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静かなる英米の逆襲

今回のリビア情勢を英米の視点から見ると、機会主義に陥るか、陰謀論を論じたくなりそうなくらいの有利な情勢が訪れている。

1986年のリビア爆撃、1988年のパンナム機爆破事件などに見られるよう、1980年代のリビアは英米と空爆とテロの応酬を行った。そのため1990年代のリビアは措置が解除される1999年まで、国連の経済制裁下にあった。2000年代に入った以後もアメリカは「テロ支援国家」の指定を取り消さず、イラク戦争の結果、ようやく2006年に国交正常化を行った。しかし、アメリカの巨大メジャーはリビアの原油利権にまだ食い込んでいない。

リビアにENIが持つ利権と、そこで産出される原油に依存する割合(約22%)が高い旧宗主国のイタリアでは、ベルルスコーニ政権がスキャンダルで身動きが取れなくなっている上、すでにチュニジアからの難民流入騒ぎが起きている。経済難民は拒めても政治難民は拒めない。リビアの情勢悪化はイタリアにとって不利益でしかない。

独仏にしても同様だ。フランスはトタルが利権を持ち、ドイツはBASF系のウィンターシャルが利権を持っている。ミラージュ戦闘機の運用実績もあることから、今後の巨大な武器取引も可能であったのに、それらがデモ隊鎮圧に使われるのでは拙かろう。まして、リビアがサハラ以南のブラックアフリカからの不法移民の防壁ではなくトンネルとして機能する事態など悪夢ではないか?

リビアの石油生産量・輸出量・財政収支(最近の中東・エネルギー情勢から)

Relying on Libya : The Economist

さて、上記のリビア原油のデータを見ると、国家破綻しているアイルランドの依存度がイタリアよりも高い。そして、その対応をめぐってアイルランドでは総選挙が行われ、与党・共和党が敗北し、野党が政権を担うことが決まった。

ユーロ下落、アイルランド支援に不透明感-対円で3週ぶり111円台 2月28日(ブルームバーグ)

【アイルランド総選挙結果】
フィアナ・フォイル(共和党):18
フィナ・ゲール(統一アイルランド党):70
労働党:35
シン・フェイン党:13
緑の党:0
無所属・諸派:17

与党から転落した「フィアナ・フォイル(共和党)」は、アイルランド独立条約(英愛条約)に反対したエイモン・デ・ヴァレラの流れをくんでいる。一方躍進した「フィナ・ゲール(統一アイルランド党)」は、アイルランド独立条約(英愛条約)を支持したマイケル・コリンズの流れをくんでいる。「シン・フェイン党」は、同じく独立戦争時の英雄のひとり、アーサー・グリフィスが結成した。そのほかに労働党、緑の党がある。

ただしどの政党のスタンスも、中道から左寄りにしかない。となれば実際の違いは、独立条約の賛否に見られるように、イギリスからの影響力離脱を急進的に進めるか、漸進的に進めるか(もしくはイギリスに対する容認度)の違いしかないのだろう。

つまり、ユーロに加盟することで、イギリスからの影響力離脱を急速に進めようとしたフィアナ・フォイルの結果が国家破綻だった。

フィナ・ゲールの新政権は、ECBの支援プログラムに対して条件変更を表明している。悪くすればすべてをひっくり返すことになるだろう。当然この連鎖がギリシアにも及ぶのだ。しかし支援要求もいいが自律的回復には、一時的にでもユーロから離脱するべきだ。為替リスク無しに資本が回収されていくのが不満の背景なのだから。また下落するユーロの貿易上の有利さが、工業力の強いドイツだけに独占されるではないか。それは言い出せない弱小国の悲哀をここに見るわけだ。
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事実上の“リビア内戦”

もはや“リビア内戦”と云って差し支えないだろう。

下記のニュースは、アメリカの軍事アドバイザーがキレナイカに到着したことを伝えている。200万人の住民を持つキレナイカでの統治機構をつくる事が示唆されており、その機構が民兵組織を持つための訓練を行い、不足する兵力を補うためにエジプト人傭兵が動員される可能性を含めての一連の措置をアドバイスする。

US military advisers in Cyrenaica. Qaddafi's loses his air force :February 25, 2011, 1:46 PM (GMT+02:00)

一方、カダフィ大佐は「リビアのため、尊厳のため、石油のための戦いに備えよ」と、演説している。

いずれの方法であろうと、政権交代は『油田利権の分配の変更』を意味する以上、各部族の去就とそれに連動する各国とその石油資本の動向も注目しなければならない。主に旧宗主国のイタリア資本ENIとスペイン資本のレプソルYPF、オーストリア資本のOMVなど巨大メジャー以外の石油資本がリビアに多い。これが覆されることになるかもしれない。

カダフィ大佐:支持者に反体制派への戦いを呼び掛け-演説(1) 02/26(ブルームバーグ)

カダフィ大佐「敵を打ち負かす」、演説で徹底抗戦呼び掛け:2011年 02月 26日 09:10 JST

OMV、リビア北東部Shat Eira油田の生産を停止:2011年 02月 25日 02:21 JST

参考URL
中東諸国に走る社会的亀裂――リビア、バーレーンの大規模デモで何が起きるか:フォーサイト(2月25日)

【最近の中東・エネルギー情勢から】:中東・エネルギー・フォーラム
同サイトから
1.首都トリポリを決戦の地として守りを固めるリビアのカダフィ大佐と同市に向けて進む反乱軍を交えた反政府勢力(現地時間:2月24日までの情勢)

2.カダフィ派・反カダフィ派・態度不明確派に別れるリビアの主要部族の現状(現地時間:2月24日時点)

世界の危機の震源地

円とスイスフランが安全であり、ドルとユーロが安全ではない。

ドルとユーロの通貨安競争が、逃避先の選択肢としての円とスイスフランへ向かったのは明白だ。地政学上のリスクだけなら、円はそれほど安全ではないのにも関わらず、ドルが安含みである。危機においてドルはもはや安全ではなくなったのだ。何故なら危機の震源がQE2にあるのだから。

石油先物は1バレル=100ドルを超えた。

石油の決済は中東産油国がドルペッグであることを考えれば、産油国の収入は減りも増えもしない。影響を最も受けるのは産油国ではない中堅の新興国であろう。中国や韓国などが典型である。人件費の高止まり、可処分所得の減少、原材料費の高騰、輸入資本財の円高による値上げ、エネルギー効率の悪さから来る収益性の低さを自国の通貨安だけで補っているからだ。

原油高の進行はこれらの国々の成長余力と購買力をなくし、現在のコモディティ価格上昇をバランスする方向に働くだろうが、失業率増加などで不安定さは変わらないのだろう。

米株は上昇、原油価格の落ち着きで売り圧力緩和:2011年 02月 26日 09:17 JST

ドル上昇、原油高一服で買い広がる=NY外為市場:2011年 02月 26日 08:36 JST

アメリカは自国が危機の震源地でありながら、その波及する津波のようなコモディティ価格上昇とそれによるインフレと争乱・革命・内戦を利用して、短期的に市場で利鞘を取りに行く。ある種のマッチポンプではないか? 中長期的なリスクの増大は国力を弱める結果になろうと、そうせざるを得ないのだろうか?

本来はドル安を利用して、世界最大の個人消費市場を持つ内需をすべて国内生産に任し、海外からの粗悪品(特に支那)の製品を輸入しなくなれば、特に輸出倍増戦略を採る必要もない。内外のサプライチェーンを再構築する時間的余裕はあるはずだが、共和党と民主党の対立のなかで政策の一貫性を保つことが政治的条件になるだろう。

朝敵“小沢一郎”のランクアップ

明日は226事件であることから想起して。

青年将校らは『昭和維新』を唱えて、昭和天皇の股肱の臣を殺戮した。この一点だけでも倒錯した尊皇と言わざるを得ない。クーデターを起こした者が一時は帝都の“自ら混乱させた治安”を維持し、仰ぎ奉る立憲君主をないがしろにして傀儡にしようと画策した。先帝陛下を自分たちの思想の投影装置として扱ったことに気付かずにいられたのだから、実に奇妙なクーデターだ。

しかし、今回の“維新”を唱える代議士たちは、いっぺんの尊皇の心すら持ち合わせていない。

一連の「維新の会」設立の動きは、民主党内での権力闘争で劣勢にある旧・新進党及び旧・自由党系の議員たちが、地方組織を温存するために“維新”というフレーズだけ拝借したものだ。ただのポピュリズムと云える。

東京選出の民主議員が「東京維新の会」設立 消費税増税「断じて許せない」:MSN産経(2011.2.25 00:43)

この動きの中核にいる小沢一郎氏が、インド洋での海上自衛隊の給油活動を反対・停止させたことで、テロリスト擁護者“パブリックエネミー”になり、一昨年の中国共産党副主席と陛下の会談での無配慮さによって、見事“朝敵”となったが、最近では“全世界の一神教の敵”に成り上がったようである。

米国務省、信教の自由に関する報告で小沢氏「キリスト教は排他的」発言に言及:クリスチャントゥデイ(2010年11月19日)

【社説】キリストにある自由とは:クリスチャントゥデイ(2011年02月20日)

こうした発言をする政治的センスの持ち主だからこそ、最後は党を壊すのである。その都度、看板を掛け替えねばならないが、それにも政治的資金は要る。しかし、このセンスだから自分で金をロンダリングせざるを得なくなるのではあるが。

夢想家“カダフィ大佐”の夢の終わり

旧王家(サヌーシー教団)の政治的勢力が残り、油田という経済的基盤があるキレナイカにおいて、権力基盤たる軍部が離反した時、カダフィ大佐の政治的生命は尽きた感がするが、トリポリタニアにまで離反が及んだ現在、最期まで闘うしか選択肢が無いように思われる。それがナショナリズムの使徒として歴史に現れた彼の役割なのではないか?

カダフィ氏、完全に孤立か…反体制派が東部制圧:読売

原油は220ドルに急騰も、リビアとアルジェリア生産停止の場合-野村 2月23日(ブルームバーグ)

リビア反体制勢力が拡大、政権崩壊近いとの声-各国は国外退避急ぐ 2月23日(ブルームバーグ)

右腕も離反 カダフィ大佐四面楚歌 残るは一族のみ…:MSN産経

アラブのナショナリズムの流れの中で台頭し、王制を打倒した男が見た夢とはなんだったのだろうか? ナセルへの一方的な心酔と現実主義を採ったサダトへの一方的な憎悪、一夜で終わったチュニジアとの国家統合、1980年代の反米テロ、トゥアレグ族の独立運動の支援、チャド内戦への介入、イスラム原理主義への反発と独自の解釈によるジャマーヒリーヤと呼ばれる直接民主制、汎アフリカ主義への傾倒、と。どれもが結実しなかった。砂漠を渡り交易していたフェザーンでの体験から生まれた彼の思想は、なかなか理解の及ばないところにある。彼は革命家というより夢想家だったのかもしれない。

彼がオクシデンタル・ペトロリウムのアーマンド・ハマーに価格交渉で勝利したときから、アラブ・中東産油国はオイルマネーが持つ魔力に目覚め、取り憑かれたとも云える。その国の支配者だけでなく国民も。石油から生まれた富で新たな技術を習得し、新たな産業を興し、勤勉な労働によって公平に分配したならば、もっと別の現在がありえただろうに。エネルギー関連産業の雇用吸収力は、やはり健全な中産階級を作るには少なすぎるし、リビアの人口もまとまった国内市場を作るには少なすぎる。リビアでも他のアラブの産油国と同様、周辺各国からの出稼ぎ労働者で経済が回っている。

彼の望みがもしもリビアという国民国家を造ることなら、叶えるために闘って死ぬべきだろう。部族を超え、地域対立を超え、国民の敵として国民を糾合する存在として。それが彼の最期の役回りに相応しい。オイルマネーが誘った甘い夢から目覚め、本当に革命家に成り得るときが来て、国民は国民を創造する難事を引き受けられるとすれば、それで良いではないか。

無自覚な帝国“アメリカ”

QE2の効果は絶大だ。

アメリカ国内では、個人の株式資産価値の向上がそのまま個人消費の増大に直結している。思惑通りといえる。株式を持つ裕福なアメリカ国民(資産を持たない国民はデフレの影響を受ける)は相変わらずガソリンをがぶ飲みするSUVを買い続けるだろう。

12月米ケース・シラー20都市圏住宅価格指数、6カ月連続低下 2011年 02月 23日 02:53 JST(ロイター)

2月米CB消費者信頼感指数は70.4に上昇 2011年 02月 23日 02:50 JST(ロイター)

米ウォルマート11─1月期は増益、国内既存店売上高は減少 2011年 02月 23日 02:43 JST(ロイター)

しかし海外では、基軸通貨としてのドルの責任を軽視し、各国のコモディティの価格上昇とそれらに伴うインフレを誘発している。そしてアメリカはアラブの争乱に口策だけの民主化支持をする。ドルペッグでかつ石油を輸出する中東産油国は穀物が満足に買えなくなるではないか。

一方で国民国家的な閉鎖経済と、一方で帝国的なグローバリズム経済と、アメリカの歴史的二面性を垣間見ることが出来る。モンロー主義のアメリカ、国際連盟に加盟しなかった第1次大戦後のアメリカ、真珠湾奇襲後のアメリカ、冷戦下でのアメリカがあった。

そして問題なのは、冷戦終結後からの国民国家的な志向と挫折から帝国主義的な行動、そしてまたリーマンショック後からの国民国家的な志向へと繰り返されている、アメリカ自身が持つ歴史的二面性に対する一種の無自覚さ、無神経さ、そして無責任さが強まって、振れ幅が大きくなっていることだ。

カーター政権下でのアメリカでさえ、イラン革命と第2次石油ショックの際にドル防衛に走った経緯を思い返すと、オバマ政権下での、ドル暴落の懸念に無神経もしくは敢えて無自覚なバーナンキの姿勢には疑問を抱く。それを許すか黙認しているオバマにいたっては無責任とも思える。これで結局、アラブ・中東における米軍は方針とは逆に増派する事態が次の政権下で起きるかもしれない。

リビア、一部石油製品輸出にフォース・マジュール宣言=業界筋 2011年 02月 23日 06:35 JST(ロイター)

レプソルとENI、リビアでの石油生産を停止 2011年 02月 23日 05:11 JST(ロイター)

リビアの原油供給滞れば、OPECは増産する見通し=ビトルCEO 2011年 02月 23日 05:05 JST(ロイター)

リビアの各都市で港湾業務停止、暴力行為拡大で=関係者 2011年 02月 23日 05:04 JST(ロイター)

カダフィ大佐を支持せず、東部地域は体制支配が崩壊=兵士 2011年 02月 23日 02:37 JST(ロイター)

北海ブレント・米原油先物が2年半ぶり高値、リビア情勢受け 2011年 02月 22日 21:39 JST(ロイター)

バブルにはバブルで

中間選挙の結果、アメリカの下院は共和党が過半数を占めている。上院は民主党優勢であり、日本と同じ「ねじれ国会」の様相を呈しているが、アメリカでは予算案における上院・下院どちらかの優越原則はない(予算発議は下院の権限)ので、上下両院で通らなければならない。

現在の暫定予算は3月4日が期限で、新たな暫定予算が成立しなければ、政府閉鎖に陥る、とのことで予算関連法案が通過しない場合の日本と同様の危機を迎える可能性がある。

米下院、共和党主導の歳出削減法案を可決-対立で政府閉鎖の恐れ 2月19日(ブルームバーグ)

思い返すと、クリントン政権の第1期の中間選挙でも、民主党大敗・共和党躍進の結果となり、下院では42年ぶりに民主党が多数派を失った。脚光を浴びたのが共和党から下院議長となったニュート・ギングリッチ氏であった。彼は“アメリカとの契約”と銘打ち、財政均衡予算案を押しまくり、その対立から暫定予算が通らず、同年の冬に政府機関が一時運営停止した。その後、クリントン政権は共和党の主張を丸呑みする形となり、発足当時の保護貿易・国内産業復興の政策を引っ込めてしまい、第2期政権の末期には貿易収支の赤字を第1期開始時の倍にしてしまった。

どうやら同じ展開になる可能性が高くなってきた。

共和党、特にティーパーティの主張は伝統的な“小さな政府”志向であるし、ティーパーティの主体となっている中産階級にとって、不動産バブルの崩壊に伴う住宅価格の低下は、自分たちの医療費、老後の生活資金、子供の学資といったものに充当する資産の根源の喪失を意味しており、彼らの運動の動機はここに起因している。オバマ大統領は、財政・金融一体の経済政策が彼らにとっても良策であることを説得し続けなければならないのだが、大統領の言葉は彼らには未だ届いていないようだ。

金融政策一本しか選択肢がなくなるとしたら? ITバブルの崩壊を不動産バブルの発生で乗り切ったように、現在QE2による通貨安バブルが不動産のそれにとって替わるのだろうか?

アラブ『国民の創生』

ハリウッド映画草創期の監督D・W・グリフィスの作品『国民の創生』(1915)は、近代映画の技法を完成させた歴史的意義を持つ名作だが、一方で南北戦争とその後の混乱の中から、クークラックスクラン(KKK)が誕生する南部側の歴史的認識を持つ問題作でもある。

南部人にとってアメリカ合衆国の国民国家としての合意は、北部人への敵意ではなく黒人に対する敵意を持つことで形成された、と南部出身のD・W・グリフィス監督は主張したかったのだ。そしてその現実は、公民権運動後の今日でも、白人男性と黒人女性との婚姻率が、1999年の時点で2.3%に止まっていることに示されている。

つまり認めたくない現実として、アメリカ合衆国は、自由意志で移民したすべての人種(白人系、ユダヤ系、アジア系)、奴隷という非自由意志で渡ってきた黒人、原住民のネイティブアメリカンとその混血であるヒスパニックとに常に分裂し、内部に外敵を見出すことで国民国家としての均衡を保っているのだ。とすれば、アフガニスタン侵攻とイラク戦争と対テロ戦争が続く中でのアラブ系の迫害があるとしても、それは第1次大戦中のドイツ系や、第2次大戦中の日系人の扱いと異なることはない、と予測される。

ところで、当のアラブ人にとって国民国家とは存在しているのだろうか?

リビア北東部ベンガジでのデモで少なくとも200人死亡-AP:2月20日(ブルームバーグ)

リビア、大規模な抗議行動受け第2の都市ベンガジに軍を配備 2011年 02月 18日 19:22 JST(ロイター)

反政府デモの飛び火、サウジはシーア派の台頭に危機感 2011年 02月 18日 15:45 JST(ロイター)

イラン軍艦がスエズ運河へ、エジプトは「問題視せず」=国営TV 2011年 02月 18日 11:14 JST(ロイター)

現在のアラブ諸国の混乱だが、バーレーンではスンニ派とシーア派の宗派対立、リビアではトリポリタニアとキレナイカの地域対立が存在する。これらの対立が利害調整を阻害する要因は、アラブ諸国が未だ国民国家ではないことにあるのだろう。

国民国家は、民族・宗教・風土の違いを超えて団結することが出来る。最も良い例はフランスと思われる。

一方イラクでは、スンニ派・シーア派・クルド人の間についに国民としての一体感は生まれなかった。サダム・フセインの所属したバース党は、本質的に近代化政党であったのにもかかわらず。

近代化政党の目標は、当然近代化にあるし、近代化とは、近代国家をつくることにある。近代国家をつくることは、国民をつくることであったし、国民とは、民族や出自に関係なく自分たちが同じネイションの一員であると自覚したときに誕生する。それはある種の普遍性を互いに認め合うことにほかならない。

同じムスリムでもトルコ、イランが早々に国民国家となったのとは対照的に、アラブ人の国家はそれに失敗してきた。ひとつにはイスラム教自体が優れて普遍的であったために国民国家が必要ではなかったことがある。またひとつにはイスラエルに対する敵意を持つことで形成されつつあった国民国家的な合意が、中東戦争での度重なる敗北と相互の利害衝突(たとえばヨルダン内戦)で壊されていったことがある。

さて今回の混乱は、再度、国民国家の形成の一助となるのであろうか? それは外敵としてのイスラエルをもう一度必要とするのであろうか? それとも南北戦争後のアメリカのように内部に外敵を見出すのであろうか?

ロシアのボトルネックとブレイクスルー

ソラーズ(ソレルス)がフォードと提携したことによって、ロシアの自動車産業界の勢力図が次のように固まった。

国内第1位のアフトワズ(LADAブランド)はGMと提携後、ルノー・日産の傘下に入り、国内第2位のGAZ(2009年にGM傘下のオペルをマグナ・インターナショナルと買収予定だったが決裂)は提携を模索中、国内第3位のソラーズはいすゞ、フィアット、双竜自動車のノックダウン生産をしていたが、今回フォードと提携した。

他の国内系ではタガズ(TagAZ)が現代自動車、アフトトル(Avtotor)が起亜、BMW、GM、中国・奇瑞汽車をライセンス生産している。

外資系ではノックダウン方式で、トヨタが単独進出、三菱とPSAプジョー・シトロエンが合弁進出、その他ではVW、ボルボも進出している。外資系の進出先はいずれもロシア中央連邦管区になる。

米フォード:ロシアのソレルスと生産・販売で提携-合弁設立に合意 2月18日(ブルームバーグ)

「トヨタ車ロシア極東で生産」:Sollers社での現地生産に対するロシアの反響 JSN(2月16日)

国産新車の鉄道輸送補助は今年も継続 JSN(1月12日)

ウラジオストクへのトヨタの進出は、三井物産を介したセミノックダウン方式となる予定だ。これはロシア極東連邦管区の市場規模からと考えられる。かつ条件として、生産車を中央アジアもしくはウラル山脈の西側に輸送する際の鉄道補助金が継続されなければならないだろう。

つまり、シベリア鉄道・バム鉄道が物流の要であると同時にその複線化がひとつの課題になるわけだ。かつて我が国は日露戦争勝利の見込みを高めるため、シベリア鉄道の全面開通前に開戦した。かつ日本軍の参謀本部はその輸送量を単線で計算していた。だが、ロシア軍は貨車を極東に送った後、貨車を打ち棄てて無理矢理複線にした経緯があった。ロシア帝国の問答無用の力量を思わせるエピソードだ。

ロシアのボトルネックとは、その広大な国土ゆえのインフラの弱さである。特にウラル山脈の西側と東側の人口比重の違い、エネルギー資源の分布比重の違いがそこに拍車を掛ける。これが過度のエネルギー資源に依存した経済構造と効率性の悪さ、所得格差と男性の平均寿命低下・人口減少を生じさせている。ただしこれらのブレイクスルーに必要な全般的に国民の知識水準が高いこと、エネルギー資源・穀物を他国に依存しないという利点を持っていることは理解しておかねばならない。これは中国と大きく違う点である。

参考URL
ロシアにおける自動車産業の現状と可能性 2008年11月:JAMA(日本自動車工業会)

中古車輸出海外マーケット研究会

ロシア・CIS - JETRO

“民”から“みん”へのエクソダス

55年体制以降の自民党は、左右両翼を拡げた選挙互助会としての性格を持っていた。“三角大福中”がその典型で、政党内の派閥が政権交代してきたことと、それを成立させていた中選挙区制を再評価しなければならないだろう。

現在の自民党は、イデオロギー的には純化しつつあり、リベラル的な桝添氏や鳩山氏(弟)、国家社会主義的な平沼氏、亀井氏が脱党し、新党を立ち上げている。これは小選挙区制に自民党が適応している証左と云える。小選挙区制導入の目的の一つに憲法改正があることを考えれば頷ける話だ。

むしろ選挙互助会の性格を色濃く残しているか、強めているのは民主党であり、みんなの党であろう。

菅首相:民主議員の分派活動で窮地に、予算引き換えの退陣は否定(3 2月18日(ブルームバーグ)

菅首相:国民にとって何が必要か考え行動-衆院解散を否定せず 2月18日(ブルームバーグ)

筆者の地元でも、県議が民主党からみんなの党に移籍した。支持者宅の掲示板には、早速、みんなの党・渡辺党首とのツーショットのポスターが貼られている。失笑するのが、民主党の代議士、市議、参議院議員のスリーショットのポスターが横に並んで貼られていることだ。

駆け込み脱党のビッグウェーブに乗り遅れたら、政治的な死が待っているのだ。それはそれは切実であろう。

富野由悠季の作品に『OVERMANキングゲイナー』(2002~2003)というのがある。地球環境が悪化した時代、人類はシベリアにドームポリスと呼ばれる都市で暮らすことを余儀なくされていた。独占企業体・シベリア鉄道(シベ鉄)の支配から逃れ、聖地ヤーパン(日本)にエクソダスする主人公たちの話である。珍しく“皆殺しの富野”が発揮されなかった作品だった。

さて今回の政治劇の筋立ては、政治活動の資金繰りが悪化した昨今、幹事長の支配から逃れ、みんなの党にエクソダスする議員たちの話である。どうやら“皆殺しの有権者”は発揮されそうではある。

“最後の既得権益層”の最期

かつて、イラク人質事件で『自己責任論』が闘わされたことがあった。左翼イデオロギーに立つ側の人々が人質となった者の自己責任ではなく、政府の責任に転嫁しようと論ずることが多かった。

彼らは、「隣の芝生は青い」的な薄っぺらな外国贔屓を持ち、人権問題ではマイノリティに有利な差別を認め、それでいて自分たちの身を自由競争から巧みに逃れようとしてきた。彼らが国家を指導することが国益に、国家の競争力向上につながるとも思えない。

過去、橋本政権下、小泉政権下の改革で既得権益層と呼ばれた人々の勢力は削られていった。そしてついに、彼らの番が回ってきたのだ。

16人会派離脱と首相退陣要求、全く理解できない=首相 2011年 02月 17日 18:51 JST(ロイター)

公債特例法案の成立にハードル、深刻化で一部予算停止も2011年 02月 17日 18:47 JST(ロイター)

一部議員の衆院会派離脱は民主党崩壊の序章、部分協力の可能性も=逢沢・自民国対委員長 2011年 02月 17日 13:21 JST(ロイター)

最後の既得権益層とは、マスコミ・労組・ノンキャリア官僚である。

彼らが最後の既得権益層であるのは、資本主義における自由競争原理が働いていないからだ。日教組などに組織された教職員も同様に優勝劣敗の法則は適用されない。彼らも公務員(官僚)のはしくれだからだ。そして、競争原理が働かない分野に左翼が多いのは偶然ではない。競争に晒されない限り彼らに敗北はない。

が、なんらかの改革ある限り、彼らはあらかじめ用意された敗北予備群なのだ。

左翼にとって『その責任から発生した義務を果たすための最良の指標とはなにか、またそれはどのように示されうるのか』を考えれば、民主主義においては普通選挙(司法から独立性を与えられている者の道義的責任を負う)、資本主義においては自由競争(破産した場合の金銭的責任を負う)は受容しがたい。

彼らが(ここでは菅政権といえるが)結論を先延ばしにするのには、以上の「自己責任」回避の心理が存在する。しかし、今回は予算執行上でのタイムリミットが6月と決まっている。まずは連合傘下の大企業系の組合と公務員系の組合が分断され、各個撃破されていくだろう、と予測される。

彼らの最後の戦いに乞うご期待、である。

政策のナローパス

現在、各国では内政上のボトルネックを解消するのに難しい問題が、それぞれ待ち受けている。

アメリカでは、共和党からの予算削減についての要求を受け入れつつ、財政・金融政策一体での景気振興策を維持していくことが必要になっている。EUでは、ポルトガル・スペイン破綻を考慮しつつ、ユーロの存続のための資金確保と利害調整が出来る力量を持った次期ECB総裁を選任することが必要。またイギリスでは、緊縮財政とインフレが進むなかでスタグフレーションを防ぐことが求められる。

どれもこれもナローパスもいいところだが、我が国も例外ではない。菅民主党政権が予算に紐付いた予算関連法案を通せなければどうなるか? 例えば、赤字国債が発行できなくなるし、子供手当てが支給されなくなる。詰まるところ、統一地方選挙の時期までに内閣総辞職か解散総選挙もあり得るだろう。

そして中国では、バブル崩壊を防ぎつつインフレを抑制できるか、というかなり難しい経済運営の舵取りを迫られている。そこで共産党はかなりの力技を繰り出してきた。住宅価格指数と消費者物価指数の指標を変えてきたのだ。

消費者物価指数(CPI)は、記事から引用すると「新たな商品別の比重を11年1月から導入する計画を発表。昨年のインフレ上昇の中心となった食品の比重は改訂前の約33%から引き下げられた」。おかげでCPIは、予想より下回った。住宅価格指数も変更される。曰く「新築と中古の住宅価格を示す指数を1月分から個別に発表する。住宅価格の全国平均は『指標性がなく誤解を招く』として公表を停止する」そうだ。予定調和の“中国国家統計局の勝利”、指標の継続性はどこへやら、である。

中国:新たな住宅価格指数を1月分から発表-国家統計局 (1) 2月16日(ブルームバーグ)

中国人民元:対ドルで17年ぶり高値近辺-G20控え元高容認観測高まる 2月16日(ブルームバーグ)

中国人民銀:穀物生産向けの金融支援を強化へ-干ばつ対策 2月16日(ブルームバーグ)

中国:10年の乗用車輸入額は倍増、輸出額は40%増-上海デーリー 2月16日(ブルームバーグ)

中国:1月のCPI、前年比4.9%上昇に加速-新規融資1.04兆元 (4) 2月15日(ブルームバーグ)

中国の1月消費者物価指数:詳細(表)2月15日(ブルームバーグ)

中国の消費者物価指数で、注目すべきなのは「衣類」と「交通・通信」がマイナスになっている点である。食料・資源エネルギーはインフレなのに、工業製品はデフレなのである。

工業製品の供給過剰に陥っており、日本から輸入する資本財は円高で企業収益を圧迫し、国内で捌ききれない分を輸出すれば、人民元高の圧力がかかり、為替操作をすれば国内の過剰流動性が増し、不動産・株式もしくは動産のバブルが発生し、国民の可処分所得を減らし消費が落ち込み、インフレ抑制のために金利を上げても、内外金利差を目指したホットマネーが流入し、コモディティの価格を引き上げていく。

なんですかね、このバブルとインフレのスパイラルは? 消費者物価指数でもう一つ注目すべきは郊外(農村)のインフレの方が高いことである。1989年の天安門事件の真の原因はインフレであった、と言われている。おそらく中国共産党は、インフレ退治に比重を置かざるを得ないだろう。結局、政策のナローパスは通りそうにない。通るとすればファールと審判がそれを見逃すシナリオがなければならない。それはどんなシナリオだろうか?

アラブ“諸国民の春”の嵐はイエメンに吹く

ロイターの「特集 エジプト情勢」は、関連ニュース・データがまとまっており、非常に参考になる。

「中東諸国の経済力比較」では、イエメンが最も危機的状況にあることが分かる。

イエメンの各指標だが、今年度GDP予想成長率(4.12%)、国民1人あたりのGDP(1320ドル)、人口(2513万人)、国民の中間年齢(17.9歳)、失業率(35.0%)、インフレ率(8.9%)、原油生産量(全世界生産量の0.3%)とあり、エジプトのインフレ率(10%)と人口(7980万人)を除けば、すべてエジプトよりも酷い有様だ。

ロイター:特集 エジプト情勢

イエメンで反政府派と大統領派が衝突、混乱は日増しに拡大 2011年 02月 15日 12:21 JST

バーレーンでも反政府デモ、隣国サウジに波及の恐れも 2011年 02月 15日 10:46 JST

チュニジア政府、イタリアへの不法移民阻止に軍を投入 2011年 02月 15日 10:17 JST

イランのデモで1人死亡、「扇動者が発砲」と報道 2011年 02月 15日 08:28 JST

アルジェリア反政府勢力がデモ定期化へ、影響力に疑問の声も 2011年 02月 14日 11:23 JST

では、次の革命はイエメンなのだろうか? 一概に言えない。
なぜならイエメンの特殊事情として、利害関係を持った勢力がほぼ拮抗している点にあるからだ。

一つ目には、南北の対立。
1990年に南北イエメンが合併して間もないため、1994年には内戦が起きている。油田、港湾など経済利権は、南部に集中しているものの、政治的には北部主導になっている。

二つ目には、宗派の対立。
スンニ派(55%)、シーア派(42%)となっている。

三つ目には、原理主義と民主主義の対立。
一定の言論の自由と女性の参政権が認められているが、若年層の失業率が高いため原理主義の勢力が強くアルカイダの拠点が存在する。

となれば、イエメンでは革命よりも低強度の内戦に突入するが、国内のみで内戦を収拾する国力(経済力・軍事力)がないため、諸外国の介入と調停工作により、事態が終結する、という予測ができるだろう。

ギリシアのバーゲンセールは間近か?

あくまでもEUとは、独仏連合であり、その2カ国の戦いに巻き込まれてきたベネルクス3カ国を媒介としており、このヨーロッパ中央部の利益が優先される。

そこでは、PIIGSとまで揶揄されるポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシア、スペインは、あくまでも周縁部であり、独仏にとっての為替リスクのない市場であり、安価な労働力の供給源であり、収益機会の多い投資先であった。

しかし現在では、投資は引き上げられており(為替取引がないので、見えないキャピタルフライトといえる)、外国人労働者は帰国を余儀なくされている(ロマは、ルーマニアなどに強制送還されている)。また、ユーロの下落によってドイツの外需依存はさらに高まるだろう(日本の“いざなみ景気”と同様になる)。

EU、IMFなどが遺憾の意-ギリシャ政府への資産売却拡大要請で 2月13日(ブルームバーグ)

ギリシャ:EUとIMFからの資産売却要請を批判-スポークスマン 2月12日(ブルームバーグ)

EU・IMF:ギリシャ経済、緊縮策で破綻を回避-次回支援金確実に 2月11日(ブルームバーグ)

ギリシアは、ユーロからの一時的離脱(のちに復帰)、ドイツを中心とする財政的援助と最恵国待遇のバーター取引を組み合わせるのが、ベターな解決策と筆者は考えている。上記のニュースの観測気球のような発言と火消しの流れを読む限り、最終的にギリシアは電力、港湾、郵貯といった公益部門の売却を迫られるような気がする。

中古車輸出による海外市場への進出環境整備

日本製中古車輸出(部品含む)によって、その国・地域への日系メーカーが進出しやすい環境が整えられた、と云う実例をロシア極東に見ることができる。

2010年のロシア向け中古日本車輸出は前年比約2倍 - JSN(2月11日)

ハバロフスク知事が自動車工場誘致の意向を表明 - JSN(1月27日)

沿海地方行政府がマツダの現地組立工場計画を報道 - JSN(1月21日)

資源エネルギー分野で、日露の提携が進んでいることも好材料である。

住友と三井、ロシア東部サハでのレアアース開発で協議中-共和国首脳 - 2月11日(ブルームバーグ)

東シベリアに日本権益の油田、10年代半ばに生産開始-日経 2010年10月23日(ブルームバーグ)

東シベリア-太平洋石油パイプラインが正式稼働 - JSN(2009年12月28日)

ただし、国益を守る上で重要なのは、ロシアのパイプラインに過度に依存しないこと(ドイツ・フランスと同じ轍を踏むことになる)。さらに千島・樺太に投資を避けつつ、ここに対する兵力を増強すること(兵器ならば国内の生産性向上=デフレ促進につながらないのもメリット)であろう。

毒を仰ぐのはサムスンか、それとも・・・

最近の秋葉原を歩いてみると、韓国勢の姿が消えて行っているのが感じられる。中古市場では、ついぞサムスンのモニターを見かけなくなった。また、来月頃のメモリの値上がりがショップから通告されている。これもシェア重視のサムスンの影響力が失われている証左と考えられる。予感としてだが、スマートフォン「ギャラクシー」の攻勢が、サムスンにとっての最後の勝負ではないか。

少なくとも、半導体分野ではエルピーダが台湾メーカーを取り込みつつあるので、サムスンの生き残りが難しいことがわかる。となると、エルピーダを除くインテル、AMD、IBMの陣営のどこにサムスンがぶら下がるか、いやぶら下がれるかが興味の沸くところだ。

エルピーダ:統合交渉先の台湾企業が債権放棄要請―読売 2月12日(ブルームバーグ)

米貿易赤字:12月は406億ドルに拡大、原油輸入増響く(Update1) 2月11日(ブルームバーグ)

米大統領はコロンビア・ロシアとのFTA推進目指す-USTR代表 2月9日(ブルームバーグ)

FTA政策に見る日韓の温度差:日経ビジネスオンライン

現在の韓国は、日本の資本財を輸入して組み立てて主に欧米に輸出、ウォン安を背景に貿易黒字をたたき出している。しかし、米韓FTAの締結で中期的に貿易黒字の減少は避けられないと考えられる。その場合、韓国のフィリピン化が起きるのだろうか、つまり労働力の輸出で国際収支をバランスする構造に変化するのだろうか?

上記の日経ビジネスオンラインの記事に、米韓FTAのポイズンピルがまとめられていたので、引用する。

(1)サービス市場開放のNegative list:サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。

(2)Ratchet条項:一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。

(3)Future most-favored-nation treatment:未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。

(4)Snap-back:自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。

(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。

(6)Non-Violation Complaint:米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。

(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。

(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
 例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。

(9)知的財産権を米が直接規制
 例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。

(10)公企業の民営化


国内市場の保護は、国民の所得(消費)水準の保護と同義でもある。ここまでポイズンピルが多いことを考えると、国民生活の貧窮は避けられないと思われる。彼らはソクラテスのように毒を仰ぐのだろうか? 彼らが遵法主義であることはついぞ聞いたことがないが。

エジプト、暫定軍事政権へ

ムバラク大統領は10日のテレビ演説で、再度、辞任を9月とするロードマップを示した。しかしこれが国民に対して火に油を注ぐ結果になり、スレイマン副大統領がムバラク大統領の辞任を発表し、自らも辞任。

加えて、与党・国民民主党の党首であるホサーム・バドラウィも辞任した。2名はともにこの争乱のなか、ムバラクから副大統領、党首に任命されたばかりだった。

結果、モハメド・フセイン・タンタウィ国防・軍需生産相を中心とした軍部が政権を掌握した。

またスイス政府が、スイス国内のムバラクの資産を凍結している模様。

Swiss freeze possible Mubarak assets(ロイター)

ムバラク大統領が辞任、軍に権限を委譲-30年の独裁に幕 (Update2) 2月11日(ブルームバーグ)

エジプト:ムバラク大統領、9月選挙前に辞任も-与党幹部(Update1) 2月10日(ブルームバーグ)

これでエジプトの利害対立は、軍部と野党・ムスリム同胞団との調整に委ねられることになった。軍部は、ムバラクの出身母体でもある。

さらに国際原子力機関(IAEA)の第4代事務局長だったエルバラダイ氏も、直接利害と関係しない国民の支持を取り付けようと発言していくと考えられる。

新しい鵜は雷帝のごとき

ウラル山脈の東をどう保持していくか、これがロシアの長期的課題である。そのためには日本からの資本財供給への依存、迂回貿易構造への組込もやむなしと考えれば、下記のニュースが持つ国家戦略的な意義を理解できる。

トヨタ、ロシア極東で生産検討 三井物産や露3位メーカーと共同で - MSN産経ニュース

ロシア西方の出口であるサンクトペテルブルクと、東方の出口であるウラジオストクとにトヨタは進出することとなった。ロシアの合弁先となるロシア第3位のソラーズ(ソレルス)は、四駆車のUAZとトラックのKAMAZのブランドを保有している。旧ソ連時代からの過酷なインフラと気候環境に合わせた剛健な設計でも知られている。

ソラーズの持つウラジオストク工場は、もともとロシア太平洋艦隊の海軍工廠「ダリザヴォード」を2009年から自動車生産に転換したものである。であれば、トヨタの協力も政治マターのもとになされるのだろう。軍需コンビナートが日系の工業団地に生まれ変わる日が来るやもしれない。

これらが政治マターであろうと考えるのは、ロシアの人口動態からの敷衍である。ロシア人男性の平均寿命はソ連末期から57歳から65歳の間に留まっている。彼らは殺人率と自殺率の高さに女よりも先に倒れていくのだ。2050年には日本と同じく1億1120万人まで減少する、という国連の試算もある。

ロシアのように、エネルギー産業主体の社会構造では、雇用の吸収力が少なく、生産効率が低く、富の分配に極端な格差が生じる。

一方、日本からの資本と技術を受け入れ、製造業主体とすることで上記とはまったく逆の社会構造が生まれる。安定した職がウォッカや麻薬から男性を遠ざけ、家庭に戻らせ、出生率は下げ止まるだろう。

さらにロシア極東連邦管区の人口は約650万人、中国東北部(旧満州)の人口は約1.1億人。シナ人が不法合法問わず移民してくる恐怖は、彼らも表明し実行するところである。

現在、北方領土問題がわが国の内政不安によって紛糾していることもあるが、ロシア人は、相手に何かを欲しているときに真逆の行動をとるときがある。

沿海州などでの日本製中古車の輸入禁止措置といった具合にだ。さらにさらに大昔の歴史を紐解けば、イワン雷帝は諍いから将来を嘱望していた息子を殴り殺したこともあったではないか。

「はてさても新しい鵜とは雷帝のごとき輩やもしれませぬな」

三度蘇るフリードリヒ・リスト

米国の通商当局も明確に保護貿易の姿勢を打ち出している。これで財政当局と金融当局、外交当局を含めて国益の追求において一貫していることが分かる。

国内産業を守り雇用を維持し輸出も増やす、この一貫性を菅政権にも見習って欲しいものだが、“平成の開国”とやらをダボス会議で事実上の国際公約にしてしまっている現状はいただけない。

TPPが国益に適うのなら賛意を示せるが、菅政権の考える国益がまず分からない。安い製品・サービス、それに労働力が輸入されればデフレが進行するだけではないか。

中国:コメの最低価格、最大22%引き上げ-中粒米は50キロで128元に 2月9日(ブルームバーグ)

中国人民元、一時17年ぶり高値近辺-利上げで元高容認観測強まる 2月9日(ブルームバーグ)

米大統領はコロンビア・ロシアとのFTA推進目指す-USTR代表 2月9日(ブルームバーグ)

米ITC:中国製鋼管への反ダンピング関税の適用を最終承認 2月8日(ブルームバーグ)

中国が0.25ポイント利上げ-「引き締め加速」予想の声も(Update5) 2月8日(ブルームバーグ)

米国が保護主義へ回帰しようとしたことは、クリントン政権の第1期(1993~1996)にもあった。口先介入による円高を進めたり、スーパー301条の適用をちらつかせたり、年次改革要望書(日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書)を提出して非関税障壁の撤廃を要求・実現させていった。

にもかかわらず米国の貿易収支の赤字は、クリントン政権の第2期(1996~2000)の末期には第1期と比べてまさしく倍増した。この時期に経常収支をバランスするために資本収支の黒字が増大したし、資本を呼び込むためにITバブルが同時に発生し、それに伴ってニューエコノミー論(ITの活用によって在庫調整が円滑に行われ、それを原因とする景気循環がなくなる)が提唱された。工業国家としての復活もしくは保護主義への回帰は失敗したのだ。

オバマ政権の取り組みは、クリントン政権の第1期のリターンマッチなのだ。

かつて、フリードリヒ・リストを見出した米国は、その保護主義によって世界最大の工業国家となった。そして、世界の工場となった瞬間、自由主義に鞍替えしたことは言うまでもない。だから現在、世界の工場が支那であることを考えれば、この先祖返りも当然である。もちろん、このリターンマッチを易々と勝たせてやるつもりも我々にはないが。

QE2の光と影

米国の財政当局と金融当局は、自らの政策の影響力がどう世界経済に及ぼすかの理解はある一方で、外交当局は、その政策が各国の政治体制にどう波及するかまでは正確に予測できなかったということが、下記のニュースから分かった。もちろん諸外国の内政まで制御するなど無理な話だが。

米財務長官:ブラジルへの大量の資本流入-他国の通貨過小評価が増幅 2月7日(ブルームバーグ) 

米国務長官:ムバラク大統領は辞任すべきだが、今ではない(Update1) 2月6日(ブルームバーグ)

QE2による効果の光と影ということか。米国では、株価上昇による資産の増大が国内消費を下支えする。一方で、コモディティ価格の上昇がドルペッグをしている諸国のインフレを加速させ、政治の不安定化を巻き起こす。

ドルペッグ諸国がこれに対応する方法の一つは、自国通貨を実態より低いレートにして、より輸出依存度を高めることでインフレが起きる中でも雇用を維持し、政治の不安定化を防ぐと云うわけだ。

それを行っているのが、中国であり、韓国であると、ガイトナー長官は言外に指摘している。つまり、現在の中国と韓国が経済好調だとしても「人民元安景気」「ウォン安景気」であって、かつての日本の“いざなみ景気”と同じ状況にあるのだ。

現在の中国・韓国、かつての日本のように人件費を通貨によって安く抑えれば、国内の購買力は低く抑えられる。コモディティ価格は全世界共通であるから、韓国のガソリンが1リッター140円というのも頷ける。日本は生産効率性によって、競争力を持つしかない。もっとも生産性の向上はデフレになるわけだが。日本のエネルギー効率が、世界トップクラスである点はデフレ解消後に有利に働くと信じよう。

命綱の日々

ドイツは電力の約6割を火力発電に依存している。その火力の燃料はロシアからのパイプラインから供給されている。国家の首根っこをロシアに押さえられている格好だが、そのために再生可能エネルギー(大規模水力を除いた自然エネルギー)を増やす一方、フランスから原発の電力を輸入している。

チェルノブイリのトラウマがある国民感情から環境に配慮した姿勢を見せ、実際には原子力に頼っている。ときに称揚されることの多いドイツのエネルギー政策は、結局、エネルギー政策における国益の追求をどう図るかという現実的な対応なのだ。

日本政府:ブラジルと原子力協定交渉、1月31日から2日間-産経 2月7日(ブルームバーグ)

エジプト石油相:イスラエルとヨルダンへのガス供給2週間停止の公算 2月6日(ブルームバーグ)

平成18年以降、EU、ロシア、カザフスタン、ヨルダン、ベトナムと結ばれてきた原子力協定だが、現在もインド、トルコ、韓国、そしてブラジルと各国との交渉が続いている。エネルギー政策の国益追求の観点から喜ばしいことだ。

さらに、各国での原発の建設への推進力として、地球温暖化防止への取り組みと云う名目があることで、環境保護派でもある原発反対派の声が相殺されることは望ましい。

環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏の主張してきた「エネルギー・デモクラシー」は、デモクラシーとは称しているが選挙における合意形成をないがしろにしている点で、何がデモクラシーなのかよく分からなかった。

NPOが政治家よりも選良であるかのように、企業家よりも効率的かのように、官僚よりも安定しているかのように錯覚させるものではないか。

彼の主張する再生可能エネルギーの4つの効果というのにも首肯できなかった。

その効果とは、地球温暖化の防止(原発と省エネの併用でも可能)、産業育成(その他のいかなる産業でも可能)、地方の自立(なにを指して自立なのかが不明瞭、再生可能エネルギーを推奨する思想家なりが東京から情報発信した段階で自立は限定的になる)、エネルギーセキュリティ(それこそ複数のエネルギーを所有する根拠になりうる)だったからだ。

ドイツのように、パイプラインという命綱に支えられている日々を過ごす現実があり、日本もまた同様であるならば、そこでデモクラシーを主張するだけでなく国益を主張する視点を欠いていてはならない。それが政治的バランス感覚とでも云うべきものだろう。

闘争の血みどろを産湯に使いて

かつて、チェチェンの闘争の血みどろを産湯に使い大統領となったプーチンは云うだろう。もちろんプーチンの個人的な栄達を持ち出すまでもなくバクー油田への道を確保するという国益を考慮するのは当然であろうと。

プーチンの権力への登壇は、オリガルヒとエリツィンの癒着と腐敗に対する穏当な対処、そしてチェチェン紛争への激烈な対処と云う二つの成功によってなされた。プーチンと同じような経歴を持つ現・エジプト副大統領は同じような権力への階段を上るのだろうか?

エジプト石油相:イスラエルとヨルダンへのガス供給2週間停止の公算 2月6日(ブルームバーグ)

エジプト副大統領:大統領選の候補者にはならず-デモ隊は帰宅を 2月6日(ブルームバーグ)

エジプトの副大統領であるスレイマンは、エジプト総合情報局長官であった。ムバラク同様、ソ連のフルンゼ軍事アカデミーで教育を受けたと云われている。彼が実務的な官僚として現実的な対応をするとすれば、ムスリム同胞団やコプト教徒など現体制におけるマイノリティとの対話を進めつつ、軍部からの明確な支持を取り付けることになるだろう。スレイマン副大統領自身は、大統領選出馬を明言していない。では、今回の争乱の血みどろを産湯として登壇するのは誰であろうか?

2011年の“アジャックス作戦”

すべての徒党は圧力団体である。圧力団体は自らの利権を擁護し、獲得するために運動する。それが反体制であろうが、そうでなかろうが、その目的に変わるところはない。

エジプト副大統領が野党と権力移行で会談-米国務長官支持(Update1) 2月6日(ブルームバーグ) 

かつて、イランが石油国有化を図った際にCIAとMI6によってクーデターが行われたことを想起する。1953年に、アングロ・イラニアン石油(現在のBP)を国有化した首相モサデグに対する支援デモが続く中で、国王を説得して首相の罷免、反モサデグの勢力を結集してデモと争乱を引き起こし、石油利権を英米の石油メジャーで分割した。アバダン危機ともアジャックス作戦とも知られるこの事件以降、イランは親米国家となり、のちの「白色革命」と「イラン革命」の遠因となった。

たとえ、こうしたデモが官製で政府、それを支援する団体・外国から資金と人員が出ているとしても、その是非を問う資格があるのはその国の国民だけであろう。我が国でも同様の事態は当然あるのだから。

政治は利権の分配である

一言で云えば、政治とは利権の分配である。より云えば、永遠に続く利権の再分配過程である。そして、政治家とは利害関係の調整者である。政治改革を唱えることは利権の分配構造の変更を意味する。つまりは、小泉政権下での構造改革とは、新自由主義を名目とした“角福戦争”であったのだ。民主制・寡頭制・独裁制などいかなる政治体制であろうが、利権の分配ができなければ早晩打倒されることになる。

無論、独裁制が他の政治体制に比べて、利権の分配において硬直化しやすい、腐敗しやすいことは事実であろう。新たに勃興してくる階級(ブルジョワジー)が、利権の分配に預かれないと判断したとき、無産階級を動員して分配構造の変更を要求する。つい最近では、小泉政権下での"B層"を想起すればよい。

では、今回のエジプトの混乱はいかなる新興階級によって煽動されているのだろうか? そこが現在見えてこない点である。新興階級の勃興なしに現在の事態に至っているとすれば、独裁者をすげ替えて旧来の利権構造が温存されるか、海外に流出していく利権を力尽くで回収したのち、分配するよりほかないだろう。エジプトの近代史はその後者、外国からの利権回収の戦いの歴史とも云える。

仏ソシエテ:エジプトでのリスク、欧州勢で最大か-資産8200億円 2月4日(ブルームバーグ)

エジプトの歴史を彩り、そして支配してきたのは常に外国人であった。中世エジプトにおいて、十字軍と戦った英雄サラディンはクルド系であったし、マムルーク朝のスルタンたちはトルコ系やコーカサス系であった。エジプトを近代化したムハンマド・アリーはアルバニア系だったと云われる。その配下の傭兵はトルコ系であり、彼らと英仏がムハンマド・アリー朝における利害関係者であった。そして、これらをエジプト人に奪還する政治的闘争が、1882年のウラービー革命(エジプトの保護国化)であり、1919年のエジプト革命(エジプトの独立)であり、1952年のエジプト革命と1956年のスエズ戦争(スエズ運河の国有化)とつながっていく。

ときに反英仏であり、ときに反米であろうと利権の分配につながらなければ、エジプトの国民は幸福にはならないだろう。また独裁者をすげ替えたのち、より調整能力の低い者が権力の座に就けば、利権そのものを破壊し、喪失することは歴史の証明するところである。

アラブ“諸国民の春”

生命と財産の自由が、言論と信教の自由を担保し、集会と結社の自由を保証する。

かつて新興のブルジョワジーがその財産を守るべく、政治的・宗教的主張を確保するために、革命にその生命を賭した。しかし、彼らもその生命に保険を掛けるため、広範な人民の支持を必要とした。

清教徒革命においては右に長老派、左に水平派があった。フランス革命においては右にフイヤン派、左にジャコバン派があった。彼らを使嗾してまたは排除して、最後に生き残ったのはクロムウェルであり、テルミドールの反動者であった。彼らこそ真に新興のブルジョワジーと云える存在だったのだ。

では、革命の時期にブルジョワジーが育っていなかった、ウィーン体制下でのドイツ、オーストリア、イタリアでは誰が革命の主体だったのだろうか? 彼らは主として革命思想の洗礼を受けた自由主義者かつナショナリストだったのだ。

1848年の革命は、ナショナリズムによる革命の限界を示している。すなわちブルジョワジーの存在なしに独立(1832年)を達成したギリシアが、21世紀を迎えてなお抱える政治的宿痾もしくは経済的脆弱性に如実に表れている。これは現在のアラブにおける革命と混乱にも通底していないか? 自由主義者を原理主義者と置き換えれば。

エジプトは、古代エジプトの遺産を主体とした観光収入とスエズ運河の収入(サービス収支)に依存している。農村の余剰生産力が乏しければ、生産性を上げるために都市に余剰労働力が流入するであろうし、モノカルチャー依存の農業は国際価格の変動のためにせっかくの生産性向上が相殺されてしまう。この点もギリシアに似ていよう。

となれば、公共事業などの財政出動が必須であろうが、その場合は外債になり、もともと利害関係を持つ英仏の利権となっているだろうことは容易に想像が付く。こうして民族資本が育つ契機に乏しく、利権の分配に硬直化した独裁政権が公平に対応できなければ、結局こうしたインフレ局面で破局を迎えるのも自明の理と云える。

エジプト向け銀行貸し付け:最大はフランス、2位は英国 (Update1):ブルームバーグ

おそらく今回の革命は、かつての1848年革命“諸国民の春”と同様に、実際に呻吟する人々の苦境を救う特効薬にはなり得ないのではないだろうか?

中東の民主主義への収斂と“移行期の危機”

チュニジアの「ジャスミン革命」から始まった、中東の政治的混乱がこの地域の民主主義の定着へと収斂していくのか? エマニュエル・トッドが提唱するように、識字率向上と新興勢力の政治的台頭と受胎調整が進んでいくなかで、彼の云う“移行期の危機”にアラブは突入しているのだろうか?

現在の中東で、政権交代が定期的に行われているのは、トルコ、イスラエル、イランの3カ国である。お気づきのようにこれら3カ国はアラブ系、またはスンニ派ではなく、それぞれトルコ系のスンニ派、ユダヤ人、ペルシア系のシーア派が主流である。歴史的にムスリムの傍流であることが、長期の独裁政権が樹立されないことの一因と仮定できないか。

ともかくアラブ・ナショナリズム(汎アラブ主義)の中心地であるエジプトが、ナセル→サダト→ムバラクの長期政権を手放し、暫定政権となる場合、最も憂慮すべきなのはイスラム原理主義を奉じる事実上の最大野党「ムスリム同胞団」が台頭し、政権の奪取を企図することであろう。イランの例を見れば、長期的には欧州諸国・合衆国・日本と異なるイスラム的な民主主義が確立していく可能性はなくはない。ただし、短期的に人口約8000万人を抱えるエジプトが原理主義寄りになる事態は、“移行期の危機”を惹起しかねない。つまり最悪、エジプトにおいてイスラム革命が起き、キャンプデービット合意が破綻し、エジプトの10分の1の人口しか持たないイスラエルの存続の危機が到来することである。

「イスラエルとの平和条約破棄」=新政権主導へ意欲-エジプト・ムスリム同胞団:時事通信

“移行期の危機”とは、エマニュエル・トッドの云うところでは、伝統と習慣からの脱却を促すと同時に、心理的な当惑と政治的混乱を産み出す。モハンマド・レザー・シャー(日本では、パーレビ国王と呼ばれたことが多い)の行った「白色革命」は、識字率を向上させ、女性参政権を認めた。その結果が反動としての「イラン革命」だったのがそれに当たる。以降、イランでは保守派と改革派のせめぎ合いが続いている(これらはトルコ、イスラエルでも同様である)。さて、ここまでの予測を前提として、欧米は現在の事態を容認しているのだろうか? さらにうがった見方をすればだが、合衆国は、イスラム原理主義のアラブ・中東全体への波及こそを軍事的ダイナミズムの契機とするのだろうか?

ところがオバマ民主党政権下の合衆国の外交政策が場当たり主義に思われる。もちろん若い失業者の抗議の自殺や民主的なデモから事態が進展している名分上、独裁政権を支持できないのは理解できる。しかし彼らは親米的だった。その後親米的な政権が誕生する保証はない。

さらにこれらの革命と混乱の原因は、コモディティのインフレと若者の失業にある。その遠因はリーマン・ショック以降の合衆国のドル増刷(現在もQE2が続く)によって、通貨の供給量が約3倍となり、それがそのままコモディティの価格を約3倍に押し上げていることにある。これをFRBが予測していたかは知らない。しかし、円やスイスフランが内外金利差を背景に海外に流出したことを考えれば、当然の帰結と云える。

なにより、これらのアラブ・中東の政治的混乱は、かつてのカーター民主党政権下のアフガニスタンとイランの失墜にダブって見える。この失策がのちのムジャヒディンへの援助とタリバンの台頭、イラン・イラク戦争から湾岸戦争、イラク戦争へとつながった。30年近くかけて地歩を取り戻していった共和党政権の努力が水泡に帰す危険をオバマ大統領はどう認識しているのだろうか?
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