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リベラルの世界秩序に亀裂が入る

ニューヨーク・タイムズのコラムニストRoss Douthat氏は2015年を振り返り、ベルリンの壁崩壊から25年を経て、リベラルの秩序に亀裂が入った、と述べている。

欧州統合や難民受け入れを唱える一方で、プーチン大統領率いるロシアと中国共産党とムスリムの攻勢にさらされているリベラルは、その脆弱性ではなく、強靭性が問われようとしている、と。

最後にはリベラルの強靭性が勝るとコラムニストは信じているようだが、現時点ではリベラルの既成政党を挟んで極右と極左、ポピュリストと分離独立主義者の新政党が欧州各国の2015年の議会選挙などで台頭して、欧州連合の統一の夢を脅かしている。

北米から鳥瞰する立場からでもこの事実は動かせないようだ。では、欧州各国の2015年の動きを振り返って見よう。

まず、欧州債務危機によって経済が縮小していく南欧では概ね極左が台頭している。

2015年1月と9月に行われたギリシアの総選挙では、極左で反グローバリズムを唱える急進左派連合(Syriza)が第1党であり、政権を担い続けている。

2015年12月に行われたスペインの総選挙では王政復古以来の二大政党制が崩れ始めた。中道右派の国民党と中道左派の社会労働党いずれも過半数に達せず、左翼のポデモスとポピュリストのシウダダノス、そしてカタロニア独立を図るカタルーニャ共産主義左翼などの分離主義者が票を伸ばした。

次いで、難民危機に見舞われた中欧諸国では、それまでドイツに反旗を翻してきたハンガリーにとどまらず、各国で右派が台頭してきた。

2015年12月に行われたポーランドの総選挙では大統領選に続いて、保守・中道右派に属する「法と正義」が上下両院の過半数を制した。右傾化と欧州連合(EU)に対する懐疑的姿勢が顕著になり、首都ワルシャワでは政権に対する抗議デモが起きた。

ドーバー海峡を隔てて、ユーロ圏に属さず、さらに欧州連合からの脱退が取り沙汰される英国ではどうだろうか。

2015年5月に行われた総選挙では予想に反して、保守党が過半数を維持して、分離独立を訴えるスコットランド国民党が労働党の地盤を奪った。惨敗した労働党は、サッチャリズムとニューレイバー路線を全否定する強硬左派(ハードレフト)のジェレミー・コービンが新党首となった。

ドイツとともに欧州連合の核となっている2015年のフランスは難民危機とパリ同時多発テロに見舞われた。2015年12月の地域圏議会選挙では国民戦線の第1党進出を防ぐために社会党が第2回投票から降りて、サルコジ前大統領率いる共和党を中心とする右派連合が13地域圏のうち7地域圏で過半を制した。しかし、二大政党の一翼を担うはずのサルコジ前大統領は新自由主義的傾向から、その支持率は低迷したままだ。

従来、難民に寛容で多文化主義の牙城であった北欧諸国ではどうだろう。

スウェーデンでは、移民制限を訴えたスウェーデン民主党が2014年総選挙で49議席と躍進した。彼らは定数349、過半数175の議会で一挙にキャスティングボートを握り、政権与党の予算案を否決したために、2015年3月22日に56年ぶりの解散総選挙を行う、と定まった。しかし、2014年12月に中道左派と中道右派の間で事実上の大連立合意ができて、スウェーデン民主党を議会の合意形成プロセスから排除するという枠組みがつくられた。にも関わらず移民制限の主張は浸透し始めている。

2015年6月に行われたデンマークの政権を担っていた中道左派連合を中道右派連合が破った。中道右派連合とその政権は、移民制限の急先鋒であるデンマーク国民党を含んでおり、難民危機に際してレバノンの新聞に「この小さな北欧の国は難民を歓迎しません」という広告を出稿した。

ノルウェーでは2011年7月にオスロ及びその郊外で、移民推進派の労働党の青年部会を狙った銃乱射・爆破テロが起きている。2013年9月の総選挙では移民制限を訴える進歩党の属する中道右派連合が勝利して、政権を獲得した。難民危機に際しては移民担当大臣を新設して、移民制限の実効性を高めようとしている。

上記のコラムニストは締めくくりに、労働党のジェレミー・コービンが英国の首相とはならない、国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが大統領とはならない、欧州連合はバラバラにはならない、と楽観的である。また、自国でもトランプ氏が大統領の座を獲得しないと信じているようだが、欧米の中心部と周縁部で起きている分裂と闘争に、リベラルが和解をもたらす妙案を持ち合わせているとまでは云えないだろう。

Cracks in the Liberal Order DEC. 26, 2015 The New York Times

IN the twenty-five years since the fall of the Berlin Wall, the architecture of liberal modernity has looked relatively stable. Not flawless or wonderful or ideal, to be sure; not free of discontents and decadence. But it’s been hard to imagine the basic liberal democratic capitalist order cracking up, let alone envision what might take its place.

Through the dot-com bust, 9/11, the Iraq war, and the financial crisis, it was striking how consensus held, how elites kept circulating, how quickly populist movements collapsed or were co-opted, how Washington and Brussels consolidated power even when their projects failed. No new ideological movement, whether radical or reactionary, emerged to offer the alternative to liberalism that fascism and Marxism and throne-and-altar traditionalism once supplied. And no external adversary, whether Putinist or Islamist or Chinese, seemed to offer a better way than ours.

Here in the dying days of 2015, though, something seems to have shifted. For the first time in a generation, the theme of this year was the liberal order’s vulnerability, not its resilience. 2015 was a memento mori moment for our institutions — a year of cracks in the system, of crumbling firewalls, of reminders that all orders pass away.

This was especially true in Europe, where for generations the parties of the center have maintained a successful quarantine against movements that threatened their dream of continental integration — be they far-right or far-left, nationalist or separatist.

On the Eurozone’s periphery, in Greece and Hungary and now in Poland, that quarantine is dead. But in 2015 it began to weaken in the European core. Elections in Great Britain empowered Scottish Nationalists, handed the Labour Party back to crypto-Marxists, and raised the odds that the United Kingdom could depart the European Union or dissolve. Elections in France kept Marine Le Pen’s National Front out of power — but by a narrower margin than ever before. Elections in Spain empowered both the populist left and Catalan separatists. And in Sweden, that blessed end-of-history paradise, the most popular political party was suddenly the Sweden Democrats, whose roots are in homegrown fascism.

Europe’s extremes gained, in part, because in 2015 the center was unusually feckless. Angela Merkel’s decision to open Germany’s borders to a million Middle Eastern refugees earned her the praise of her globalist peers. But it also pushed a fast-forward button on long-term trends threatening the liberal project in Europe — the challenge of Islam, the pressure of migration from Africa, the danger of backlash in countries with little experience of mass assimilation.

In the process, Merkel handed ammunition to the argument, expressed in artistic form in Michel Houellebecq’s novel “Submission,” that late-modern liberalism might have a certain tendency toward suicide. And she did so at a moment when both the Islamic State and Vladimir Putin’s Russia were supplying evidence that the liberal project can be at least temporarily defied.

Yes, ISIS probably won’t endure, and Putin’s ambitions exceed his grasp. But by pulling volunteers from Western countries and inspiring terrorists from Paris to San Bernardino, the would-be caliphate has provided a new template for revolts against modernity. And by playing power politics in his near abroad and the Middle East, Putin has helped make the Pax Americana look more fragile than at any point since 1989.

Meanwhile, in the American heart of that neoliberal imperium, were it not for Donald Trump the big political story of the year would be the emergence of a new New Left — visible in the continued potency of Black Lives Matter, the turmoil on college campuses, and the appeal of an avowed socialism on the Democratic Party’s campaign trail.

Except that Trump is the big story, and deservedly. His mix of reality-TV shamelessness, European-style nationalism and boastful authoritarianism might be a genuinely new thing in U.S. politics. And the fact that so many disaffected voters find it attractive is a revelation, an objective correlative to polls showing declining faith in democracy, and a window, perhaps, into a more illiberal politics to come.

Now: Trump will not be the Republican nominee (yes, really). Bernie Sanders won’t beat Hillary. Far-left antics at Amherst and Oberlin and Claremont McKenna and Yale are not as significant as elite college graduates like to think.

In Europe, Jeremy Corbyn probably won’t be Britain’s next prime minister, Marine Le Pen probably won’t be France’s next president, Sweden probably isn’t about to turn fascist, the E.U. probably isn’t about to break apart. Houellebecq’s vision of an Islamified Europe, like ISIS’s vision of a new Islamic empire or Putin’s Stalinist nostalgia, is more a resonant fantasy than a plausible atlas of the future.

It’s still wise to bet on the current order, in other words, and against its enemies and rivals and would-be saboteurs.

But after liberalism’s year of living dangerously, for the first time in a long time it might make sense to hedge that bet.

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矜持のために敗れるフランス社会党

12月6日と13日に行われたフランスの地域圏議会(Conseil régional)選挙で、辛くも与党・社会党を中心とする左派連合は極右政党・国民戦線の第1党進出を退けた。

しかし、事実上の戒厳令を布く最中にも関わらず、危機バネによる支持率上昇は起きず、サルコジ前大統領率いる共和党を中心とする右派連合が13地域圏のうち7地域圏で過半を制した。5地域圏は社会党、残るコルシカ島は地域政党が獲った。そして、コルシカ島では反イスラムデモが起きている。

仏コルシカ島、3日連続で反イスラムデモ 2015年12月28日 12:44 AFP BB NEWS

フランス極右「国民戦線」は勝利したのか?:地域圏議会選挙 2015年12月18日 15時26分 JST ハフィントンポスト日本版

左派連合が右派連合に過半数を奪われても、国民戦線の第1党進出を防ごうとしたのは、2回目の投票で第1党になった党の名簿トップが地域圏議会の議長になるからだった。中央集権的なフランスにあって分権化を進めた地域圏の議長は行政の執行権を有しており、地域圏の権限を非テクノクラート出身の極右政党の面々に与えたくなかったのだろう。

ブルボン朝の絶対王政と革命の共和政と帝政がいずれもパリに権限を集中させねばならなかったように、もともとフランス人は地域性と党派性が強い。小党乱立による政権短命化から第三共和政が混乱し続けたことから、複数回選挙で擬似的な二大政党をつくる仕組みとなっている。

地域圏議会選挙は拘束名簿方式の比例代表制。大統領選と同様に1回目の投票だけで単一政党が単独過半数を取ることがなく、1回目投票の結果を受けて、2回目投票のための連立協定を組み直し、有権者は最善がなければ次善の候補に投票する。

第1党には定数の25%の議席が与えられ、残り75%の議席は第1党含めて得票率に応じて配分される。

今回の地域圏議会選挙では、国民戦線は第1回投票に際して、12の地域圏中6地域でトップに立ち、党首マリーヌ・ルペンと姪のマリオン・マレシャル・ルペンが出た北部ノール=パ・ド・カレー=ピカルディ地域圏(2016年にノール=パ・ド・カレーとピカルディが統合再編)と南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏で、40%越えの得票を得た。

2回目投票で国民戦線を蹴落とすためにこの2地域で社会党は立候補を取り下げて、共和党に他の地域圏での立候補を取り下げる協力を求めた。オランド大統領は社会党候補を説得して、立候補を取り下げようとしたが、一部の候補は大統領に叛旗を翻した。リベラルメディアは国民戦線叩きに走り、乗せられた有権者は国民戦線以外に投票した。

国民戦線潰しに社会党と共和党が協力したかというとそうではない。立候補取り下げに際して、比例議席の割り振りについて協定を結ぶのが通常なのだが、今回はそれがなく、北部ノール=パ・ド・カレー=ピカルディ地域圏と南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏は結果として、共和党は65%~70%、国民戦線は25%~30%の議席を獲得する一方、社会党及び左派連合の議席は皆無。前回選挙では第1党として議長も出していた社会党は壊滅したのだ。

オランド大統領と与党・社会党は、地域圏議会の少数派となっても、一定の影響力は保持できるし、党の地域組織の維持のためにも必要であった。まるで矜持のために社会党は敗北した。ここまでして地域圏の行政執行権を渡したくなかったのか。国民戦線が地域圏の運営に失敗して支持率を落とす可能性もあったのに、である。

ポストモダンにおける宗教の換骨奪胎と再構築

欧米を覆う多文化主義やダイバーシティ(多様性)の促進は、近代の脱宗教化によって力を失ってきたキリスト教の文化的影響力そのものを社会から排除しようとしている。

ニューヨークの高級百貨店のショーウィンドウからクリスマス色が失われていることを嘆くWSJのコラムニストの将来への危惧が正しければ、いずれ信仰心と関わりない形式的なキリスト教の残滓も奪われる。

合衆国の公的な場から「Merry Christmas!」という挨拶が無くなり、「Happy Holidays!」という挨拶に代わりつつある。そして、合衆国の大統領は就任の際、聖書に手を置いて宣誓することもなくなるだろう。

【オピニオン】死に絶えたクリスマス、様変わりのNY繁華街 2015年 12月25日 18:15 JST WSJ日本版

一方、我が国ではポストモダンにおける宗教の換骨奪胎と再構築が進んでいる。宗教の再構築、そして行き着く社会の再構築に必要なものは回帰しうるものに左右される。つとに遡及しうる過去の文化的財産によって、それぞれの文明圏の将来が決まる。

大安・仏滅など「六曜」掲載 冊子の配布見送り 12月25日 大分合同新聞

In 'non-religious' Japan, the shrine can still exert a pull SEPTEMBER 6, 2015 The Christian Science Monitor

Japan’s Enduring Spookiness NOV 1, 2015 The Atlantic

東アジアで共産国家の中国と香港に続いて非宗教的な国でありながら、明治神宮への初詣や伊勢神宮の式年遷宮への参拝数増加を例に挙げて、無宗教を名乗る日本人の根強い宗教性にクリスチャン・サイエンス・モニターの記事は「ただの観光か、それともそれ以上の何かが」と、まるで困惑しているかのようだ。

日本の宗教が絶対的な神を中心とせず、自然と人間の関係中心に回っていることを理解していない。

アトランティック誌の論説は、我が国におけるハロウィンの受容を取り上げ、より具体的な歴史的連関を捜して、江戸時代の大衆文化と現在のサブカルチャーである『ゲゲゲの鬼太郎』や『妖怪ウォッチ』などとの親和性を見出した。

ところが、こうした米国の意見を代弁するコラムニストたちは、明治神宮が高々100年の歴史しか有さないことを指摘しない。「明治」という近代化の時代を記念する社に、古代と同じ原生林を人工的に作り出したことを彼らが発見しない限り、その困惑は解消しないだろう。

つまり、明治人はその締めくくりに1万年続いた縄文時代との接点をつくり、近代化の果てに古代への回帰と再生が可能な文化的種子を蒔いたのだ。

ギリシア・ローマを再発見した人文主義が現在の多文化主義に行き着いた西欧。日本と違い天然・自然にではなく万里の長城の向こうに脅威を感じた支那。人工的な宗教国家であるがゆえに対極的な非宗教性が力を持ち、ポリティカル・コレクトネスとダイバーシティに左右される北米。伝統的イスラムへの執着と離脱の間で混乱するアラブ・中東。

これらの文明圏と日本の文明がポストモダンにおいて決定的に違う点は、それぞれの文明が有する遥かな過去にまで遡及される。

宗教的規範があらゆる行動を正当化する

牛を神聖視するヒンドゥー教徒が、牛を喰らうムスリムを集団で殺害する事件が起きた。ときに宗教的規範は行動を規定するのみならず、犯罪行為を正当化させる。

インドの隣国バングラデシュでは世俗派のブロガーが年間5人程度殺害されている。ISIS(イスラム国)に感化された夫妻が無差別乱射事件を起こした米国では人工妊娠中絶に反対を唱えるファンダメンタリストが医療施設を襲撃している。

宗教に限らずイデオロギーもまた、人間の行動を規定する。靖国神社を爆破しようとした韓国人も“反日”という一種の宗教に対する帰依が存在する。

そもそも宗教的戒律はそのコミュニティと属する信者とに、外見的・心理的抑圧を与える。神の名によって守らなければならない規範が生活の隅々にまで浸透している。その圧力から一時でも解放されるために、原理主義者は戒律に従わない異教徒を社会の下位に属する人間として扱い、暴力を正当化して打擲を加え、なぶり殺しにするのである。

「牛肉食べた」イスラム教徒を集団殺害の容疑、15人訴追 インド 2015.12.26 Sat posted at 16:40 JST CNN日本版

ニューデリー(CNN) インドのウッタルプラデシュ州の警察は26日までに、牛肉を食べたり家内での保存が疑われたイスラム教徒の50歳男性が住民の集団暴行で殺害されたと報告した。15人が殺人罪で訴追された。

事件は今年9月、人口が6000人以上の地域で発生。イスラム教徒は2家族しかおらず、鍛冶(かじ)職人だった被害者の男性はそのうちの1世帯に属していた。

事件では被害者の自宅も襲われて略奪を受け、高齢の母親や22歳の息子も殴打されるなどした。息子は重傷で病院に運ばれたという。

被害者の自宅の冷蔵庫には牛肉があるとの情報も流れ、地元警察は科学捜査の結果を待っている。

インドで圧倒的な多数派を占めるヒンドゥー教は牛を神聖視しており、殺害などはウッタルプラデシュ州を含む大半の地域で禁じられ、犯せば罪となる。同国内ではここ数カ月間、少なくとも2人のイスラム教徒男性が牛肉を運んだり、牛の密輸に加わったとのうわさが流れる中で襲撃される事件が起きていた。

ドイツ圏への編入を拒む中欧諸国

チェコのゼマン大統領は国民に向けてクリスマス演説を行い、1年間で約100万人が流入した難民危機に警告を発し、彼らは難民などではなく組織化された侵略者であり、英国などに行き着いて社会福祉を受け取ろうとしているだけで、自国の独立と自由のために銃を取ろうとしない、と述べた。

Czech president Zeman says refugee wave is 'organized invasion' 26.12.2015  Deutsche Welle

Poland’s constitutional crisis goes international 12/24/15, 5:30 AM CET Politico

旧ソ連圏に属していた中欧諸国は、自国の民主化とロシア圏からの脱出のために、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に入ったが、西欧のリベラル的思想に完全に馴染んだ訳ではなく、ロシアの悪影響よりもドイツの悪影響が目立てば、バランスを取るのは自明の理だろう。

従ってポーランドとチェコ、スロバキア、ハンガリーでは共通して、欧州連合への懐疑とカトリシズムの尊重とナショナリズムへの回帰という現象が起きる。

EUは、ポーランドの新政権が法の精神を蔑ろにした政権運営を行っているとして、危惧を抱いている。首都ワルシャワの街頭でも新政権に抗議するデモ隊が行進した。曰く憲法の危機が訪れ、democratorship(民主独裁制)を敷いている、と非難している。

ポーランドでは、旧ドイツ帝国と旧ワイマール共和国領に相当する西部では前政権を担った「市民プラットフォーム」の支持が強く、ドイツから遠い東部では現政権を担う「法と正義」の支持が強い。

2015年5月の大統領選では、農村部の有権者の62%がドゥダ現大統領に投票し、コモロフスキ前大統領は都市部の票の59%を獲得していた、とされる。

投票結果から、都市と農村の分断が明らかにされる。グローバリゼーションの恩恵とリベラル的思想の洗礼が両者の分断を生んでおり、EUの危惧や首都でのデモ行進に繋がっている。

難民の通り道となったハンガリーとチェコと通り道ではなかったポーランドが、揃ってナショナリズムへの回帰している事実から、ドイツの悪影響を回避したいという心理が働いているのが分かる。中欧諸国がドイツ圏への編入を拒み始めた、と云えるだろう。

日露を味方につけて、パキスタンに行こう

インドのモディ首相はわずか1ヶ月の間に、安倍首相を自国に迎え、すぐさま自らロシアを訪問、歴訪するアフガニスタンからの帰途に宿敵パキスタンを電撃的に訪問した。

我が国との間に原子力協定を合意、高速鉄道では日本の技術を採用する。またロシアとは、過去10年間で最大となる予算を組んで、S-400ミサイル防衛システムなどを輸入する。

中共を牽制するために日露との関係を強化した後、中共と密接なパキスタンを訪れる辺りは見事な流れである。

A hug and high tea: Indian PM makes surprise visit to Pakistan Sat Dec 26, 2015 12:14am EST Reuters

インドのモディ首相がパキスタン初訪問へ、シャリフ首相と会談 2015年 12月 25日 18:38 JST ロイター

Modi Seeks Russian Crown Jewel in Decade's Biggest Defense Deal December 23, 2015 — 7:00 AM JST Bloomberg

インド首相が今週訪ロ、原子力分野や軍用ヘリ製造で合意へ 2015年 12月 21日 15:03 JST ロイター

2015年の日印首相会談は、ASEAN首脳会談(11月21日)とCOP21(11月30日)の両首脳出席時にも行われており、12月の安倍首相のインド訪問を総仕上げとして、懸案であった日印原子力協定に合意、安全保障面では防衛装備品及び技術移転協定と情報保護協定に署名、そして日本の高速鉄道技術=新幹線システムを導入する覚書を交わした。

その他にも租税条約の改定、インド人向けにビザ緩和が行われる。

今回の首脳会談における共同声明は「日印ビジョン2025 特別戦略的グローバル・パートナーシップ、インド太平洋地域と世界の平和と繁栄のための協働」という長い名前が付けられている。

いささか冗長に思えるが、第1次安倍政権のときに「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に向けた共同声明が出されている。

また野田政権のときに「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」の強化に向けたビジョン、という共同声明が出されている。
そして、2014年の日印首脳会談において「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップに関する東京宣言」がなされた。

中共とはリレーションシップ(戦略的互恵関係)に過ぎず、EU、ASEAN、ベトナム、インドネシア、フィリピン、モンゴルとは戦略的パートナーシップであるが、インドとは「特別」「グローバル」の文言が盛り込まれている。この辺に両国の気合の入れようが表れている。

しかし、特別戦略的グローバル・パートナーシップの内実は、2006年来の懸案が積み重なっていたが、ようやくそれらに一定の成果が出た訳だ。

参考URL:
日印首脳会談 平成27年12月13日 外務省

日印ヴィジョン2025 特別戦略的グローバル・パートナーシップ 平成27年12月12日 外務省

インド高速鉄道に関する協力覚書等への署名について(報告) 平成27年12月12日 国土交通省

インド国民に対する短期滞在数次ビザの大幅緩和 平成27年12月12日 外務省

日・印租税条約改正議定書の署名 平成27年12月11日 外務省

台湾人のつくる『想像の共同体』

過日亡くなったベネディクト・アンダーソンが著した『想像の共同体(原題:Imagined Communities)』は、ナショナリズムの発生過程を紐解き、国民(ネイション)が想像によってつくられた政治的共同体である、と喝破・説明した。

政治的共同体には、過去と現在と未来を均質に貫く歴史的空間が存在している。そして、国語によって語られる神話と物語が国民を涵養する。

しかし、それが単なる想像の産物だと曲解されて、ナショナリズムを否定的に捉える人たちに、あくまでも虚構の存在であると云われる原因ともなった。ナショナリズムを否定する人たちが掲げる主義主張もまた、想像の産物である。

「想像の共同体」著者、アンダーソン氏が死去 2015年12月14日 12時51分 読売新聞

【ジャカルタ=池田慶太】インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストなどによると、ナショナリズム研究の第一人者で著書「想像の共同体」で知られる米国の政治学者ベネディクト・アンダーソン氏が13日、訪問先のインドネシア・東ジャワ州のホテルで死亡しているのが見つかった。

 79歳だった。病死とみられる。

 アンダーソン氏は1936年、中国・昆明で生まれた。米コーネル大でインドネシア研究の博士号を取得し、同大教授を務めた。専門は政治学と東南アジア研究で、開発独裁を進めたスハルト体制を批判し、インドネシア政府から一時退去処分を受けたこともある。


今なぜ台湾で「懐日映画」が大ヒットするのか 2015年12月02日 東洋経済オンライン

台湾では日本統治時代を舞台にした映画が作られ、往時の歴史的建造物の保存が進んでいる。またいくつかの神社を史跡として再建する動きもある。日本を抜きにして、彼ら台湾のアイデンティティを語ることはできないからだ。ただし、この70年前の国民の神話と物語を外省人とその子孫、最近婚姻などで流入してきた支那人は共有していない。

外省人がこの物語をどう受容するか。今のところ、映画の舞台や歴史的建造物の保存などは台湾南部に多い。この地域は本省人が多数派を占めている。この物語は本省人と外省人の分裂の火種になるかも分からない。

また『想像の共同体』が指し示すのは、台湾独立には公用語をマンダリンから台湾語に変更することが必要ということだろう。その時、本省人と外省人の決定的な分裂が到来するのかもしれない。

スペイン二大政党制の終焉

欧州債務危機によってスペインの政治体制に大きな転換期が訪れている。フランコの独裁体制が約40年の命数だったように、王政復古と民主化以降の政治体制は約40年で寿命を迎えた。

フランコ総統の独裁体制(1939年~1975年)の終焉によって、スペインは立憲君主制に移行して、左右両派の二大政党が政権を担ってきた。しかし、まず2014年には民主化を促したフアン・カルロス1世が退位して、フェリペ6世が即位した。また、今回の総選挙では中道右派の国民党、中道左派の社会労働党いずれも過半数を握れなかった。

2015年スペイン下院総選挙結果(定数:350 過半数:176)
国民党(中道右派) 123 -63
社会労働党(中道左派) 90 -20
ポデモス(左翼、欧州懐疑主義) 42 +42
シウダダノス(中道、スペイン統合主義) 40 +40
アン・クー・プデム(左翼、カタルーニャ州) 12 +9
Podemos-Compromís(左翼、バレンシア州) 9 +8
カタルーニャ共産主義左翼(左翼、カタルーニャ独立主義) 9 +6
民主主義と自由(中道、カタルーニャ独立主義) 8 -2
エン・マレーア(左翼、ガリシア州) 6 +6
バスク民族主義党(民族主義、スペイン統合主義) 6 +1
人民連合(左翼) 2 -9
EH Bildu(左翼、バスク州及びナバラ州) 2 -5
カナリア連合(カナリア諸島) 1 ±0

2015年スペイン上院総選挙結果(定数264、改選議席208)
※残る56議席は自治州議会選出
国民党(中道右派) 124
社会労働党(中道左派) 47
ポデモス(左翼、欧州懐疑派) 16
カタルーニャ共産主義左翼(左翼、カタルーニャ独立主義) 6
民主主義と自由(中道、カタルーニャ独立主義) 6
バスク民族主義党(民族主義、スペイン統合主義) 6
アン・クー・プデム(左翼、カタルーニャ州) 4
エン・マレーア(左翼、ガリシア州) 2
Podemos-Compromís(左翼、バレンシア州) 1
Cambio 1
カナリア連合(カナリア諸島) 1
ゴメーラ社会主義グループ 1

スペイン首相、政権樹立へ連立協議入り表明 総選挙受け 2015年 12月 22日 08:03 JST ロイター

スペイン政局高まる不透明感、連立協議難航濃厚に 2015年 12月 22日 04:48 JST ロイター

スペイン株が下落、総選挙受け見通しに不透明感 2015年 12月 21日 18:09 JST ロイター

スペイン総選挙、与党が第1党維持 左派躍進で連立協議は難航か 2015年 12月 21日 16:51 JST ロイター

[マドリード 21日 ロイター] - スペインで20日行われた総選挙は、第1党を維持した中道右派の与党・国民党(PP)が過半数を大きく割り込む一方、左派政党の合計議席も過半数にわずかに届かず、連立協議は難航が予想されている。

複数の政党に票が割れた今回の選挙は、1970年代から続いたPPと社会労働党による二大政党制の終わりを示した。

PPを率いるラホイ首相は同党史上最悪となる選挙結果となったが、引き続き政権を担う考えを表明。マドリードの党本部で支持者に対し、過去4年間の実績に基づいた安定的な政府が必要と強調する一方、政権樹立に向けた協議は「容易ではない」と述べた。

最新の集計結果によると、定数350議席のうち、PPとその連立相手とみなされることが多いシウダダノスを合わせた獲得議席は163議席となり、絶対多数の176議席を大きく下回る見通し。

一方、第2党を維持した野党・社会労働党、反緊縮を掲げるポデモス、元共産党の統一左翼(IU)などの左派5政党の獲得議席は172議席となり、議会の勢力図は左派に大きく傾いた。中でも新興のポデモスが予想外に票を伸ばし、第3党に浮上した。

ポデモスの躍進により、第4党となったシウダダノスとPPによる連立樹立の可能性は低くなった。

ただ、左派政党による連立も、経済政策やカタルーニャ州に認める自治権の範囲をめぐって各党の意見が異なるため、難しいとされる。

スペインの憲法は、選挙後の政権樹立の期限を定めていない。アナリストは、連立協議が数週間続く可能性があるとし、選挙がやり直される可能性も指摘する。

PPによる少数与党政権も理論上は可能だが、選挙で左派が大きな支持を得たことからその可能性は低い。また、PPと社会労働党による大連立の可能性についても、双方が選挙戦ですでに否定している。

シェールガスは暖冬とOPECに敗れるか

米国の独立系シェールガス(シェールオイル)業者が暖冬によって窮地に立っている、というロイター電。原油安競争に巻き込まれても内需中心で回せることが出来るのが強みだったが、その条件が天候ひとつで崩れ去っている。

とは云え、シェールガスで米国国内のエネルギーコストが低下、その恩恵をこうむった製造業のコストも大幅に下がり、支那本土の人件費が上がり続けていて、物流コストや社会福祉コストを含めた米中の生産コスト逆転がもうすぐそこまで来ている。

生産コスト逆転のトレンドに寄与しているのは、工場の機械化・ロボット化である。金融経済化が進む間に熟練工が高齢化して、次世代の育成が難しくなったために、最終的にオートメーション化、ロボット化という解決策を目指すことになる。その場合、工場の立地と採算を最も左右するのは低廉な人件費ではなく電気代となる。

カリフォルニア州とテキサス州で高速鉄道の建設計画があるが、これはガソリン自動車や航空機と違って原油に頼らずにシェールガスで発電した電気を大量消費してくれる安定需要を作り出す必要性と絡んでいる。

また、中国共産党が湾岸産油国から南シナ海・東シナ海に及ぶシーレーンに脅威を与えている。我が国にとっては、2017年から始まる北米産シェールガスの輸入によって、シーレーン分断のリスク分散が図れる。

独立系シェールガス業者の破綻は相次ぐだろうが、シェールガス(シェールオイル)重視のトレンドは変わらないだろう。

米ガソリン平均価格、6年強ぶり低水準に=調査会社  2015年 12月 21日 08:32 JST ロイター

アングル:苦境の米シェールガス業界に暖冬が追い打ち 2015年 12月 21日 14:50 JST ロイター

[21日 ロイター] - チェサピーク・エナジー(CHK.N)をはじめとする米シェールガス開発業者が正念場を迎えようとしている。既に多額の債務を抱え、原油価格下落のあおりを受けて苦闘しているところに、暖冬が到来しているためだ。暖冬によって暖房需要が減退し、天然ガス価格も下落しており、経営環境が厳しいこの局面で収入が急減する恐れが出てきた。

気象情報サービスの米アキュウェザーのシニア予報士、デール・モーラー氏によると、例年12月後半までには、全米の3分の1から半分の地域が雪で覆われるのに、今年は主として人口が少ない中西部の北半分やロッキー山脈周辺に降雪が限定されている。

こうした中でポイントロジック・エナジーのバイスプレジデント、チャールズ・ネブル氏は、米国中のガス田では「どうやって成長するかを考えるどころか、どうやったら生き残れるかの心境にある。そして今は天気のことしか関心が持たれていない」と指摘した。

足元ではテキサス州に拠点を置くマグナム・ハンター・リソーシズ(MHRCQ.PK)とキュービック・エナジー(CBNRQ.PK)が破産を申請。米天然ガス生産第2位のチェサピークは、エバーコア・アドバイザーズと協力して債務再編や資産売却を模索している。

18日にはニューヨーク・マーカンタイル取引所で、米天然ガス価格が100万英熱量単位(BTU)当たり1.68ドルと16年ぶりの安値に沈み、1990年代以降で初めて来年第1・四半期中の受け渡しまでの取引が軒並み2ドルを下回った。

IAFアドバイザーズ・アンド・クライテリオン・リサーチのエネルギーアナリスト、カイル・クーパー氏によると、あと2カ月暖冬が続けば、天然ガス先物は1.25ドルまで下落する可能性がある。これは開発業者にとって採掘コスト割れを意味する。

<減産迫られる事態も>

一方、暖房用の天然ガスが欠かせない地域にとって、この12月はかつてないほど気持ちが楽になりそうだ。アキュウェザーのデータでは、12月前半は暖房が必要な気温に達した日数の割合がシカゴでは毎年平均より36%、セントルイスでは42%少なくなった。

このため先週の米天然ガス在庫は1年前よりも16.4%増加。半面、生産は9月の過去最高水準からわずかにしか減っていない。

MDAウェザー・サービシズの気象予報士ドン・キーニー氏は、過去2回の冬は厳しかったが、今回はエルニーニョ現象の影響で穏やかな状況が続く可能性があるとみている。

来春になっても在庫が減らなければ電力会社の貯蔵スペース不足の問題などで、開発業者は減産に動かざるを得ない。

これまで業者は実際に減産しなくても済んでいた。例えば2002年の暖冬期には、より妙味のある原油開発にシフトしたのだ。

しかし現在は原油先物価格も約6年ぶりの安値となっており、新規油田開発を進めようという意欲も高まっていない。

<ヘッジもままならず>

天然ガスを輸入に頼っているアジア地域などでは価格は米国よりもずっと高い。ただ米国から即座にそうした地域に天然ガスを輸送できるインフラは整っていない。米国産天然ガスの最大5%を消費するまでに成長したメキシコ市場向けにはパイプラインが通っているが、拡張してもそれに見合う需要が出てくるかは不透明だ。

米国内では天然ガス価格が非常に安くなったことで、電力会社による石炭からの切り替えが進み、この面での天然ガス消費が今年過去最高水準(米生産量の35%)になったのは明るい材料といえる。

それでも暖冬が開発業者にもたらしている悪影響の方がはるかに大きい。業者は価格下落からのヘッジもままならずにいるのが実情だ。

コンサルティング会社エナジー・アスペクツによると、独立系上位20社の来年見込まれる生産量に対するヘッジ比率は32%と、過去数年間よりも大幅に低い。

産油国のチキンレースと国家財政の緊縮化

支那の上海株式市場のバブル崩壊が起きて、今後予想されるバランスシート不況、そして生産年齢人口の減少によるデフレの始まり。支那の爆食の終焉によって、ほかのコモディティとともに原油は中長期的な供給過剰と価格の低位安定に陥ろうとしている。

加えて2014年末には、スンニ派の雄サウジアラビアは全方位の原油安競争を仕掛けたと考えられる。2014年6月のピーク時に1バレル約115ドルだった原油価格は1バレル50ドル以下に落ち込んでいる。

産油国の国家財政が均衡するためのブレークイーブンコストはベネズエラが161ドル、イエメンが160ドル、アルジェリアが132ドル、イランが131ドル、ナイジェリアが126ドル、バーレーンが125ドル、イラクが111ドル、ロシアが105ドル、そしてサウジアラビアが98ドルである(シティグループ調べ)とも云われている。

下記CNNの記事では、サウジアラビアの国家財政均衡のためのブレークイーブンコスト1バレル約106ドルとなっている。そして、現状の原油価格と財政規模が続くと、財政緊縮を行わなければ5年以内で資金枯渇に陥るとIMFが警告し始めた、とある。

コラム:原油相場の安定という幻想 2015年 12月 18日 15:00 JST ロイター

サウジなど中東産油国、5年内に資金枯渇か 原油安響く 2015.11.01 Sun posted at 17:16 JST CNN日本版

いわゆる湾岸諸国の採掘コストは、もともと非常に低い。しかし、現在は一定以上の原油相場を前提とした社会福祉に手厚い国家予算を組んでいる。社会福祉を維持しながら、イランとロシアを牽制し、コストの嵩む米国のシェールガス・シェールオイルや再生可能エネルギーを潰すために原油安への誘導を行っている。

とは云え約1年近い消耗戦がつづき、例えると短期資金がショートする恐れが出てきた。消耗戦を止めるか、もしくは国家財政の緊縮を図るかの二者択一が迫られている。

人口密度の高さが銃乱射を引き起こすならば

米国における銃乱射事件の発生比率と人口の相関関係を示すAFP電の記事。

人口2位のカリフォルニア州は1年間で全米ワースト2位となる25件の銃乱射事件が起き、人口3位のフロリダ州はワースト1位の27件。

一方、銃乱射事件が起きていない州は、ハワイ州、ニューハンプシャー州、ノースダコタ州、ウエストバージニア州、ワイオミング州であり、それぞれ人口密度が低い。

つまり、銃乱射事件の横行を防ぐためにはどうするか。

ひとつは人口動態の面からは人口密度を低くする。ひとつは人口密度を低く出来ないならばゲーテッド・コミュニティを形成を促進することだろう。

異なる人種、異なる階層、異なる宗派間の接触を減らして、学校や病院など公共施設の立地もゲーテッド・コミュニティの中で完結させるしかないだろう。

同化による心理的抑圧、人間関係の摩擦そのものが銃乱射とテロを引き起こすならば、集住と隔離を徹底するしかなくなる。

全米で今年、銃乱射ないのは5州 2015年12月13日 17:20 AFP BB NEWS

【12月13日 AFP】銃乱射事件が相次いで発生している米国で今年、こうした事件が発生していない州が5州ある。専門家らは、それが偶然によるものか、それともなにか理由があるのかを議論している。

 銃撃事件の統計を掲載しているウェブサイト「shootingtracker.com」によると、12月2日の時点で、220都市で353件の銃乱射事件が発生し、462人が死亡、1317人が負傷した。

 集計は、4人以上が死亡または負傷した事件を基にしており、カリフォルニア(California)州サンバーナーディーノ(San Bernardino)で今月発生した、夫婦が銃を乱射し14人が死亡、22人が負傷した事件も含まれている。

 銃乱射事件が起きていない州は、ハワイ(Hawaii)、ニューハンプシャー(New Hampshire)、ノースダコタ(North Dakota)、ウエストバージニア(West Virginia)、ワイオミング(Wyoming)の5州。

 さらにウエストバージニア州を除く4州では、同サイトが当局の公式発表ではなく、メディアの報道やその他の情報筋から入手した情報を基にした集計結果を掲載し始めた2013年以降、一件も銃乱射事件が起きていない。

 専門家らは、こうした州で銃乱射事件が起きていない理由の一つとして、人口密度が低いことを挙げている。3880万人と最も人口の多いカリフォルニア州では今年、2番目に多い25件の銃乱射事件が発生。最多となる27件が発生したフロリダ州は、人口1990万人と、全米で人口が3番目に多い州だ。(c)AFP/Shahzad ABDUL

多文化主義の是正と「女性の扱い方講座」

ノルウェーでは、2011年7月に首都オスロとその近郊で、移民推進派の労働党の青年部会を狙った銃乱射・爆破テロが起きている。

このテロに対する反発はあっても、労働党が連立を組む中道左派連合が選挙に敗れ、移民制限を訴える進歩党の属する中道右派連合が政権を獲得した。

こうして、ノルウェーとデンマークはどちらも中道右派の政権が誕生し、難民危機を受けて、さらなる移民制限が行われる。

ノルウェーの議会選挙は他の北欧諸国同様、完全な比例代表制のため、劇的な政策転換は起きない。中道政党を軸とした左右両派いずれかの連立政権が組閣される。そのためか、移民の受け入れ体制は多文化主義に基づかないものに徐々に軌道修正されようとしている。

Norway Offers Migrants a Lesson in How to Treat Women DEC. 19, 2015 The New York Times

国内に設置されている難民センターで、イスラム圏から来た男性の移民を対象に「女性の扱い方講座」が開かれている、とニューヨーク・タイムズが伝えている。

彼らの目には、ノルウェーの女性は売春婦に見える、と云う。こうした認識を持っている結果、移民による強姦犯の比率が高止まりしていることを受けて、ノルウェー社会の風俗に合わせるように教育を始めている。

これがニュースバリューを持つということは、ひとつに多文化主義の名の下にそうした教育をせず隔離しようとしていたがそれが行き詰まったということ、ひとつに人間の欲求を宗教的規範で抑制しようとしたためにその規範と通俗概念が結びついて犯罪を正当化しているということだろう。

明らかにイデオロギーと宗教がいずれも思惑と違う方向に向かっている。少なくとも隔離と同化を併存させつつ、多文化主義の是正が始まった。しかし、当のイスラム的観念は是正できるものであろうか。

ノルウェーの主要政党
【中道右派連合】
自由党・・・リベラル
キリスト教民主党・・・キリスト教民主主義
保守党・・・保守主義
進歩党・・・リバタリアン

【中道左派連合】
労働党・・・社会民主主義
中央党・・・伝統的中道主義
社会主義左翼党・・・社会主義

欧州懐疑派に転向したポーランド

ポーランドでは大統領、上下両院の過半数の議席、政権すべてが中道右派~保守の政党「法と正義」の手に移った。右傾化と欧州連合(EU)に対する懐疑的姿勢が特徴である。

首都ワルシャワで、政権への抗議デモが起きている。デモ隊は、「法と正義」がdemocratorship(民主独裁制)を敷いている、とシュプレヒコールを上げる。ポーランドと欧州連合の旗を振りながら、我々が求めるのは憲法の遵守であって革命ではない、と。

確かに「法と正義」の姿勢と政権運営は、ハンガリーのオルバン政権のようにナショナリスティックであり、EUやNATOとの軋轢を生みかねない。しかし、大統領選、議会選ともに勝利していることは揺るがせない。だからこその党派性を露わにした抗議デモなのだろう。

Thousands march against Polish government as constitutional spat drags on Sat Dec 12, 2015 8:04pm EST Reuters

ポーランドの前政権で外相とEU議長を務めたラデク・シコルスキは、2011年11月にベルリンのブランデンブルクで演説した。それは通貨ディナールの分裂から始まったユーゴスラビア連邦の滅亡を引き合いに出して、通貨ユーロの先行不安から欧州連合の滅亡が起きるのではないか、と危惧して、欧州国民の創生のために改革のスピードが肝要であると説いた。

そして、改革できなかったために政権交代が起きた。

「法と正義」率いる現政権を批判するデモ隊は、前政権が進めた欧州統合の方向性を支持している。しかし、統合を進めるドイツとフランスが、難民危機とテロで混乱に陥っている今、広範な支持を得ることは出来ない。

2015年 ポーランド下院総選挙結果(定数:460 過半数:231)
法と正義(中道右派~保守) 235
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 138
Kukiz'15(ポピュリズム~右翼) 42
. Modern(リベラル~極左) 28
ポーランド農民党(中道右派) 16
ドイツ少数民族党(中道) 1

2015年 ポーランド上院総選挙結果(定数:100 過半数:51)
法と正義(中道右派~保守) 61
市民プラットフォーム(中道~中道右派) 34
ポーランド農民党(中道右派) 1

※ポーランドでは上下両院が同時に総選挙を行う。

“プラハの春”は遠くなりにけり

冷戦後、中欧のポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーはヴィシェグラード・グループ4ヵ国(V4)という地域協力の枠組みをつくった。民主化と市場経済を導入し、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟してきた4ヵ国は、欧州債務危機と難民危機に際して、徐々に利害関係の一致を見出しづらくなっている。

ハンガリーに続き、ポーランドも中道右派~保守の政権に代わった。両国はドイツに対抗する姿勢を強めていくだろう。スロバキアも移民受け入れ枠に反対している。そんな中、チェコはEU諸国で唯一、抗日戦争勝利70周年記念パレードに国家元首を送った。

China and the 'Three Warfares' December 18, 2015 The Diplomat

チェコの対中接近では、中国共産党の三戦(Three Warfares)が効果を挙げている。心理作戦を戦略的に行い、メディアを顕在的・潜在的に使い、戦略や防衛政策や海外における対象者の認識を操作するのが、彼らの三戦のコンセプトである。さらに合法的な買収や便宜供与によって、政策と人事を左右している。

例えば、香港にあるChina Energy Fund Committee (CEFC)の傘下にChina Huaxin Energy Co. Ltd.があり、この企業を通じて大統領府近くの代表的な不動産を購入した。またCEFC会長は、チェコの大統領の公式顧問に選ばれており、チェコの内外政策に影響を及ぼそうとしている。この投資の結実のひとつが、抗日戦争勝利70周年記念パレードへの参加であった。

多文化主義は人種隔離をもたらす

政治学者のジョージ・フリードマンが、欧州の多文化主義の失敗と現在の難民危機への対応失敗は彼らをゲストとして扱ったことにある、と述べている。

もとより、多文化主義そのものが同化を求めていない。ドイツに最初に流入したトルコ系移民はガストアルバイターと呼ばれたのだから。

北欧ではその傾向が顕著に見られる。移民の文化は純粋に保持され、現地民への同化を促す契機はない。加えて現地民側にも受け入れる機運は求められない。つまり、そこには文化を受容する際の葛藤もなければ、そこから生まれる新たな文化の可能性もない。

多文化主義そのものが文化の受容を拒んでいる。究極の寛容が究極の不寛容を生んだのであって、多文化主義とは、人種間の婚姻・交友・会食を拒んだ一種の人種隔離政策だった、と想うのが自然だ。

Merkel, Muslims and the Problem of Multiculturalism Dec. 15, 2015 Geopolitical Futures

多文化主義の失敗と弊害をすでに認識しているドイツやスウェーデンにおいて、文化背景と民度が違う移民と難民は知らず知らずに、事実上のゲットーに追いやられるだろう。フランスのように大真面目に同化政策を採用せず、隔離していくと思われる。現状、それしか経済規模を増やしつつ、社会の安定を保つ合理的方法がない。

隔離という意味では、米国のゲーテッド・コミュニティの形成も同じである。たしかに異なる人種、異なる階層、異なる宗派間の接触がなくなれば社会的な摩擦も起きない。必然、それを解決しようという社会的なダイナミズムも起きなくなる。

むしろ、社会が従前の差別を維持して秩序を安定させるために、多文化主義による隔離を選択したと云える。米国でも公民権運動によって、黒人に選挙権が与えられると同時に多文化主義が提唱されるようになったのだから。

ドイツ経済界は、1990年代に事実上の東ドイツ吸収を経て、ユーゴスラビア内戦の難民を受け入れ、古くは1960年代にトルコからガストアルバイターの受け入れをしてきた。

トルコ系やユーゴ難民、旧東ドイツの人間から成る移民のオールドカマーと、それに対して欧州債務危機と難民危機以降に入ってきた難民と不法移民のニューカマーが対立する構図が生まれるはずだが、ここに多文化主義を導入するとどうなるか。

ムスリムという区分は差異の記号に転化して、トルコ系移民の差別につながる。トルコ系移民及びムスリムを差別することで、ユーゴ難民、旧東ドイツの人間を差別せず、ドイツ社会に受容することができるようになる。

既存の知性に対する反逆者たち

神と直接対話しようとするために既存の知識を詰め込むことは悪い、という観念が米国の宗教的風土と社会そのものをつくってきた。この観念を体現した人物としてのトランプ氏を受容するか、受容しないかで、支持と不支持が分かれているように思われる。

トランプ氏が、共和党の大統領候補の指名レースで首位を走り続けて、約半年が経とうとしている。トランプ氏のポリティカル・コレクトネスを気にしない発言を、メディアが失言として攻撃しているにも関わらず、支持が落ちないことに困惑しているように思われる。

ロイターのコラムニストは、世論調査から高学歴層と低学歴層の対立が反映されていて、「オバマ大統領とトランプ氏は異なる知性を象徴している」と指摘する。

コラム:米大統領選、不動産王トランプ氏人気上昇の理由 2015年 12月 8日 17:03 JST ロイター

このコラムニストは、異なる学歴をバックボーンに持つ異なる知性が何故対立するのかは、掘り下げていない。米国に根強い“反知性主義”に触れないと、この対立は理解できないし、トランプ氏の支持が続くのが理解できない。

“反知性主義”は一言で云うと、既存の知識に対する反逆心を持ち、既存の権威や組織に頼らずに、自らの経験によって新しい知性を獲得しようと欲する人間の心性である。

宗教のリバイバル(信仰復興運動)を繰り返してきた米国にとって、神と対話するためには、インテリのように知識を詰め込むことがマイナスに繋がる、という考え方があって、インテリ然としている人たちに対する反感にも繋がる。

同性婚の容認、国民皆保険制度(オバマケア)の発足などインテリ然としている人たちがリベラル化を進めてしまった結果、“反知性主義”の心性を持った人たちの反感が浮かび上がって、その体現者としてトランプ氏も浮上してきた、と考えるべきではないか。

つくられた“歴史への回帰”とその暴力性

ISIS(イスラム国)がカリフ制の復活を唱えていることについて、歴史を“暴力的”に扱っている、と断じるニューヨーク・タイムズの論評。

The Return of History DEC. 11, 2015 The New York Times

つまり、イスラム教にせよ、仏教にせよ、ヒンドゥー教にせよ、キリスト教にせよ、果てはイデオロギーとしての反日にせよ、近代国家以降のナショナリズムが古い文化を扱うときに、往々にして自己都合で歴史を解釈して利用している構図が明らかになる。

伝統が一度断ち切られたり、歴史的正統性が損なわれたりしたあと(イラクやシリアでは、アラブ民族主義を掲げたバース党の死のあと)に原理主義が台頭したことで、“歴史への回帰”はより観念的で、先鋭的なものになる。近代化の反動、グローバリゼーションの反動が訪れている、とも云える。

こうしてつくられた“歴史への回帰”は、伝統的な価値観を防衛すると云うよりは、縮小していく利権の再分配構造の変化に対応するものになっている。ある意味で、再分配構造を変化させる正統性を“イスラム的”価値観の名の下に求めているに過ぎない。

この“イスラム的”は、それぞれ“仏教的”、“ヒンドゥー的”、“キリスト教的”に代えても構わない。スリランカやミャンマーにおける仏教が内戦下の敵を識別する材料になったように、欧米ではイスラムと非イスラムが敵を識別する材料になるだろう。国民(ネイション)の再編に宗教やイデオロギーが使われている側面もある。

“歴史への回帰”はそれ自体、扱う国民のセンスが問われることになる。国家が社会を変革するために制度設計を行う。社会というものは歴史的空間として存在する。歴史的空間を作り変えるためにはやはり、歴史が必要になる。

作為の契機に歴史の解釈が使われている、と考えるべきであって、イデオロギー的な視野狭窄に囚われると、融通無碍に社会の変革が行えない。むしろ道具としての歴史が暴走する。ニューヨーク・タイムズの論評が語るように歴史を“暴力的”に扱う危険性、歴史の暴力性が存在している訳だ。

合衆国におけるムスリムの運命

カリフォルニア州サンバーナディーノのテロ事件で動揺の奔る米国のムスリム社会には、第二大戦下の日系人と同じ運命が待ち構えているのかもしれない。

米デトロイト近郊にムスリム多数派の市議会 新たな安定探る 2015年12月10日 BBC NEWS JAPAN

米国のイスラム教徒への嫌がらせ激増、ホットライン報告 2015.12.10 Thu posted at 18:33 JST CNN日本版

イスラム教徒入国禁止、共和党支持者で賛否拮抗 2015年12月11日 10:20 JST WSJ日本版

イスラム系団体に不審物=職員ら一時避難、乱射事件背景か-米 2015/12/11-11:18 時事ドットコム

揺れる米国のイスラム教徒「変わる必要あるか」―テロで議論噴出 2015年12月11 日 13:50 JST WSJ日本版

ISが狙う「報復の連鎖」、試される西側社会 2015 年12月11日 14:50 JST WSJ日本版

ムスリムの誰がテロリストなのか、そうでないのか見分けがつかない。誰もがテロリストになる可能性を秘めているとすれば、ほかの国民の疑念や猜疑心を払拭して、良き合衆国国民であることを証明する必要性が生じてくる。

グローバリゼーション=アメリカナイゼーションが反転して、ヒト・モノ・カネの動きが縮小していく、分配する利権が減少していく世界では、属する社会秩序の不穏分子と判断されれば、少ないパイを最大化するため、それだけ排除の論理が働きやすくなり、ポピュリストが発言力を増す土壌が出来る。

共和党の大統領候補としてトランプ氏が首位に立っている。彼がポピュリストとして、ムスリムを排除しようと主張する背景には、縮小する利権とその再分配がある。

自己証明する以外には、合衆国のムスリムは利権そのものを拡大して社会全体への不満を抑えるしかない。しかし今のところ、グローバリゼーション=アメリカナイゼーションと同等の利権そのものの拡大はムスリムには不可能なように思える。

プーチンの東方への“ピボット”は失敗したか

ウクライナ危機が勃発した結果、欧州とロシアを繋ぐ天然ガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設計画が断念・中止された。「サウス・ストリーム」は、黒海からブルガリアに上陸してセルビア~ハンガリー~スロベニア~イタリアを通り、支線がクロアチア、オーストリアに達する予定だった。

「サウス・ストリーム」に代わる天然ガスパイプラインは、ロシアから黒海を経由してトルコに至る「ターキッシュ・ストリーム」で、これをギリシアまで延長して、同国を欧州向けエネルギー・ハブにする計画が持ち上がった。ところが、この代案もシリア内戦を巡るロシアとトルコの対立が激化して、雲行きが怪しくなってきた。

中東の紛争拡大によってウクライナ危機が相対的に落ち着いて「サウス・ストリーム」が復活する可能性、プーチンとエルドアン両国の首脳が代替わりするまで「ターキッシュ・ストリーム」が塩漬けになる可能性、ロシアとトルコ両国を我が国やインドが仲介役になって「ターキッシュ・ストリーム」が復活する可能性などがあるが、短期的には改善は見込めない。

Putin's Pivot East Isn't Working DEC 10, 2015 2:00 AM EST Bloomberg View

(前段省略)

In the meantime, Putin's aggressive foreign policies have closed off other potential sources of growth. Bulgaria, for example, was planning to host the landing of South Stream, a gas pipeline that would have connected Russia and the EU across the Black Sea. As the war in eastern Ukraine escalated, however, Bulgaria blocked construction.

Undeterred, Putin turned to Turkey. South Stream was to become TurkStream. And the Russians are building a nuclear plant in Turkey. But that relationship is in a deep freeze following Russia's bombing of Turkish allies in Syria, and Turkey's downing of a Russian jet. As a result, Gazprom is left holding almost $2 billion worth of TurkStream pipes that can only be used under the Black Sea and billions more in stranded investment costs. Russians will no longer be able to go on vacation to Turkish beaches.

(後段省略)


残るは中露が接近して、エネルギー輸出と貿易の比重を東アジアに“ピボット”することだったが、中共のバブル崩壊が起きてしまい、今後はむしろ貿易の縮小が起きかねない。ロシアの輸出するエネルギーの需要そのものが減っている。

この需要減がロシア含む産油国の運命を左右する。第4次中東戦争で原油価格を武器に使ったサウジアラビアは、これ以降は原油増産・価格低落へと方向を転じた。10年を経ずに、ソ連は原油価格の低落によって、当時の西側からの食糧の確保に行き詰まった。これがソ連滅亡の一因となった。

今回の原油価格の低落によって、体制崩壊の憂き目に合うのはスンニ派の雄サウジアラビアか、シーア派のイランか、それともイスラム原理主義と直接対峙するロシアか。自らのレジーム・チェンジを賭けた消耗戦が続いている。

グローバリゼーションの反作用に捕食されるリベラル

アメリカナイゼーション=グローバリゼーションの反作用として、にわかに台頭してきた欧米社会のポピュリストと、イスラム社会の原理主義過激派は、欧米社会のリベラル勢力を喰らいながら、共に成長している。そして、イスラム原理主義過激派(ジハーディスト)がNATOとロシアの直接対決を避ける大義名分になっている。

Trump’s Anti-Muslim Plan Is Awful. And Constitutional. DEC. 8, 2015 The New York Times

米国のイスラム教徒への嫌がらせ激増、ホットライン報告 2015.12.10 Thu posted at 18:33 JST CNN日本版

イスラム教徒入国禁止、共和党支持者で賛否拮抗 2015年12月11日 10:20 JST WSJ日本版

Manuel Valls warns of ‘civil war’ if National Front wins power December 11, 2015 12:20 pm FT

揺れる米国のイスラム教徒「変わる必要あるか」―テロで議論噴出 イスラム教改革論も浮上 2015年12月11日 13:50 JST WSJ日本版

ISが狙う「報復の連鎖」、試される西側社会 2015 年12月11日 14:50 JST WSJ日本版

[FT]本当の危険はトランプ氏ではなくルペン氏 2015/12/11 16:15 日経

The Return of History DEC. 11, 2015 The New York Times

テロを惹起することでイスラム教徒全体への反感を引き起こし、イスラム教徒の欧米社会への融合は不可能であるという共通認識が拡散して定着したとき、イスラム教徒のアラブ・中東地域への“エクソダス”が発生するかもしれない。それは暴動や内乱、内戦を伴う。

ナチス・ドイツの敗北と滅亡は、ドイツ系住民の追放という形で周辺諸国との間の民族問題を解消させたし、イスラエル建国という形で欧州のユダヤ人差別にひとつの決着をつけた。暴力によって棲み分けがなされた事実は揺るがせない。

この事実を軽視する欧米のリベラルは、我が国のリベラルも同様だが、軍事力による実力行使や経済力による利権分配を適切に行えないがために、自分たちの主張とは真逆の方向に進むことを止められない。

策を講じられないので、反対陣営のポピュリストにレッテルを貼って引き摺り下ろそうとするが、自分たちが実際には非寛容で、しかも無能であることには気付かない。

フランスの内相は、国民戦線が勝利すれば“内戦が起きる”と云っているが、これもまた暴言であろう。フランスは、むしろ第三共和政崩壊前夜のようになっているのではなかろうか。

ムスリム系の移民を欧米社会から排除して、イスラム社会に回帰させるダイナミズムが発生することについては、テロを起こす側と起こされる側の利害が一致している場合もある。

すでにISIS(イスラム国)を大義名分に英国、フランス、ドイツ、米国、トルコ、ロシアが中東の紛争に参加している。冷戦時の代理戦争を戦う国家はなく、ISIS(イスラム国)の存在が列強同士の正面衝突を避ける名分になっている。

リベラルはこうした冷徹な現実に目を向けるべきだろう。

復讐するカダフィ大佐の亡霊

アラブ社会主義の雄、カダフィ大佐は政権の座を逐われる前に
「もしも、私の体制が倒れることがあれば、欧州の海岸に200万人の難民が押し寄せるだろう」
と、発言していたことをBBCが伝えている。

アラブ社会主義衰えたりと云えども、リビアとイラク、シリアの政権を倒したあとにイスラム原理主義の抑えを欧米各国がどう考えていたか、良く分からない。そして、死せるカダフィ大佐が復讐者であるならば、欧州に復讐すると同時にイスラム教徒へも復讐する。

The countries where ISIS finds support, in two charts Dec 5, 2015 1:13 p.m. ET Market Watch

Mourning the death of the 'messiah of Africa' 6 December 2015 BBC

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所はISIS(イスラム国)支持のツイートの多い国の順位表を作成した。上位3カ国はサウジアラビア、シリア、イラク。10位以内に米国と英国が入った。

イラクとシリアの内戦に参加している外国人義勇兵で最も多いのは、ロシアからの2700人、サウジアラビアからの2000~2500人、次いでフランスからの1600人超が続く。

人口100万人当たりのISISの戦闘員の人数では、サウジアラビアの107人は別格としても、ベルギーの46人、スウェーデンの32人、デンマークの27人が目立つ。フランスの18人とトルコの6人の対比で分かるが、欧州のイスラム系移民が戦闘員にリクルートされている実態が明らかになった。

難民危機とパリ同時多発テロ、そして米国のカリフォルニア州サンバーナディーノにおけるテロのダイナミズムが、イスラム系移民の運命をより過酷なものにする。

彼らイスラム教徒の内在的なダイナミズムはどこへ向かうのか。彼ら自身が解決できない以上、欧米社会におけるイスラムへの抑圧的な傾向は高まる一方、リベラルの方法論では彼らを救えずにリベラルもまた崩れる状況が続く、と思われる。

極右が穏健リベラルに見える摩訶不思議

フランスの極右政党、国民戦線(Front National)がパリ同時多発テロを受けて、地域圏議会(Conseil regional)の選挙で票を伸ばしている。これに危機感を抱いたオランド大統領の社会党は、第2回投票で自らの立候補者を取り下げて、サルコジ前大統領の率いる共和党との協力を呼びかけている。

かつて、2002年フランス大統領選では、第1回投票で国民戦線のル・ペン前党首(現在の党首マリーヌ・ル・ペンの父親)が第2位に入り、決選投票に際して、左派勢力がデモと集会を繰り返し、中道右派のジャック・シラクへの投票を呼びかけた。この左右両派の協力をもう一度という訳だ。

焦点:仏主要政党、極右阻止で足並みそろわず 2002年と様変わり 2015年 12月 8日 13:18 JST ロイター

ところが左右両派で足並みが揃わない、とされている。原因のひとつに、国民戦線の世代交代とリベラル化に伴う支持層の変化が挙げられるだろう。

もともと前党首ル・ペンの支持層はカソリックの宗教保守であり、彼も人工中絶と同性愛への反対を掲げていた。しかし、マリーヌ・ル・ペンに代わって以降は、人工中絶と離婚、事実婚を容認し、同性愛に一定の理解を示して、カソリックの宗教保守的なスタンスはなくなり、むしろリベラル化している。

経済政策では、サルコジ前大統領が新自由主義寄りであるのに比べ、中小企業や小規模な農民の保護や女性や若年層の福祉に積極的であり、中道左派から左翼寄りになっている。

つまり、現在の国民戦線はポピュリズム政党であることは間違いないが、極右とレッテルを貼るには、その政策がリベラルすぎるように見える。フランスのリベラルが極端に行き過ぎて、彼らが極右に見えるのだとしたら、日本人は皆、極右に見えることだろう。

「Walls Come Tumbling Down!」から30年

パリ同時多発テロの首謀者のひとりが、ハンガリーへ出向いて難民をテロリストにリクルートしていたことをハンガリー政府高官が明らかにした。

難民危機とパリ同時多発テロを直接結びつけることができれば、ハンガリーが先導してきた難民流入防止フェンスの設置など、ドイツに対抗してきた政策の正しさと、難民の中にテロリストが侵入しているのではないか、という蓋然性が高かったことが証明される。

ガーディアンの記事では、1989年のベルリンの壁崩壊と2015年の難民に対する壁設置を対比しつつ、中欧諸国のキリスト教的価値観(Christianity)が、難民受け入れを拒む心理的障壁として現れており、ユーロ圏もしくはシェンゲン圏の中に欧州債務危機であらわになった南北格差だけでなく、東西格差もあらわになった、と指摘している。

そして格差云々よりも、パリ同時多発テロによって欧州の難民受け入れの機運は一気に萎んでしまった。約3ヶ月程度で政治的潮流が逆転したことになる。

スロバキア政府は、EUによる難民割当を不服として訴訟を起こした。一方で、EUはギリシア政府に難民流入を抑制するように圧力を掛けている。

ハンガリーのオルバン首相は、ドイツとトルコが50万人の難民受け入れの秘密交渉をしている、と非難した。交渉が存在しているとすれば、ハンガリーにはこれを潰す意図があった、と考えられる。

フランス治安当局は、パリ同時多発テロを受けて、複数のモスクを閉鎖した。モスクの捜索でジハーディストの関連文書を発見した。内務大臣は非常時であることを強調しているが、ムスリムの宗教共同体の拠点に政治権力が入ったことは大きい。

壁は崩れ落ちる、と唄っていたスタイル・カウンシルの「Walls Come Tumbling Down!」(1985年)から30年を経た。壁は今まさに再び打ち立てられている。そこに世界の有為転変と、少しばかりの皮肉を感じざるを得ない。

Europe’s walls are going back up – it’s like 1989 in reverse Sunday 29 November 2015 19.44 GMT The Guardian

France shuts mosque, arrests man in crackdown after attacks Wed Dec 2, 2015 10:19am EST Reuters

Slovakia files lawsuit against EU quotas to redistribute migrants  Wed Dec 2, 2015 10:27am EST Reuters

EU presses Greece over migrants, weighs Schengen threat  Wed Dec 2, 2015 6:37pm EST Reuters

Hungary's Orban Says Germany Struck `Secret' Turkey Refugee Deal December 2, 2015 — 7:32 PM JST Bloomberg

パリ同時テロ首謀者、ハンガリーで移民を勧誘か 2015年12月04日 09:57 AFP BB NEWS

【12月4日 AFP】先月起きた仏パリ(Paris)同時テロ事件の首謀者とされるサラ・アブデスラム(Salah Abdeslam)容疑者が、ハンガリーに渡航して同国を通過中の未登録の移民から「グループを採用」していたことが分かった。ハンガリー政府高官らが3日、明らかにした。

 ハンガリーのオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相のヤーノシュ・ラザール(Janos Lazar)首席補佐官は、首都ブダペスト(Budapest)で開いた定期記者会見で、「パリ同時テロの首謀者の一人がブダペストにいた」と述べた。

 同補佐官はこの人物の名前やハンガリー滞在時期、またこの人物に採用された者がパリの同時テロ事件に関与したか否かについては、明らかにしなかった。

 ラザール補佐官によると、この人物はブダペスト東駅(Keleti Station)で「ハンガリー当局による登録を拒否した移民の中からグループを採用した」後、「このグループと一緒に出国した」という。

 AFPの取材に匿名で応じた政府関係者は後に、この人物は同事件の主要容疑者で現在も逃走中のアブデスラム容疑者だと認めた。(c)AFP

2020年のニカラグア運河開通ならず

上海株式市場のバブル崩壊の煽りを受けて、ニカラグア運河の利権を持っている香港ニカラグア運河開発投資公司(HKND Group)は、2016年まで運河の建設着工を延期する、という報道があった。この野心的な計画は当初、2020年までの開通を予定していたが、これが遠ざかっただけではなく計画頓挫の可能性も強まってきた。

Chinese company postpones US$50 billion canal project in Nicaragua as chairman’s personal fortune tumbles Thursday, 26 November, 2015, 2:11pm South China Morning Post

投資グループの香港ニカラグア運河開発投資公司(HKND Group)に対して、ニカラグア運河のファイナンス、設計・開発・建設・メンテナンスから所有・操業管理に関する50年間リースの利権が2013年6月、ニカラグア政府から付与された。

グループを率いるのは、信威通信産業集団(Beijing Xinwei Telecom Technology Group Co., Ltd.)という通信キャリアを経営する王靖(Wang Jing)。しかし、上海株式市場のバブル崩壊の煽りをまともに喰らい、彼の資産時価総額は$10.2 billionから$1.1 billionへと84%急減した。

着工延期は、手元の現金が不足し始めている現状を示している。製鉄所の鉄鉱石在庫投げ売りなども起きている。

アングル:苦境の中国製鉄所、鉄鉱石在庫を投げ売り 2015年 12月 7日 14:42 JST ロイター

さて、ニカラグア運河の建設構想は、中国共産党の“一帯一路”からは外れているが、パナマ運河とその運河地帯の戦略的価値を下げて、ニカラグアに中国共産党の牙城をつくる意味合いは大きい。

もしも実現性を高めたいならば、民間ベースではなく、共産党と国有企業が前面に出て来るべきだろう。

アルゼンチン大統領選で保守派候補が勝利 政権交代へ 2015年11月23日 BBC

ベネズエラ国会議員選で野党連合勝利、大統領が敗北認める 2015年 12月 7日 16:35 JST ロイター

折しも中国経済の減速とともに中南米では、反米を唱える左派のポピュリズム政権が窮地に立たされている。

アルゼンチン大統領選は決選投票まで進み、保守派のマクリ氏が逆転勝利を果たした。また、ベネズエラ議会選はマドゥロ大統領率いる与党が過半数を失った。

彼らの外交的スタンスと経済的利権の分配を支えていた中国向けの輸出と中国からの投融資の減少は、彼らの政権基盤そのものを崩している。

議会から司法の戦い、その機先を制する暗殺

1年間に2度の総選挙を経て、クルド人系政党の国民民主主義党(HDP)の躍進は押し留められることとなった。

6月から11月までの再選挙実施までの間、トルコ南東部のクルド人が多数派を占める地域では、夜間外出禁止令を布告される事態も起こった。

シリアとイラクの国境に近い都市Cizreは、国民民主主義党(HDP)の支持者が殺されたと同党が主張して、緊張状態に陥った。

こうした政治的対立は、丁度、トルコ軍がクルド労働者党(PKK)ほかに対する、シリア領内とイラク領内への越境攻撃を始めた時期と、ISISが起こしたと思われるテロが頻発した時期と重なっている。

Top Kurdish lawyer shot dead in southeast Turkey Sat Nov 28, 2015 3:58pm EST Reuters

エルドアン大統領は、クルド人全般に対する脅威をアピールすることで、政権与党である公正発展党(AKP)の過半数を取り戻した。ハイリスクな賭けに勝利した訳だが、これでクルド人の議会における勢力が後退して、司法における権利擁護の戦いが始まらん、という矢先にクルド人弁護士が射殺された。

トルコ政府は暗殺されたかどうかは不明である、と発表したが、国民民主主義党(HDP)側は抗議デモを呼びかけ、警察が放水や催涙ガスで鎮圧に乗り出した。衝突が起きたディヤルバクルの夜間外出禁止令が出されるととともに、内務大臣と司法大臣は哀悼の意を示した。

こうした対立の背景には、再分配できる利権の縮小がある。

約10年間に渡って、公正発展党の政権を支えた外部要因は、なにより経済成長による再分配だった。しかし、2014年のトルコ経済の成長率は2.9%。失業率は11%前後と過去5年で最悪水準。一方で、2011年の成長率は9%前後だった。

経済が縮小するにもかかわらず、小規模な対外戦争によって、政権を維持しているという点においては、外交的な対立を深めるロシアと同一である。

つまり、トルコとロシアは全面対決に陥ることもないが、シリア内戦における国益追求はあきらめたくない。

ただし、ロシア軍機を撃墜したトルコ側のシリア領内での行動の自由はかなり制約されることになった。ロシアはシリア領内に防空システムを導入し始めた。

トルコとシリアの国境はさらに緊張状態に置かれ、NATOが同盟国トルコを応援する名目でロシアとの間に入った。つまり、トルコの単独行動に制限がかけられる。

トルコが外交的失点を取り戻そうと、内政でも強硬姿勢を採ると悪手になりかねない。ロシアとシリア国内のクルド人勢力の利害は一致している。さらにトルコ国内のクルド人勢力がロシアを引き込む場合は不確定要素が強まるからだ。

トルコ2015年11月総選挙結果(定数 550・過半数276)

公正発展党(AKP、保守・中道右派) 317 ▲59
共和人民党(CHP、中道左派) 134 ▲2
民族主義者行動党(MHP、極右) 40 ▼40
国民民主主義党(HDP、左派・クルド系) 59 ▼21

トルコ2015年06月総選挙結果(定数 550・過半数276)

公正発展党(AKP、保守・中道右派) 258 ▼69
共和人民党(CHP、中道左派) 132 ▼3
民族主義者行動党(MHP、極右) 80 ▼27
国民民主主義党(HDP、左派・クルド系) 80

難民流入の最前線はマケドニアに移る

ハンガリーを筆頭として中欧のカソリック教国の国々が、難民流入防止のフェンス設置など対策を進めた結果、その最前線が正教会を信仰する国家群の国境に押し戻されつつある。

正教会とイスラム教の分断線上にあるマケドニアでは、経済難民禁止に伴い、暴動が発生している。

Police, migrants clash on Macedonia border; soldiers build fence Sat Nov 28, 2015 12:13pm EST Reuters

内戦下にあるシリア、イラクとアフガニスタン以外の難民は不法移民として国境通過を阻止されるようになった。イラン、パキスタン、モロッコなどから来た人々は、当然ながら不法移民に当たるのだが、ひとりのモロッコ人が列車の屋根に飛び乗った際に感電して燃えたことをきっかけに警察との衝突が激化し始めた。

冬の訪れとともに難民流入のピークは過ぎたと考えられるが、重要なのは来年以降、シリア内戦からの難民を抱えるトルコが流出の蛇口を閉めるか否かだろう。欧州連合(EU)は、トルコ国内の難民キャンプへの援助額を30億ユーロ(約3900億円)を支払う。

マケドニアでは今年5月にコソボ出身の武装集団が警察と銃撃戦を行ったばかり。マケドニア国内のムスリムが、非正規兵やテロリストとして活動する可能性もあり、難民キャンプに収容し続けることにも政治的リスクを孕んでいる。

マケドニアは国家としても国民としても民族としても若く弱い。チトー支配下のユーゴスラビアで初めて成立しており、国境線はそのときのものである。歴史に乏しく民族性の弱いマケドニアは周辺国の民族統一運動に巻き込まれやすい。

言語の連関性から大ブルガリア主義に狙われ、歴史の連関性から大ギリシア主義に苦情を入れられ、少数民族の動きは大アルバニア主義に傾く。もちろんユーゴ崩壊の復讐を誓うセルビアも控えている。存続しているのは、これらの国々の緩衝地帯としての価値があるからだ。

大アルバニア主義から、隣接するイスラム教国のコソボが介入しようとする。これに他国のムスリムが加勢する機会と状況が図らずも出来つつある。国家の統一性保持、宗教バランスの維持のためにもムスリムの流入は避けたいところだろう。

人工中絶をテロ攻撃する原理主義者

カリフォルニア州のSan Bernardinoにある発達障害者を支援する医療施設で少なくとも14名が死亡する銃撃事件が発生した。射殺された容疑者はイスラム系の姓名を名乗っており、連邦捜査局(FBI)は、「テロ行為」として捜査を続けている。

米銃乱射事件を「テロ行為」として捜査、イスラム国に忠誠  2015年 12月 5日 10:43 JST ロイター

米乱射で14人死亡、容疑者の男女射殺 FBI「テロ排除せず」 2015年 12月 3日 16:16 JST ロイター

San Bernardino: couple die in gun battle with police after mass shooting Thursday 3 December 2015 11.15 GMT The Guardian

しかし、筆者にはもうひとつ別の事件も「テロ行為」に思われる。

コロラド州で人工中絶を支援する医療施設に宗教右派と思われる容疑者が、関係者を殺傷する事件が起きた。ここ最近、人工中絶された胎児の体組織を研究目的などで取引していることが発覚して、これに宗教右派や彼らを支持基盤とする共和党の反発が強まっていた。容疑者は"no more baby parts"と叫んだ、とロイター電にある。

Planned Parenthood says Colorado shooter opposed abortion  Sun Nov 29, 2015 7:20pm EST Reuters

Suspect in Colorado clinic shooting told he faces murder charge  Mon Nov 30, 2015 8:34pm EST Reuters

以前、連邦最高裁が同性婚に合憲判決を下した2015年6月28日のエントリーでも触れたが、

最も厳しく同性愛に反対するであろう宗教右派は、もはや同性愛者と同じコミュニティに住んではいない。お互いの性愛の嗜好によって棲み分けできるほどの土地は、いくらでも合衆国にはある。それどころか、リーマン・ショック後には人種・民族だけでなく、思想・宗教的相違と冨の偏在を背景とした生活様式ごとに棲み分けられたコミュニティが形成されている。

そして、宗教右派の過激派が妊娠中絶を行う病院や医師をテロ攻撃することがあるが、同性愛者は基本的にこの攻撃に晒されることがない。このため、宗教右派と摩擦が起きなくなっている。

さらに2015年11月27日のエントリーなどでも何度か取り上げているが、

移民したヒスパニックも急速にカソリックからプロテスタントへと改宗しているように、米国のプロテスタンティズムとその原理主義のダイナミズムは健在である。

わずか3年間ほどで約380~400万人がカソリック信仰から離れている。急速な改宗の理由は分からないとされているが、リーマン・ショック後の不況下、人工中絶を選択したメキシコ移民の女性を襲った自我崩壊の危機が一気呵成にカソリックからの福音派への改宗、もしくは棄教して無宗教化を促した可能性がひとつ考えられる。

自我崩壊の危機に晒されたメキシコ移民は男女問わず、中絶を容認しないカソリック的な精神世界に属しながら、中絶をせざるをない現実世界に直面したという精神的乖離に伴う自我の動揺を克服するためには、社会的自我を中絶容認か中絶反対のどちらかに合わせることで精神的自我を安定させる必要があり、そこから無宗教かプロテスタントになる選択肢があった。

同性婚の合憲判決、ヒスパニックの棄教と改宗、人工中絶医療施設へのテロ、すべてプロテスタンティズムとその原理主義のダイナミズムの作用と反作用によっている。

ジブチの奇妙な呉越同舟

中国共産党とその人民解放軍は、初の海外基地をジブチに設置するため、ジブチ政府と交渉を始めている、と同国の報道官が答えている。

2009年以降、ソマリア沖の海賊に対処するため、彼らも軍事作戦を継続しており、彼らの基地は米軍がドローン攻撃に使用している空軍基地の近隣に作られるものと予想されている。

China to set up 1st overseas naval base in Djibouti next to US airbase 27 Nov, 2015 10:29 RT

以前、2014年7月26日のエントリーなどにも書いたように、

自衛隊初の恒久的な海外基地がジブチにはあり、その基地にテロ・治安情報要員を常駐させることになった。大使館には防衛駐在官も派遣されており、同国をシーレーン上の要衝として強化させようとする政府の姿勢は継続している。

ジブチは、エリトリアとソマリア、エチオピアに囲まれ、対岸にイエメンを望む紅海の出入り口、アデン湾に面した港湾を持つ海洋戦略上の要衝である。紛争多発地帯に浮かぶ孤島のような存在だ。エリトリア独立後、内陸国となったエチオピアにとっては唯一の海の出口ともなる。

周辺地域の紛争を抑えるだけの陸軍を持つエチオピアに、中継貿易国家として活路を見出そうとするジブチ、これに油田を擁する南スーダンを政治経済的に連結する担保としてジブチに駐留する自衛隊を含む各国軍は存在価値を持ち得る。沖縄が日本の繁栄を担保する安全保障の要石であるのと同じだ。

同じシーレーンを使っているがゆえに、中共との戦略的対立が南シナ海で起きているが、ここでは奇妙な呉越同舟の状況になりそうだ。

3度目のインティファーダ、絶望深く

最近2ヶ月の間、イスラエルとパレスチナ双方の犠牲者が合計100名を超える暴動が散発的に続いている。

2015年10月17日のエントリーほかでも取り上げたように、

スンニ派とシーア派の戦いは、実のところ、イスラエルとスンニ派諸国の利害を一致させるに到っている。

パレスチナ自治政府は、複数の国際組織でのオブザーバー加盟が認められるなど、外交上の成果を重ねているが、これとてガザ地区とヨルダン川西岸地区に分かれるパレスチナ人の日々の暮らしにとっては、民生の向上に繋がる訳ではない。

むしろ内戦が起きている国々の影に隠れて、アラブ・中東地域において、パレスチナは二次的な問題に落ちつつある。

イスラエルは、パレスチナ人の就労や流入を防ぐ、「分離壁」とでも云うべきフェンスを設置してきたが、このフェンスを導入し始めたハンガリーなど中欧諸国にとっては、イスラエルの非情な措置は手本として見習うべきものとも云える。

しかし、ムスリム人口が多く都市近郊などに分散しているフランスは、内戦から帰ってくるテロリストの居住地をフェンスで囲い込むところまでは出来ない。

Israeli military warns violence could go on for months and risks getting worse Thursday 26 November 2015 06.45 GMT The Guardian

一方、囲い込まれたパレスチナでは突破を試みる抵抗が始まっている。

イスラエル軍高官の話では、平日で平均15回、週末に平均40回の暴動が発生している。そのほとんど、約95%は組織的ではなく単独犯行であり、若年層の失業者など、将来に展望がなく追い詰められた一匹狼型の性質を有している。

例えば、ハサミを持って攻撃を試みたパレスチナ人の女学生に、10発の弾丸を撃ち込んで制圧する、といった事例も起きている。

すでにインティファーダが始まっている、と思えるが、イラク~シリア~イエメンの内戦のニュースバリューに比べて、欧米の興味を引くところは少なく、スンニ派勢力の支援も利害の交錯から限定的なものになる。つまり、それだけ絶望の深い、長い長い抵抗が続くことになる。

対テロ戦争に同調できない中国共産党

2015年11月29日のエントリーで取り上げた、マリの首都バマコのホテルにおけるテロでは、中国人も被害に遭っている。ISISに殺される中国人の人質も出てきた。

原理主義と過激派の回廊が、新疆ウイグル~旧ソ連圏のチュルク系国家~トルコ~隣接するシリアのISIS(イスラム国)支配地域に生まれつつある。

タイの首都バンコク郊外にあるヒンズー教寺院エラワン廟で起きたテロは、タイを経由してトルコに亡命するウイグル人を送還する措置をタイ政府が取り始めたことに、ひとつの原因があった。

これに対応する中国共産党のテロリスト掃討作戦では、洞窟に追い込んだテロリストの家族ごと火炎放射器で焼き払い、生き残った者たちも射殺した、と報じられている。常識的にウイグル人の独立闘争の激化を招くだろう。

しかし皮肉なことに、報復を狙って、原理主義と過激派の回廊からテロリストが襲来する、としても彼らのこの回廊地域に対する積極的政策は、我が国と同様に投融資による“一帯一路”の戦略に限られているのだ。覇権国として台頭しようとする意欲はあっても、軍事的展開能力や政治的力量は米露や英仏に及ばず、我が国同様、発展途上にあるということを示している。

China forces used flamethrower to hunt Xinjiang 'terrorists': PLA newspaper NOV 23, 2015, 6:49 PM SGT The Straits Times

ISIS: Chinese Hostage 'Executed' November 19, 2015 The Diplomat

What Is China's Plan for Fighting Global Terrorism? November 27, 2015 The Diplomat

中国の敵は「イスラム国」より少数民族 パリの同時テロ受け 撲滅口実に監視強化か 2015.11.27 06:15 産経ニュース

中国新疆で子供や女性11人の殺害情報 米政府系ラジオ 火炎放射器使用か 2015.11.25 21:01 産経ニュース

 米政府系放送局ラジオ自由アジアは25日までに、中国新疆ウイグル自治区アクス地区で9月18日に起こった炭鉱襲撃事件に関わった「テロリスト」として中国当局に殺害された28人の中に、11人の子供や女性が含まれているのではないかとする現地住民の話を伝えた。

 また中国人民解放軍の機関紙、解放軍報も25日までに、特殊部隊が「テロリスト」が隠れ込んだ山の洞穴の中に火炎放射器の炎を吹き付け、逃げ場を失った十数人が刀やおのを持って向かってきたところを射殺したと報じた。「十数人」は殺害された28人の一部とみられる。中国当局は事件を「国外の過激派組織の指揮を受けたテロ」としているが、実態が分かっていない。

 同放送局が現地住民らの話として伝えたところによると、「テロリスト」とされているのは5~6家族で、子供や女性は家族の男性と一緒に逃亡していたとみられる。(共同)

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