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『イナゴ身重く横たわる』が現実化した世界で

旭日旗とナチスの鷹の紋章をモチーフに使用した、列車のラッピング広告が非難を浴びて撤去されることになった。ニューヨーク市地下鉄に掲出されたこのパブリシティは、アマゾン・ドット・コムが配信するSFドラマ『高い城の男』の世界をイメージしたものだった。

SFドラマの原作者は、かのフィリップ・K・ディック。以前、彼の手になる『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』をマスメディアの凋落と極左・リベラルの精神的錯乱と絡めて取り上げた(2013年7月19日のエントリー参照)。

今回、渦中に巻き込まれた彼の長篇小説『高い城の男』(初出1962年、邦訳1965年)の筋立ては、以下のとおり。

枢軸国が第2次大戦に勝利したIfの世界。

合衆国の東海岸は第三帝国の支配を受け、西海岸は同様に大日本帝国の支配下にあり、中部は緩衝地帯として辛うじて独立を保っていた。そして、大戦後の米ソのように日独は世界を二分割しながら、深く静かに対立しており、全面核戦争勃発の危機が進行していた。

敗戦国となっていた合衆国では、精神の卑屈が蔓延して、懐古趣味から戦前の製品が大量生産され、まがい物の古美術品が取引され、芸術家は偽物を作り、ユダヤ人は東海岸から西海岸に逃れて名前を偽り、彼らを狩るナチのスパイも身分詐称している。

緩衝地帯のどこかにあるとされる“高い城”、そう呼ばれる建物に棲んでいる男によって、執筆され流布している『イナゴ身重く横たわる』という題名の書物は、連合国が勝利した世界を描き、発禁処分とされており、所持しているだけで命を狙われる代物だった。

精神の卑屈に囚われていたジュリアナ・フリンク(ドラマ版ではジュリアナ・クレイン)は、それを手に入れて一種の解放感に酔いしれる。ふと思い立ち、その謎と真偽を確かめに“高い城”に棲む男に会いに向かうのだった。

小説版とアマゾン・ドット・コム製作のドラマ版では、『イナゴ身重く横たわる』を手にした、その女主人公の名前は違う。また、発禁処分とされているのは書物ではなく、フィルムという違いはある。ただ、動機は異なるにせよ、“高い城”に棲む男に会いに向かう筋立ては変わらないだろう(ドラマはまだ配信中)。

女主人公は、同行者の裏切りに遭いながらも、ついに『イナゴ身重く横たわる』の作者に出逢い、『イナゴ身重く横たわる』に描かれた連合国が勝利した世界こそ、真実の世界であると告げられて、彼女の物語は終わる。

しかし、作品世界を現実の世界とあくまで考えるならば、枢軸国が第2次大戦に勝利した、日独冷戦の世界では、今まさにナチスの後継者争いも絡んで、全面核戦争が始まろうとしている。

その秘密を携えた連絡役を助けるため、暗殺者を逆に殺した日本の外交官はなすすべがない。彼は深く絶望したまま、精神の均衡を失い、連合国が勝利したもう一つの世界を垣間見るが、それは現か幻か判然としない、しかして彼の物語は終わる。

つまり、彼女と彼らが生の躍動を見せる物語とは、悪の神デミウルゴスの作り出したという宇宙にほかならないというグノーシス派の世界のようなものだ。すると、グノーシス派の信徒であるかによって見方はまったく変わる。

ある者にとってはこのディストピアの世界がディストピアではないと、そう思い込まされる。もしかしたらそれは欺瞞かも知れないが、ユートピアを信じたい者は信じるがいい。

ある者にとっては理想的ではないにせよ、曲がりなりにも破滅していない世界が、今まさに本当のディストピアに変わるかもしれない戦慄のなかで、世界がもしかしたらメタフィクションかもしれないと、幻覚だけ見させられるが、到底救われない。

物語のプロットは破綻していないが、物語世界の危機はなにひとつ解決しない終局。現実世界の解決しないストーリーの代償にカタルシスを求める読者にとって、『高い城の男』は暗澹とした読後感しかもたらさない。

閑話休題。

あえて露悪趣味や皮肉を込めたりした、暗喩的なグラフィックやパブリシティを許容できなくなった精神の卑屈が蔓延した、フィクションすら笑い飛ばせない世界。

世の東西を問わず、虚構で成り立っている方を信じたいモノ(者と物)たちに溢れ、メタフィクションを優先しかねない世界の有り様こそ、ことの醜悪さと深刻さを示している。

旭日旗とナチスの鷹の紋章をモチーフに使用したパブリシティを撤去したことで、ニューヨーク市地下鉄と、ニューヨーク市民の生きる現実世界は、問題は容易に解決しないという重さから遠ざかって、安易という世界へ走り去っていく。

旭日旗とナチスのデザインで物議、アマゾンがNY地下鉄の広告撤去 2015年11月25日 11:25 AFP BB NEWS

【11月25日 AFP】米インターネット小売り大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)がニューヨーク(New York)の地下鉄に掲示した、ナチス・ドイツ(Nazi)の鷹の紋章と日本の帝国主義の象徴とされる旭日旗のデザインを使用したドラマ広告が、非難が殺到したために撤去に追い込まれた。

 米国旗に日独の両シンボルを融合させたこの広告は、同社制作のドラマ「The Man in the High Castle(高い城の男)」のプロモーションとして、ニューヨーク州都市交通局(MTA)から許可を得た上で、タイムズ・スクエア(Times Square)を走る地下鉄の座席を塗り替える形で掲示された。

 先月放映が始まった同ドラマは、フィリップ・K・ディック(Philip K. Dick)の同名小説が原作。第2次世界大戦(World War II)に敗れ、東部をナチスに、西部を日本に占領された1960年代の米国を舞台にした架空のシナリオが展開される。

 広告については、第2次世界大戦とホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生存者の感情を害するものだとして、ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長などが広告の撤去を呼び掛けていた。当局者がAFPに語ったところよると、広告は当初、来月まで掲示される予定だったが、現在、撤去作業が進められているという。(c)AFP

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偽装難民ビジネスの温床のひとつ、マリ

ブラックアフリカの旧フランス植民地・マリでは、北部分離独立派とそれに呼応するテロリストを掃討すべく、主としてフランス軍が応戦したマリ北部紛争が終結してから、停戦が成立、大きな戦闘は起きていなかった。

しかし、潜伏していた現地のテロリストがフランス本土での同時多発テロに触発されて、首都バマコのホテルを襲撃した。

マリ、全土に非常事態宣言-アルカイダ系武装集団によるホテル襲撃で 2015/11/21 15:25 JST ブルームバーグ

マリ北部紛争の経緯をもう一度振り返る。

マリは、リビア内戦の余波を受けて、流出した武器と人員を手にしたトゥアレグ族の攻勢に耐えかねて、軍部がクーデターを起こしたものの、北部の占領と独立宣言を防げず、すぐに民政移管、クーデター側が暫定政府を襲撃など、さらなる混乱を起こしている間に、トゥアレグ族と過激派組織の合同と分裂、次いで安保理決議に基づく部隊の派遣を受けることになった。

リビア内戦終結以降、リビアにおけるトリポリタニアとキレナイカの地域対立と部族対立が収拾していない間に、内戦で流出した重火器と豊富な戦闘経験とを手にしたトゥアレグ族がマリ北部を占領、彼らの組織であるアザワド解放民族運動(MNLA)が独立を宣言した。

そして、トンブクトゥにある世界遺産の聖墓を破壊したイスラム過激派組織のアンサル・ディーンと合同して、2012年4月に新国家「アザワド」の成立を宣言した。その後、MNLAとアンサル・ディーン両者は決裂、アンサル・ディーンが勝利してマリ北部「アザワド」は、イスラム原理主義過激派の支配地域となった。これが2012年6月から7月にかけてのことだった。

アンサル・ディーンのほか、イスラーム・マグリブのアル=カーイダ(AQIM)、西アフリカ統一聖戦運動(MUJAO)も策源地を置き、MUJAOは人質にしていたアルジェリア外交官を処刑した。これが2012年9月。テロリストの策源地となったことを受けて10月には国連安保理が国際部隊の軍事介入計画案を求めるに至った。

2012年12月に過激派掃討の部隊派遣決議がなされた。翌2013年1月には、マリ北部「アザワド」を支配するイスラム過激派は首都バマコを脅かすに到る。しかし、フランスを主体とした軍事介入「セルヴァル作戦」は功を奏し、同年3月から4月までにはゲリラ戦に移行して、順次作戦はアフリカ諸国の軍隊に引き継がれた。

2015年に入ってから、マリ政府はイスラム諸勢力とトゥアレグ族それぞれとの間に停戦協定を結んでおり、散発的な戦闘とテロは続いているが、全面的な衝突には及んでおらず、内戦で難民が大量に発生する状況にはない。

と、ここまでが2015年8月23日のエントリーで述べたマリの情勢だった。

おそらくマリも難民を名乗る不法移民がリビア~地中海~イタリア・フランスを密航するビジネスのコネクションが出来上がっている。この人身売買業の流れを断ち切る措置は必要だろう。テロリストが収益源にしている可能性が高い。

ANZACの農場主求む、ただし支那人以外

以前の2015年5月4日のエントリーでも取り上げたように、

豪州政府は外国人による不動産違法購入に対する罰則を強化した。名指しこそされてはいないが、支那本土からの投資移民を対象とした規制強化であるのは明白で、同じく支那人が狙う農業(大規模農場、牧場など)や食品加工業(乳業、精肉業など)の買収案件も審査強化される。

これを裏付ける続報として、豪州ではイングランドの4分の3程度の広さを持ち、約185,000頭の牛を飼育する牧羊地の売却が差し止められた。また、同様にニュージーランドでも、事務レベルでは認可された農場投資案件が担当閣僚の裁可によって覆された。

中国企業の農場投資案件、担当閣僚が不認可と決定 (ニュージーランド、中国) 2015年11月09日 JETRO

Australia blocks England-sized (almost) farm sale to China November 19,2015 10:56am fastFT

従来の方針ではアングロサクソン系の英、米、カナダ、豪州は投資移民を受け入れていた。しかし、支那人は需給バランスの破壊のみならず、米国の覇権をも破壊しようと試みているため、日米豪の同盟が結束を固め、安全保障上の面から中共の食料自給の補助となるような案件にも注意が払われることになった。

豪州では2014年10月、支那本土から富裕層の移民を歓迎するため、1年間に1500万オーストラリアドルを投資すれば、優先的に永住権が与えられる新移民制度が制定され、2015年7月から始まる予定だったが、早くも軌道修正された格好となる。

アングロサクソン系の国々は支那本土からの投資移民を募る一方で、米国の“ピボット”に併せて、支那人の富を吸い上げるだけ吸い上げて、“対中封じ込め”の列に加わるタイミングを見極めていくことになる。

ヒスパニックを撥ね付けるプロテスタンティズム

2010年の中国の1人あたり名目GDPは4382ドルで10年前の約2倍、このまま推移すれば、あと10年でメキシコの1人あたり名目GDPと並ぶ。人件費のみを理由とする限り、中国に生産拠点を置く意味がない。

と書いたのが、2014年3月07日のエントリーの時点で、

2014年の中国の1人あたり名目GDPは7589ドルで、あと30%ほど上昇すればメキシコの1人あたり名目GDPと並ぶ。

と書いたのが、2015年7月8日のエントリーの時点。

人口において我が国とほぼ同数で米国に隣接するメキシコ、米国と平準化していくNAFTAの労務コスト、中共からの流通コストを考えれば、まずは製造業、のちにサービス業の直接投資(FDI)が増加するのは明らかだろう。

米国へのリショアリングは隣接するメキシコに及んでいる。ヒスパニック系の移民のうち、合法不法を含め、メキシコ人の占める割合が低下しているのは道理であって、北米及びNAFTAにとっては、TPP発効有無に関わらず、支那本土の生産拠点は必要ない。

下記のCNN日本版の記事では、ピュー・リサーチ・センター(ピュー研究所)の調査結果によって、ヒスパニック、特に米国に在住するメキシコ移民が減少すると同時に、米国からメキシコへ帰国する元移民の増加を伝えている。

以前、移民したヒスパニックが急速にカソリックからプロテスタントへと改宗している、というピュー・リサーチ・センター(ピュー研究所)の調査結果を2014年11月5日のエントリーで取り上げた。

わずか3年間ほどで約380~400万人がカソリック信仰から離れている。急速な改宗の理由は分からないとされているが、リーマン・ショック後の不況下、人工中絶を選択したメキシコ移民の女性を襲った自我崩壊の危機が一気呵成にカソリックからの福音派への改宗、もしくは棄教して無宗教化を促した可能性がひとつ考えられる。

自我崩壊の危機に晒されたメキシコ移民は男女問わず、中絶を容認しないカソリック的な精神世界に属しながら、中絶をせざるをない現実世界に直面したという精神的乖離に伴う自我の動揺を克服するためには、社会的自我を中絶容認か中絶反対のどちらかに合わせることで精神的自我を安定させる必要があり、そこから無宗教かプロテスタントになる選択肢があった。

この二者択一を避けたメキシコ移民は自国に帰国する選択肢を選んだのであって、経済的豊かさとその機会の享受の有無だけが理由ではない。

メキシコから米国への移民、帰国者の数を下回る 2015.11.20 Fri posted at 16:19 JST CNN日本版

(CNN) 2009~14年の間にメキシコから米国に移住した人は、米国からメキシコに戻ってきた人より少なかったことが、ピュー・リサーチ・センターの研究で明らかになった。

メキシコや米国の統計を元にした同センターの論文によれば、2009~14年の間に米国から戻ってきたメキシコ人とその家族(米国生まれの子どもを含む)の数は約100万人。一方、同時期に米国に移住したメキシコ人の数は推計87万人だった。

メキシコ人が米国を去る最大の理由は、米景気の回復が遅れていることと、母国に残してきた家族への思いだ。以前は家族に会うために母国と米国を行き来するのが容易だったが、国境管理の強化で困難になり、郷愁の念にかられて帰るケースが増えているという。

国境および米国内での不法滞在者への取り締まりが厳しくなったのも、米国への流入が減った一因かも知れない。移民税関捜査局(ICE)による強制送還数は急増し、オバマ政権は歴代政権で最も多くのメキシコ人を送還した。

「2014年度にメキシコ人の米国境での摘発数は急激に減少し、23万人になった。1971年以降最も低い水準だ」と論文は指摘する。

もっとも、09~14年にかけて母国に戻ったメキシコ人の大半は自分の意思で帰国している。強制送還された人の割合は14%に過ぎない。

メキシコ国内では「米国のほうがいい生活ができる」との見方は今でも優勢だが、成人の3分の1は米国に行っても生活は変わらないと考えている。また、アメリカに魅力を感じない人も増えてきている。

メキシコ人はこれまで長きにわたり、米国への移民で最も大きな割合を占めてきた。だが、近年ではアジア系の割合がほぼ同じくらいになりつつある。

覇権国の国力が交差するとき、戦争の危機が来る

日米もし戦うとすれば、大陸政策で対立・激突したときに限られる。これは我が国が先の大戦で学んだことだ。

1980年代の日米経済摩擦を経て、1989年の冷戦終結と天安門事件を境目にして、当時は日米経済戦争が現実の弾丸に取って代わるのではないか、と結構真剣に考えられていた。あの当時の空気感を一言で云えば表すには『ザ・カミング・ウォー・ウィズ・ジャパン』という表題の本が出版されていたことで理解できるかもしれない。

現在の中国の繁栄は、その日米資本主義の決戦における両者の廉価な労働力の供給源として見出されたからに他ならない。この補助線として、1980年代当時の我が国では、単純労働と特殊な技能労働の給与水準に大きな差がないことの方が問題とされたことを忘れてはならない。

危惧されていたのは、その抗争のさなかにかつての日英同盟の破棄同様、日米安保条約が破棄されるかもしれない、ということだった。米国側の一部は“ビンの蓋”論を提唱したし、日本側の一部は“自主防衛”を提唱した。実際は日米安保の再定義が両者の決定的破滅を防いだが。

もちろん、我が国の日本型資本主義(いわゆる“日本株式会社”)は、バブル崩壊と金融ビッグバンとバランスシート不況、デフレを経て、大きくその様相を変えた。

製造業は資本財や基幹部品で競争力を維持しつつ、航空宇宙・原子力などインフラ部門でも米国にキャッチアップしてきた。また、脆弱とされたメガバンクなど銀行セクターの自己資本比率の強化、所得収支の黒字化、知財やソフトウェアのサービス収支の改善など、より強靱さを増した。

引き換えに多くの社会的代償(永続的な雇用関係の破壊や自殺率の上昇、出産率の低下)を支払ったし、その点では米国の勝利と云えなくもない。

しかし、中国のGDPが世界第2位となり、米国への挑戦者として浮上してきたことは我が国にとっても“日本株式会社”再興の契機でもあるのだ。強靱さを維持したまま、それが達成出来るならば、これを利用しない手はないだろう。

と、2012年7月30日のエントリーで詳述したように、

覇権国家の交替期、特に日米の経済力(国民一人あたりのGDP)が交差する時期に、我が国は合衆国との同盟の瓦解を回避した。

回避できなかった最悪の事例は、2度の世界大戦であり、パックス・ブリタニカの緩やかな衰えと軌を一にして、急速に工業生産額で英仏を凌駕していたドイツ帝国の挑戦を大英帝国が受けた。

これに大西洋の波濤の先にあった合衆国、グレート・ゲームを戦ったロシア帝国とボリシェヴィキによって支配されたソビエト連邦、日英同盟によって北東アジアの安全保障を担う大日本帝国などの国家が英独のいずれかの陣営に与しながら戦った。

かくて第2次大戦の結果、ドイツ帝国(第三帝国)は敗れ、大日本帝国は滅亡し、大英帝国は破産に瀕して、漁夫の利を得たパックス・ルッソ・アメリカーナの覇権が確立した。

資本主義と共産主義の覇権争いは冷戦と呼ばれ、核兵器による相互確証破壊の恐怖の均衡とNATO(北大西洋条約機構)とワルシャワ条約機構に代表される集団安全保障によって、全面戦争そのものは回避された。

では、日米対決が迫った危険な時期(石油危機前後の1971年頃~湾岸戦争前後の1991年頃まで)、戦争(言い換えれば日米安全保障条約の破棄)はどのように回避されたのか。

象徴的な事例は、両国の文明とその風土を形作った自動車とコメを巡る貿易交渉と、その後の米国の産業政策に見え隠れする。

カーター政権時には『大統領競争力白書』が取りまとめられ、農産物と生産財では優位ながら、消費財では日本のキャッチアップが進んでいる、とされた。

さらにレーガン政権時には産業競争力委員会が設立されて、1985年には『ヤング報告』が公表された。4つの提言では、主に挙げると「新技術の創造と実用化と知財保護」、「生産的な資本(マネー)の供給増加」、「人的資源の流動化に向けた労使協調とストックオプション導入と再教育支援」、「通商貿易における独禁法緩和と外国の不当な慣行への対処」がなされることになった。

この米国の方針は、政治的問題になる自動車産業以外の製造業を捨てて、資本効率とイノベーションの観点から、投融資を情報通信分野に集中させつつ、それらの非戦略部門の組み立てなどは海外へアウトソーシングして、世界中にサプライチェーンを作り上げた。つまり、産業と金融のアメリカナイゼーション=グローバリゼーションを行った。

我が国は従来、得意としてきた国内で完結されたサプライチェーンを使って、顧客からの要求に対応する“現場での摺り合わせ”を否定されて、一部の製品・サービスがコモディティ化させられたことによって、特に弱電系(家電)メーカーは凋落していった。

米国の産業競争力回復のための戦略的要地として中国が見出され、我が国もその戦いに応じたからこそ、天安門事件の弾圧をあえて無視して、天皇陛下を訪中させてまで接近したのだった。

我が国からは、迂回貿易構造に組み入れた中韓の二国に、基幹部品やサービス(付加価値)を輸出して、非戦略部門の組み立てをさせて、完成品の製品とサービスを米国に輸出する。我が国は米国のゲームに乗って、そのルールを最大限に利用したのだ。

以前、OECDとWTOが発表した付加価値ベースから見た貿易統計では、我が国の最大輸出相手先は中国ではなく米国であることが明示されていた。

貿易収支を付加価値ベースで見た場合、2009年の日本の対米貿易収支に関しては、貿易総額で見た220億米ドルから、付加価値で見れば360億米ドルへと、60%も増加することとなる。また対中貿易黒字は、付加価値で見ると20.8億米ドルにまで下落し、対韓貿易黒字も3.6億米ドルまで下落する。つまり、中韓との貿易が東南アジア諸国と代替可能であることを示唆している。

しかも、それらの国々と水平分業が進んでいる電機、自動車などの輸出品でも外国からの中間財・サービスの投入割合は、電機では42%、自動車では38%と、OECD平均の45%を下回っている。我が国は巨大な内需を背景とした規模の経済とバリューチェーンの川上(研究開発など)と川下(サービス)を押さえていることで優位性を保っている。

そして我が国の輸出に国内サービスが付加される割合が高い(製造業でも輸出の約30%をサービスが占める)ことも分かる。

この付加価値ベースから見た貿易は、TPPに参加する国々に適用される累積原産地規則である。累積原産地規則が存在することで、TPPは中韓を排除する日米主導のブロック経済圏となるのである。

この経済圏構築の過程では、石油危機前後の1971年頃~湾岸戦争前後の1991年頃までに日米貿易摩擦の焦点となった貿易収支の黒字・赤字は問題とされなくなった。なぜならば、世界中にサプライチェーンを拡げた現在では、貿易赤字になっているということはそれだけ自国の内需が旺盛であることを示していると、認知されるようになったからだ。

上記、現在の中国の繁栄は、その日米資本主義の決戦における両者の廉価な労働力の供給源として見出されたからに他ならない、と述べたのはこのためである。そして、日米が撤退するに至り、彼らはどうやら“中所得国の罠(中進国の罠)”に陥ろうとしている。残ったのは国有企業の過剰供給力だけ、となる。

中国共産党は、米国のドットコムバブル→サブプライムローンに象徴される不動産バブル→量的緩和によるバブルを見習い、株と土地で繰り返し循環を続け、不良債権問題を先延ばしして、内需を拡大するなかで徐々に処理を行いたい。

しかし“中所得国の罠”を突破する前に少子高齢化社会、いわゆる人口オーナス期に突入するのだ。これがバブルを起こせないボトルネックとなる。

一人っ子政策の放棄によっても、少子高齢化を防げないとすれば、いかほどの移民を必要とするのだろうか。多文化主義の採用や同化圧力の強さは別として、13億人~18億人のばらつきがある人口に対して経済成長を縮小・鈍化させないだけの移民を募ることなど出来るわけがない(2015年2月11日のエントリー参照)。

広大な支那大陸における日米資本主義の決戦はリーマン・ショックを経て終結した。これ以降、覇権国に挑戦しようとする中国共産党の独自戦略をいかにして受けるかが日米の主題となっており、日米同盟の強化に伴う、新しい日米協力ガイドラインの制定、安保法制の改正、そしてTPPの大筋合意はすべて、これらに沿った戦略に基づいている。

中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ 2015年11月02日(月):高橋洋一 現代ビジネス

実は、中国の統計は、それを作成する組織もその作成手法も旧ソ連から持ってきたノウハウで行っている。中央集権・計画経済の社会主義国では、統計のいい加減さでは似たり寄ったりの事情だ。

ロシアでは、ペレストロイカの前まで経済統計は改ざんされていたが、批判はタブーだった。しかし、ペレストロイカ前後、ロシア人研究者などがそのでたらめ具合を明らかにした。

例えば、1987年、セリューニンとニーハンによる「狡猾な数字」が発表され、ソ連の公式統計では1928~1985年の国民所得の伸びが90倍となっているが、実際には6.5倍にすぎないとされた。平均成長率は年率8.2%から3.3%へとダウンだ。57年間にわたって、国内外を騙し続けたのだ。

公表されている統計からみても、そろそろ中国が経済成長の停滞期に入るだろう、というのが、ほとんどの学者のコンセンサスである。それは、「中所得国の罠」といわれる。

■中国も陥った「中所得国の罠」

「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいう。

この「中所得国の罠」を突破するのは結構難しい。アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれている。ただし、アジアでもマレーシアやタイは罠にはまっているようだ。

中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っているようで、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいる。

“原理主義、その調子をやめよ”と、プーチンが云う

ロシア軍機がトルコ軍によって撃墜された。しかし、これによって両国が全面対決に陥るとも思えない。

そもそも、この撃墜事案の以前からロシア軍機の領空侵犯は度々行われていた。根本的にはシリア内戦に介入するトルコとロシアの意図が相違していることに原因がある。

ロシアとシリア国内のクルド人勢力の利害は一致している。ロシア軍機のトルコ領空侵犯が偶然か意図的かは分からない。意図的と見ると、シリアからイラクに伸びるクルド人勢力の回廊(事実上、独立したクルディスタンとなりうる)はイランから中央アジアに接続できる。しかし、対立が過ぎると、トルコはこの回廊のアクセスを喪失するかもしれない。

これではクルドとロシアの接近によって、エルドアン大統領の企図する大トルコ主義の夢は、さらに遠ざかることになる。最悪の事態を避けるには、ロシアによる牽制の意図を汲みとって、妥協点を探る必要が出てくるだろう。

と、2015年10月6日のエントリーでも述べたが、

(もしも、大トルコ主義の夢を実現したければ)トルコはイスラム原理主義への傾倒をやめるべきだ、とプーチン大統領は述べている。

ロシア政府は、サウジアラビアの王侯貴族がISISに支援を行っていると訝しんでいるし、トルコの国境管理の甘さがISISの戦闘員供給を支えていると踏んでいる。

歴史上、もっともイスラムの世俗主義化に貢献してきたのはソビエト連邦と、その後裔国家であるロシア連邦だった。

しかし、ソ連のアフガン侵攻(1979年~1989年)は、全世界におけるイスラムの世俗主義化から原理主義化へのターニングポイントになった。ソ連崩壊の一因ともなった(2015年10月10日のエントリー参照)。

ISIS(イスラム国)が領域支配しているシリアからイラクの回廊を失っても、彼らはパキスタンのトライバルゾーンや、コーカサス山脈、中央アジアのキルギス、タジキスタンなどに逃げ込む可能性がある。そうなれば、ますますロシアの力に頼らなければならないジレンマに陥るだろう。

トルコ、政府指導部がイスラム化促している=ロシア大統領 2015年 11月 25日 20:15 JST ロイター

[モスクワ 25日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は25日、トルコの政治リーダーらがトルコ社会のイスラム化を促してきたと指摘し、それが問題との認識を示した。ロシアのメディアが伝えた。

タス通信によると、トルコ軍によるロシア軍機撃墜から一夜明けて、プーチン大統領は、「問題は、昨日に目撃した悲劇ではない。問題ははるかに根深い。現在のトルコ指導部は何年にもわたり、同国のイスラム化を支援する政策を実行している」と述べた。

栄光のロイヤル・ネイビーの憂鬱深く

キャメロン政権の財政緊縮政策によって、軍事予算削減が続き、英軍の作戦能力が過去5年の間に3分の1に低下してしまった、と軍事専門家が論評している。

と、2015年11月11日のエントリーで伝えた続報として、

ロシアの戦略原潜に対して、ニムロッドの退役によって充分な対潜哨戒機とその探知能力を持たなくなってしまった英国海軍が難儀しており、フランスとカナダ両海軍の協力を仰いでいる、と云う。

海軍能力の全般的低下はこれだけにとどまらず、戦略原潜基地のあるスコットランド沿岸にロシアの侵入を許してしまっている。これが底流に潜んでいるスコットランド独立運動と重なっていることと、考え併せると事態はさらに深刻である。

英国は早急に米国のP-8ポセイドンか、我が国のP-1を導入しなくてはならないが、上記の予算削減が続くのではまず不可能である。

現状、可能性としては低いが、現在の労働党のコービン党首が政権に就いた場合、その極左的思想の公約に伴って、対潜哨戒機の新規導入どころか自国の戦略原潜すら廃止されかねない。

With no sub-chasing aircraft of its own, UK calls on allies to help find Russian submarine  November 23 The Washington Post

After significantly cutting the size of its military in recent years, the United Kingdom was forced to call on France and Canada to help look for a Russian sub they believed was patrolling off the Scottish coast, according to a report in the Telegraph.

According to the report, the Russian sub was spotted more than a week ago and has yet to be found amid fears that it might be trying to spy on the UK’s Trident program — a sub-based nuclear warhead delivery system stationed in Scotland.

(後略)

インダストリアル・アメリカとともに進む日本

トヨタ自動車は米国本部をカリフォルニア州からテキサス州に順次、移転すると発表した。確かに労組なし・法人税安・補助金付きを求める企業とそれに呼応する失業者と州の思惑が合致している。であるにせよ、リベラル的な州から保守的な州へと移転する日系メーカーの動きは、富裕層と貧困層が分断された州から(漸減しているとはいえ未だ)中間層の多い州への移転と見るべきではないか。そして、それはリベラル州に集住する中韓系の移民との取引を避けようとする未来にも繋がりそうだ。

日系メーカーに限らず、建機メーカーのキャタピラーや航空機メーカーのボーイングなども保守的な州に移転したり、移転せずを条件として優遇措置を受けるようになっている。

これら優遇策によって、製造業が残存するか、移転する州では中間層を維持したり、育成したりする機会が与えられる。一方、製造業を失う州では都市と田舎の断層やゲーテッド・コミュニティの成立、最後は自治体の独立によって富裕層と貧困層が分断されていく。市や郡単位で冨の再分配が機能しなければ、その州では全体的にはむしろリベラル的な政治傾向が強まる。この冨の再分配がもうひとつのカギとなる。

冨の再分配の機会の少ない田舎と冨の再分配の必要性がない富裕層がつくった自治体へは、冨を持たない国内外の住民が移る契機がない。その逆に、州から冨の再分配の機会が与えられているか、熟練労働が求められないサービス業の職が多い貧困層の集住地域には、投資移民を除く一般的な外国人移民は入りやすくなる。

つまり、富裕層と貧困層が分断されている州では民主党支持が強まるのみならず、中韓系の移民も集中する。特に北東部(ニューイングランド)と南部に挟まれて、もともと中道リベラル、宗教的寛容の強かった中部の諸州に集まりやすい。カリフォルニア州やニュージャージー州、ニューヨーク州で慰安婦像設置の政治的動きが起きるのはあながち偶然ではないのだ。そして、中間層向けの製品・サービス提供を得意とする日系メーカーは保守的な州に立地するようになり、米国の社会的分断とその政治的闘争に巻き込まれていく。

と、2014年5月9日のエントリーで詳述したが、

カリフォルニア州とテキサス州両方に高速鉄道計画が存在するにも関わらず、テキサス州のそれに高い優先順位を付ける行動を、海外交通・都市開発事業支援機構が採ったことは、我が国の官民がひとつの方向性を明確に示しているように思われる。もちろん、トヨタ自動車はシリコンバレーの企業群と自動運転技術において提携するなど、国益を代表する立場と営利企業としての立場両方の保険を掛けているが。

官民機構が米テキサスの高速鉄道に出資、JR東海の新幹線採用を計画 2015/11/21 18:26 JST ブルームバーグ

(ブルームバーグ):国土交通省は21日、官民で作る海外交通・都市開発事業支援機構が米テキサス州の高速鉄道事業に4千万ドル(約49億円)を出資することを認可したと発表した。米国への日本の新幹線システム導入を後押しする。

発表によると、同事業は米民間企業のテキサス・セントラル・パートナーズ(TCP)が主体で、同州の主要都市ダラスとヒューストンを約90分で結ぶ計画。機構はTCPに出資、事業に参画することになる。TCPはJR東海の新幹線システム(N700-I Bullet)の採用を前提に事業を推進している。

発表文での国交省の説明によると、今回の出資は同プロジェクトが今後2年程度かけて実施する第2段階(詳細設計や資金調達など)での事業参画となり、日本の新幹線システムの導入の流れを後押しする効果が期待できるなどとしている。


ベガスとロス結ぶ高速鉄道、米中合弁で建設計画 2015年09月18日 09時14分 読売新聞

UPDATE 3-China firms sign deal for high-speed Las Vegas-Los Angeles rail link ahead of Xi's US visit Thu Sep 17, 2015 11:49pm EDT Reuters

China, U.S. Reach Agreement on High-Speed Rail Before Xi Visit September 17, 2015 — 3:38 PM JST  Bloomberg

China Trainmaker CRRC Plans to Double Its Overseas Sales September 11, 2015 — 7:32 AM JST Bloomberg

CRRC: China economy woes won't stop Springfield project on September 04, 2015 at 6:40 AM MassLive

米加州の高速鉄道受注競争、中国勢優勢か 資金調達力に強み 2015年 05月 21日 17:58 JST ロイター

中国、対米鉄道輸出へ攻勢=車両大手合併で競争力強化-加州整備計画に照準 2015/01/19-17:27 時事ドットコム

[FT]高速鉄道着工に沸く米カリフォルニア州 2015/1/8 7:00 日経

中国鉄道車両、2強合併 売上高3.7兆円の超巨大メーカー誕生 2014/12/31 1:06 日経

加州最高裁、高速鉄道建設費調達のための債券発行を支持 2014年 10月 16日 14:18 JST ロイター

参考URL:
XPRESS WEST

California High-Speed Rail Authority High-Speed Rail Program Maps

現状維持を換骨奪胎しながらの台湾独立

国民党が推進してきた“一つの中国”の原則に基づく“1992年コンセンサス(九二共識)”を李登輝元総統が否定するとともに、支那本土~台湾~日本~米国の迂回貿易構造のサプライチェーンは、TPP発効前にして、すでに壊れつつある。

我が国の“戦後レジームからの脱却”が果たされた今、否応なしに台湾は同じく“戦後レジームからの脱却”を果たさなくてはならなくなった。

今後の台湾の選択肢は、大きく2つ、まずは現状維持を換骨奪胎しながらの独立、もしくは支那大陸に呑み込まれる形での統一、そしてわずかな可能性として日本との連合国家、がある。

ただし、“戦後レジームからの脱却”とは戦前回帰と同一ではない。

安倍首相の行った“戦後レジームからの脱却”とは、先の大戦において、枢軸国の一員として敗者の列に並んだ我が国に向けて、連合国ですらなかった中国共産党と韓国から浴びせられていた不当なプロパガンダを跳ね返し、戦後の自由主義陣営に立って戦った我が国が勝利に貢献したという、その正当な評価を得ることにあった。

次いで、台湾を中華民国として自覚する台湾国民が10%程度に満たないことを考えると、先の大戦において帝国の臣民として敗者の列に加わった台湾人は、戦後の自由主義陣営に立ちつつ、かつ国内では長い戒厳令下の時代にあって、二重の意味で自由のために戦った国民としての自覚を持ち、現状維持を換骨奪胎しながら独立を目指すべきだろう。

国民の自覚を持たない外省人は台湾国民ではなくなり、心理的・社会的排除の対象となる。この軋轢は我が国の中の極左・リベラルのように過激化の一途をたどる、と思われる。

李登輝氏、「92年コンセンサスは存在しない」/台湾 2015/11/15 13:22 フォーカス台湾

(台北 15日 中央社)李登輝元総統は14日、民間団体主催の座談会に出席し、1992年に台湾と中国大陸が確認した対話の基礎「92年コンセンサス(九二共識)」について、「存在しない」とする認識を示した。

李氏は、自身が総統だった際、“一つの中国”の立場で両岸(台湾と中国大陸)問題を処理することに反対だったと回顧。同コンセンサスには共通認識がないとする考えを語った。

座談会の直前に取材に応じた李氏は、今月7日にシンガポールで行われた馬英九総統と中国大陸の習近平氏との会談について、「事前に立法院(国会)で報告をすべきだった」とし、馬氏の対応を批判。

大衆に知らせ、立法院に報告することは民主主義の順序だとし、シンガポールからの帰国後にも再度報告が必要だと強調した。

一方、カナダ台湾国会友好協会は14日、台湾と中国大陸の会談を肯定する声明を発表している。

(呂欣ケイ、張若霆/編集:齊藤啓介)


台湾輸出受注、10月は7カ月連続減少 日中からの受注が大幅減 2015年 11月 20日 19:18 JST ロイター

[台北 20日 ロイター] - 台湾経済部が発表した10月の輸出受注は前年同月比5.3%減少し、7カ月連続のマイナスとなった。中国と日本からの受注が落ち込んだ。

減少幅は9月の4.5%から拡大したが、ロイターがまとめたアナリスト予想の5.82%よりも小幅だった。

国別では日本からの受注が24.4%減少した。前月は16.7%減だった。中国からの受注は10.6%、欧州は2.1%減少した。

その一方で米国からの受注は5.6%増加した。米アップル製のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」向けの受注が寄与したとみられる。

経済部は情報通信関連の受注が主要スマホメーカーからの受注により11%増加したと説明したが、受注先は明らかにしなかった。

台新証券投資顧問のアナリスト、ケビン・ワン氏は「iPhone6Sの部品の需要が前月に続いて輸出受注を押し上げ、IT(情報技術)関連の受注が過去最高水準となった」と分析した。

エレクトロニクス関連の受注は4%減だった。

*内容を追加しました。

そして敵は三度、ベルギーから浸透してきた

テロリストの策源地がベルギーのフランス語圏のワロン、もしくは首都のブリュッセルに存在している事実は、フランスとベルギーの一体化と同時にベルギーの国家の統一性の無さを示している。

高速鉄道でパリ~ブリュッセル間は約1時間半、宗教もカソリックが約7割強、インフラ企業ではガス・電気にGDFスエズ、金融にデクシアといったフランス合弁・傘下が多く、ユーロ圏でフランスとの資本の移動が自由である。

ユーロネクスト・ブリュッセルの株価指数BEL20のうち、アジアス(リーマン・ショックで解体されたフォルティスの保険部門の継承会社、フォルティスのそれ以外の部門はBNPパリバとABNアムロに売却)、GDFスエズ(フランス最大のガス供給者であると同時にベルギーでの電気・ガス供給者)、デクシア(フランスの地方自治体向けの銀行と合併)などがフランスの企業と一体化している。

欧州の大国、英仏独の緩衝国家として誕生した経緯のあるベルギーは、統一性に乏しく、1つの首都(ブリュッセル)、2つの自治地域(ワロンとフランデレン)、3つの言語共同体(ワロン語、ドイツ語、フラマン語)を持つ連邦国家である。事実上、フラマンとワロンのふたつの国に分かれた同君連合国家のような状態と云える。かろうじて国王がふたつの国の接着剤となっている。

国民国家としてのベルギーの紐帯はカソリックと、地勢上は必ず中立を必ず破られるがゆえのドイツ軍への抵抗心、ときに人気・不人気のある代々の国王によって辛うじて支えられてきた。

しかし、欧州連合(EU)の中心地としての地位を確立する間に国民国家の性格を薄めていき、もともとの中継貿易地としての性格も相まって、上記の複雑な連邦国家の形態になった。この連邦国家の形態を失敗国家とする記事には、連邦制を採用する過程で6つの警察組織が作られ、ブリュッセル首都圏ではフラマンとワロンの対立の中でムスリムが捜査の網をすり抜ける結果になったことが示唆されている。

二度の世界大戦において、一度目はドイツ帝国の通路として蹂躙され、二度目はアルデンヌの森を突破する機甲師団の陽動のために蹂躙されたベルギー。そして三度目はドイツの難民政策に振り回され、ベルギーからフランスへとテロリストが攻め込んでいる。

Belgium is a failed state 11/19/15, 5:30 AM CET Politico

アングル:ベルギーコネクション、バー店主からパリ自爆犯へ 2015年 11月 17日 16:53 JST ロイター

[ブリュッセル 17日 ロイター] - ベルギーのブリュッセル首都圏モレンベーク区長は2週間前、あるバーの閉店を命じた。このバーが麻薬取引の場となっていたことが、警察の捜査で明らかになったからだ。

このバーの店主だったブラヒム・アブデスラム容疑者(31)は今月13日、過激派組織「イスラム国」による報復攻撃として、フランスのパリにあるカフェで自爆した。

ブラヒム容疑者がなぜバーの経営者から自爆犯になったのかは謎のままだ。バーのマネジャーを務めていた弟のサラ容疑者は指名手配されているが、いまだ行方が分かっていない。

(中略)

<過激な暴力の温床>

モーレンベーク区長は、同地区が「過激な暴力の温床」だとし、若者の高い失業率と過密状態が問題だと指摘。ベルギーの閣僚らも「一掃する」と約束している。

アブデスラム兄弟は失業者ではなかったとみられている。ベルギー紙が最初に報じ、ロイターが調べた公的文書によると、ブラヒム容疑者はブリュッセル生まれのフランス人で、バーを経営するため2013年3月に会社を設立した。

兄弟の家族は、閉店の警告を受けた後の今年9月30日、バーをベルギー南部に住所がある人物に売却。ロイターは同人物と連絡を取ることができなかった。

公的文書に記載されている兄弟の実家は、モレンベーク区庁舎に面した場所にある。警察に拘束されていた弟のモハメドさんは記者団に対し、家族が衝撃を受けているとし、「私たち家族はこれまで、法的に問題を起こしたことなどなかった。両親はショック状態にあり、状況を飲み込めていない」と語った。

(後略)

ダーウィン港の「So What?」

So What?=だから何、それがどうした? というのが直訳だが、楽曲で「So What?」と訊かれると、まず思い起こすのはマイルス・デイヴィスのアルバム『カインド・オブ・ブルー』(1959年)と、映画『ビギナーズ』(原題:Absolute Beginners、1986年)のサントラに所収されている同名曲だろうか。

中共の民間企業、嵐橋集団は豪州ノーザンテリトリー準州政府との間に、ダーウィン港の土地、イースト・アーム港の周辺施設及びフォート・ヒル港を99年間リースする契約を結んだ(2015年11月9日のエントリー参照)。

米海兵隊も駐屯する豪州の要衝、ダーウィンに中国共産党の監視が入るのではないか、と憶測を呼んで、豪州の国防軍高官は「安全面での懸念を生じさせる」と、発言した。

ところが、この問題を取り上げている、The Diplomatの記事には「So What?」と見出しが付いている。

記事の文末には、ターンブル新首相の見解が載っている。

彼は「我々の法律の下では、国防上必要とあれば、国防総省もしくは連邦政府が介入して、このインフラの操業権を取り上げる事ができる」と、述べている。

支那人が買った、だからそれがどうした? と言いたい訳だ。

Yes, a Chinese Company Leased Darwin Port. So What? November 19, 2015 The Diplomat

(前段省略)

Turnbull said: “The fact that Chinese investors were interested in investing in infrastructure in Australia is … hardly a secret.” He added, “And, under our legislation, the Department of Defense or this Federal Government can step in and take control of infrastructure like this in circumstances where it’s deemed necessary for purposes of Defense.”

中国-パキスタン経済回廊(CPEC)の始まり

2015年4月20日のエントリーで触れた、中共の習国家主席のパキスタン訪問の最も重要な目的だった、グワダル港の中国国有企業による操業が始まる。

Chinese State Firm Takes Control of Strategically Vital Gwadar Port November 13, 2015 The Diplomat

On Wednesday, Chinese Overseas Ports Holding Company Ltd (COPHCL), a Chinese state-owned enterprise, officially took control of the strategically important port at Gwadar in Pakistan.

去る水曜日、中国共産党の国有企業のChina Overseas Port Holding Company Ltd(COPHCL)は、彼らの戦略上、重要なパキスタンのグワダル港の操業権を握るに至った。

The Chinese firm officially signed a 40-year lease for over 2,000 acres of land in Gwadar, marking a milestone in the implementation phase of the China-Pakistan Economic Corridor (CPEC), a major bilateral initiative to build transportation and other infrastructure along the length of Pakistan, connecting the country’s Arabian Sea coast with the Himalayan border with China.

中国とパキスタン両国にとって、マイルストーンとなる契約が公式に調印された。グワダル港の2000エーカー超の土地が40年間、COPHCLにリースされる契約である。これにより、中国-パキスタン経済回廊(CPEC)は実施段階に入る。この二国間のイニシアチブによって、物流そのほかのインフラをパキスタンを通じて、中国のヒマラヤ山脈の国境からアラビア湾岸諸国にまで接続させる。

CPEC was unveiled during Chinese President Xi Jinping’s April 2015 state visit to Pakistan, where Gwadar was high on the agenda.

CEPCは、習近平国家主席が2015年4月にパキスタンに訪問した際の最重要課題であった。


現状、中共の原油輸入量の82%、天然ガス輸入量の30%は、アラビア海~インド洋~南シナ海~東シナ海を通っており、これらのリスクヘッジとしてグワダル港の戦略的重要性は変わらない。

習近平の思惑は北東アジアから東南アジアのシーレーンをショートカットして、インド洋とアラビア海に直接アクセス、ここのシーレーン防衛に集中して、グワダル回廊を使ってコモディティほかの戦略物資を本土に運ぼうとすることにある。ボトルネックはこのルートでは、支那本土すべての原材料の需要は満たせないということにある。

さらに、懸念材料をいくつか挙げると、パキスタンのバロチスタン州の治安に不安があり、イスラム原理主義的傾向の強い同国から新疆ウイグル自治区にジハーディストが浸透する可能性がある。

中国共産党の「Radio Free Europe」

最初に聴いたR.E.M.の曲は「Fall on Me」(1986年)で、そこから遡って最初のシングル「Radio Free Europe」の収められたアルバム『Murmur』(1983年)を捜して、渋谷のタワーレコードまで行かなくてはならなかった。

当時のタワレコは、井の頭通りを登った東急ハンズの先にあった。散財しまくったCiscoやManhattan Records、DANCE MUSIC RECORDSの系列店も、その多くがこの近辺にあって、レコード店街の様相を呈していた。

往時の面影は、代わりのテナントに入ったカフェや服飾系のお店が同資本の経営だったり、そこで遊んでいた人が運営してたりすることで雰囲気を保っているところに、わずかに残っている。

渋谷系という呼称が廃れ、アナログレコード全盛期が過ぎた現在でも、意外なことに欧米から渋谷や新宿へと、中古のレコードを買いに来る人がいたりする。逆輸出の形態を採っているのだが、その理由は、あらゆる国のあらゆるジャンルのレコードが大量に効率的に集積されていることにある。

こうして、モノの集積とヒトの集住が、ものすごく狭い地域のなかで起こり、それらが知的集合体となって、文化を産出するところにメガロポリスとしての東京の文化的魅力がある。それも極端なカネの格差を伴わずに。

閑話休題。

件の「Radio Free Europe」とは、合衆国議会が反共プロパガンダのために始めたラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)のことで、同様の放送に合衆国政府が運営するボイス・オブ・アメリカ(VOA)がある。

現在では、一括してプロパガンダと云わずとも、各国政府の予算(資本)とバイアスが入った海外放送は多く存在する。例えば、英国の「BBC」、カタールの「アルジャジーラ」、ロシアの「RT」、中共では「CCTV」が挙げられる。

「CCTV」を持つ中共はそれにとどまらず、米国国内の中小ラジオ局の買収を続けている、とWSJが伝えている。記事では、カリフォルニア州のロサンゼルス郡にあるウエストコビーナ(West Covina)にある「The G&E」を買収した、とされる。

我が国と違い、米国のFM/AMラジオは開設に規制がほとんどなかった歴史的経緯もあり、国土の広さと相まって中小のラジオ局が乱立している。

また、トーク・ラジオと呼ばれるパーソナリティの政治的スタンスに大きく左右されるラジオ局がある。これはむしろ全米を網羅するマスメディアにリベラル傾向が強い、という事情に対抗するために保守の牙城として現れた。リベラル的な州の中に保守的な地域がある場合、こうした情報の需要が発生する。

そうした需要の発生に倣い、単純に支那系の移民の利害関係を訴えるに留まらず、ここに目をつけた中国共産党が自国のプロパガンダに利用するために買収しているのではないか、という疑念が持たれている訳だ。

さて、ここで大まかに北東アジア系の移民の流れを振り返る。

太平洋に浮かぶハワイ州、次いで西海岸のワシントン州とカリフォルニア州、さらに宗教的寛容の強かった東海岸の中部諸州のニュージャージー州とニューヨーク州に、まず日本人が移民して、日系人のコミュニティが形成されていった。すべてリベラル的な州であることに留意されたい。

そして、中韓系の移民がフォロワーとしてやって来る。これらの州で、慰安婦像設置の政治的動きが起きるのはあながち偶然ではないのだ。

世代を重ねた移民から順番に日系人は、白人層と婚姻によって融解しつつある。この融解現象と同様に、米国の多種多様なニーズに対応した日系メーカーは、むしろリベラル的な州から保守的な州へと、本社と工場を移転し始めている。

トヨタ自動車は米国本部をカリフォルニア州からテキサス州に順次、移転すると発表したのが象徴的事例だろう。トヨタは、カリフォルニア州では州の独自規制から「プリウス」と「MIRAI」を売り、テキサス州では専用工場を立ち上げて「タンドラ」を売る。

フォロワーとしての中韓系移民が白人層と婚姻によって融解する道を辿るとしても、保守的な州へと移る未来が待っているかは分からない。階層が分断されたゲーテッド・コミュニティの多いリベラル的な州の方が、彼らの社会的通念に合っているかもしれない。もちろん社会の上層部に喰い込むことが条件だろうが。

プロパガンダとともに、この条件づくりの一助として、メディアを買収している、と思われる。

話は戻り、冒頭に紹介したR.E.M.は、そのインディーズ時代にカレッジ・チャートからその人気に火が付いた。

米国の大学(カレッジ)は、隔絶された環境で学問を修める、という理念から、州の郊外や田舎に立地して、その多くは全寮制だった。学生は、自治の一環からFM局を開設して、自分たちのリコメンドを流すようになった。それらが組織化されていき、カレッジ・チャートとなって、音楽的潮流を作り出していった。R.E.M.がオルタナティブ・ロックの元祖的存在となったのはそうした経緯があった。

トーク・ラジオにおいても、カレッジ・チャートにおいても、米国のラジオ局はオルタナティブな位置付けにあった。

そして、時代は移り変わり、中国共産党の意向に従って、ラジオ局の買収が続き、世論形成のためのプロパガンダに利用されるとすれば、R.E.M.の最初のシングルが「Radio Free Europe」だったことに想いを馳せると、なんとも皮肉な展開ではないか。それとも、これもオルタナティブなモノに終わるのだろうか。

China’s ‘Soft’ Power Exposed Nov. 8, 2015 4:58 p.m. ET WSJ

(上段省略)

Listeners would have been less surprised if the stations had disclosed that the communist government in Beijing controls their content. More than a dozen stations across the US are among a total of 33 globally that operate covertly, with Beijing hiding behind front men.

Last week it came to light that Beijing's state-run China Radio International secretly owns 60% of a US company, G&E Studio, which leases stations and airtime in Washington, Philadelphia, Boston and San Francisco, among other cities.Beijing uses similar subterfuges in Europe and Australia.

China went to great lengths to hide its role.Reuters broke the story after deploying 39 reporters to investigate in 26 countries, including the review of “scores of regulatory, zoning, property, tax, immigration and corporate records, including radio station purchase contracts and lease agreements.”

Beijing’s involvement was discovered via a footnote in a Federal Communications Commission filing on behalf of a separate company also affiliated with James Su, a Shanghai-born naturalized U.S. citizen, whom Reuters exposed as Beijing’s minority partner in its American radio operations.

(下段省略)

“エガリテ”に抗する中欧のカトリシズム

独仏の主導する人権重視の難民受け入れに最初の叛旗を翻したのは、「汎ヨーロッパ・ピクニック」でベルリンの壁を壊す引き金を引いたハンガリーだった(2015年6月19日のエントリー参照)。

筆者は、人的移動の制限を外すのに先鞭をつけたハンガリーが再び、“鉄のカーテン”を設置する。冷戦終結以降の歴史の大きな転換点における象徴的な出来事として、これを理解するべきだろう、と指摘してきた(2015年7月9日のエントリー参照)。

ハンガリーが先鞭をつけたこの方向転換に続いたのスロバキアだった。

スロバキア政府は急増している難民の受け入れ条件にキリスト教徒であることを掲げた。この場合の対象者はシリアから亡命してくるシリア正教会やアッシリア東方教会などのキリスト教徒に限られる。つまり、事実上の受け入れ拒否となる(2015年8月22日のエントリー参照)。

そして、ドイツの周縁部に当たる中欧諸国にナショナリズムへの回帰現象が見られる。

教皇フランシスコが難民救済を訴える教書を出したが、ハンガリー南部の司教Laszlo Kiss-Rigoは、
“They’re not refugees. This is an invasion,”
「彼らは難民などではなく、これは侵略だ」
“They come here with cries of ‘Allahu Akbar.’ They want to take over.”
「彼らはアッラーアクバルと叫びながら、この地を接収しに来た」
と、公然と教皇に歯向かった発言をしている。
ただし、教皇は人道を唱える一方で、“反グローバリズム”を唱えているが。

オルバン首相は、憲法に
“the role of Christianity in preserving nationhood”
「国家の一体性にキリスト教的価値観が役割を果たしている」
という条項を組み入れた(2015年9月16日のエントリー参照)。

また、2015年9月27日のエントリーでも取り上げたが、

ハンガリーのオルバン首相は、ドイツのメルケル首相の採っている人道的姿勢に、一見美しい道義を振りかざして、難民の受け入れを強要し、かつ他の国を影響力に置いて、欧州に君臨する帝国の発露を見出して、非難した。

ハンガリーは、ドイツに反発する欧州各国の糾合役になりつつある。“難民の行軍”に互いに苦慮するハンガリーとクロアチア、難民受け入れ分担に反対するスロバキアは、かつてハンガリー王国の領域であった。まるで聖イシュトヴァーンの王冠に集いて、ドイツに反旗を翻しているかのように見える。

そして、上下両院の総選挙で政権交代が予定されているポーランドでも、新閣僚は「難民受け入れ枠に反対する」、「シリア難民をシリア解放軍としての組織化を行うべきだ」との発言を行っている。

筆者は、欧州連合によって独仏が半ば一体化している現代、21世紀の小協商“プチ・アンタンテ”は、バルト海に面したポーランドからアドリア海に面したスロベニアまで拡がるかもしれない、と2015年10月27日のエントリーで述べた。

フランスの“エガリテ”に抗する、中欧各国のカトリシズムも、また欧州連合の性格を大きく変えるものになるだろう。

ポーランド、難民分担の合意撤回か 「実行に移す余地はなくなった」と新閣僚が言及 2015.11.15 09:38 産経ニュース

 近く発足するポーランド新政権の欧州担当相に内定しているシマンスキ氏は、パリ同時多発テロを受け、9月に欧州連合(EU)内相理事会で決定した難民の各国での受け入れ分担について「実行に移す余地はなくなった」として合意を撤回する考えを示した。欧州のメディアが14日伝えた。

 ポーランドのコパチ政権は今後2年間で7500人の受け入れに同意していたが、10月の総選挙で敗北。保守政党「法と正義」のシドゥウォ政権が発足する見通しで、同党は難民の受け入れに反対している。

(共同)


シリア難民を訓練して「祖国解放軍」に、ポーランド新外相が提案 2015年11月16日 17:14 AFP BB NEWS

【11月16日 AFP】ポーランドのビトルド・バシュチコフスキ(Witold Waszczykowski)新外相は15日、公共テレビの番組で、欧州に殺到するシリア難民に訓練を施して軍隊として組織化し、帰国させて祖国を「解放」させることが可能だと発言した。

 16日にポーランド新政権の外相に就任するバシュチコフスキ氏は、この方法ならば、ドイツの首都ベルリン(Berlin)の目抜き通りをはじめ欧州の各都市でコーヒーをすすっているしかない難民たちが、給金の得られる仕事に就けるとも主張した。

「数万人の若者たちが(米アップルのタブレット型端末)iPad(アイパッド)を手に、ゴムボートから上陸してくる。彼らは、飲食物を乞うのではなく、どこへ行けば携帯電話の充電ができるかを尋ねてくる」と新外相は指摘。「われわれが支援することで、彼らは祖国を解放する戦いへ赴くことができる」と述べた。

 バシュチコフスキ氏はまた、「われわれが自国の軍隊をシリアでの戦闘に派兵し、その一方で数十万人ものシリアの若者たちが(ベルリンの目抜き通り)ウンターデンリンデン(Unter den Linden)でコーヒーを飲んでいる」ような事態を避けるため努力していると語った。

 ポーランド新政権では、欧州担当相に就任するコンラト・シマンスキ(Konrad Szymanski)氏が14日、フランス・パリ(Paris)で129人が死亡した連続襲撃事件を受けて、難民を欧州各国で分担して受け入れる欧州連合(EU)の計画を検討する「政治的な可能性」はもはやなくなったと発言していた。(c)AFP

“真珠の首飾り”争奪戦つづく

モルディブは、外国人の土地所有を認める憲法改正を行った。その内容は、今まで土地の賃借しか認められなかった外国人は条件付きで土地を購入所有できる。その条件は、投資額が事業計画1件につき、最低10億ドル。また土地の70%は、その投資により埋め立てた場所でなければならない、という条件である。

こうした経済合理性のない大規模投資を行えるのは、おそらく中国共産党傘下の国有企業くらいしかあるまい(2015年8月25日のエントリー参照)。

これらの不満に対する最大野党(モルディブ民主党)側の攻勢が反政府デモにつながり、政府と与党(モルディブ進歩党)側は非常事態宣言を発令している。

中共の経済圏構想“一帯一路”の海路に当たる“21世紀の海上シルクロード”構想、それ以前は“真珠の首飾り”戦略と呼ばれていた、インド洋に面したミャンマー~バングラデシュ~スリランカ~モルディブ~パキスタンといった、地勢的にインドと対立しやすいこれらの国々を中国共産党は取り込んできた。

しかし、第2次安倍政権発足以降、これらの国々のうち、ミャンマー~バングラデシュ~スリランカまでは我が国が切り崩し始めている。

モルディブも今後の推移によっては、日印の政治的巻き返しの機会が訪れるかもしれない。ただし、それが民主的な政権交代か軍事的なクーデターか、までは分からない。

非常事態を宣言 モルディブ 2015年11月04日 18:52 AFP BB NEWS

【11月4日 AFP】インド洋の島国モルディブのアブドラ・ヤミーン(Abdulla Yameen)大統領は4日、最大野党による大規模な反政府デモが行われるのを前に、治安部隊の権限を強化する非常事態宣言を発令した。

ムアズ・アリ(Muaz Ali)大統領報道官はツイッター(Twitter)で「モルディブは、4日正午(日本時間同日午後4時)から30日間の非常事態を宣言する」と述べた。

 モルディブでは大統領暗殺未遂事件に関与した疑いでアハメド・アディーブ(Ahmed Adeeb)副大統領が10月24日に逮捕されている。また今週には、首都の大統領官邸そばで遠隔操作爆弾が発見されている。(c)AFP

2015年の『アルジェの戦い』

2015年1月に「シャルリエブド」社が襲撃されたテロよりも、さらに大規模な同時多発テロがパリで起きた。フランスは事実上の戒厳令下に入った。

アルジェリア独立の際に繰り広げられたテロと掃討作戦を想起するとき、地中海を挟んだ対岸のマグレブで行われていた戦いがフランス本土で始まったのだ、と暗澹とした気分にさせられる。

パリ同時多発攻撃、多国籍が絡んだ犯行=検察 2015年 11月 15日 13:24 JST ロイター

パリ同時攻撃で死者120人以上、仏大統領が非常事態宣言  2015年 11月 14日 15:25 JST ロイター

1966年のヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞した名作『アルジェの戦い』は、アルジェリア独立戦争におけるアルジェリア民族解放戦線(FLN)とコロン(ピエ・ノワールとも呼ばれるフランス人入植者)のテロの応酬、そして空挺部隊による掃討戦を描いている。

普段ブルカやベールを被る女性テロリストたちにカスバの検問を突破させるため、ピエ・ノワールのようにメイクやファッションや仕草、言葉遣いで偽装させる手口のリアリティなどは、自身もパルチザンに身を投じた監督ジッロ・ポンテコルヴォの面目躍如というべきだろう。

のちのド・ゴールの第五共和政樹立や五月革命の鎮圧に貢献した大佐(史実ではジャック・マシュー准将)が、全容を把握できないように構築されたテロ組織を自由フランス軍で培ったレジスタンスの経験を下に、ゼネストの一斉検挙と容疑者への拷問によって壊滅させていくのは圧巻だった。

またピエ・ノワールの群衆が目の当たりにしたテロに憤慨して、実行犯でもない現地人の売り子の少年に暴行を加え、警官が救い出す様などはフィクションながら云いようのない不条理を感じさせた。

この不条理な戦いがカスバではなく、首都パリで行われている。第四共和政を滅ぼした植民地の戦いがフランス本土で始まったというべきか。アルジェリア独立戦争でフランス側に協力して、本国を逐われたムスリムの移民が貧困層に落ちて以降、それは運命づけられていたかのように。

ボーイング737と777X、ARJとMRJ

日中両国が競って民間航空機市場に参入しようとしている。そんな中、我が国では三菱航空機が手掛けるリージョナルジェットのMRJが試験飛行に成功した。

一方、中共にも同様のリージョナルジェットのARJを2007年以降生産して、2008年に試験飛行に成功している。

事業主体は、国有企業の中国商用飛機(COMAC)である。彼らは中型機のC919 の開発も進めている。ただし、これらの国産機は欧米での型式証明を取得できないため、事実上の国内専用の運用となる。

習国家主席の訪米の際に、ボーイング社との間にボーイング737の300機発注と現地工場の生産契約を結んでいるが、その事業主体も中国商用飛機(COMAC)であり、さらにややこしいことにエアバス社も天津に類似の施設を既に保有している。

どうやら、中国共産党とその国有企業は、初手から供給過剰の問題にぶつかるように思われる。

さて、我が国の思惑はどうか。

2014年6月15日のエントリーで述べたように、

ボーイング777Xの生産に参画する三菱重工業(子会社通じて、MRJも生産)、川崎重工業(XC-2、P-1も生産)、新明和工業(US-2も生産)、日本飛行機の5社が新たに設備投資を行なう都道府県は、愛知県、岐阜県の東海地方、広島県などいずれも自動車産業の基盤がある地域に限られている。必然的に下請け、孫請けの設備投資もこの近辺が多くなっていく。航空宇宙関連に限らず、防衛産業全般もこの傾向が高まっていくと思われる。

航空宇宙産業の産業集積地を作ろうとしている。

その余録に与ろうと、関東地方ではIHIエアロスペースのように「(横田基地に近い)瑞穂工場では防衛省向けだけでも常時800基超のエンジンのメンテナンスを請け負っている」と、外注に頼る格安航空会社(LCC)の増加により、メンテナンスで収益を上げようとしている。

また、IHIはエンジン部品をOEMで製造している。

動力を伝達するロングシャフトなど中核部品を手掛け、250人乗り以上の航空機向けエンジンに限れば世界7割のシェアを持つ。

2014年3月期連結決算を見ると、営業利益ベースでは航空・宇宙が全体の56%を占めている。おそらく、艦船用の蒸気タービンとジェット機用のガスタービンの類似性がノウハウの蓄積と継承、転用に役立っている。

YS-11の教訓を生かし海外シェア狙う 2015.11.14 08:30 産経ニュース

 航空機器メーカー、大起産業(三重県東員町)に勤める小森禎和は11日、小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の初飛行の模様を、自宅のテレビで娘と観賞した。同社は、MRJの中胴前部や後部ドアの周辺部材を造っている。「お父さんも一緒に造ったんだよ」と話しかけると、娘は「すごいね」とほほ笑んだ。

 三菱航空機が拠点を置く中部地方は、航空機関連の中小企業による産業集積が進む。三菱重工業は来年10月から中小企業10社を集め、松阪工場(三重県松阪市)でMRJの部品を共同生産する。一貫生産でコスト競争力を高めるのが狙いだ。中胴前部の組み立てを手がけるテックササキ(名古屋市熱田区)専務の大西清幸は「納期短縮やコスト削減に貢献し、量産を支えたい」と力強く話す。

(下段省略)


安全性証明 ゼロからの出発 納期順守へ正念場 2015.11.13 08:00 産経ニュース

納入事業者から脱却、「やり遂げる」と訴えた血判状 13年前の悲願 2015.11.12 08:03 産経ニュース

MRJ初飛行に成功 半世紀ぶり国産機 すでに400機を受注 2015.11.11 17:56 産経ニュース

夢を乗せて離陸、53年ぶりに国産旅客機が初飛行 2015.11.11 09:36 産経ニュース

MRJ、11日初飛行 事業化から7年 初の国産ジェットがいよいよ大空へ 2015.11.10 19:00 産経ニュース

中国初の中距離ジェット旅客機C919は国産ではない?疑問視の声に開発メーカーが反論「外国人には一銭も払っていない」―中国 2015年11月3日(火) 21時50分 レコードチャイナ

習近平の航空機”爆買い” チタン業界に漂う軍事産業の影 2015年10月09日(Fri) WEDGE Infinity

日米で装備共同開発加速を アジア向け供給網を構築 森本敏・元防衛相インタビュー 2015.10.8 07:00 産経ニュース

豪潜水艦受注が国産装備輸出の試金石 初動立ち後れの舞台裏 “日英同盟”も浮上 2015.10.7 07:00 産経ニュース

「日本装備の技術は洗練されている」 課題はコスト 求められる海外での実績作り 2015.10.6 07:00 産経ニュース

防衛装備の海外移転で中国封じ込め 太平洋の安全保障に力こぶ 民間各社も海外展開前のめり 2015.10.5 07:00 産経ニュース

政投銀、国産小型ジェット「MRJ」に大規模投資へ 1千億円規模も 2015.9.27 12:10 産経ニュース

川崎重工、ボーイング「777X」新工場建設に着手 2017年の生産開始に向け 2015.9.24 13:07 産経ニュース

ボーイング、中国から380億ドル相当の受注獲得 2015年 09月 24日 08:38 JST ロイター

中国が米ボーイングにジェット機300機発注、施設建設も合意-新華社 2015/09/23 17:18 JST ブルームバーグ

IHIの航空事業、快走の秘密に迫る 牽引役はエンジンメンテナンス 2014年6月10日(火) 日経BP

「事故なく飛べるのか?」日本『MRJ』に敵愾心むき出し中国『ARJ』だが…航空市場からは“無視”の哀愁 2015.1.6 06:00 産経ニュース

超法規的アウンサンスーチーという悲喜劇

ミャンマーの総選挙では、野党の国民民主連盟(NLD)が過半数獲得が確実視され、国軍が支持する与党の連邦団結発展党(USDP)は野党に転落して、民政移管の次段階として政権交代がなされる情勢となった。

しかし、アウンサンスーチー女史は「(次期大統領は)自らに権限がない」「大統領より上の存在になる」と発言して、自ら憲法典(第58条の規定)を無視する発言を行っている。

この発言の背景には外国籍の配偶者や子供がいる者は大統領になれない憲法の規定がある(第59条)。

さらに憲法改正(第436条の規定)には、人民院と民族院の二院制から成る連邦議会のそれぞれ定数75%以上の賛意を必要とし、かつその議会には25%の国軍指名枠の議員(第141条の規定)が存在するため、アウンサンスーチー女史が大統領になる道は予め塞がれているからである。

自らの子飼いの側近を大統領に据えて、院制を敷く思惑があるならば、上記の発言は政治的センスを問われる。しかも、国軍にはクーデターを起こす権限が憲法の規定にある(第40条)。

つまり、国軍は自らの影響力を奪取・喪失させない安全装置(フェイルセーフ)を備えた上で、政権交代に臨もうとしているのだ。

政治とは畢竟、利害関係を調整して利権(予算)を分配することである。政権を担ったことのないアウンサンスーチー女史と国民民主連盟(NLD)にそのノウハウはない。実力以上を望むべきではなく、民政移管の一環として政権を全うし、次の政権へ民主的に引き継ぐことを優先するべきだろう。

実力を過信すれば、我が国の民主党政権(2009年9月~2012年12月まで)、エジプトのムルシ政権(2012年6月~2013年7月まで)のように、内政と外交が破綻して政権を明け渡すことになる。

そもそもミャンマーの内政上の課題のひとつは、分配できる利権のパイそのものを増やすことにある。

隣国タイは、その利権のパイを増やすことには成功したものの、タクシン派と反タクシン派の派閥抗争によって、利権再分配の好機を逃した。すでに人口オーナス期に入り、中所得国の罠(中進国の罠)に陥ろうとしている。我が国のASEANにおけるサプライチェーンの中心地であるが、TPPの発効如何ではその地位を失っていくかもしれない。

今まさに起きている隣国の失敗例を倣う必要などない。アウンサンスーチー女史には、そうした中長期的な国益の視点を欠いているように思われる。

[FT]ミャンマー総選挙は幸福な結末にならない 2015/10/22 15:15 日経

ミャンマー総選挙、敗れたのはイスラム教徒 2015年 11月13日 11:53 JST WSJ日本版

「大統領より上の存在になる」ミャンマー総選挙でスー・チー氏が実権に意欲 2015.11.6 00:16 産経ニュース

【シンガポール=吉村英輝】ミャンマーの野党、国民民主連盟(NLD)党首のアウン・サン・スー・チー氏は5日、最大都市ヤンゴンの自邸で記者会見し、8日に投開票される総選挙で勝利して政権奪取できた場合、「大統領より上の存在になる」と述べた。憲法規定で大統領になれなくても、新政権で実権を握る意欲を改めて示し、有権者にアピールした格好だ。

 総選挙ではNLDの躍進が予想される。ただ、来春行われる大統領選では、スー・チー氏は息子2人が外国籍のため、憲法上、候補の資格がない。スー・チー氏は大統領を上回る役職については「憲法に規定がない」として、国の指導者になることは可能とした。

 国会は上下両院とも議席の25%が軍人枠のため、NLDが単独で大統領候補の指名などができる過半数の議席を握るには、得票率で3分の2以上の獲得が必要だ。一方、劣勢の軍系与党、連邦団結発展党(USDP)は内紛状態で、国軍と近いテイン・セイン大統領一派と対立するシュエ・マン下院議長は、新政権でスー・チー氏と協力する方針を改めて表明するなど、選挙後の連立を見据えた駆け引きも活発化している。


スー・チー氏、自らが政権指揮=ミャンマー次期大統領に「権限なし」 2015/11/11-13:37 時事ドットコム

【ヤンゴン時事】ミャンマー総選挙での勝利を確実にしている最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首は10日、シンガポールのテレビ局チャンネル・ニューズ・アジアのインタビューで、次期大統領には「権限がない」と述べ、自らが実権を握って政権を指揮する考えを表明した。

 スー・チー氏は息子2人が外国籍のため、NLDが政権を獲得しても憲法規定で大統領になれない。スー・チー氏は「(次期大統領は)自らに権限がないこと、党の決定に従って行動することを完全に理解する必要がある」と述べ、全ての決定は自らが行う意向を示した。

空母打撃群のいない季節来たりなば

中国共産党と人民解放軍は、実効支配する西沙諸島(パラセル諸島)のひとつ、永興島(ウッディー島)にJ-11BH/BHS(おそらくJ-15艦上戦闘機、殲撃15)を展開した、と伝えられている。

China Expands Presence With Fighters on Woody Island 3:02 p.m. EST November 8, 2015 Defense News

現状では試験運用の段階に留まるだろうが、いずれ本格的に運用開始された場合、米軍の哨戒機やAWACS機の妨害を行うものと考えられている。

彼らの戦略目標は、南シナ海のプレゼンスを強化し続けて、そのプレゼンスの排除が政治的にも軍事的にも困難であると思わせることによって、彼らの主張する“接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)”の軍事的境界線を拡張させて、近隣諸国に認めさせることにある。

着々とプレゼンスを拡大する中共に対して、覇権国家の米国はどうかというと、そのプレゼンスを代表する空母打撃群のいない地域と期間が発生している。

Navy anticipates more carrier gaps in Middle East and Asia Pacific 11/04/15 12:02 AM EST The Hill

丁度、ロシアがシリア内戦に直接介入し始めた10月には、ペルシャ湾からUSSセオドア・ルーズベルトが離れたが、代替のUSSハリー・S・トルーマンの来着は今冬には間に合わない。

アジア太平洋地域では、USSジョージ・ワシントンが横須賀港を去ったあと、USSロナルド・レーガンが入港するまで約4ヶ月の空白期間が存在した。

また、軍事予算削減の影響から、2016年就役予定だったUSSジェラルド・R・フォードは2021年まで遅れるのではと予想されている。

こうした空母打撃群の不在がもたらすギャップを埋めるために、米軍はB-52爆撃機を中共の人工島の周辺を遊弋させた。

US B-52 bombers flew near disputed islands in South China Sea, says Pentagon Thursday 12 November 2015 22.51 GMT The Guardian

ジョンブル魂はあっても手に取る武器がない

キャメロン政権の財政緊縮政策によって、軍事予算削減が続き、英軍の作戦能力が過去5年の間に3分の1に低下してしまった、と軍事専門家が論評している。

では、英国は世界のヘゲモニーに関与するのではなく、スウェーデンのような重武装中立主義の国家の道を目指しているのであろうか。

直近の2015年の英国総選挙の対立軸は、北欧型の福祉国家を志向するスコットランドと欧州大陸からの独立性を保とうとするイングランドの確執へと移行している、のではないかと、2015年5月9日のエントリーでは述べた。

現在、そのスウェーデンですら、ロシアの軍事的再台頭に対応して、フィンランドと軍事協定を結び、NATO加盟のデンマークとも同様の協定を結んだ。

作戦遂行能力を大幅に落としている現代の英国に想うのは、バトル・オブ・ブリテンを戦わざる得ないほど、追い詰められた過去の姿である。ダンケルクから撤退したとき、兵員は救えたが装備はすべて捨ててしまった。金融センターとして育てた上海や香港を潰してでも、本家のシティーと大手の金融グループを守るためにオフショア人民元を囲い込もうとする姿に重なる。

Britain’s armed forces no longer have the resources for a major war 7 November 2015 The Spactator

畢竟、大英帝国とはイングランド銀行とシティーである。かつての海外植民地に張り巡らされた資本と貿易のネットワークが、史上最初の“世界の工場”を育て上げた。しかし、老いた“世界の工場”の存続を諦めたサッチャリズム以降は、インフラから自動車メーカーの商標権ひとつまで、売れるモノはすべて売る姿勢で一貫してきた。

そうした英国にあっても、ロールス・ロイスのコア・コンピタンスであるエンジン技術だけは売らなかった。ジェットエンジンの分野においては、米国のGE、P&W、英国のロールス・ロイスはトップ3の座を守っている。

これに匹敵するのが、戦略原潜の原子炉の鋼鉄製格納容器の技術である。これを製造するシェフィールド・フォージマスターズ・インターナショナル社に中共が食指を伸ばしている、という記事を産経が伝えている。

中国、英軍需企業に食指 原潜部品扱う鉄鋼メーカー買収画策 英紙報道、国防省が警戒 2015.11.11 19:36 産経ニュース

 【ロンドン=内藤泰朗】中国の国有企業が、英国唯一の核戦力である潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「トライデント」を搭載したバンガード級戦略原子力潜水艦の主要部を扱う鉄鋼メーカーの買収に動いていることが分かった。8日付の英日曜紙サンデー・タイムズが報じた。保守党のキャメロン政権の対中経済依存が高まり、軍事費が削減される中、中国が軍事関連企業にも食指を動かしていることが浮き彫りとなった。

 同紙によると、中国が関心を示しているのは、戦略原潜の原子炉の鋼鉄製格納容器の製造技術を持つ英鉄鋼大手シェフィールド・フォージマスターズ・インターナショナル社。1805年創業の同社は、英国が世界の鉄鋼の半分以上を生産していた19世紀を代表する企業の一つとされ、1990年には旧フセイン政権下のイラクへの武器輸出に関係したとして騒がれたこともある。近年は鉄鋼業の衰退で業績が悪化し、外部資本の導入を検討中という。

 ただ、同社は重さ350トンの巨大な鋼鉄の一体成型を行う特殊技術を持ち、英国の核抑止力の一翼を担っているだけに、国防省は中国が格納容器の製造技術を獲得すれば、核抑止力に影響を及ぼしかねないとして強い懸念を示している。

 英国は90年代に、トライデントミサイルを搭載する戦略原潜の4隻体制を確立。キャメロン政権は、4隻が退役する2020年代後半に向けて新型原潜4隻を建造する方針を表明している。

バナナ共和国に変貌するウクライナ

10月25日に行われたウクライナの地方議会選挙は、当然のごとく、親露派が人民共和国を名乗り、実効支配するドンバス地方のドネツクとルガンスクでは選挙実施の兆しすら感じられなかった。

また、親露派の多い地域、例えばKrasnoarmeyskとSvatovoでは投票が中止された。親露派地域の利害を代表する議員がいなければ、遠からず紛争は拡大せざる得ない。

それ以外の親欧米派の支持率だが、大統領を務めるポロシェンコ・ブロックは24.15%、極右のスボヴォダは12.74%、元首相を務めたティモシェンコ・ブロックは11.46%と鼎立の様相を見せている。いずれの親欧米派勢力も主導権を握れずに、内政と外交の混乱が続く、と思われる。

ウクライナ政府は、欧米とロシアの間で敵対と妥協を繰り返しながら、経済援助と投融資を引き出すしかないだろう。

ともあれ将来的には、親欧米派がポーランド・リトアニア共和国やオーストリア=ハンガリー二重帝国の旧領域と、親露派がウクライナ・コサックの故地とクリミア・ハン国の旧領域に分割されるのではなかろうか。

They’re Brawling at the Polls in Ukraine 10.26.155:45 PM ET The Daily Beast

親露派と親欧米派、さらに親欧米派も一枚岩ではない政治的混乱のなかで、ウクライナの経済的基盤が壊れ始めている。特にウクライナ危機に伴って、旧ソ連時代から継承されてきた軍需産業とその企業が破綻の危機に晒されている。

下記の記事に挙げられているPivdenmash(Yuzhmash、ユージュマシュ)社は、その象徴的実例であろう。バイコヌール宇宙基地で打ち上げられるロケットやミサイルを製造する、この国営企業の苦境はウクライナで最も有望な産業クラスターの破滅を意味している。

国破れて山河あり、ではないが、近代国家はたとえ一敗地にまみれても軍需産業だけは守らなければならない。

ドイツ帝国が敗れたあとのワイマール共和国は、ホーエンツォレルン家の帝冠、バイエルン、ザクセンなどの王冠が失われることは傍観したが、極右と極左に翻弄されつづけたエーベルト大統領にしても軍部と軍需産業は守り抜いた。

昨今の我が国でも、日産自動車がルノーに買収される際に、(それとは明示されなかったが)政治的理由から、日産自動車の航空宇宙部門(現在のIHIエアロスペース)は、石川島播磨重工業(現在のIHI)に売却された。

一度、滅びた軍需産業、航空宇宙産業の再興にはつくり上げるのに掛かったのと同等かそれ以上の時間を要する。第2次大戦後、自国の航空機製造を禁止された企業と技術者の多くは、新幹線や国産ロケット、自動車の開発に携わったが、航空機では往時の栄光を取り戻せなかった。

そして“戦後レジームからの脱却”が果たされた現在でも、三菱航空機のリージョナルジェット「MRJ」(エンジンはP&W)、川崎重工業の哨戒機「P-1」(エンジンはIHI)、Honda Aircraft Companyのビジネスジェット機「ホンダジェット」(エンジンはGEとの合弁)を見る限り、航空機のエンジンでは未だ劣位にある。

さて、Pivdenmash(Yuzhmash、ユージュマシュ)社に代表されるウクライナの軍需産業の今後だが、破綻した企業の設備や人員がロシアや中共に流出していくだろう。特にモトール・シーチ(Motor Sich)社から、軍用ヘリコプターのエンジンを供給されていたロシアにとっては、政治的理由によるサプライチェーンの途絶は死活的な問題でもあり、多少強引でも人材の引き抜きが横行するのは間違いない。大型輸送機のアントノフ(Antonov)社もおそらく同様の憂き目に遭っているだろう。

Ukrainian space and missile industrial giant is on the verge of bankruptcy Jul 24, 2015 Strata Forum

さて、ウクライナの民生は悪化の一途を辿っている。2010年~2013年と2014年~2015年を比較していくと、GDPは+10%と-15%、消費者物価は+1%と+70%、外貨準備高は、200億ドルと70億ドル、政府債務はGDPの40%とGDPの100%、産品の輸出は+60%と-50%となっている。

もともとウクライナの航空宇宙産業はロシアとサプライチェーンを築いていたが、旧ソ連の崩壊後、大型民間航空機の分野では欧米のボーイングとエアバスが全世界にサプライチェーンを拡げて、シェアを二分するに至った。

この事例に倣うならば、ウクライナの産業全般がいずれの側のサプライチェーンからも疎外され、バナナのような単一作物をつくるような「bananization」に陥るのではないか、かつての中南米諸国がバナナ・リパブリック(バナナ共和国)と揶揄されたような産業構造に転落するのではないか、と下記記事は伝えている。

Ukrainian economy after a year of "reforms": Banana republic without bananas 7/5/15 Fortruss

(段落省略)

All the industrial complexes, as well as some key areas of infrastructure, have already closed or are on the verge of default and bankruptcy: Yuzhmash, Zaparozie car factory, Sumy factory complex, Antonov plane manufacturer, TurboAtom, Motor Sich, Kharkov Tractor plant, ElectroTyazhMash, etc. etc [huge companies, like GM or Boeing in the USA - ed.]. The metallurgical complex "MetInvest", owned by Ahmetov, which unifies the leading metallurgical companies, declared default back in April.

(段落省略)

Of course I don't expect to convince imbeciles of anything, but this high-tech industry exemplifies the degradation of what used to be Ukrainian economy and economic / industrial might. After the collapse of the Soviet Union there were only three countries in the world which were capable of designing and independently building heavy civilian and military transport planes: USA (Lockheed Martin), Russia (OAK) and Ukraine ("Antonov").

Despite the fact that Ukraine had unique capabilities in producing passenger and cargo civilian airplanes, the production of aircraft has quickly dropped to less than one-tenth of former capacity, for some kinds – less than one percent.

By 2000s, Ukraine could produce at most two aircraft a year – and even that was accompanied by huge problems, constant government supervision, and huge subsidies from state budget. World aviation industry was developing exclusively in the direction of growing monopolies (mergers and acquisitions).

Centralized planning and economies of scale, controlled by supposedly commercial corporations (although those are, ultimately, controlled by national governments), turned out to be necessary for surviving and staying competitive on the world market in this high-tech era, where victor is the one who can concentrate the most expertise and industrial capacity in his hands.

The costs are extremely high, and staying competitive requires not just large, but gigantic super-scale production. Currently, the "Boeing" airliners are being made across eight countries, even if they are technically "made in the USA" (some parts and alloys are even provided by the Russian aircraft industry).

European "Airbus" is a work of 16 countries (mostly Germany, France, Italy and Spain). So while these mergers and acquisitions of Western aerospace corporations and industrial capacities were going on... Ukrainian aircraft industry broke off their segment from a larger whole and went looking for mythical "Western investors".

(段落省略)

After the Union's collapse, this market was divided between the victors, and countries like Ukraine, with its fractured industry, have no hope of catching up. So basically the village idiots that came to power in newly independent fragments of the Union chose fairytales over scientific and industrial integration with the rest of industrial base, preferring to believe that the West will come and throw money at them.

And while they were waiting, the lion's share of the world market has passed under control of the two aforementioned megacorporations – Boeing (49% of sales) and Airbus Industries (43%).

So now they reap all the rewards, and all the other countries combined produce only 8% of the world's aircraft. That's what "bananization" looks like in practice - first world gets high-tech monopolies, the rest are divided and get to grow bananas for minimum wage.

(以下省略)

“第二列島線”の果てと“一帯一路”の中間点

共産中国もまた大日本帝国の後継国家のひとつ、と考えると地政学における軍事的条件、戦略的な限界はそう変わらない。第2次大戦のバシー海峡と絶対国防圏、それにダーウィン空襲を併せるとそれが良く理解できる。

米海兵隊のダーウィン駐屯は正式合意された。岩国~沖縄(普天間)~パラワン島~ダーウィン間をMV-22オスプレイが、その行動半径を活かして展開できるようになるだろう。

と、2014年1月2日のエントリーと書いたが、

中共の民間企業、嵐橋集団は豪州ノーザンテリトリー準州政府との間に、ダーウィン港の土地、イースト・アーム港の周辺施設及びフォート・ヒル港を99年間リースする契約を結んだ。豪州の国防軍高官は「安全面での懸念を生じさせる」と指摘した、と下記の記事で発言している。

このリース契約が、中国共産党と人民解放軍と連動しているかは不明だが、遡ること2007年、中国は東ティモールに対して、拒絶されたもののレーダー施設の建設を申し入れている。

なぜならASAEN諸国を手に入れても、帝国陸海軍のように兵站の届かないダーウィン空襲(現在ならばミサイルの射程圏か否かが重要)を繰り返さなければならないからだ。つまり、中国共産党も大日本帝国と同じ戦略的限界に到達する(2011年11月18日のエントリー参照)。

中国企業がオーストラリアの港湾賃借権を取得、豪国防軍は「安全面での懸念を生じさせる」と警戒感―英メディア 2015年10月22日(木) 19時4分 レコードチャイナ

(前段省略)

豪ノーザンテリトリー州は13日、99年にわたって州都ダーウィンの埠頭(ふとう)使用を認める約5億オーストラリアドル(約433億円)規模の契約を中国の嵐橋集団と結んだ。同集団は山東省日照市に拠点を置くエネルギー、インフラ産業を中心に手掛ける民間企業で、向う25年で2億オーストラリアドル(約173億円)をこの港湾に投じ、中国とオーストラリア間の貿易、観光を促進したいとしている。

ただ、豪国防軍のある高官は現地メディアに対し、海軍が使用する港湾の賃借権を中国企業が持つことに「安全面での懸念を生じさせる」と指摘。ダーウィン港は海軍が「非常に重要な港湾」と位置付ける港で、入港した外国の軍艦も含めた軍事演習が毎年開催されている。(翻訳・編集/野谷)


中国企業、豪ダーウィン港の99年間のリース権を取得 2015年10月16日 14時52分 新華ニュース

オーストラリア・ノーザンテリトリー政府は13日、中国嵐橋集団と総額が5億600万オーストラリアドルの協力契約を締結し、ダーウィン港の土地、イースト・アーム港の周辺施設及びフォート・ヒル港を中国嵐橋集団にリースし、リース期間を99年にした。ノーザンテリトリー政府は他の港湾の関連施設の運営権を握り続けながら、監督管理の職能をも果たすと発表した。

ノーザンテリトリー政府によると、リース取引による所得は新たなインフラの整備に投資し、適切な措置で港湾の従業員、利用者と政府利益を守る。中国嵐橋集団は港湾の現有の従業員を2018年6月の契約満期まで削減しないと確認した。港湾施設の使用について、安定的で競争力のある価格メカニズムを実行する。

2014-2015年、ダーウィン港の貨物取扱量は340万トンで、半分ぐらいは中国との貨物貿易で、鉱石を主とした。鉄鉱石輸出量の激減を受け、ダーウィン港の貨物取扱量は2014-2015年に40%下降したが、ここを経由して輸出された生きた牛の数は前年同期比で51%増の61万3000頭に達した。

(翻訳 劉英)


さらに中共の国有企業、コスコ・パシフィック(COSCO Pacific)を主体とするコンソーシアムがトルコ、イスタンブールの主要コンテナ・ターミナルで、ハイダルパシャ港と肩を並べるクンポート港の所有者兼運営会社であるFiba Holdingの子会社であるFina Limanの65%の株式を取得した。

こちらの方は“一帯一路”構想に直結している、と思われる。

中共は新疆ウイグル~中央アジア~トルコ~ロシア~ドイツまでを陸路で結ぶ“シルクロード経済ベルト”とスリランカ~パキスタン~ギリシア~ベルギーを海路で結ぶ“21世紀の海上シルクロード”構想を打ち出している。人民日報はこれらを併せて“一帯一路”と呼称する。

大陸国家の支那としては中国共産党の“一帯一路”のうち、“シルクロード経済ベルト”が主、“21世紀の海上シルクロード”が従となるはずだ。これに対して海洋国家の我が国としては“自由と繁栄の弧”が主、“ユーラシア・クロスロード構想”が従となる(2014年11月14日のエントリー参照)。

麻生財務相が唱えてきた“自由と繁栄の弧”と“ユーラシア・クロスロード構想”、そして“平和と繁栄の回廊”の独創性は、ハルフォード・マッキンダーの唱えたハートランド(大まかにロシアとカフカス、中央アジア)をリムランド(中欧~中東~東南アジア)の弧で囲み、アクセスが常に難しいリムランドの不安定地域(かつて英露が戦ったアフガニスタンを中心点としてそこから紛争が波及する周縁地域)に我が国が持てる資本と技術の力で安全回廊をつくるところにある。

ユーラシア・クロスロードの縦線は中央アジア→アフガニスタン→アラビア海、横線は中央アジア→カスピ海→カフカス→東欧である。また、ロシアが同意する場合、シベリア鉄道とバム鉄道が再活性化する。同意しない場合は中央アジアからロシアを刺す。

これに安倍首相の“安倍ドクトリン”と“セキュリティ・ダイヤモンド構想”による価値観外交をもって、中共と中共側に付こうとする勢力の主張を封じ込め、支那が伝統的に得意とする道徳においても優位に立つことによって、理念上も実際上も同盟国を繋げることで補強する。

と、2013年6月21日のエントリーでは述べた。

日中どちらが、トルコを抱き込めるかについては、中央アジア5カ国に通ずる回廊となるクルド人の居住地域の安全確保に掛かって来る面があり、こちらは現状見通せない部分が多い。

中国のコンソーシアムが9億4千万米ドルをトルコの港湾に投資 28.09.2015 トルコ共和国首相府投資促進機関(ISPAT)

Dünya – 中国国有の船会社・物流会社であるCOSCO Pacificは、China Merchants Holdings International and CIC Capitalと組んで、トルコ第三の大型コンテナ・ターミナルであるクンポートの過半数の株式を取得しました。

コンソーシアムは、クンポートの所有者兼運営会社であるFiba Holdingの子会社であるFina Limanの65%の株式を9億4千万米ドルで取得しました。 残りの35%の株式は、2011年に同港湾に投資したOmanソブリンファンドである State General Reserve Fund (SGRF)が所有しています。

イスタンブールのアンバルリ海岸にあるターミナルは、年間130万TEUを取り扱い、同国のコンテナ輸送合計の16%を占めています。

中国からトルコへのこれまでで最大の直接投資である今回の株式取得取引により、中国政府のかつての「シルクロード」の現代的解釈である「一帯一路」イニシアチブにおける戦略的商取引ルートかつ要衝の地に中国は重要な足がかりを得ることになります。


コスコ・パシフィック、トルコのコンテナターミナルの権益取得へ 2015/09/17 16:36:47 トレーダーズウェブ

 コンテナ関連事業大手のコスコ・パシフィック(01199)は17日朝方、トルコのクンポート・コンテナターミナルの権益取得に向け、中国最大の港湾運営事業者、招商局国際(00144)や政府系投資ファンドの中国投資有限責任公司(CIC)と共同出資会社を設立すると発表した。資本金は1万2500ユーロで、出資比率はコスコ・パシフィックと招商局国際がそれぞれ40%、CICが20%。新会社は、クンポート・コンテナターミナルを保有する現地企業Fina Liman Hizmetleri に64.5%出資する計画。このほか、クンポート・コンテナターミナルの権益1.4%をFinaから2000万米ドルで直接取得する。

 クンポート・コンテナターミナルはトルコ3位のコンテナターミナルで、6つの埠頭を持ち、1万8000TEU(20フィート標準コンテナ換算)級の船舶を取り扱うことが可能。現在の処理能力は184万TEUで350万TEUまで拡張が可能だ。コスコ・パシフィックなど3社は中国政府が進める「21世紀海上シルクロード」構想を踏まえ、トルコ港湾の権益を押さえるのが狙い。

 コスコ・パシフィックは親会社が重大事項を計画していることを理由に、10日に株式取引を停止した。

“累積原産地規則”による中韓の排除

経済協力開発機構(OECD)と世界貿易機関(WTO)が2013年に発表した、付加価値の流れを追う新しい貿易統計(Trade In Value-Added database)によると、日本の最大輸出相手国は中共ではなく米国であった(2013年2月10日のエントリー参照)。

ウルグアイ・ラウンド以降のドーハ・ラウンド交渉の膠着に見られるWTOの機能不全は、利害関係を調整しやすい諸国同士によるFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)締結を加速させた。FTAとEPA、特に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、我が国の中韓から米国へと向けられた迂回貿易構造の否定にも繋がる。

その鍵となるのは、累積原産地規則である。

グローバリゼーションの進展によって、広大な地域にまたがったサプライチェーンが作られた。仮に、ある製品とサービスがあって、99%の素材・部品とその加工がFTA/EPA締結国以外で行われ、残り1%の部品提供と加工のみが締結国で行われ、最終製品と完成されたサービスが締結国に輸出されて、それで無税・無制限となるのでは、膨大な内政と外交努力で締結されたFTA/EPAが持つ非加盟国への差別待遇(ある意味で最恵国待遇の反対)が成立しない。

そうしたFTA/EPAの理念を逸脱した不実と不正を回避するには、累積原産地規則に基づく付加価値の基準が重要になってくる。

FTA/EPA締結国同士の関税を撤廃して、その他の国に対する非関税障壁となるのが、製品とサービスの価値がどの国で付加されたのかを示す累積原産地規則である。

累積原産地規則が存在することで、TPPは中韓を排除する日米主導のブロック経済圏となるのである。

一見、TPPと被っているので分かりづらいが、我が国は独自のブロック経済圏を構築している。

既に発効済、署名済のFTA/EPAはシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴルと、15カ国(地域含む)に及んでいる。また、ASEAN全体とはサービス部門の関する交渉も完了している。

ブロック経済圏を可能にしているのが我が国がハードカレンシーを有している、という事実である。世界中のどこでも円が決済可能であればこそ、これらのFTA/EPAは主導権と実効性を持ちうる。

合衆国が現在、20カ国とFTAを締結しているように、TPPには、我が国のブロック経済圏と合衆国のブロック経済圏との同盟という一側面を持っている。これを軍事面で担保するのが日米同盟であるのは言を俟たない。

TPPの影響、精査している=中国商務省 2015年 11月 6日 19:14 JST ロイター

TPP累積原産地規則による日韓競争力逆転の可能性 2013.09.17 キャノングローバル戦略研究所

 原産地規則とは、ある産品がどの国や地域で作られたかを判断するための規則である。世界中の加盟国を平等に扱うことを原則とするWTO(世界貿易機関)では重要な規則ではないが、複数国間の関税撤廃などを目的とするFTA(自由貿易協定)では極めて重要な規則となる。なぜなら、FTAの本質が「差別」にあるからである。

 FTAは加盟国間だけの貿易を自由化するものである。A、B、Cの国のなかで、A国とB国がFTAを結んだとする。A国はB国からの無税での輸入は認めているが、C国からの無税輸入は認めていない。

 しかし、FTAに参加しないC国からB国へ完成度の高い製品が輸出され、B国でわずかな加工が加えられただけでA国に輸出されると、このような実質的にはC国産の製品も無税でA国は輸入せざるをえないことになりかねない。原産地規則とは、このような場合を排除しようとするものである。

 原産地規則には、協定や品目によって、異なる方法がとられる。関税分類番号が変更されたかどうかとか、特別の加工が加えられたかどうかで、どの国の産品かが判断される場合もある。自動車や機械などでは、B国での付加価値が基準値以上の場合に実質的変更が行われたと考えてB国産と認定する、それ以外はC国産として無税での輸入を認めないという方法(一部は関税分類番号方式と併用)が、とられている。この付加価値の基準値をどこに置くかも、協定や品目によって異なり、例えば、日本とASEANのFTAでは40%など、北米自由貿易協定では60%などとされている。

 累積の原産地規則とは、仮にTPPで付加価値の基準が50%とされた場合、加盟国全ての付加価値を合計したものが50%以上であれば、TPP域内産であるとして、無税での輸入を認めようというものである。現在の国際貿易の特徴は、素材や部品の貿易が最終製品の貿易よりも活発になっていることである。

 東日本大震災で東北の自動車部品工場の生産が中止された結果、アメリカ・デトロイトの自動車工場の生産が困難になったのは、その一例である。つまり、現在の最終製品は、どの国の産物かわからないほど、さまざまな国や地域の素材や部品から構成されている。別の言い方をすれば、さまざまな国や地域をまたがる広大なサプライチェーンが形成されているのである。多数の国から成るTPPが累積の原産地規則を採用することは、無税対象の貿易が拡大することとなり、二国間のFTA以上に大きな貿易促進効果を持つことになる。

 これまで、韓国がEUやアメリカとFTAを結んでいるために、韓国企業はこれらの国や地域に無税で輸出できるのに、日本企業は関税を払わなければ輸出できないという競争条件の不利が指摘されてきた。今我が国は、アメリカ市場を含むTPPだけでなく、EUともFTA交渉を開始している。競争条件の不利は克服されようとしている。

 それだけではない。TPPの累積原産地規則によって、韓国企業よりも日本企業の方が有利になる可能性が出てくる。例えば、付加価値の基準が50%の場合、韓国企業は自国内だけで50%以上の付加価値を付けなければ、アメリカに無税で輸出できないが、日本企業は他のTPP参加国の部品を40%集め、日本国内で10%の付加価値を付けるだけでよいことになる。もちろん、付加価値の基準が米韓FTAよりもTPPの方が相当高いと、このような効果は減殺されるが、ある程度の違いは「累積」によって克服することが可能である。

 もし、このような事態が起きれば、韓国にTPPに参加するインセンティブが高まることになる。自由貿易地域が拡大すればするほど、これに参加しないことのデメリットが高まり、周囲の国に参加しようとするドミノ効果が生じる。累積原産地規則はTPPのドミノ効果を一層大きくしようとしている。


参考URL:
経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA) 平成27年10月19日 外務省

“同盟調整メカニズム”の運用開始

2015年は、安倍首相の米国上下両院合同議会での演説、戦後70年談話の発表によって、“戦後レジームからの脱却”が成就・宣言された、と同時に新しいレジーム構築の端緒となった年として歴史に刻まれるだろう。

2016年頃までには、新しいレジームの姿はかなり明確な形になっていくのではないか。

筆者は2012年11月15日のエントリーで、2012年の世界情勢を1936年に比定していた。

すると、2013年は1937年、2014年は1938年、2015年は1939年、2016年は枢軸国(日独伊三国同盟)が形成された1940年となる。

当時の日米戦争の阻止限界点は、1940年の北部仏印進駐であり、日独伊三国同盟の締結にあった。

1940年の昔、日米関係は悪化の一途を辿り、当時のフランクリン・D・ルーズベルト政権は、屑鉄の対日輸出禁止を行った。当時、本邦の鉄鋼業界は電炉主体で、充分な高炉を持っていなかった。また、松岡外相が日独伊三国同盟の自動参戦条項を骨抜きにしていたことを米国側は掴んでいなかった。

さて、2015年の今、日米ガイドラインの改定、安保法制2法の成立公布、TPPの大筋合意、米中首脳会談の不調など一連の結果を受けて、「航行の自由作戦」が始まった。

現在のところ、米国側は人工島周辺の12海里以内に空母を通過させず、中共側は外交筋は人工島の“領海”という文言を使用していない、など互いに抑制的ではある。

さらに、中印の合同軍事演習の実施や米中海軍同士の電話会談が行われ、日中韓首脳会談の定例化が約束される、など対立国同士の思惑を相互理解する機会を設けたり、軍隊同士の偶発的衝突を回避するメカニズムを構築しよう、という動きも多々見られる。

US Astrategic Ambiguity in the South China Sea? November 05, 2015 The Diplomat

How China Maintains Strategic Ambiguity in the South China Sea October 29, 2015 The Diplomat

China and India Hold Joint Military Exercise October 12, 2015 The Diplomat

しかし、第1次大戦前の欧州協調が互いの動員計画を優先したために壊れたことや、冷戦下でもキューバ危機以前には米ソホットラインが存在しなかったことを考えあわせると、現在のアラブ・中東地域の内戦と、中共が建国以来初めて経験するバブル崩壊の進捗次第では、こうした対立国の危機回避が破綻する可能性もある。

その意味で、日米ガイドラインの改定に伴う日米両軍の同盟調整メカニズムの運用開始は、「グレーゾーン」事態への対処や「航行の自由作戦」への海自参加に道を開くことになり、安全保障の枠組みがより強力な抑止力として働くことになる。

首相動静―11月4日 2015年11月4日21時26分 朝日新聞

【午前】9時37分、官邸。43分、谷垣禎一自民党幹事長。10時37分、谷内正太郎国家安全保障局長、北村滋内閣情報官、秋葉剛男外務省総合外交政策局長、河野克俊防衛省統合幕僚長。11時20分、中国経済連合会の山下隆会長ら。45分、ダンフォード米統合参謀本部議長の表敬。

(後段省略)


日米が同盟調整の新たな仕組み、自衛隊と米軍の共同対処を強化 2015年 11月 3日 17:55 JST ロイター

[東京 3日 ロイター] - 日米両政府は3日、自衛隊と米軍の共同対処力を強化する新たな「同盟調整メカニズム」の運用を開始することで合意した。当局同士が平時から連絡や政策調整を行うための仕組みで、今年4月の「防衛協力の指針」(ガイドライン)改定で強化した日米同盟の実効性を担保する。

外務・防衛当局の局長級からなる日米防衛小委員会が同日、了承した。朝鮮半島有事など日本の周辺事態や、日本が直接攻撃を受けた有事にのみ始動する従来の調整メカニズムを変更し、「グレーゾーン」事態や日本の大規模災害時にも、この枠組みを使って自衛隊と米軍の活動を調整できるようにした。

北朝鮮がロケットと呼ぶ飛翔体を打ち上げたり、武装した漁師が日本の島を占拠した場合も対象となる。「ガイドラインの実効性を確保する上で非常に重要な仕組み。平素から緊急事態まで活用できるようになる」と、防衛省幹部は話す。

あわせて両政府は、共同作戦計画を策定するための「共同計画作成メカニズム」を設置することでも合意した。日米はこれまで作戦計画をあくまで「検討」するとしてきたが、新たな枠組みのもと、実際の策定作業に移行する。共同作戦の存在を対外的にアピールすることで、抑止力を高める狙い。

日本と米国は今年4月、自衛隊と米軍が協力し、平時から有事まであらゆる事態に対処できるようガイドラインを改定した。新しい同盟調整メカニズムを設置することも明記し、運用開始に向けて協議を続けてきた。

中越戦争を慎重に避ける外交

ベトナムは、半島国家の外交とはかくあるべし、という実例を見せてくれる。同じ半島国家の韓国とは好対照と云える。

その外交は、地政学上の永遠の敵である支那(現在は中華人民共和国)からの侵略を防ぐために費やされる。

中共と同じ共産党による一党独裁国家でありながら、議会制民主主義国家の米国、インド、そして我が国との防衛協力を深めつつ、ロシアともソ連時代からの友好関係を保ち、潜水艦を購入している。

防衛面に限らず経済面でも、日米主導となったTPPに参加しながら、ロシア主導のユーラシア経済連合-ベトナム自由貿易協定(EEUV-FTA)を結んでいる。

今回も、カムラン湾に海自の艦艇が寄港することで合意しておきながら、その同日に中越首脳会談を行って、南シナ海における偶発的衝突を避ける合意をしている。

「航行の自由作戦」に伴って、対立国同士の偶発的衝突を避ける対話メカニズムが作られつつある。緊張を孕みつつ、米中冷戦を続けられるのか。

人工島における航空兵力の運用が始まるときが、阻止限界点であることに変わりない。

日越防衛相、海自艦船の寄港で合意 南シナ海要衝カムラン湾 2015年 11月 6日 17:37 JST ロイター

中国とベトナム、南シナ海の平和と安定維持で合意  2015年 11月 6日 17:32 JST ロイター

再度、中越戦争が起きたとしても、日米ともに陸上に援兵を派遣できないだろう。現に我が国は航空分野と海洋分野の防衛協力を進めているが、陸上分野では進んでいない。

そして、冷徹な現実として日米両国兵士の命の値段とベトナム、中共の兵士の命の値段が吊り合わないということがある。

第三次国共合作の結末に

共産党と国民党の首脳会談が1949年以降初めて行われる。

1990年代後半~2010年代までのいわゆる両岸関係は、支那本土の経済発展によって、台湾の経済界が取り込まれ、なかなか支那から足抜けできない状態にまで陥った。

現在の馬英九政権は、第三次国共合作と云える状態を現出させた。

中韓の主張に沿った従軍慰安婦問題の追従や、学生運動(ヒマワリ運動)によって批准拒否された両岸サービス貿易協定や、同じく学生運動が起きた「中国史観」に基づく学習指導要領の改定などは、具体的な合作の動きとそれらに対する反発と云えるだろう。

しかし、誰も好き好んで、支那本土のバブル崩壊と予想される政治的混乱の直撃を受けたくはない。

来年の総統選挙では候補者差し替えをしてでも、なお敗北が濃厚な国民党の馬英九総統は、国民党が推進してきた“一つの中国”の原則に基づく“1992年コンセンサス(九二共識)”を民進党の蔡英文主席が維持するように釘を差した。

一方で、“終極統一”の概念を進めて、何らかの国共統一宣言を行って、発足した後の民進党政権の手足を縛ろうとするだろう。

中台首脳が7日に会談、分断後初めて 台湾野党は反発 2015年 11月 4日 13:15 JST ロイター

もともと国民党と中国共産党は歴史的に親しい関係にある。

1923年、コミンテルンのエージェントだったボロディンは国民党の顧問となり、「連ソ共容」の方針に従って、ボリシェビキ型の党組織に改編させた。党員名簿を秘密にして、民主集中制(独裁)を採用して、党軍を設立することにした。

1924年、第一次国共合作が成立して、党軍の士官を養成する黄埔軍官学校が設立された。黄埔軍官学校は、蒋介石が校長に、周恩来が学校の政治部副主任に、毛沢東も面接試験官になった。

しかし、北伐の過程で第一次国共合作は破れた。

1937年、支那事変勃発で第二次国共合作が成立した。1945年の大日本帝国の敗北によって、第二次国共合作の意味もなくなり、以後の国共内戦に敗れて、国民党は台湾に逃れた。

おおまかに外省人の移住した、北京語(マンダリン)の普及している北部と、本省人の多い、台湾語が話される南部に地域対立が存在している。もしも台湾に内戦が起こるとすれば、北部と南部の相違が原因となるだろう。

“航行の自由宣言”採択されず

ASEAN拡大国防相会議では、南シナ海の人工島埋立とそれに対抗する「航行の自由作戦」がボトルネックとなり、共同宣言が採択されなかった。

以前も、2012年7月のASEAN地域フォーラムでは、中共側が国際法としての法的拘束力を持たせた“南シナ海行動規範”の策定を拒否した(2012年10月9日のエントリー参照)。

今回も同様である。彼らの華夷秩序に基づく思想では、二国間交渉を優先して、多国間交渉を拒否する。大国であれ、小国であれ主権国家が同等の権利を持つという前提を受け入れられないからだ。

ASEAN拡大国防相会議、共同宣言見送り 南シナ海で米中対立 2015年 11月 4日 15:25 JST ロイター

南シナ海での米航行の自由作戦、脅威ではない=米軍司令官 2015年 11月 3日 15:27 JST ロイター

越に中古船2隻引き渡し=南シナ海の監視強化-日本政府 2015/11/03-14:11 時事ドットコム

中国共産党は、“海洋における法の支配”という人類共通の公共財を利用して、安全なシーレーンを通り、貿易上の利益を得ながら、同時にそれを維持する費用を負担せず、それどころかその財を毀損する行為を行っている(2014年5月30日のエントリー参照)。

「航行の自由作戦」は続く、いや続けざるを得ない。南シナ海の紛争を平和的に解決するための駆け引きとして、この作戦が行われているからだ。

国際法の原則を否定する状況が継続すればどうなるか。はて伝統的な支那社会なるものは、西欧社会に起源を持つ国際法秩序と、その社会に属しているのか、という疑念を招いて、全体の国際法秩序が崩壊しかねない。

たしかに発展過程にある国家は、政治的権力の配分を変更せよ、と要求する。彼らは現在、領土や通貨について要求している。

しかし、人工島を巡る要求が通れば、国際法の領土・領海・領空の概念をすべて書き換えることになる。つまり、既存の国際法における権利の再分配ではないのだ(2015年6月2日のエントリー参照)。

この場合、究極的には現在の海上覇権国とその同盟国、つまり日米両国に挑戦して、完膚なきまでに勝利して、新たな法体系と秩序をつくり、それらを担保する海上兵力を保有・維持しなければならない。中国共産党と人民解放軍にその用意と覚悟が出来ているのか、という地点にまで到達する。

彼らの要求が取り下げられない限り、この「航行の自由作戦」は続き、次段階の作戦も視野に入ってくる。

民意はクルド人も大統領権限も強化させない

大トルコ主義の先駆者、エンヴェル・パシャはテュルク系民族の諸国との回廊を作るために、アルメニアと衝突した。100年後の今もなお非難されるアルメニア人虐殺が、それである。その悲劇を予め回避するには、ロシアの了解を取りつつ、クルド人の居住地域を通過する必要がある。ところがエルドアン大統領の眼前に、クルド系の国民民主主義党(HDP)が立ち塞がっている。

かつて、エンヴェル・パシャの敗北に続く国家滅亡の危機に瀕して、アタテュルクの強権は確立した。逆転がありうるならば経済がさらに悪化し、シリアとイラクの内戦がトルコに波及するほどの混乱に乗じる形でしか果たせないかもしれない。

と、2015年6月12日のエントリーで触れたが、

シリア内戦をレバレッジにして、エルドアン大統領~ダウトオール首相の与党、公正発展党(AKP)が過半数を取り戻した。ただし、エルドアン大統領の思惑であった大統領権限強化の目標は遠のいた。憲法改正を単独で発議して国民投票を行えるには、330議席が必要なのだが、トルコ国民の民意はクルド系の権力増大を望まなかったのと同時に、権限強化を望まなかった、ということになる。

トルコ総選挙、与党が単独過半数獲得へ 「エルドアン体制」継続 2015年 11月 2日 17:38 JST ロイター

トルコ2015年11月総選挙結果(定数 550・過半数276)

公正発展党(AKP、保守・中道右派) 317 ▲59
共和人民党(CHP、中道左派) 134 ▲2
民族主義者行動党(MHP、極右) 40 ▼40
国民民主主義党(HDP、左派・クルド系) 59 ▼21

トルコ2015年06月総選挙結果(定数 550・過半数276)

公正発展党(AKP、保守・中道右派) 258 ▼69
共和人民党(CHP、中道左派) 132 ▼3
民族主義者行動党(MHP、極右) 80 ▼27
国民民主主義党(HDP、左派・クルド系) 80

二人っ子政策の果実は2030年までお預け

中国共産党は、党中央委員会第5回全体会議(5中全会)において、いわゆる一人っ子政策の廃止を決定した。2013年11月から関連法制を緩和してきた上での制度変更となる。

一人っ子政策の廃止に伴って、すべての夫婦に第2子の出産を認める二人っ子政策へと新しい制度が施行される。しかし、生産年齢人口に該当する15歳になるまでのタイムラグは、2030年以降である。

従来、一人っ子政策を管理してきた既得権益側に立つ、国家衛生・計画出産委員会は、2016年3月の全国人民代表大会(全人代)において、制度変更が承認されるまでは、現状の制度を運用し続ける、とアナウンスしている。

ロイター電によれば、2012年には既に中共の生産年齢人口が減少に転じた、とされる。国連のデータでは、15歳~59歳が占める割合は67%以上であるが、2050年までには50%に減少して、60歳以上は30%を超える見通し、となっている。

筆者は以前、2012年11月9日のエントリーで、

さて、彼らの人口ボーナスのピークは速い人の見解ではもう過ぎており、中間意見では2013年、遅い人でも2015年とあり、この辺りでどう足掻いても、皆バブルが終焉したと認めるようになる。バブル崩壊と潜在成長率の低下の影響を抑えつつ、5カ年計画で7%成長を持続させるためには最低限、財政金融政策は欠かせない。

また、生産年齢人口が従属人口を下回るのは2030年頃と見られる。残り約20年で産業構造の転換と社会保障制度の整備を先進国並にしなければならない。しかもこれは筆者がありったけの希望的観測が実現するものと好意的に解釈したものだ。

と指摘させてもらったが、

確かに、バブル崩壊の認識と周知は2015年までに訪れた。ただし、生産年齢人口と従属人口の関係性は、今後の産業の高度化とともにすべての労働者が、15歳から働くのでもなく、59歳までで働かなくなる、といった前提はなくなるだろうから、政策上の幅は持てる。さらに、いくつかの資料によれば2050年が転換点、とされるものもある。

二人っ子政策の採用は一世代遅いと思われるが、それでも現在、結婚適齢期を迎えた都市の女性は、出産ラッシュを迎えている地域もある。

筆者の知る地域では、旧関東州の大連がそれである。同地には、アウトソーシング業界の企業多数が進出していたのだが、産休によって業務水準が維持できないことすら一因になって、撤退しているか、もともと自社連結からオフバランスしているところが多い。

もちろん地域差はあるのだろう。最先端を往く上海の合計特殊出生率が0.7というのは、全国平均の1.7を大きく下回っている。

2012年の第18回中国共産党大会でも、2020年までに10年間で人民所得を倍増させる目標を確認していたが、再度、人民1人当たりの所得について、2020年までに2010年比で倍増させる、との目標を表明した。都市戸籍と農村戸籍の人民双方で、高齢者向け保険制度を適用対象とすることも明らかにした。

社会保障費含めた人件費、配当と税から見て、各国のリショアリングもしくはチャイナプラスワン待ったなし、となる。日米により育まれた世界の工場(仮)の終焉は間違いない。

コラム:中国「二人っ子政策」の死角 2015年 11月 2日 17:08 JST ロイター

中国「一人っ子政策」、新制度施行まで当面続ける=計画出産委 2015年 11月 2日 16:34 JST ロイター

UPDATE 3-中国、今後5年は中高速の成長目指す 「一人っ子政策」廃止へ 2015年 10月 29日 23:35 JST ロイター

How China’s Working-Age Population Has Changed Published Oct. 29, 2015 at 10:00 p.m ET WSJ

China’s ageing population REUTERS GRAPHICS

海自、カムラン湾に入る

11月6日に予定されている日本とベトナムの防衛相会談で、来年度以降、海自の護衛艦をカムラン湾に寄港・補給する合意に達する、と見られる。これで米軍、インド軍、ロシア軍に次いで自衛隊もカムラン湾を利用する隊列に加わる。

さらにソマリア沖の海賊対策に派遣される護衛艦「すずなみ」と「まきなみ」も航海途上の南シナ海を通過して、周辺を警戒監視する。

海自、ベトナム基地で補給へ 南シナ海 中国けん制 2015/10/30 2:01日本経済新聞 電子版

日本の船舶、2016年よりベトナムのカルマン基地で使用される 2015年10月30日 14:19 スプートニクニュース

ベトナムは軍港として歴史あるカムラン湾に、ロシアを招聘し、ロシアの資金と技術で米軍、インド軍、ロシア軍の艦船施設を建設整備する。(2013年3月23日のエントリー)

ベトナムは、ロシアからゲパルト型フリゲートを2隻調達しているが、また2016年目途にキロ級潜水艦を6隻調達して同国の協力の下、潜水艦基地を整備、人員育成する予定だ。ローテーションから考えて2個潜水隊群を保有運営することになる。(2013年5月24日のエントリー)
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