化する事件として飛びついた。

フェイスブック上で同団体は「イスラム教徒がフランスで示したのは、自分たちに民主主義の能力がなく、その代わりに暴力と死を解決策と考えていることだ」と主張。さらに「われわれの政治指導者たちは反対のことを信じ込ませたいようだが、ドイツでもまずこうした悲劇が起きなくてはならないのか」と書き込んだ。

昨年11月にドイツで行われた調査では、イスラム教徒ではない国民の57%が、イスラムによる脅威を感じていると答えていた。

英国では、反欧州連合(EU)を掲げる英独立党(UKIP)の党首ナイジェル・ファレージ氏が、仏紙襲撃事件は、自国の中に存在する敵勢力によって起こされたと主張。LBCラジオに対し「英国は他文化から来た人たちに自分たちの文化の中にとどまるよう奨励し、社会に完全に溶け込まないよう仕向けていた」と語った。

この発言に対しキャメロン首相は、自身も多文化主義を失敗と呼んで移民の制限を求める立場だが、今は政治ゲームとする時ではないと非難した。

社会科学者らは、フランス式の同化主義的移民政策も、米国や英国などの多文化主義的移民政策も、社会から疎外された若いイスラム過激派による暴力は抑えられなかったと指摘する。

10年前に映画監督のテオ・ファン・ゴッホ氏がイスラム教徒によって射殺された記憶が残るオランダでは、強硬な反イスラム主義者である自由党のヘルト・ウィルダース氏が、世論調査で高い支持を集めている。ウィルダース氏は仏紙銃撃事件の発生直後、オランダへのイスラム移民流入をストップさせるよう求め、「西側は戦争状態にあり、脱イスラム化すべきだ」との声明を出した。

極右の反移民政党が勢力を伸ばす北欧諸国では、イスラム教指導者らが、自分たちのコミュニティーは暴力の波にさらされていると訴えている。

スウェーデンのイスラム協会の会長オマール・ムスタファ氏によると、イスラム社会を狙った放火事件や人種差別的攻撃が相次いだのを受け、多くのモスクが夜間巡回を始めたという。同氏は「厳しい時期だ。憎しみの力や反民主主義的な力が、右派の過激主義者と宗教的な過激主義者の両方に重い課題を突き付けようとしている」とロイターの取材に語った。

(Paul Taylor記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)


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パリ新聞社銃撃で12人死亡、警察は仏国籍3人の行方追跡 2015年 01月 8日 09:18 JST ロイター

米中の攻勢にさらされるフランス資本

オランド大統領はその就任以降、国内の産業基盤の脆弱化に見舞われている。

まず自動車産業、ルノーは雇用維持を最優先して、昇給の抑制か凍結、労働時間延長、生産量3分の1増加、低価格車と商用車の国内生産回帰を決定。PSAはフランス政府と中国の東風汽車から出資を受けた。次いで電機産業、アルストムはGEとシーメンス・三菱重工の争奪戦を経て、フランス政府からの出資と米国のGEの提携を受け入れた。

2014年6月17日のエントリーでも取り上げたが、

フランスは大ナポレオンの頃までに、ほぼ現在の高等教育機関(グランゼコール)が整備され、その出身者によって政官財と学者・ジャーナリストが構成され、一体化している。

フランス政府と企業が諸外国と巨額取引を行う場合、フランス語圏の旧植民地を地盤に原子力、水道、鉄道などのインフラや武器装備品の売り込みを掛け、その国の購買担当者、果ては決済者である独裁者に便宜を図り、その口座も秘匿管理してきた。不正取引、不正蓄財などと指摘されても、自国のメディアでカウンターを打ってきた。

例えば、ラガルデール社は軍需含む航空宇宙(エアバス・グループ)と雑誌・新聞・テレビを有するメディア(アシェット、傘下にアシェット婦人画報社)のコングロマリットである。

と、述べた。

この政官財学のコンプレックスを守ろうと、米中の資本を受け入れながら、勢力を後退しつつある状況をロイター電やブルームバーグの記事に垣間見ることができる。

エアバス・グループは、中国に工場建設するとともにフランスのダッソー・アビアシオン社の株式を売却する意向。ちなみにダッソー・グループも、上記のラガルデール社同様に軍需含む航空宇宙(ダッソー・アビアシオン)とメディア(ル・フィガロ)のコングロマリットである。

原子力産業のコングロマリットであるアレバは、S&P社がジャンク級に格下げの見解を出したため、資産売却のリストラに踏み込む。リゾート運営のクラブメッドは、買収合戦の混乱を避けるため、取締役会が中国の復星国際の買収案を推すことになった。

ヒルトンが「ウォルドルフ・アストリア・ニューヨーク」を中国の保険会社・安邦保険集団に同ホテルを100年間継続する合意を入れて売却するのと対照的だ。ディズニー社は、パリ郊外にある不振のユーロ・ディズニーに10億ユーロを投じる計画も明らかになった。

ユーロ圏内の量的緩和と財政出動といった経済政策が行われない限り、金融はもちろん産業基盤の脆弱化が進行し続ける、と思われる。

エアバスが中国に第2の工場、暫定合意書調印 2014年 10月 11日 03:59 JST ロイター

パリのディズニーランド、10億ユーロの救済で生まれ変わるか 2014/10/09 02:00 JST ブルームバーグ

仏アレバが今後2年の設備投資を削減、資産も売却へ 2014年 10月 8日 11:16 JST ロイター

欧州エアバスの仏ダッソー株売却、まず10%の金融機関割当を検討 2014年 10月 8日 11:12 JST ロイター

米ヒルトン、NYの高級ホテルを中国企業に売却へ 19.5億ドル 2014年 10月 7日 08:57 JST ロイター

仏クラブメッド、中国・復星国際による買収案推薦を決定 2014年 10月 7日 06:52 JST ロイター

第4次コアビタシオンへの道

以前の2014年5月13日のエントリーでは、

ユーロ圏における独仏協調路線は金融と産業両方の基盤から崩されている。これではフランスの移民と婚外子に対する寛容が功を奏して、出生率と人口動態でドイツに優っていても、その生産労働人口が就く職がなくなってしまうか、中間層が減少する。

確かに第1次大戦ではフランス北東部が塹壕戦の前線となり、実に国富の3割が失われ、生産労働人口の10%を失い、10年以上人口が増えなかった。それに比べればマシではあるが、明らかな消耗戦に陥っていることも事実だろう。

と、述べた。

また2014年6月7日のエントリーで触れたように、米国もフランスにたたみ掛けている。

オバマ政権は、BNPパリバがスーダン、イラン、キューバなどと取引したことで罰金を100億ドル課そうとしている。これはJPモルガン・チェースが昨年、住宅ローン担保証券(MBS)問題で支払った130億ドルに匹敵する。さらにロシアに輸出される2隻の強襲揚陸艦(12億ユーロ)に対しても、非難を浴びせている。おそらくは無頓着なのだろうが、これはフランスの政官財一体のビジネスモデルを破壊する所業である。

と、いったように。こうした状況下での統一地方選、欧州議会選での敗北は自明の理だった。かくて上院選もまた。

野党右派勢力が過半数制す 極右国民戦線も初の議席確保 2014.9.29 21:34 MSN産経

【ベルリン=宮下日出男】フランス上院(定数348)議員選挙が28日実施され、即日開票の結果、最大野党で保守系の国民運動連合(UMP)など右派勢力が非改選議席と合わせて過半数を制した。極右政党の国民戦線(FN)は上院で初の2議席を獲得した。オランド大統領には打撃となりそうだ。

 左派勢力は3月の統一地方選、5月の欧州連合(EU)欧州議会選に続く3連敗。法案の最終議決権は過半数を保つ下院にあり、政権運営への影響は限定的ともされるが、支持率が10%台に低迷中のオランド氏を取り巻く環境が厳しさを増すことは必至だ。

 一方、過去最悪水準の失業率が続くなか、反EUや反移民を掲げるFNは地方選での躍進、欧州議会での国内首位獲得に続いて勢いがあることを示した。FNのルペン党首は「期待以上の結果。われわれの考え方は日増しに国民に受け入れられている」と強調した。

 上院は任期6年で3年ごとに、地方議員らによる間接選挙で半数の議席が改選される。仏メディアが報じた暫定集計では、右派は非改選を含めて計188議席を確保する一方、左派は155議席にとどまった。


地中海の移民死者3千人超 今年1~9月、急増傾向 2014.9.30 00:25 MSN産経

 国際移住機関(IOM)は29日、地中海で今年1~9月に密航船の沈没などで死亡した移民が3072人に上ったとみられるとの報告書を発表した。

 最近で特に多かったのは「アラブの春」が起きた2011年の推定1500人だったが、今年は2倍に達した。IOMは、死者が急増傾向にあるとして警戒を強めている。

 シリア内戦の激化やアフリカ諸国の政情不安に伴い、中東やアフリカからイタリアやギリシャなどに渡る難民や移民が増加している。(共同)


そして、マグレブからサブサハラにかけての軍事介入も難民流入に対しては一向に功を奏していない。フランスにとって、リビア内戦以降の軍事介入には人道的正義の追求と国益確保の双方が懸かっている。

難民の増加は、失業者の増加と財政負担の増加と社会不安・不満の増加に直結するからだ。議会で右派と極右が台頭するのは当然の帰結といえる。右派・国民運動連合の首相を据えるコアビタシオンも視野に入ってきた。

フランコフォニーの縮小とクールジャパンの矛盾

大英帝国が絶頂期を迎えたヴィクトリア朝(1837年~1901年)にあっても、外交会議での公用語はフランス語だった。宰相ディズレーリは壮年期にフランス語を習ったが不如意に終わり、露土戦争(1877年~1878年)の結果をひっくり返すベルリン会議の席上で慣習を破り、英語を使うようになった。

覇権を握った国が、経済的勃興と軍事的勃興ののちに文化的爛熟によって世界に影響を及ぼし続けるという歴史から、フランス政府の言語に対するこだわりは理解できる。

そして、世界のフランス語話者の減少がフランスの国内雇用を奪うという予測がなされている。

常識的には、国外のフランス語話者が移民して、失業が問題視され、社会保障費が増大し、保守政党の台頭を招いている現状を憂慮すべきと思われる。とは云え、たしかにサブサハラに拡がる旧植民地ではイスラム原理主義過激派の浸透に伴う戦いが続き、中共の経済的進出も進んでいる。フランコフォニー(フランス語圏)は縮小の危機にあるだろう。

フランス文化の振興をビジネスの機会と捉えているフランス政府にしてみれば、フランス語話者の減少は危機に繋がる。

我が国もクールジャパンを掲げ、海外需要開拓支援機構(通称:クールジャパン機構)を発足させている。その一方で、小学校での英語必修化によって英語教育の幼年化が進み、英語特区の創設も提言されている。ジャパナイゼーションの担い手を養成する、日本文化を播種するために英語を媒介させようとする意図は分かる。

しかし、クールジャパンの湧き止むことのない鉱泉とは歴史的所産である国語とその話者が生み出す文化であり、つまりは日本語そのものに内在する。日本語が生み出す文化を推奨しながら、日本語を初等教育で重要視しないかのごとき、この矛盾をどのように止揚するのか。尊皇攘夷と開国維新の思想結合のような収斂を考慮、議論するべきだろう。

フランス語使用者減少で最大50万人の雇用にリスク、リポート分析で 2014年 08月 27日 15:24 JST ロイター

[パリ 26日 ロイター] - 世界のフランス語使用人口が減少した場合、経済機会の減少から、フランスで失われる雇用は2020年までに12万人、2050年までに50万人に達する可能性があるとみられている。フランスのオランド大統領が委託したリポートの分析で明らかになった。

リポートを作成したエコノミストのジャック・アタリ氏は序文で「大規模な対策が取られないかぎり、フランス語人口は減少する可能性がある」と指摘。これは、フランス企業の市場シェア縮小のほか、フランスもしくはフランス語の大学や文化、商品の魅力低下などにつながる可能性があると述べた。

国際語として使用されていたフランス語は過去数十年で英語に座を奪われた格好で、現在の使用人口は2億3000万人となっている。主要言語としての使用人口は1億3000万人。

リポートは、教育や産業の分野で正しい政策を取れば、2050年までにフランス語人口を7億7000万人まで増やせるとしている。一方、対策が講じられなければ2050人までに2億人を下回る可能性があると指摘した。

リポートによると、公用語がフランス語、もしくは人口の20%以上がフランス語を話す「フランコフォン」(フランス語圏)の国は37カ国。このほか、イスラエルのように少数派ながらフランス語を話す人が多い国やナイジェリアなどフランス語圏に隣接する国が41カ国ある。

日仏ACSAと日韓ACSAとに見る落差

2013年1月23日のエントリーで触れた、安倍首相の論文「アジアにおける民主主義を守護するダイヤモンド」に名を連ねるG7(英国、フランス)との安全保障協力が進んでいる。

日英両国間では、2013年6月に「防衛装備品等の共同開発等に係る枠組み」と「情報保護協定」が締結・署名され、2014年4月の「防衛装備移転三原則」に基づいて、シーカーの共同研究が始まっている。2014年5月には、「日英外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」の開催合意と「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結交渉開始が決まった。(2013年6月20日のエントリー参照)

日仏両国間でも、2014年1月には「日仏外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」が初めて開催され、「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結交渉に入ることが決まった。今後は日仏間の「防衛装備品共同開発協定」の協議も進むだろう。(2013年6月8日のエントリー参照)

他の太平洋諸国については、安倍首相の日本-ニュージーランド間でも「物品役務相互提供協定(ACSA)」の検討に入っている。日豪間では「経済連携協定(EPA)」の署名がなされ、「防衛装備品共同開発協定」が調印された。(2014年7月10日のエントリー参照)

また、太平洋に領土を持たないイタリアとも「情報保護協定」の締結交渉が始まっている。将来的に「日伊外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)」や「役務相互提供協定」へとつながっていく。アジア太平洋のみならずNATOとの広範な安全保障の協力関係が構築されていく布石と考えて良いだろう。(2014年6月9日のエントリー参照)

2012年7月の日韓情報保護協定の仮署名と日韓物品役務相互提供協定の土壇場での韓国側キャンセル以来、約2年で我が国は韓国を必要としない安全保障の枠組みを構築し始め、今や完成させようとしている。(2012年7月12日のエントリー参照)

日仏、防衛装備協力を強化 2014年 07月 29日 14:09 JST ロイター

日仏防衛相、ACSA交渉入りで合意 2014.7.29 17:58 MSN産経

 小野寺五典(いつのり)防衛相は29日、訪日中のフランスのルドリアン国防相と防衛省で会談し、自衛隊と仏軍が食料や燃料を相互に融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)について、締結交渉入りで合意した。日仏両国は今後、調整作業に入る。

 両氏は防衛装備品の共同開発に向けた協議の加速やハイレベル対話の充実、人事交流などの防衛協力を強化することでも合意し、共同文書に署名した。

 一方、小野寺氏は大型強襲揚陸艦2隻をロシアに売却する契約を結んでいるフランスに強い懸念を表明。小野寺氏が集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定の内容を説明したのに対し、ルドリアン氏は歓迎する意向を示した。


参考URL:
なぜか報道されない安倍総理のセキュリティダイアモンド構想 2013年1月10日木曜日 剣kenn諤々

Asia’s Democratic Security Diamond Dec. 27, 2012 Project Syndicate

アルストム争奪戦とBNPパリバ問題

フランスの重電メーカー、アルストムが持つ電力・鉄道など社会インフラ事業は、国力である生産供給力の根幹を支えるから、引いては国家の安全保障にも影響を与える。そのため、グローバリズム的な合従連衡の動きにフランス政府が介入するのは至極当然と云える。

アルストムの争奪戦の結果は買収から提携に後退したものの、大枠では米国GEの勝利、日独連合三菱重工とシーメンスの敗北に終わった。

合意されたスキームでは、送電網、蒸気タービンを含めた原子力事業などでアルストムとGE両社は3つの合弁企業を設立。ガスタービン事業はアルストムからGEに売却。鉄道信号事業はGEからアルストムに売却。フランス政府はアルストムに最大20%出資する。

またフランス政府は、原子力事業におけるアルストムとGEの合弁企業に拒否権を行使できる。さらにGEは、フランス国内で最低1000人の新規雇用を創出しないと罰金を科せられる。

我が国の重電メーカーにとっては、競合企業の規模拡大への対応を迫られることになる。例えば鉄道事業では、カナダのボンバルディア、ドイツのシーメンスとGEから事業譲渡されるアルストム3社の売上高はそれぞれ約8000億円。これに対し、国内勢は大手の日立製作所や川崎重工業でも1500億円程度にとどまる。

さて、アルストム争奪戦の最中にBNPパリバは、米国当局に対して80億~90億ドル(約8160億~9180億円)の罰金支払いと国際緊急事態経済権限法(IEEPA)に違反する行為で共謀した罪について有罪答弁、ドル取引の期限付き取引停止などの処罰を受け入れることになった。

先日、事実上引責辞任したBNPパリバのジョルジュ・ショドロン・ドクルセルCOOは、アルストムの取締役でもある。BNPパリバの罰金減額やアルストムの買収提案からフランス政府も出資する提携案へと落ちついた辺り、米仏両国の駆け引きを感じないでもない。確たる証拠もないがこの場合、日独連合の三菱重工とシーメンスは当て馬にさせられた気分ではある。

仏BNPは最大9200億支払い、7月有罪答弁の公算-WSJ紙 2014/06/23 12:47 JST ブルームバーグ

GEさらに巨大化 世界の重電、再編第2幕へ 2014/6/23 20:25 日経

焦点:仏アルストムの事業売却交渉を左右した「経済ナショナリズム」 2014年 06月 23日 16:40 JST ロイター

GEvsシーメンス 重電市場揺るがしたM&Aの裏側 編集委員 安西巧 2014/6/23 7:00 日経

アルストム、GEと提携を決定 15年中に完了へ 2014/6/22 18:57 日経

鉄道事業も合従連衡の可能性 2014/6/22 0:05 日経

仏BNP、ショドロン・ドクルセルCOO退社へ-米罰金準備 2014/06/13 02:27 JST ブルームバーグ

フランスのビジネスモデルを破壊するオバマ大統領

BNPパリバの前身のひとつ、パリバはパリ銀行とペイ・バス貯蓄信用銀行が合併してできた。ペイ・バスはフランス語で「低い土地」の意味となりオランダを指す。デクシアの二度目の破綻がフランスとベルギーの企業に悪影響を与えたように、BNPパリバの巨額な懲罰金による経営悪化は、フランスとオランダの企業に悪影響を与えるだろう。

さらに意図的かは知らないが、米国がフランスの政官財一体のビジネスモデルを破壊しようとしている。

フランスは大ナポレオンの頃までに、ほぼ現在の高等教育機関(グランゼコール)が整備され、その出身者によって政官財と学者・ジャーナリストが構成され、一体化している。

フランス政府と企業が諸外国と巨額取引を行う場合、フランス語圏の旧植民地を地盤に原子力、水道、鉄道などのインフラや武器装備品の売り込みを掛け、その国の購買担当者、果ては決済者である独裁者に便宜を図り、その口座も秘匿管理してきた。不正取引、不正蓄財などと指摘されても、自国のメディアでカウンターを打ってきた。

例えば、ラガルデール社は軍需含む航空宇宙(エアバス・グループ)と雑誌・新聞・テレビを有するメディア(アシェット、傘下にアシェット婦人画報社)のコングロマリットである。

オバマ政権は、BNPパリバがスーダン、イラン、キューバなどと取引したことで罰金を100億ドル課そうとしている。これはJPモルガン・チェースが昨年、住宅ローン担保証券(MBS)問題で支払った130億ドルに匹敵する。さらにロシアに輸出される2隻の強襲揚陸艦(12億ユーロ)に対しても、非難を浴びせている。おそらくは無頓着なのだろうが、これはフランスの政官財一体のビジネスモデルを破壊する所業である。

仏BNPパリバがジュネーブ業務見直し-米国の巨額罰金迫る 2014/06/02 10:23 JST ブルームバーグ

BNPパリバへの米罰金報道、仏で非難の声-オランド氏に圧力 2014/06/02 10:59 JST ブルームバーグ

仏大統領、BNPで米大統領に直談判へ-S&Pは格下げ視野 2014/06/05 01:51 JST ブルームバーグ

フランス、軍艦の対ロシア売却で同盟国と対立 2014年6月5日 13:27 JST WSJ日本版

仏BNPへの罰金額は過去のケースから逸脱-記録塗り替えるか 2014/06/05 15:42 JST ブルームバーグ

オバマ米大統領:BNP問題に干渉せず-仏の軍艦売却を批判 2014/06/06 05:41 JST ブルームバーグ

米当局が一時160億ドルの罰金示唆、BNP制裁違反問題で=関係筋 2014年 06月 6日 20:14 JST ロイター

BNPパリバ、そしてフランスの受難

クレディ・スイスが脱税幇助を認め、制裁を受けつつも、米国内での取引を続けることを選んだ。

いくつかのグローバル企業の売上よりもGDP規模が大きく、議会や行政府の長が民主的なプロセスで選ばれる国家では、金権選挙が横行して、キャリア官僚や数々の諮問会議・私企業のロビイストが政策決定に関与する度合いが増えるにせよ、一票一票が合わさった力は無視できない。

票の動向を左右する米国の金融機関締め付けは、グローバリズムによって恩恵を受けてきた中国共産党の幹部とその家族、不正蓄財を国外に逃していた彼らの資産情報を米国政府と財務省などに握られることへと繋がる。

クレディ・スイスに続いて、フランスのBNPパリバは制裁対象国との取引によって、さらに強い制裁を受ける。フランスを代表する金融機関の収益力が弱まることで、フランス国内企業への融資が先細る。

レバレッジを掛けない金融のビジネスモデルの確立が求められるだろう。

バブルで懲りた我が国の金融機関が行なっているのは皮肉である。東京に本社を置く大企業向けと個人向け中心になり、キャッシュ・フローと資産の少ない地方の中堅・中小向けが厳しくなったのと同じことがフランスでも起きる。要するに甘い融資姿勢では良い企業も悪い企業も潤うが、厳しい融資姿勢では良い企業も悪い企業も絞られる。

それを踏まえると、ベルギー、ルクセンブルク、フランスにまたがっていた金融機関デクシアの再度破綻の意味合いが分かる。傘下のクレディ・ローカルにも影響を与えた。クレディ・ロカールは、フランスの地方公共団体や自治体向け融資にシェアを持つ。我が国で例えれば、拓銀破綻が北海道経済に今も癒やすことの出来ない影響を与えたことに似ている。

米国主導のバブルに遅れて乗っかって低い抵当権で回収もできず、再び米国主導の政策転換でより混乱するフランス。加えて米国がグローバリズムからナショナリズムに舵を切るなかで、フランスは米国が担っていた世界の警察官の役割を肩代わりするようになってきた。

すでに国外では旧植民地を中心にマグレブからサブサハラにかけて出兵を繰り返し、国内では企業のリストラが相次いで、政府による労働争議の調停や救済出資を行なう。どちらにせよ財政負担が増し、オランド政権の支持率は下がり、右翼政党の国民戦線が勢力伸長している。ナショナリズムを主張しようにもドイツとユーロの軛がフランスを締め上げている。

仏BNPは顧客離れのリスク高まる-米当局がドル送金禁止も 2014/05/21 12:57 JST ブルームバーグ

5月21日(ブルームバーグ):スイスの銀行クレディ・スイス ・グループは今週、米国人顧客の脱税ほう助で有罪の答弁を行ったが痛手をそれほど受けずに済んだ。しかし仏銀BNPパリバ は、米検察当局が科そうとしている処罰によって、もっと深刻な影響を被る可能性がある。

事情に詳しい関係者1人によれば、BNPパリバは制裁対象国との取引を禁止する法律に違反した罪を認め、50億ドル(約5070億円)を上回る金額を支払うことが求められるほか、ニューヨーク州金融サービス局のベンジャミン・ロースキー局長の提案に沿って、海外から国内および国外への送金が一時的に禁止される見通し。クレディ・スイスの主要銀行子会社が脱税ほう助で罪を認めた際には、このような処罰は科されなかった。

協議の非公開を理由に関係者の1人が匿名を条件に語ったところでは、BNPパリバにどの程度厳しい禁止措置を適用するか監督当局はまだ決めていない。BNPパリバがサービス提供のために他行に支払いを行うことが認められなければ、競合行に顧客の一部が流れる恐れがある。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズの調査責任者、フレデリック・キャノン氏は「顧客が最も基本的な銀行サービスを受けるために2、3カ月でもライバル行に行く必要が出てくれば、顧客を失うことになる」と指摘。「少なくとも一部の顧客は取引を完全にライバル行に移し、戻ることはないだろう」と述べた。

一部の関係者によると、ニューヨーク・マンハッタン連邦地検のプリート・バラーラ検事正ら検察当局者は、スーダンやイラン、キューバに対する米国の制裁に違反して顧客のために資金を移動した罪を認めるようBNPに迫っている。

ロースキー局長はBNPパリバ傘下の部門の違反行為に対する処分として、一部行員の免職と報酬の回収、電信送金の禁止を検討している。ロースキー局長とバラーラ検事正の報道官、BNPパリバの広報担当者はいずれもコメントを控えている。

原題:BNP Paribas Risks Customer Flight as Dollar-Transfer BanLooms(抜粋)


クレディ・スイスは引き続き米プライマリーディーラー 2014/05/22 07:07 JST ブルームバーグ

クレディSとの取引テキサス州退職年金基金が停止-有罪認定で 2014/05/22 09:14 JST ブルームバーグ

バークレイズやクレディS、シンガポール拠点のスペース縮小 2014/05/22 12:48 JST ブルームバーグ

スイスの他の国内行も米脱税捜査で決着の公算-財務相 2014/05/22 15:38 JST ブルームバーグ

ユーロ圏における独仏協調つづく限り

ベネルクス諸国で見られたデクシアの再度破綻、ネッドカーの1ユーロでの身売り、アルセロール・ミッタルのリストラがフランスにも波及して、ルノーとPSAプジョー・シトロエン、サノフィ・アベンティスのリストラ策発表とそれらに伴う労働争議に発展した。

その後、ルノーは雇用維持を最優先して、昇給の抑制か凍結、労働時間延長、生産量3分の1増加、低価格車と商用車の国内生産回帰を決定。PSAはフランス政府と中国の東風汽車から出資を受けた。さらにアルストムがGEとシーメンスの買収提案を受けている。

ユーロ圏における独仏協調路線は金融と産業両方の基盤から崩されている。これではフランスの移民と婚外子に対する寛容が功を奏して、出生率と人口動態でドイツに優っていても、その生産労働人口が就く職がなくなってしまうか、中間層が減少する。

確かに第1次大戦ではフランス北東部が塹壕戦の前線となり、実に国富の3割が失われ、生産労働人口の10%を失い、10年以上人口が増えなかった。それに比べればマシではあるが、明らかな消耗戦に陥っていることも事実だろう。

フランスとドイツの格差増す見通し 2014年5月12日02:55 JST WSJ日本版 

ユーロ圏の中核をなすフランスとドイツの格差が広がっている。

両国はユーロ圏経済の半分、その人口の44%を占めている。ユーロ圏の成功は両国の繁栄にかかっている。

今週15日発表の1-3月期域内総生産(GDP)は、ドイツ経済が強く成長した一方、フランス経済はほとんど成長せず、危機に見舞われたスペインにまで追い越されたことを示す可能性が高い。さらに悪いことに、オランド大統領が遅ればせながらも認め始めたフランスの低迷は深く根を下ろしている。

およそ10年前、欧州の病人と言われたドイツは経済の総点検に真剣に取り組んだが、フランスはまだ手をつけていない。その結果は、5年ほど前から明らかになり始めた。ドイツ経済の成長率が、近隣諸国よりをはっきり上回りだしたのだ。

フランスよりもはるかに厳しかった09年のリセッション(景気後退)をはさむ2005年以降にドイツ経済は11.6%拡大した。一方、フランスの成長はわずか5.5%だった。そして危機からのフランス経済の回復は、12年にGDPの57%を占めた政府支出の増加によるところが大きい。ドイツでは政府支出の割合は45%だった。

ドイツの失業率は05年初めにピークに達し、現在は5%強と過去最低水準にある。一方、フランスの失業率は10.4%に上昇した。さらに問題は、フランスの労働市場に構造的な悪化の兆しがあることだ。

リーガル&ジェネラル・インベストメント・マネジメントのエコノミスト、ヘタル・メータ氏は、失業率と欠員率の関係を示すべバリッジ曲線が間違った方向にシフトしたと指摘している。フランスでは現在、一定の欠員水準に対する失業率がかつてよりも高い。リーガル&ジェネラルによると、ユーロ圏の4大経済国のなかで、 1990年以降に労働市場の規制を緩めるよりも強化したのはフランスだけだ。

フランス経済は、公的財政の悪化と平行して活力を失っている。95年から10年にかけて、フランスとドイツのGDP対比での公的債務比率は足並みをそろえていた。だが欧州委員会の見通しでは、15年末までにドイツの債務は減少するがフランスはGDP比96.6%まで増加し、公的債務比率に23ポイントの差が出る。

ドイツ政府の財政が均衡している一方、欧州委員会はフランス政府に対しさらに財政緊縮を求めざるを得ないかもしれない。新たな厳しい財政規律の順守をユーロ圏がどれだけ強くフランスに迫ることができるかが、危機後のユーロ圏の構造にとって重要な試金石になるだろう。

フランス国債のドイツ国債に対するスプレッド(利回り差)は、オランド大統領にとって有利な方向に動いてきた指標の一つだ。だが、フランス国債への信用は、欧州中央銀行(ECB)の取り組みやフランス国債の需要を支えしてきた強いテクニカルな要因によるところが大きい可能性が高い。

オランド大統領は歳出削減と減税を公約するなど、問題の大きさを認識し始めたようだ。それでも、フランスは今後数カ月で、ドイツにさらに遅れるばかりか、スペインやイタリアにも後れをとり始めるかもしれない。問題の深刻さからみて、フランス経済を立直すには財政改革だけでは足りないだろう。

青き獅子が三頭立ての馬車、などと無謀極まる

漸く提携話がまとまったようで、2014年1月22日のエントリーの続報を書く。

PSAは、第三者割当増資を経て、創業家とフランス政府と東風汽車がそれぞれ14%出資となる。人はそれを三すくみの状態と云わないのか。グローバル規模でのサプライチェーンを組むべき相手として、中共にしか基盤がない東風汽車と組むなど愚の骨頂に過ぎない。最初からカネだけ奪い取るフランス政府の深謀遠慮なのか。

東風汽車はPSAとも合弁しているが、日産自動車、本田技研工業、UDトラックス(旧日産ディーゼル)、果ては台湾や韓国の自動車メーカーとも合弁している。中共にサプライチェーンをつくるにも利害関係が複雑すぎて手に負えない。

最大の眼目になるフランス国内の工場閉鎖、規模縮小が出来るかどうかすら怪しいものだろう。

アングル:3頭体制の仏プジョー、迫られる微妙なかじ取り 2014年 02月 20日 16:30 JST ロイター

[パリ 19日 ロイター] -仏自動車大手プジョーシトロエングループ(PSA)(PEUP.PA: 株価, 企業情報, レポート)は、中国の東風汽車(0489.HK: 株価, 企業情報, レポート)からの資本受け入れを決めた。

最高経営責任者(CEO)に就任するカルロス・タバレス氏は会見で「非常に大きな改善余地がある」と表明。基本に立ち返り、2世紀にわたる創業家支配からの脱却を図る方針を示した。

同社は総額30億ユーロの増資を実施する計画。東風汽車と仏政府がそれぞれ8億ユーロを出資し、14%の株式を引き受ける。創業家の出資比率も14%に低下する。

提携に伴い、PSAでは創業家出身のティエリ・プジョー監査役会会長が退任。ひとつの時代が終わったと言えるが、事業や企業文化の抜本的な見直しが進む可能性がある。

タバレス氏は「基本に立ち返る。欧州最高の製造・販売モデルを作ることが目標だ。率直に言えば、現時点ではそれが実現できていない」と発言。コスト削減と価格設定の改善に向け、部品調達の競争力向上や現在60モデルある車種の一部削減を目指す方針を示した。

同氏は、低迷する中南米、ロシア事業の立て直しにも言及。4月に中期計画を公表する予定だ。

タバレス氏は仏ルノーの元ナンバー2。カルロス・ゴーン氏の下で働いていた。ルノー時代は、独フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE: 株価, 企業情報, レポート)との価格差を縮めた実績がある。

エクサーヌBNPパリバのアナリスト、スチュアート・ピアソン氏は「かなりの実績がある。PSAとルノー・日産を比べることで、改善できる分野をすでに特定したようだ」と述べた。

<息を吹き返せるか>

内部事情を知る関係者によると、PSAは創業家による経営で競争力強化への対応が遅れ、独BMW(BMWG.DE: 株価, 企業情報, レポート)、伊フィアット(FIA.MI: 株価, 企業情報, レポート)、トヨタ(7203.T: 株価, ニュース, レポート)、三菱自動車(7211.T: 株価, ニュース, レポート)との提携深化の機会を逃した。

ジャンバティスト・ドシャティヨン最高財務責任者(CFO)は、今後ハイブリッド、低価格車の分野を強化すると表明。ルノー・日産、トヨタなどに出遅れている地中海市場で巻き返しを図る方針も示した。

同CFOは「プジョーが国際的な大手自動車メーカーとして息を吹き返すための条件はすべて整った。プロダクトがあり、チームがあり、ノウハウがある。そして新しいバランスの取れた安定した所有形態が実現した」と述べた。

今回の提携に伴い、PSAと東風汽車は既存の合弁事業を拡大する。新モデルを投入し、2020年に150万台の販売を目指す。

提携では、中国に新たな研究開発センターを作るほか、東南アジア市場に乗用車を輸出する販売合弁会社も立ち上げる。

<問題の兆しも>

東風汽車が公表した合意文書によると、東風汽車、仏政府、創業家はそれぞれ2人の代表をPSAの監査役会に送り込む。会長には「独立したメンバーが就任する見通し」(合意文書)という。

ただ、こうした新たな「3頭体制」には問題の兆しも見える。フランス政府は、会長指名について合意は成立していないと主張。監査役会に上級公務員を送り込む方針を示している。

閣僚からは、新たな工場閉鎖を否定する声が早くも出ているが、同社は19日、ポワシー工場、ミュルーズ工場の生産ラインを減らす計画をあらためて確認している。

新CEOに就任するタバレス氏は、監査役会内部の駆け引きとビジネス上の優先課題の間で微妙なかじ取りを迫られることになりそうだ。

ネッドカーの生産ラインを「MINI」が通る

旧聞に属するニュースだけれども、自動車産業の興廃は国の根幹に関わるので。ベネルクス三国のうち、まずはオランダのネッドカーから、次はフランスのPSAプジョー・シトロエンの話へ繋げたい。

オランダ唯一の乗用車メーカー、ネザーランド・カー社(通称:ネッドカー)が、BMWの「MINI」を委託生産する事となった。生産ラインに英国発祥のブランドが通る訳だ。『ミニミニ大作戦』(1969年)が、2003年に米国でリメイクされたようなのものか、いやはやリメイク版は見てないが。

ここに至るまでの経過は2012年2月11日のエントリーで、まず三菱自動車が傘下のオランダ最後の乗用車メーカーの閉鎖を検討し始めたことに始まる。そもそも三菱自動車は、欧州で現地生産に充分なサプライチェーンを作れていない要因もあった。

そのエントリー内で、

オランダの商用車メーカーにはDAFトラック(“ネッドカー”と同系列だった、現在は米国のパッカー傘下)とGINAF(2011年に破綻、中国資本が継承)とVDL(バス車体のコーチビルダー)、スポーツカーメーカーにはドンカーブート(「ロータス・スーパーセブン」の派生モデルを生産)とスパイカー・カーズ(「サーブ」に事業集約するため、PEファンドに「スパイカー」の商標を売却後、サーブ・オートモービルが再破綻)がある。

と説明したが、

2012年8月2日のエントリーでは、紹介したバスのコーチビルダーであるVDLに、三菱自動車が1ユーロで売却して、雇用維持と「MINI」を委託生産の方針、と報じられていた旨を書いた。

オランダのネザーランド・カー社、通称“ネッドカー”は、DAFによる設立→ボルボ買収→経営悪化によりオランダ政府・ボルボ・三菱合弁→ボルボの乗用車撤退により三菱子会社、となっていた。しかし、オランダ国内市場は小さく、生産規模も拡大できず、ノックダウン生産だったため円高で採算悪化し、オランダ国内にあるバス車体のコーチビルダーを本業とするVDLに、雇用維持を条件に1ユーロで売却する運びで、VDLはBMWと協議して「ミニ」ブランドの委託生産を行う予定だ。

そして、実現の運びと相なった訳だ。「MINI」は、ワーゲンのタイプ1(ビートル)やフィアットの500、シトロエンの2CVのような歴史ある大衆車ブランドなのは周知の通り。当時としては、革新的な横置きエンジン前輪駆動のレイアウトを確立した名車だ。

昔、イタリアの当時デ・トマソ傘下のイノチェンティがライセンス生産して、なぜかダイハツ工業のエンジンを積んだモデルが作られたり、モンテカルロ・ラリーでクーパー伝説を作った往時、高額で入手が難しい故に我が国ではホンダの360のグリルを改造した人もいた。その後も国産の軽自動車では、レトロスペクティブな外観を意識したモデルには「MINI」のグリルを模したモノが多い。

まあご存知な人には、当たり前すぎる与太話で恐縮であるが、現在では単独ブランドの「MINI」も、1959年のデビュー当時はBMC傘下のオースティン・セブン(往年の名車の名前を継承)とモーリス・ミニ・マイナーという車だった。

「MINI」は、ミニ・マイナーから自然発生した愛称である。

BMC傘下の他のブランドからは、ウーズレー・ホーネット、ライレー・エルフが派生した。ヴァンデンプラ・プリンセスのようなモデルだが国内で見た経験がない。

また、カントリーマン(トラベラー)と呼ばれるエステートワゴンに子供の頃、お目にかかったときは木目パネルを触ったりしたものだ。旧いジープのワゴニアやビュイック・リーガルにも装着されているアレですね。

その後、生産会社の名称がブリティッシュ・レイランド→オースティン・ローバー→ローバーと変遷し、ローバーがBMW傘下になっても経営悪化に歯止めがかからず、最終的には、BMWの経営方針に沿わない「MINI」以外のブランドは各社へバラバラに切り売りされた。

この辺の経緯は2012年2月14日のエントリーを参照してもらうとして、国内に自動車生産に必要十分な市場規模とサプライチェーンをつくる(為替などの)優位性がないと、豪州からトヨタも撤退方針と伝えられたようなことに成りかねない。それに苦慮しているのがロシアの極東連邦管区である。

オランダは、ドイツとフランスへの迂回貿易ルートだったのだが、現在では、EUのユーロ圏に属していない国々に日系メーカーが現地生産工場とサプライチェーンを作っている。

独BMW、今夏からオランダで「ミニ」生産へ 2014年 02月 18日 12:50 JST ロイター

[フランクフルト 17日 ロイター] - ドイツの高級車メーカーBMW は17日、今夏からオランダの契約製造業者で「ミニ」の生産を開始すると明らかにした。英オックスフォードに加えて生産拠点を拡大する。

BMWグループは、2016年までに販売台数200万台超を目指す成長戦略の一環として、オランダでのプレゼンスを大きく高めていくとしている。

BMWの生産部門トップ、ハラルド・クルーガー氏は声明で「『ミニ』ブランドは顕著な成長を見せている。オックスフォードの中期的な生産能力は年間約26万台だが、それに加え、海外で新たに生産拠点を設ける必要が出てきた」と述べた。

PSAは東風に煽られる

PSAプジョー・シトロエンが、純利益で赤字→政府出資観測報道→関係各所からの否定→金融子会社への支援、と混迷を深めている。

金融子会社と従業員年金と医療保険が重しになっていく過程は、まるでGMの破綻劇の再演のようだ。ベルギー、ルクセンブルグ、フランスにまたがっていた金融機関デクシアが2011年10月に2度目の破綻をしたこともじわじわと効き始めているのだろう。

と、書いたのが2013年2月18日のエントリー

ここから約1年掛けて、ようやく政府出資に加えて、提携先の東風汽車(中共)から出資を受けるところまで辿り着いた訳だ。皆断言できるだろうが、ルノー=日産アライアンスのようなシナジー効果を産むことは無いだろう。

そもそも日産自動車も長年、労働組合がボトルネックとなって、ついに社風の改革が出来ず、1999年、キャッシュフローに詰まり、国営から民営化(1996年)間もなかったルノー傘下になった。

かくて日産自動車の座間工場や村山工場は閉鎖され、ショッピングモールや宗教法人の所有地になった。その経験からして、いずれPSAプジョー・シトロエンの件の工場も閉鎖され、人員も整理され、跡地に同様の光景を見るのではなかろうか。

同じくリストラに直面したルノーは、2013年3月14日のエントリーにあるように、ルノー経営陣と3労組との間で合意したのは、雇用確保を最優先、昇給の抑制か凍結、労働時間延長、生産量3分の1増加、低価格車と商用車の国内生産回帰、さらにダイムラーとの高級車共同開発撤退の可能性もありとしている。

これは2012年8月2日のエントリーにある、オランダのネッドカーの顛末とよく似ている。

今後の景気動向によっては、ルノー=日産アライアンスにPSAが合流する可能性もあるかもしれない。フィアットの傘下にすべてのイタリア自動車メーカーが参集したように。

仏プジョー、政府と東風汽車からの融資で19日に取締役会 2014/01/18 15:44 JST ブルームバーグ

1月18日(ブルームバーグ):フランスの自動車メーカー、プジョーシトロエン (PSA)の取締役会は19日、中国の東風汽車と仏政府からの約10億ユーロ(約1420億円)の投資受け入れについて決定する見通しだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

同関係者によれば、協議中のシナリオでは仏政府とプジョーの中国でのパートナーである東風 はそれぞれ少なくとも5億ユーロを出資する。協議がまだ完了していないことを理由に同関係者が匿名で語った。東風は基本的に出資に同意しているという。

関係者の1人によると、仏政府と東風は出資に対して10%の株式をそれぞれ受け取る。プジョーは全体で30億ユーロの調達を目指しており、株主割当増資も計画している。

原題:Peugeot Said to Decide on Funds From Dongfeng, FranceState (4)(抜粋)


そのフィアットは、買収したクライスラーの本国でのIPOを一時断念して、残りの株式を全米自動車労組(UAW)の退職者向け医療保険基金(VEBA)から取得した。

このレガシーコストこそ、GMとクライスラーをチャプター11と国有化に追い込み、デトロイト市がチャプター9を申請して破綻(市職員年金の年金保護規定は最高裁によって破棄された)した最大要因であった。これは2013年12月7日のエントリーに詳しい。

たしかに街一つ消し去っても、別のメトロポリスをつくるだけのダイナミズムを米国は有している。自動車がダメなら空港に隣接した中西部のデンバーに集積すればいいじゃないか、といったノリだ。それでも多くの州で人種構成は大幅に変わり、企業及び労組による年金と医療保険の約束されない雇用形態に変わっている。

フランスでもまた、このレガシーコストは政治的旋風を巻き起こす原因となっている。しかし、米国のように大胆極まりないダイナミズムは、EUに加盟する欧州各国では発生しても耐え切れていない。現に欧州議会に反移民を唱える政党が台頭しているではないか。

アルザス、ロレーヌ(ドイツ名:エルザス、ロートリンゲン)は紛う事なきドイツ系フランス人の居住地域。普仏戦争によってドイツ第二帝国領、第1次大戦の勝敗でフランス領、第三帝国ではドイツ領、現在はフランス領。

ふたつの大戦でめまぐるしく帰属を変えたこの地方の住民はいつしかドイツ語が使えなくなり、国民国家の成果が達成されたと同時に言葉の分からぬドイツへ出稼ぎせねばならなくなった。これは悲劇なのか、喜劇なのか。

と、2013年8月12日のエントリーでも書いたように、フランスのダイナミズムは苦々しく微々たるものだ。ロマすら追放せねばならなくなっている。

その政治的旋風、グローバル経済を終わらせ、人種構成を変えるか否かほどの国民社会を揺るがすダイナミズム。その風の発生源のひとつがドイツだと、分かりきっていても、オランド政権は耐えるしかないのだろうか。

フィアットが米クライスラーの統合完了、29日に本社場所など協議へ 2014年 01月 22日 07:53 JST ロイター

[ミラノ 21日 ロイター] -イタリア自動車大手フィアット(FIA.MI: 株価, 企業情報, レポート)は、米クライスラーの統合手続きを完了した。両社は1日、フィアットがクライスラーの未保有分株式を43億5000万ドルで取得することを発表していた。

取得額はアナリスト予想を下回った。

フィアットが残りの41.46%株式を全米自動車労組(UAW)の退職者向け医療保険基金(VEBA)から取得した。VEBAは36億5000万ドルを現金で受け取り、このうち19億ドルはクライスラー、17億5000万ドルはフィアットが支払った。クライスラーは手続き終了後もVEBAに7億ドルを支払うことになっている。

統合後の本社の場所やイタリア国外での株式上場については、29日の取締役会で協議する予定。本社はイタリア国外に移転するとみられているが、国内雇用保護の観点から労組はじめ政治的にも扱いが難しい問題となる見込み。

支那にお売りになる際はご一報ください

2013年11月15日のエントリーでは、おそらく中共のバブル崩壊後では、フランスが売れる残余の製品は武器となるだろう。それを頭に入れて、フランスが軍事転用品を輸出する際には日本側へ事前通報する制度を日仏2プラス2で協議する、と書いた。

結果としては、両国は防衛装備品(要するに兵器、転用品含む)に関する共同開発委員会と輸出管理委員会を立ち上げて、協力していく方針を定めた。

その他には以前、2013年1月23日のエントリーで取り上げた、安部首相の論文「アジアにおける民主主義を守護するダイヤモンド」で公表されたセキュリティダイヤモンド構想に基づいて、フランス太平洋海軍演習へのオブザーバー派遣の定例化などが特筆に値する。

中国念頭に…日仏2+2、安保分野の連携強化で一致(01/10 05:50) テレ朝ニュース

 日本とフランスの外務・防衛の閣僚協議「2+2」が開かれ、東シナ海などを含む安全保障分野での連携強化などで一致しました。

 声明で両国は、アジアでの緊張を低下させる重要性を訴え、防空識別圏を設定した中国の動きを念頭に、国際法に基づく航行や飛行の権利を改めて確認しました。また、防衛装備品の開発協力や輸出についての情報交換などを目指す委員会を設置することでも合意しました。フランスが中国に対し、軍事利用に可能なヘリコプターの着艦装置を売却したことなどについて歯止めをかけたいという日本側からの要請もあったということです。フランス側は5月にも安倍総理大臣を招き、首脳会談を検討しているということです。


参考URL:
日仏外務・防衛閣僚会合実施後の共同発表 平成26年1月10日 外務省

「爆音はショパンの調べ」

エントリーの表題は、イタロ・ディスコの名曲、ガゼボの「I Like Chopin」のカバー曲の邦題のもじりなので、本来フランスとは全く関係ない。まあ、それはご愛嬌として捉えてください。個人的にはセカンド・アルバムも好みだったけれども全くヒットしなかった。

さて、中共の都市部では5大シャトーの空き瓶すら高値で取引され、支那人はLVMHのブランド製品のお得意様なのに、高級ピアノとピアノの商標権は買ってくれず、下記のロイター電にあるようにショパンも愛した老舗のピアノメーカー、プレイエルは工場閉鎖する。

おそらく中共のバブル崩壊後では、フランスが売れる残余の製品は武器となるだろう。それを頭に入れて、フランスが軍事転用品を輸出する際には日本側へ事前通報する制度を日仏2プラス2で協議する、という記事を読むと、これはこれでなかなか趣深い。

英国はチャイナマネーで一稼ぎを企みつつ、21世紀の日英同盟を呼号する。ロシアは上海協力機構に加盟しながら、我が国と「同盟外」の安全保障システム構築を呼号する。そしてフランスもその列に加わらんとしている。

日米同盟が集団安全保障体制に移行しようとするのに呼応しての列強各国の動きは、まるで日英同盟と日露戦争後、我が国を触媒として慌ただしく英仏協商と英露協商、日露と日仏の協約、米国の門戸開放政策を睨みつつ日米間の妥協が結ばれるに至った、かのヴィルヘルム2世のドイツ帝国が孤立化した動きに似ている。

移り気なウィリー、と呼ばれた彼と宰相たちの軽率な外交政策は、黄禍論と日露戦争、2度のモロッコ事件などが禍となり、建艦競争を続けた英国との妥協をついに果たせなかった。同様に“対中封じ込め”は、共産党指導部の軽率さが、各国の国益を調整する導因となり、今まさに形成されている。

日仏1月に2プラス2 2013年 11月 14日 04:54 JST ロイター

 日本、フランス両政府は来年1月前半にも初の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)をパリで開き、中国を念頭に、フランスが軍事転用品を輸出する際、日本側に事前通報する制度の新設をめぐって論議する方針を固めた。年内発足を目指す「国家安全保障会議(日本版NSC)」をにらみ、テロや治安情報の共有強化でも合意する。2プラス2は米国、オーストラリア、ロシアに続いて4カ国目。

 日本政府筋が13日、明らかにした。閣僚協議には岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、フランスのファビウス外相、ルドリアン国防相が出席する。

【共同通信】


ショパン愛用の仏ピアノメーカー、プレイエルが生産撤退 2013年 11月 14日 13:52 JST ロイター

[パリ 13日 ロイター] -ショパンやラベルなどの作曲家が愛用したことで知られるフランスのピアノメーカー、プレイエルが、パリ郊外にある工場を閉鎖し、約300年続いたピアノ生産から撤退すると発表した。コスト高や中国メーカーとの競争激化が理由だという。

同社は声明で、今後も在庫を販売し続ける一方で、生産を続ける道も探っているとしたが、詳細は明らかにしていない。

ハイドンに師事したイグナツ・プレイエルが1807年に創業した同社のピアノは、著名な作曲家だけでなく、欧州各国の宮廷でも愛用された。

かつては年間3000台を生産していたが、近年は最高20万ユーロ(約2700万円)の高級ピアノに注力し、販売数も年20台ほどにとどまっていた。

『最後の授業』が泣いている

アルザス、ロレーヌ(ドイツ名:エルザス、ロートリンゲン)は紛う事なきドイツ系フランス人の居住地域。普仏戦争によってドイツ第二帝国領、第1次大戦の勝敗でフランス領、第三帝国ではドイツ領、現在はフランス領。

セダンの戦いで皇帝ナポレオン3世麾下のフランス軍が敗北し、ヴェルサイユ宮殿で大ナポレオンの帝冠を奪い、ドイツ帝国が誕生する。そして、ドイツ系フランス人の住むアルザス、ロレーヌは割譲された。

割譲が決まり、フランス語による最後の授業を行う教師と生徒たちの様子を描写した短篇『最後の授業』。ドイツ系とは云え帰属意識としてはフランス国民、しかし家庭とコミュニティではアルザス方言のドイツ語を使う機会が多い生徒たち。vive la france!で締めくくられる物語は、国語こそが国民をつくることを教えてくれる。

ふたつの大戦でめまぐるしく帰属を変えたこの地方の住民はいつしかドイツ語が使えなくなり、国民国家の成果が達成されたと同時に言葉の分からぬドイツへ出稼ぎせねばならなくなった。これは悲劇なのか、喜劇なのか。

新たな物語は「vive la france!、ただしドイツ語の授業必須」と、教師の言葉で締めくくられるだろう。

仏、独への越境就職後押し 行政が出資 託児所、インフラなど整備 2013.8.9 06:00 SankeiBiz

 フランスの失業率はユーロ圏誕生以来、高水準で推移し回復の兆候を見せていない。オランド大統領の雇用政策も効果をみせず、しびれを切らした失業者はライン川を渡った隣国ドイツに雇用先を求めており、行政レベルで越境就職の後押しを行っている。

 欧州連合(EU)統計局の先月31日の発表によれば、6月のフランスの失業率は11%と14年ぶりの高水準で、隣国ドイツの約2倍だ。年末までに失業率を低下させるとのオランド大統領の公約も、達成が難しくなっている状況だ。

 そんな中、ドイツとの国境に接するフランス北東部のアルザス地方では、失業率の低いドイツに職を求める動きが加速している。ドイツの6月の失業率は5.4%でドイツ統一後の最低水準に近い。

 アルザス地方政府は特に国境に接するドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州での就職を後押ししている。同州にはドイツ経済を支える数千もの中小製造業が存在し、高級車メーカーの独ダイムラーやソフトウエアメーカーの独SAPの本拠地でもある。アルザスの失業率は約10%である一方、バーデン・ヴュルテンベルク州は同約4%だ。

 昨年時点で、約2万4000人のアルザス地方の住民がバーデン・ヴュルテンベルク州やラインラント・プファルツ州に通勤しているが、アルザス地方の労働人口120万人からすれば微々たる数字だ。

 政策当局者はアルザスの住民にとってドイツでの就職の最大の障壁は言語で、ドイツでの就職を促進するためには言語を含むさまざまな障壁を取り除くための包括的な支援が必要になると指摘する。近年、アルザス地方でドイツ語を話せる人口は数十年前と比べかなり減っている。

 ドイツの鉄鋼会社でマネジング・ディレクターを務めるミシェル・アミー氏によると、ライン川沿いの製造工場のフランス人労働者は現在約60人と、過去20年で半減した。同氏は若いフランス人労働者を採用する試験的プログラムをフランス政府の資金援助を受け9月から導入。社内施設で実習生6人にドイツ語研修を半年から1年間受けさせる。

 国境を越えて通勤する若い労働者の支援策としてフランス、ドイツ、EUは計340万ユーロ(約4億3780万円)を出資し、ライン川を挟んだフランス側のストラスブールにバイリンガルの託児所を設立する。ドイツ側のケールとストラスブールから60人まで受け入れ可能だ。

 また、両国の行政機関はインフラ面の障壁を取り除くため、9700万ユーロを投じて2016年までにストラスブールのトラムの路線をケールまで延長する計画だ。(ブルームバーグ Jonathan Stearns)

激突する日仏会談と米中会談

日仏首脳会談で最も注目すべき成果は、両国間の外務・防衛閣僚級会合(2プラス2)の開催だろう。従来の日米・日豪の2プラス2の枠組みに、第2次安倍政権下の共同声明によって日露・日印の2プラス2、さらに日仏の2プラス2が加わることになる。

2013年1月23日のエントリーにある通り、安倍首相は「アジアにおける民主主義を守護するダイヤモンド」という論文において、タヒチにあるフランス太平洋海軍に着目していたが、論文通りの展開を見せている。利害関係者が交錯している国内よりも、国外の方がテンポ良く展開するのが皮肉な気分ではあるが。

一方、非公式の米中会談が行われる。オバマ政権は、国務省と国防総省の間で米中融和に対する対立構造が見え隠れし、リビア大使殺害事件の隠蔽、報道機関その他への大規模盗聴、茶会党など対立勢力への税務調査など再選時のスキャンダルが噴出している。中共にとっては、この数少ない好機をどう活かすだろうか。日米の2プラス2を弱体化させるだけでも彼らの利益になることは間違いないからだ。

7日から米中首脳会談 米との「新型大国関係」の真意はどこに? 中国習政権 2013.6.7 22:37 MSN産経

中国念頭、航行の自由重視…日仏が共同声明発表 2013年6月7日13時33分 読売新聞

 安倍首相は7日、首相官邸で、国賓として来日したフランスのオランド大統領と首脳会談を行い、共同声明を発表した。

 次世代の原子炉である「高速炉」の共同開発をはじめとする包括的な原子力協力を行うことで合意し、日仏の安全保障分野での協力強化に向け、外務・防衛閣僚会議(2プラス2)を早期に開催することでも一致した。

 安倍首相は会談後の共同記者会見で、「両国が手に手を携え、法の支配に基づいた、自由で開かれた世界の形成を目指す」と語った。

 会談後に発表した共同声明では、「新たな大国の台頭で生じる課題に対応する」として、東シナ海などで強引な進出を続ける中国を念頭に、航行の自由を重視する方針を打ち出した。


対中国で利害一致 バーター取引「成功」 2013.6.7 21:12 MSN産経

 7日の日仏首脳会談で、両首脳がともに意識していたのは中国への懸念だ。東シナ海で領海侵犯を繰り返される日本はもとより、フランスにとっても中国の海洋覇権の拡大は「国益」に直結する事項だ。

 ニューカレドニアや仏領ポリネシアを抱えるフランスの排他的経済水域(EEZ)は世界第2位。このうち太平洋が3分の2を占める。ニューカレドニアなどには計2千人の軍隊も配備している。

 オランド大統領は国会演説や記者会見で「太平洋における協力を強化したい。私どもが太平洋に領土を有しているからだ」などと繰り返した。

 サルコジ前大統領が中国に親和的な傾向があったのに対し、オランド大統領は昨年8月の大使会議で「経済大国でフランスの主要パートナーである日本は、それにふさわしい十分な関心をここ数年受けてこなかった」と述べるなどアジア政策の見直しも進めている。

 フランスには日本の先端技術を取り込み、仏経済の回復を図りたい思惑もある。今回合意した防衛装備品協力も、仏政府の要望を日本側が受け入れた。フランスは世界第4位の武器輸出大国。日本は一昨年の武器輸出三原則緩和で米国以外の国との共同開発が可能になっており、フランスは日本との防衛装備品協力で英国に先を越されていた。

 これに対し日本側は、仏防衛企業によるヘリコプター着艦装置の中国への売却を念頭に、防衛装備品の輸出管理の枠組みを交換条件として要求した。

 「日本が売却自粛を要請してもフランスは『自由貿易』で逃げる。装備で協力するからには、変なところに売ってもらっては困る」

 外務省幹部はこう話し、バーター取引の「成功」に胸を張った。(杉本康士)


参考URL:
なぜか報道されない安倍総理のセキュリティダイアモンド構想 2013年1月10日木曜日 剣kenn諤々

Asia’s Democratic Security Diamond Dec. 27, 2012 Project Syndicate
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