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フィリピン、哨戒機運用のプロセス始まる

日本とフィリピンの間に防衛装備品及び技術の移転に関する協定が締結された。2015年6月と10月に開催された日本-フィリピン首脳会談では交渉開始(6月)~大筋合意(10月)に達していた。

これに併せて、フィリピン海軍にTC-90練習機が貸与される方針が固まった。

TC-90の貸与は南シナ海のシーレーン防衛強化の一環。すでに2015年1月末に日本-フィリピンの防衛協力に関する覚書が交わされており、両国間の防衛装備品及び技術移転協定の締結もその流れにある。

国防相級、次官級、幕僚級の会談を積み重ねて、共同訓練の実施や防衛装備品の供与を行い、フィリピン海軍が対潜哨戒が出来るようになるまでは、日本-フィリピン間の訪問部隊地位協定を締結した上で、南シナ海における哨戒活動の一部を海上自衛隊が担当するケースも出てくると考えられる。

2015年6月27日のエントリーにあるように、フィリピンはP-3C対潜哨戒機を調達したい、と公式に表明していた。フィリピンへの供与もしくは売却は中長期的には既定路線であろう。

しかし、日米ともに新型のP-1とP-8の運用開始は2013年からであり、生産配備を前倒ししないと、すぐにフィリピンの希望を叶えることはできない。また、短期的にはフィリピン海軍の能力向上が見込めない。

将来的にはP-3Cの払い下げすることなどを見越した上で、TC-90を貸与することになった、と思われる。この練習機にレーダーを搭載して、水上艦艇の目視偵察に充てることになるだろう。

韓国からFA50戦闘機導入したフィリピンの事情…性能限定、レーダー未整備でも満足? 安倍首相にも「泣きつき」 2015.12.1 17:03 産経ニュース

日本とフィリピンが防衛装備品協定に署名-ASEANで初 2016/02/29 19:51 JST ブルームバーグ

海自機、比海軍に貸与へ…南シナ海の監視に利用 2016年02月29日 03時12分 読売新聞

政府は、退役した海上自衛隊の練習機(航空機)「TC90」をフィリピン海軍に貸与する方針を固めた。

 フィリピン側は、中国による南シナ海での海洋進出の動きに対し、空からの警戒・監視に利用する。日・フィリピン両政府は、今春にも貸与で合意する見通しだ。

 フィリピン海軍が警戒・監視に利用する航空機は、行動半径が約300キロと狭く、「中国が進出する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島全域を監視して戻ってくることは難しい」(政府筋)という。フィリピンは南沙諸島のスービ礁、ミスチーフ礁などで中国と対立しており、広範囲で活動できる航空機を求めていた。

 TC90の行動半径はフィリピン軍機の2倍以上で、南沙諸島の大半をカバーできるという。練習機であるTC90には、レーダー類などがほとんど搭載されておらず、フィリピン海軍が当面、目視による警戒・監視に利用するとみられる。


参考URL:
日・フィリピン防衛装備品・技術移転協定の署名 平成28年2月29日 外務省
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ドイツ帝国の滅亡に学ぶ中国共産党

中国は、陸軍国が海軍国としても両立しようと努力して失敗したフランス、ドイツ、ロシア(ソ連)の事例をどう乗り越えていくつもりなのか?

ナショナル・インタレスト誌の論説は、中国共産党の海洋進出を第1次大戦前の英国とドイツの建艦競争から教訓を得ている、と述べた。ナショナル・インタレスト誌は、ネオコンの創始者アーヴィング・クリストルによって1985年に創刊された。

China's World War I Master Plan to Take on the U.S. Navy February 28, 2016 The National Interest

ドイツ帝国は、将校を輩出するユンカー(プロイセンの土地貴族)のためにロシアからの農作物に対して保護関税を掛け、それを元手として関税に不満を持つ産業資本家(クルップ家など)のために英国に対抗しうる建艦競争を繰り広げる。国内の利害関係者はそれで収まるかもしれないが、諸外国に対しては配慮のない機会主義に基づく外交の結果はドイツ包囲網であった。

当時の大英帝国も最初はドイツとの提携を望んだが、日英同盟から日露戦争とその勝敗の結果、英仏協商と英露協商とそれぞれ勢力圏における妥協が成立して、ドイツは孤立することとなり、二正面作戦(シュリーフェン・プラン)を余儀なくされ、その作戦も徹底できず、フランスを最初期のうちに撃破できなかったことが帝国の滅亡につながった。

ドイツ帝国を学んでいるという中共は、必ずしも自国のシーレーンに対する包囲網形成を阻害できていない。

オバマ政権初期にG2(アメリカと中国)体制の構築を唱える論文が、アメリカのシンクタンクCFR(外交問題評議会)の発行する雑誌フォーリン・アフェアーズに掲載されていたが、現状はむしろ逆の米中対立のコースへと向かっている。

米ソの冷戦と同じ状況になったとして、中共はかつてのソ連と同様に自らの足を引っ張る同盟国しか持ち得ない以上、封じ込め戦略を採られた場合、長期的に勝利はあり得ない。ロシアの向背が大きく左右することになるだろう。さらに中共にソ連と同様の自制心が期待できるかわからない。

ウクライナ危機以降の経済制裁などで反目と対立を深める一方で、シリア内戦においては妥協を図る米露と同様に、米中が反目と妥協を行えるか否か。もっともその妥協が、我が国とそのシーレーン線上の諸国を犠牲にして成されるのは避けねばならない。

半抜けブレグジットで迎える国民投票

ベルギーの首都ブリュッセルに集まった欧州連合(EU)の首脳たちは、英国のキャメロン首相が求めていた改革案について、2月18日から19日にかけての30時間に及ぶ交渉の末、EUと英国の間で合意を成立させた。これを受けて、英国は6月23日にEU残留を問う国民投票を実施することも決定された。国民投票は、2015年の総選挙で2017年末までに行うと公約されていた。

ドイツ人の73%が「英国のEU残留は重要」=世論調査 2016年 02月 19日 20:19 JST ロイター

英国のEU残留、全会一致で支持=トゥスク大統領 2016年 02月 20日 08:57 JST ロイター

英首相が6月23日の国民投票実施を表明、EU残留への支持呼びかけ 2016年 02月 21日 16:07 JST ロイター

キャメロン首相が求めていた改革案は大筋で認められた。トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)は英国をEUに繋ぎ止めることを優先したと発言しており、大幅な譲歩がなされた。

1. ほかのEU諸国からの移民に対する社会福祉の制限
移民が著しく増加した場合、最大4年間福祉サービスの受給を制限できる。また、移民の子息が英国国外に居住している場合、その児童手当をその国の物価水準に合わせて減額できる(ただし2020年までは現行水準)。

2. 国家主権の委譲を伴うEUのさらなる政治的統合の不参加
欧州共同体設立条約前文にある「限りなく連合体に近い(ever closer union)」について、英国は適用除外されることを明記する。

3. ユーロ圏と英国間の相互不干渉
シティー及び金融政策に対する規制強化を認めない(ただし、セーフガード措置であり、完全な拒否権ではない)。また、ユーロ圏内で危機が発生しても英国及びその他の非ユーロ圏の加盟国は救済措置に加わらない。

キャメロン首相はこれらの合意を「特別な地位が認められた」とする。しかし、英国の主権を優先する欧州懐疑派にしてみれば、主権が制限されていることに違いはない。

一方、野党の労働党ジェレミー・コービン党首はキャメロン首相が結んだ合意は間違っているが、EU残留そのものは正しいとしている。

残留支持・離脱支持双方にとって、EU離脱(Brexit=ブレグジット)は半抜け状態にあるというべきだろう。この状態で国民投票を迎える。

Cameron Challenged by Johnson as London Mayor Backs ‘Brexit’ February 22, 2016 — 2:06 AM JST Bloomberg Business

Cameron’s deal is the wrong one: but Britain must stay in Europe Saturday 20 February 2016 18.18 GMT The Guardian

主権を重く見る欧州懐疑派は、早速EU離脱を表明し始めている。

大ロンドン(金融街を有するロンドン・シティーではない)のボリス・ジョンソン市長、マイケル・ゴーヴ司法大臣、グレイリング院内総務が離脱キャンペーンに加わった。ほかには極右の英国独立党党首ナイジェル・ファラージ、極左のリスペクト党党首ジョージ・ギャロウェイが離脱を唱えている。

孤立主義に回帰する合衆国

“戦後レジームからの脱却”が成就した世界は無秩序に陥る。覇権国の国力が交差する、特に生産供給力で交差するとき、戦争の危機が訪れる。その危機を利用して、“戦後レジームからの脱却”以降のレジームで自国の優位な立場を作ろうとしているのが我が国、現在の安倍政権である。

覇権国の国力が交差せんとする、今まさに共和党と民主党双方の大統領候補にモンロー主義(伝統的な孤立主義)へ回帰する動きが見られる。

保守系のアメリカン・コンサヴァティブ誌は民主党の大統領候補、自称社会主義者のサンダース上院議員が最も孤立主義の傾向が強いと断じる。共産主義から転向したネオコンが共和党の外交軍事政策を左右したように、民主党でもねじれ現象が起きつつある。

A 2016 Foreign Policy Report Card February 25, 2016 The American Conservative

また、共和党の大統領候補、資本主義の権化であるトランプ氏は1980年代の日米経済戦争の頃の対日観を以ってジャパン・バッシングを行っている。もとより平均的な米国人の北東アジアの認識においては日本も韓国も中国も同じであるが。

トランプ氏のジャパン・バッシングを批判するナショナル・インタレスト誌は、経済と軍事の両面において日本は競争者ではなく同盟国である、と指摘する。この関係は1990年代以降の日米経済戦争が続くなかで行われた日米安保の再定義の成果と云える。

Trump Shouldn't Bash Japan February 25, 2016 The National Interest

中国共産党の台頭と合衆国の覇権縮小によって、“日本株式会社”の再興及び日本に有利な形での新しいレジーム形成の機会が訪れている。

以下、2015年11月26日のエントリーの再掲となる。

日米もし戦うとすれば、大陸政策で対立・激突したときに限られる。これは我が国が先の大戦で学んだことだ。

1980年代の日米経済摩擦を経て、1989年の冷戦終結と天安門事件を境目にして、当時は日米経済戦争が現実の弾丸に取って代わるのではないか、と結構真剣に考えられていた。あの当時の空気感を一言で云えば表すには『ザ・カミング・ウォー・ウィズ・ジャパン』という表題の本が出版されていたことで理解できるかもしれない。

現在の中国の繁栄は、その日米資本主義の決戦における両者の廉価な労働力の供給源として見出されたからに他ならない。この補助線として、1980年代当時の我が国では、単純労働と特殊な技能労働の給与水準に大きな差がないことの方が問題とされたことを忘れてはならない。

危惧されていたのは、その抗争のさなかにかつての日英同盟の破棄同様、日米安保条約が破棄されるかもしれない、ということだった。米国側の一部は“ビンの蓋”論を提唱したし、日本側の一部は“自主防衛”を提唱した。実際は日米安保の再定義が両者の決定的破滅を防いだが。

もちろん、我が国の日本型資本主義(いわゆる“日本株式会社”)は、バブル崩壊と金融ビッグバンとバランスシート不況、デフレを経て、大きくその様相を変えた。

製造業は資本財や基幹部品で競争力を維持しつつ、航空宇宙・原子力などインフラ部門でも米国にキャッチアップしてきた。また、脆弱とされたメガバンクなど銀行セクターの自己資本比率の強化、所得収支の黒字化、知財やソフトウェアのサービス収支の改善など、より強靱さを増した。

引き換えに多くの社会的代償(永続的な雇用関係の破壊や自殺率の上昇、出産率の低下)を支払ったし、その点では米国の勝利と云えなくもない。

しかし、中国のGDPが世界第2位となり、米国への挑戦者として浮上してきたことは我が国にとっても“日本株式会社”再興の契機でもあるのだ。強靱さを維持したまま、それが達成出来るならば、これを利用しない手はないだろう。

イスラエルの相対的優位はいつまで続くか

ストラトフォーの設立者ジョージ・フリードマンは、周辺諸国が暴動・革命・内乱・内戦・介入などで疲弊する一方で、イスラエルの戦略的優位性がこれまでになく増しているとした。しかし、内戦が終結するなどして、周辺諸国の秩序が回復した場合には優位性が一挙に覆される脆弱性を有している、と論じる。

Israel’s Strategic Vulnerability Feb. 25, 2016 Geopolitical Futures

スンニ派とシーア派の戦いは、実のところ、イスラエルとスンニ派諸国の利害を一致させるに到っている。

Israel May Have Found a ‘Solution’ to Palestinian Knife Attacks JANUARY 5, 2016 - 4:02 PM Foreign Policy

パレスチナ自治政府は、複数の国際組織でのオブザーバー加盟が認められるなど、外交上の成果を重ねている一方で、ヨルダン川西岸地区とガザ地区双方で、若者による“ナイフ・インティファーダ”が2015年9月以降続いている。

2015年12月3日のエントリーで触れたように、

イスラエル軍高官の話では、平日で平均15回、週末に平均40回の暴動が発生している。そのほとんど、約95%は組織的ではなく単独犯行であり、若年層の失業者など、将来に展望がなく追い詰められた一匹狼型の性質を有している。例えば、ハサミを持って攻撃を試みたパレスチナ人の女学生に、10発の弾丸を撃ち込んで制圧する、といった事例も起きている。

一匹狼型の性質から“個別のインティファーダ”("Intifada of the Individuals")、台所にありそうな凶器で犯行に及んでいることから “ナイフ・インティファーダ”("Knife Intifada")と呼ばれている。

内戦が起きている国々の影に隠れて、アラブ・中東地域において、パレスチナは二次的な問題に落ちつつある。また、内戦の副産物となっているテロリストの発生と難民の流入によって、イスラムフォビアが急速に拡まっていることから、インティファーダを行うパレスチナ人は欧米世論の支援も期待できなくなっている。

裏返せば、周辺諸国が介入するシリア内戦やイエメン内戦が収拾されて、その矛先が再びイスラエルに向かうとき、その戦略的優位性は失われると、ジョージ・フリードマンは指摘する。

ヘッジファンドVS中国共産党、3兆ドルの攻防戦

中共の外貨準備高の減少=資本逃避が続いている。2014年には1343億ドル、2015年には約1兆ドルが流出した。外貨準備高は、2015年1月には995億ドル減って、3兆2300億ドルとなった。

この急速な資本逃避は、約25年間続いてきた新興国への資本投下から、今後約25年間は続くと思われる先進国への資本還流の始まりだろう。

中国外貨準備は12月末3.33兆ドル、減少幅が月間・年間とも過去最大 2016年 01月 7日 20:15 JST ロイター

中国の外貨準備高、大幅減少続く 1月末995億ドル減 2016/2/7 20:14 日経

中国の資本流出が止まらない…1年間で1兆ドル! ソロス発言で元売りドル買いがさらに加速か? 2016.2.9 08:00 産経ニュース

資本逃避に抗する選択肢は資本勘定を厳格化するか、人民元切り下げを容認するかのいずれかと見られている。

人民元が切り下げられると見越して、著名なヘッジファンドのマネージャーが人民元をショートしている。ダボス会議で中国のハードランディングは不可避としたジョージ・ソロスほか、スタンレー・ドラッケンミラー、カイル・バスが挙げられる。

ソシエテ・ジェネラルによれば、国際通貨基金(IMF)の指針では中共が円滑に輸出入や対外債務の返済を行うには2兆8000億ドルの外貨準備が必要とされる。現在の推移では約半年でこの水準まで落ち込む。

一方、香港上海銀行(HSBC)のアナリストは理論上2兆ドルで充分とするなど、見方は様々だが、外貨準備の中身に流動性があるかでも変わってくる。外貨準備高3兆ドルのラインが心理的限界と指摘するアナリストもいる。

また、資本逃避は爆買いでも起こり得る。ソシエテ・ジェネラルのアナリストの試算によれば、全人口の約5%に相当する6500万人がそれぞれ国内から上限5万ドルを引き出した場合、2014年12月末の外貨準備高3兆3000億ドル(約398兆円)が消え失せる。ソシエテ・ジェネラルは中共は資本規制を導入する、と見ている。

習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 2016.1.9 10:00 産経ニュース

中国は恐らく資本規制を導入、外貨準備高が世界最大でも-ソシエテG 2016/02/02 15:53 JST ブルームバーグ

焦点:急減する中国外貨準備、いつ限界水準に達するか 2016年 02月 24日 14:38 JST ロイター

では、人民元をショートする側はどう見ているのか。

ヘイマン・キャピタル・マネジメントを創業したカイル・バスは、リーマン・ショックで米国の銀行が負った額よりも大きい額が不良債権となり、銀行のバランスシートが毀損して、資産を失えば、政府が救済せざるを得ず、人民元を増刷して人民元の切り下げに繋がると見ている。

Kyle Bass: China banks months away from ‘danger territory’ Wednesday, 3 Feb 2016 | 2:25 PM ET CNBC

中国の銀行が被る損失、サブプライム危機時の米銀の4倍超-バス氏 2016/02/11 14:09 JST ブルームバーグ

ドルとペッグしていた人民元は、2005年以来50%も上昇した。一方、中共の銀行の総資産は10倍に膨れ上がった。10年前に2兆9000億ドルだったのが、現在は(簿外を含めて)34兆5000億ドル余りにまで膨れ上がった、とカイル・バスは試算する。

簿外だった資産運用商品が破綻し始めており、銀行のバランスシートに戻されているが、貸し倒れを隠すために信託受益権を利用している。

しかし、スタンダード・アンド・プアーズによれば、1兆ドル相当に問題が生じている。これが表面化したとき、バランスシートが毀損した銀行を救済するために人民元を増刷する必要が生じ、人民元の対ドル相場を30%余り切り下げる圧力となるかもしれない、とカイル・バスは指摘する。

フィリピンの世襲される“ポーク・バレル”

フィリピンの副大統領選では、1986年のエドゥサ革命によって逐われたフェルディナンド・マルコス大統領の子息、バンドン・マルコス(フェルディナンド・マルコス2世)上院議員が世論調査で首位に立った。

Marcos Family Resurgent as Bongbong Gains in Philippine Race February 23, 2016 — 9:17 AM JST Bloomberg Business

同国では大統領選挙と副大統領選挙が同時にかつ別々に行われるために、ランニングメイトのいずれかが落ちて、それぞれの候補がたすき掛けで当選して、正副大統領が著しい政治対立に陥ることがある。

2001年、弾劾が成立して辞任したエストラーダ大統領の後を承けて副大統領から昇格したアロヨ大統領が好例。そのアロヨ大統領も任期満了後の2012年に公金流用の疑いで逮捕・起訴されている。

フィリピンは“ポーク・バレル(樽詰めの豚肉)”と呼ばれる利益誘導型の腐敗政治が盛んである。利権を再分配するための政治的地盤を守るために、縁故者が政治的要職を占めることが多い。副大統領に名乗りを上げたバンドン・マルコス上院議員はフェルディナンド・マルコス大統領の出身地、北イロコス州に地盤を有している。

マルコス大統領の20年間続いた政権の腐敗を受けて、大統領と上下両院(元老院と代議院)議員、州知事の多選禁止が定められた。大統領は任期6年で再選禁止、上院議員は任期6年で3選禁止、下院議員は任期3年で4選禁止、とそれぞれ決まっている。この多選禁止による議席の喪失を回避するために、父母兄弟姉妹ほか親戚で議席をたらい回しにする。

例えば、北イロコス州の代議院第2区は1998年以降、フェルディナンド・マルコス大統領の縁戚だけで占められている(従兄弟や甥を含めるとそれ以前から独占)。長女のアイミー・マルコス~長男のバンドン・マルコス~妻のイメルダ・マルコスと続いている。そして、彼らは下院議員から州知事や上院議員に鞍替えして、政治的地盤を堅守する。

このように革命や弾劾、逮捕・起訴で逐われても、縁故者が立候補して当選させることで、その政治的地盤は失われることがない。エストラーダ大統領はマニラ首都圏のサンフアン市に地盤を有しており、弾劾後に上院議員を妻、長男、次男が務めている。逮捕・起訴されたアロヨ大統領の二人の子息も同様に下院議員を務めている。

生活水準に遜色なし、とメキシコ人が云う

ピュー・リサーチ・センター(ピュー研究所)は、メキシコを経由する合法・不法移民の実態を伝えている。

以前の2015年11月27日のエントリーで述べた通り、

ヒスパニック、特に米国に在住するメキシコ移民が減少すると同時に、米国からメキシコへ帰国する元移民が増加している。

この背景にはリーマン・ショックによって住宅を手放したヒスパニック、リショアリングによって製造業がますます盛んになっているメキシコ国内の事情がある。

ヒスパニック系はサブプライムローンの主要顧客でもあった。住宅を手放さず、米国に留まったヒスパニックは急速にカトリックからプロテスタントに改宗している。

5 facts about Mexico and immigration to the U.S. FEBRUARY 11, 2016 Pew Research Center Fact Tank

メキシコは南部国境に接する中米諸国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)からの不正移民を、2015年には約15万人強制送還している。

こうした強制送還の執行が増えているにも関わらず、2015年10月1日から2016年1月31日までに2万4616世帯と、親などの同伴者のいない子供2万455人が米国-メキシコ国境を越境した。

子供の単身入国については、保護された時点で合法的な移民に変われるので、戸籍を売買した可能性もある親権者が名乗り、合法的に入国しようと図り、社会問題となっている。

しかし、キューバ~メキシコ~米国と不法越境するキューバ人は2015年では4万3159人と中米諸国からのそれよりも多い。

他方、メキシコ人の米国移民は減少している。1995年から2000年の間では約294万人ものメキシコ人が米国へ流入した。

しかし、リーマン・ショック以降ではメキシコ~米国よりも、米国~メキシコへ帰還するヒスパニックの方が多くなった。2009年から2014年の間に約100万人のヒスパニック系米国人が帰還する一方で、不法合法問わず米国への移民は約87万人に留まった。

移民減少については、米国とメキシコの生活水準は同じである、という認識が広がっていることが、その背景にある。2015年、成人に達しているメキシコ人の33%がメキシコの暮らしは米国と遜色ないと答えており、2007年の23%から上昇している。

止めどない不法移民の流入を防ぐために移民の出先を豊かにして、予め社会の不安要因を取り除く意味合いでは、我が国が支那本土や東南アジア諸国に投融資し、米国がメキシコに投融資したことは、欧州が難民危機に見舞われている一方で相対的に正しかったと云える。

空母打撃群の代わりに洋上原発と人工島を

中共では、2020年までに洋上原発を建設して運用開始する、という計画が持ち上がっている。これは人民解放軍が提唱する、“接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)”の戦略を補完する目的として考えれば良い。

空母打撃群を整備・運用出来ない人民解放軍にとっては、その代替策となり得るのが洋上原発と人工島の組み合わせである。洋上原発によって、人工島に安定した電力と淡水を供給できるようになれば、その運用を強化できるからだ。

焦点:東シナ海で日本版「A2AD」戦略、中国進出封じ込め 2015年 12月 18日 12:53 JST ロイター

China’s Curious Dream of Floating Nuclear Plants on the Ocean FEB 17, 2016 Singularity Hub

彼らの戦略目標は、南シナ海のプレゼンスを強化し続けて、そのプレゼンスの排除が政治的にも軍事的にも困難であると思わせることによって、彼らの主張する“接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)”の軍事的境界線を拡張させて、近隣諸国に認めさせることにある。

「航行の自由」作戦は、このプレゼンスを無効化するために彼らの主張する人工島の領海・領空・防空識別圏を航行・飛行する。

2015年6月14日のエントリーで述べたように、

中国共産党が南シナ海で埋立を進めている人工島に滑走路や港湾を建設して、航空機や艦船の運用を開始した時点が戦争の阻止限界点になるだろう。おそらく2016年までには運用開始できる、と予測される。

人工島の埋立が第1段階、港湾などの建設が第2段階、艦船などの運用の開始が第3段階と、次第にエスカレートしていくが、周辺各国は復仇の原則に従って、同様に岩礁の埋立や港湾の建設や民間人の移住を進める。

現在審議されている安保法制の眼目は、南シナ海のシーレーン防衛のために集団自衛権が必須だという点にある。筆者は2015年の世界情勢を1939年のそれに近似する、と比定している。

すると、来たる2016年は1940年となる。日米戦争の阻止限界点として仏印進駐が挙げられるが、人工島の運用開始は中共VS日米豪・ASEANの阻止限界点として後世、挙げられるかもしれない。

“一帯一路”、テヘランと浙江省を連結する

中国共産党が推進する“一帯一路”構想の一環として陸路、浙江省義烏市からの貨物列車がテヘランに到着した。中共はここ6年連続でイランの最大貿易相手国となっている。

China Deepens Its Footprint in Iran After Lifting of Sanctions JAN. 24, 2016 The New York Times

TEA LEAF NATION China’s New Grand Strategy for the Middle East JANUARY 26, 2016 Foreign Policy

First freight train from China arrives in Iran in 'Silk Road' boost: media Tue Feb 16, 2016 4:25am EST Reuters

“一帯一路”は、新疆ウイグル~中央アジア~トルコ~ロシア~ドイツまでを陸路で結ぶ“シルクロード経済ベルト”と、スリランカ~パキスタン~ギリシア~ベルギーを海路で結ぶ“21世紀の海上シルクロード”との二つの構想から成る。

大陸国家の支那としては中国共産党の“一帯一路”のうち、“シルクロード経済ベルト”が主、“21世紀の海上シルクロード”が従となるはずだ。これに対して海洋国家の我が国としては“自由と繁栄の弧”が主、“ユーラシア・クロスロード構想”が従となる。

南シナ海が紛争状態に陥り、シーレーンが寸断された場合、中国共産党にとって“シルクロード経済ベルト”はまさしく生命線となる。

サウジとイランの消耗戦は続く

2014年10月~12月にサウジアラビアが仕掛け始めた原油価格低落による消耗戦は、未だデフォルトに陥る産油国やエネルギー企業がないまま続いている。

サウジアラビア、ロシア、カタール、ベネズエラの主要産油国4ヵ国は、原油生産の増産を凍結する、と条件付きで合意したものの、シーア派のイラン・イラクや米国のシェールガス・シェールオイル業者は合意に加わらないため、原油価格の低落を抑えるだけの実効性が欠けていた。

主要産油4カ国の減産合意に至らず、北海ブレントが約4%下落 2016年2月17日(水)11時09分 ニューズウィーク日本版

核合意に基いて制裁解除されたイランでは、独仏の企業などが大いにリスクを取りに行っている。ただし、安保理決議2231号では制裁解除のほか、改めてミサイル、武器の禁輸が定められている。イランと独仏の間の大型契約は当然、原油輸出が担保となっており、イラン側は増産傾向を強めるだろう。これでは産油国の減産どころか増産凍結に関する合意も無理だろう。

German Chancellor to pay upcoming visit to Iran Jan. 18, 2016 The Iran Project

Truck maker Daimler signs agreement to return to Iran Mon Jan 18, 2016 10:11am EST Reuters

Factbox: Companies rush to Iran as sanctions are lifted Tue Jan 19, 2016 5:42am EST Reuters

また、米国のシェールガス・シェールオイル業者も油井数を減少させているものの、油井1本あたりの生産性を高めて、生産量は横這いどころか増産させている。

つまり、イノベーションの進展に伴って、シェールガスの生産コストは順次下がっている。業者間の競争で倒れるところも出てくるだろうが、対する産油国の社会福祉コストも下げなくてはならなくなり、政治的な波瀾が起きる可能性も高まる訳だ。

参考URL:
イランの核問題に関する国際連合安全保障理事会決議第2231号に基づく措置の履行 平成28年1月22日 外務省

カトリックと正教会の敵は原理主義とリベラル

バチカンのフランシスコ教皇とロシア正教のモスクワ総主教の共通の敵は、アラブ・中東のイスラム原理主義と西欧で脱宗教化を進めるリベラルであって、彼らは保守的な宗教勢力として反撃の狼煙をキューバで挙げた、と考えられる。

これは1054年以来の東西教会の分裂を修復したものと見るよりも、教皇ヨハネ・パウロ2世(在位1978年~2005年)が1989年の東欧革命を扇動して、1991年のソ連崩壊を促進して、欧州の共産主義を滅ぼした流れと同様、 クリスチャンフォビア(Christianophobia)に抗する動き、と見るべきだろう。

この反撃に失敗すると、バチカンは中南米へとシフトせざるを得ない。史上初のイエズス会出身、南米出身としても初のフランシスコ教皇がローマ教皇となった意味では背水の陣に例えられるのかもしれない。

Joint Declaration of Pope Francis and Patriarch Kirill 12/02/2016 23:00 Vatican Radio

Pope meets Orthodox patriarch but reunion of churches unlikely, Tokyo priests say FEB 13, 2016 The Japan Times

グローバリズムを体現してきたはずのカトリックや正教会が、他のグローバリズム的な勢力に押しまくられる形で共同戦線を張っている。ここに北米の福音派も加わるだろう。

欧米各国で同性婚が合法化されていくなか、伝統的な婚姻や家族などの価値観を訴えるカトリックや正教会、福音派は共通の利害関係を持っている。

しかし、左右両派が急進化していく中で、穏健なグローバリズムという立ち位置は難しく思える。

キリスト教への嫌悪と脱宗教化は西欧と米国のリベラル以外にも広がりつつあり、フランスの国民戦線は極右と称されているが、同性婚を容認するまでになっている。国民戦線はもともとカトリック的な価値観を持っていたにも関わらず。

また、中欧諸国のカトリックやウクライナなどの東方典礼カトリックは、難民危機やウクライナ危機に際して、当然ながらナショナリズムへ傾き始めている。

Austria switching to 'plan B,' fortifying borders against refugee influx Published time: 16 Feb, 2016 20:50 RT

難民危機に関しては、カトリックの多いバイエルン州やオーストリア、スイスなどのドイツ語圏が難民・不法移民の流入規制を始めている。

キューバとシリアにおける米露協調

中南米のキューバにおいて、フランシスコ教皇とロシア正教会の総主教が会談を行った。バチカンでもなく、モスクワでもなく、ましてや福音派のいる米国の何処かでもなく、選ばれた場所はキューバであった。そこに何らかの政治的意図や水面下の政治的働きかけが隠されているのではなかろうか。

米国とキューバの国交を回復させる橋渡し役となったバチカンは、米国の資本流入を助けて、社会主義のラウル・カストロ政権を打倒して、“カリブの春”を演出するのではないか、と筆者は考えていた(2014年12月26日のエントリー参照)。

現在のロシア連邦は共産主義でも社会主義でもない。プーチン政権とロシア正教会との関係は良好と云って良い。バチカンはオバマ政権(~ケリー国務長官)とプーチン政権との橋渡し役にロシア正教会を使ったのではないか。その傍証として、キューバにおけるカトリックとロシア正教会の会談から類推したい。

シリア内戦の和平交渉に見られる米露協調と同様に、キューバの現体制維持に関する米露協調も存在していて、ラウル・カストロ政権は続くもの、としよう。

シリアにおける協調の必要性から、キューバにおける協調も派生したのかもしれないし、もともと連携していたのかもしれない。そして、この協調にはオバマ政権だけが関与していて、議会の多数派を占める共和党や国防総省などは関与していない、と思われる。

Pope meets Orthodox patriarch but reunion of churches unlikely, Tokyo priests say FEB 13, 2016 The Japan Times

カトリックとロシア正教会をつなぐ接点のひとつは、内戦下のシリアの正教会と東方典礼カトリックの悲惨な境遇にある。シリアでキリスト者が生存するためにはアサド政権の庇護下に入らざるを得ない。

ISIS(イスラム国)は彼らを容赦なく虐殺するか奴隷にするであろうし、アサド政権に抗するムスリムもまた原理主義に傾くし、クルド人も勢力範囲を拡げるために他の民族集団と宗教集団を弾圧・追放する。

現状最も自国民を殺して、難民の境遇に追いやっているのはアラブ社会主義を掲げるアサド政権に間違いはない。しかし、その無慈悲さは政権に反対する者には宗派の別なく平等にもたらされる。つまり、この無慈悲な平等にしか宗教的多様性が存在しないところにシリア内戦の度し難さが表れている。

米露はアサド政権の存続について対立しているものの、ISIS(イスラム国)の打倒では一致している。アサド政権もしくはその後継となるであろうアラブ社会主義政権をカトリックとロシア正教会が擁護せざるを得ない以上、オバマ政権とプーチン政権にその旨を働きかけしている、と見るのが自然であろう。

大統領選よりも連邦最高裁判事の指名争いを見よ

立法府(上下両院)と行政府(ホワイトハウス)の対立が続き、法案は通らず、大統領令が濫発され、機能不全に陥っている米国政治にあって、唯一政治的主導権を持っているように思われるのが、連邦最高裁である。

2012年6月のオバマケアの合憲判決(2012年7月6日のエントリー参照)、2015年6月の同性婚の合憲判決(2015年6月28日のエントリー参照)など、決定的な役割を果たしている。

その最高裁の判事、アントニン・スカリア氏が死去した。最高裁判事は終身であり、ときの大統領が指名して上院が助言と同意(承認)すれば、一生涯、その任を務める。スカリア氏は1986年に当時のレーガン大統領によって任命されて、在任期間が30年となっていた。

死去したスカリア氏を含めて、現在の最高裁は定員9名の内保守4名、リベラル4名の同数、中間派1名となっていた。宗教的にはカソリックは6名、ユダヤ教は3名。いずれの大統領が任命したかについては、レーガン大統領がスカリア判事を含めて2名、ブッシュ・シニア大統領が1名、クリントン大統領が2名、ブッシュ・ジュニア大統領が2名、オバマ大統領が2名となっている。

スカリア米連邦最高裁判事が死去、後任人事は難航の公算 2016年02月14日 10:03 AFP BB NEWS

当然、共和党は保守系の最高裁判事を指名・承認したいと考えている。リベラル系の判事がオバマ政権のうちに指名されることには抵抗するし、承認もしないだろう。定員9名の内リベラル5名、保守3名、中間派1名となった場合、リベラルによる法の支配がやってくることは間違いないからだ。左右問わず極端な候補が大統領になり、立法府と行政府の対立と機能不全が続く可能性も捨てきれない以上、大統領選よりも連邦最高裁判事の指名・承認の方が重要かもしれない。

和平か継戦か、内戦の鍵を握るトルコとクルド

トルコ軍は同国国境に隣接するシリア北部のMenagh空軍基地に砲撃を開始した。

トルコ大統領「血の海をもたらす」米のクルド支援に激怒 2016.2.11 00:53 産経ニュース

この空軍基地は、シリアのクルド人政党である民主統一党(PYD)の戦闘部隊クルド人民防衛隊(YPG)及び共闘するシリア民主軍(SDF)が、イスラム原理主義過激派から奪取したもの。トルコ政府はYPGとクルド労働者党(PKK)は連携していると見做している。トルコのYilmaz国防相は「YPG及びSDFがMenagh空軍基地から撤退しない限り攻撃を続行する」と述べた。

Syria conflict: Turkey shells Kurdish militia 13 February 2016 BBC

もともとトルコにはシリア北部に安全地帯をつくる構想があったが、シリア内戦へのロシア介入で頓挫し、さらにロシアと事実上の共闘関係にあるクルド人勢力によっても、実現を阻害されてきた。

ロシアの持ち込んだ防空システムはシリア北部からトルコ東部をカバーしており、この関連でロシア軍機の撃墜事件にもつながり、両国の対立を深めていた。

Detailing Russian Forces in Syria 3 November 2015 RUSI Defence Systems

トルコ政府はこれを契機にMevlut Cavusoglu外相を通じて、自国とサウジアラビアがシリア北部に地上軍を投入することを検討している、と発表した。また、サウジアラビア国防省は、トルコ国内のインジルリク空軍基地を使用して、シリア爆撃に乗り出す。名目上、有志連合の形を借りながら、NATOの領域内にアラブ・中東各国の軍が入る先例になる。

Syrian Kurds form new political alliance, call for federalism as solution to ongoing civil war February 14, 2016 ARA NEWS

さらに、シリアにおける5つのクルド人勢力は、新たに“Kurdish National Alliance in Syria”という同盟をつくり、シリアに連邦制国家を導入するよう要求する、と新しい同盟のスポークスマンが述べた。

Syria: The winners and losers are becoming clear in this war Sunday 14 February 2016 Independent

米露が中心となってシリア内戦の和平会議を開催するさなか、トルコとクルド人勢力の両者が波瀾要因になっている。

日米欧は技術的特異点を超えられるか

FRBの利上げを見越した投機的資本が一挙に引き揚げられたために、中国経済と人民元の先行き不安=ハードランディングの恐怖が一気に増してキャピタル・フライトが止まらない。

中共が“爆食”を担っていたコモディティの需要は減り続け、価格下落の直撃を喰らう産油国は安全保障と社会保障の予算を維持するため、ソブリン・ウェルス・ファンドを取り崩す。にも関わらず、産油国を代表するロシアやサウジアラビアの周縁部では紛争が収まる気配がない。

新興国経済が総崩れになって、資本還流を受ける日米欧の経済も彼らの不調に巻き込まれる形で成長鈍化に陥ろうとしている。

そして、欧州系の銀行は偶発転換社債(CoCo債)を発行して、投信に組み込み販売して、一般投資家にリスク移転を図った。これは全世界的に家計の悪化をもたらす可能性がある。

と、同時に資本還流が続く先進国経済には投下される資本に見合う成長が果たせるか、それを産み出すイノベーションが起こせるか、イノベーションによって変化する社会構造を支える予算を捻出できるか、その予算の捻出に国民的合意がなせるか、かなりの難問が降りかかってくるだろう。

What’s Going On in the Markets? 5 Theories to Explain the Chaos Feb. 10, 2016 11:58 p.m. ET WSJ

中国の銀行が被る損失、サブプライム危機時の米銀の4倍超-バス氏 2016/02/11 14:09 JST ブルームバーグ

ドイツ銀のCoCo債保有者、リスク移転の当局の意図にやっと気付く 2016/02/11 18:10 JST ブルームバーグ

コラム:問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債 2016年 02月 12日 18:04 JST ロイター

2016年のドイツ銀行が2008年のリーマン・ブラザーズと同じ役割を担うのか、という懸念もある。が、より本質的には冷戦終結以降、約25年間続けられていた先進国から新興国への資本投下が終わり、資本還流が始まったために混乱が始まっているのではないか。経済成長に見合ったイノベーションが日米欧に起きるかに、世界の安寧が懸かってくるように思われる。

この世界の安寧と大きな関わりを持ってくると思われるのが、イノベーションがもたらす技術的特異点(シンギュラリティ、Singularity)という概念であろう。数学者ヴァーナー・ヴィンジと人工知能の権威レイ・カーツワイルは、2029年までに人類と同じレベルの人工知能が生まれ、2045年までに技術的特異点が訪れる、としている。

「技術的特異点」を恐れてはいけない理由と恐れるべき理由[2014/1/16] Social Design News

この概念が実現する際の衝撃は社会構造と政治的機構、あるいは宗教思想や通俗的習慣などの大幅な変革を余儀なくさせる。

グローバリゼーションの進展に伴って、先進国から新興国に向けて資本が投下されてきたが、2014年から資本の還流が始まり、2015年には$735 billionが新興国から先進国に還流した(Institute for International Finance調べ)。

新興国への資本投下が約25年間続いたように、先進国への資本還流も四半世紀続くのではないか。還流する資本の力はイノベーションを促進して、技術的特異点に到達して、先進国と新興国の文明の差を埋めがたいものにするだろう。

超法規的アウンサンスーチーと“位打ち”

ミャンマーの民主化運動の旗手だったアウンサンスーチー女史は「(次期大統領は)自らに権限がない」「大統領より上の存在になる」と発言して、自ら憲法典(第58条の規定)を無視する発言を行ってきた。

この発言の背景には外国籍の配偶者や子供がいる者は大統領になれない憲法の規定がある(第59条)。もちろんこの条文は国軍が仕掛けている。

さらに憲法改正(第436条の規定)には、人民院と民族院の二院制から成る連邦議会のそれぞれ定数75%以上の賛意を必要とし、かつその議会には25%の国軍指名枠の議員(第141条の規定)が存在するため、アウンサンスーチー女史が大統領になる道は予め塞がれているからである。

国民民主連盟(NLD)はアウンサンスーチー女史の大統領就任を阻む憲法規定を一時停止させる法案を提出する準備ではないか、との憶測が囁かれている。

規定の一時停止であれば、議会の4分の3以上の賛成が必要な憲法改正ではないため、議席の25%を割り当てられている国軍が事実上の拒否権を発動できないからだ。

Myanmar speculation mounts over Suu Kyi 'president move' 8 February 2016 BBC

当然、己の地位を高めたり、得たりすることが民主化とは直結しない。アウンサンスーチー女史は超法規的な存在への道をひた走っている。対する国軍はクーデターを考慮するだろうが、もう一つの可能性としては国民民主連盟(NLD)の議員やロヒンギャを除く少数民族勢力と手を結び、女史に対して、“位打ち”を仕掛けることだろう。

女史の政治的失敗を待つか、大統領権限を骨抜きにするか、その過程で大統領の意思決定を通さない政治が横行するかもしれない。

結局、アウンサンスーチー女史がミャンマーの民主主義への移行プロセスと、民主主義の健全な育成を阻害することには変わりなさそうだ。

独立クルディスタンの狂瀾が始まる

内戦続くイラクとシリアの混乱の間隙を突いて、イラク北部に自治政府を持つクルド人は2016年11月までに独立の是非を問う住民投票を行うと、自治政府のトップであるバルザニ議長が発表した。

クルド独立投票「11月」 自治政府トップが意欲 2016.1.28 12:17 産経ニュース

独立問う住民投票表明 クルド自治政府トップ 2016.2.4 11:33 産経ニュース

独立するクルディスタンの領域が恒久的にイラク北部までで抑えられるのか否か。クルド人が少数民族として居住する各国(トルコ、シリア、イラン)などと同意できれば、敵はイラク政府だけになるかもしれない。しかし、そんなに容易く事が運ぶとも思えない。

確かに、イラクのクルディスタン地域は自治権を獲得している。また、シリアのクルド人も事実上の自治領域を維持している。

イラクのクルド人は、事実上の国軍であるペシュメルガを組織しており、ISIS(イスラム国)と対峙している。米国はイラク北部に潜伏するクルド労働者党(PKK)をテロ組織と認定しているが、ペシュメルガには軍事支援を行っている。イラク国軍や比較的穏健とみられるイスラム民兵組織への支援が失敗したことを事実上、認めている米国にとって、ペシュメルガへの支援増大は選択肢のひとつと見られている。

米国と同じNATOの一員であるトルコ政府は、PKKとシリアのクルド人政党である民主統一党(PYD)と、その戦闘部隊クルド人民防衛隊(YPG)は連携して行動している、と認識しており、トルコ-シリア間の国境からISISの戦闘員がリクルートされていくのを徹底的に取り締まらず、半ば黙認していた。この政策の反動が現在のトルコ国内のテロ頻発を招いている。

シリア内戦において、YPGとその他のクルド人勢力はアサド政権と戦いつつ、ほかの民兵組織とも戦っている。この状況は運命が暗転したときにはクルド人の独立・自治最大の懸念点へと繋がっていく。内戦に介入しているロシアとシーア派(イラン、ヒズボラなど)の尻馬に乗る形で、むしろアサド政権以外の勢力を攻撃していることは何より憎悪の対象となる。

アムネスティの発表によると、シリアのクルド人政党PYDと戦闘部隊のYPGは占領した領域に居住するクルド人以外の民族・宗派の人々を強制的に追い出している、という。これが事実ならば戦争犯罪にほかならない。シリアのクルド人は自治権獲得後の領域内の不安要素を排除するため、文字通り異なる民族の排除に乗り出している。

トルコの態度硬化は目に見えており、これがトルコ国内のクルド人の政治的動静と、イラク北部のクルディスタン独立にも悪影響を及ぼすだろう。

2015年6月と11月、トルコでは総選挙が行われた。定数550の議会において、クルド系の左派政党・国民民主主義党(HDP)はそれぞれ80議席、59議席を獲得している。クルド系トルコ人はトルコ国民として被選挙権と選挙権を行使している。つまり、テロ組織として認定されているPKK以外のクルド系トルコ人は目立って迫害されていない、と云える。

以前、渋谷にあるトルコ大使館前でトルコ人とクルド系トルコ人の間に騒擾があった。これは在外者投票のために両者が集まっていたためで、クルド系トルコ人は決定的に政治から排除されていない証左となる。また、この騒擾に関係して、トルコ系クルド人の政治家が本国から来日していたことも、国内の政治的対立とその激化はあっても、完全な政治的排除まではされていないことを示している。

埼玉県蕨市に難民申請しているクルド系トルコ人が多数居住して“ワラビスタン”などと呼称するメディアもあるが、トルコ系クルド人の政治家が往来できる以上、難民申請そのものが根底から覆されるのではないか。

彼らは蕨市で街を巡回するボランティアを組織して、地域社会に貢献しているようだが、これは警察権を否定する一種の自警団になりかねない。街を巡回するボランティアが自警団になり、さらに暴力集団に変わる可能性も皆無とは云えないだろう。

また、イラク北部がクルディスタンとして独立して、なおかつ各国が承認した場合、難民申請しているクルド系トルコ人はどうするのだろう。彼らはトルコ国民(ネイション)であり続けるのか、それともクルド人のアイデンティティを優先するのか。独立クルディスタンの狂瀾はトルコ~シリア~イラク~イランの紛争をさらに複雑化させるに違いない。

労せずして南シナ海に進出するインド海軍

今後1年以内に米海軍とインド海軍が南シナ海を共同パトロールするため、両国の国防関係者が協議していることをロイター電が伝えた。中共の人工島が稼働するのとほぼ同時期にインド海軍が南シナ海に進出する、と思われる。インドは中共のおかげで外交的抵抗を受けずに、むしろ感謝されながら、勢力を拡大できる。

Exclusive: U.S. and India consider joint patrols in South China Sea - U.S. official  Wed Feb 10, 2016 10:53am EST Reuters

インド洋では日米印の合同演習が常態化しつつある。しかし、インドは第三世界の雄として今まで他国と合同の軍事行動は取らず、国連の旗の下で活動してきた。

2015年12月、インドの国防相Manohar Parrikarは、ハワイにある太平洋艦隊司令部を訪れた際、合同パトロール案を打ち出した。対する国防総省のスポークスマンBill Urbanは、「(米国とインドは)海上安全保障の領域をも含めて、防衛協力を深化させる方法を模索し続ける」と述べた。

この合同パトロール案が実施されると、南シナ海でも日米印の合同演習の可能性も開ける。豪州、フィリピンなどの参加も見込まれるだろう。「航行の自由」作戦の一環と考えることも出来る。やはり、中共の人工島が稼働する時点が戦争の阻止限界点であろうが、ますます中共は引けなくなっている印象だ。

手遅れの“魚蛋革命”

旧正月に賑わう香港の繁華街、旺角(モンコック)で警官隊と群衆が衝突する騒ぎが合った。路上で「Fishball」「魚蛋」と呼ばれる食べ物を商う屋台が排除されたのをきっかけにして、投石や放火、群衆の逮捕や流血が起きる事態となった。

本土派號召300人旺角撐小販 警開兩槍 2016年02月09日 蘋果日報

'Fishball Revolution' Creates Chaos on Hong Kong Streets During Lunar New Year Fest February 9, 2016 | 6:05 am VICE News

香港警察与抗议者爆发冲突 2016.02.09 14:50 VOA

「Fishball」「魚蛋」とは、魚肉の練り物でつみれやさつま揚げを連想すれば良い。ツイッターのタグには#FishBallRevolutionや#魚蛋革命が現れ、ストリーミング映像も配信されていた。しかし、オキュパイ・セントラル(中環)から雨傘革命の流れが頓挫して、大富豪の李嘉誠氏が「奔香投欧」(香港から奔走して欧州に投資する)して、香港から財産の自由を支える要素はなくなった。

また、銅鑼湾書店という独立資本の書店の関係者が続々と行方不明となり、香港から言論・出版の自由が無くなったこともあり、屋台を巡る乱闘が革命に直結する要素は見られない。

確かに支那の伝統には、統治者は民衆の直接行動に弱いという点がある。天安門事件などで弾圧し放題な例に気を取られがちだが、2011年8月に遼寧省大連市の化学工場の撤去、2011年10月に浙江省湖州市のミシン税導入の撤回などの事例がある。

ただし、屋台の営業ごときは賄賂で解決するのが支那人の流儀であるし、'Fishball Revolution'や“魚蛋革命”というのは気休めや戯れにしかならない。

合衆国の民主主義の終わり

黒人を除外することで白人の平等を達成して合衆国の民主主義は実現した、とエマニュエル・トッドほか多くの識者が指摘したように、肌の色そのものが差別を規定しており、公民権運動やアファーマティブ・アクションも最終的には差別を解消することはなかった。

下記のBBCの記事にある通り、白人と黒人の棲み分けは21世紀の今、むしろ徹底されている。この棲み分けの静かなる進展は、戦争による強制的な住民交換と同じ効果を持っている。

Why don't black and white Americans live together? 8 January 2016 BBC NEWS

How American democracy sustains racial inequality February 5 2016 Washington Post

オバマ大統領の任期8年が経とうとしているが、白人優位と黒人劣位の構造は変わっていない。この構造が合衆国の民主主義と密接不可分の関係にある以上、税制による所得再分配を通じて、人種差別を解消しようという福祉国家への道も険しいものとなる。この所得再分配への抵抗は我が国で言えば、高年齢層と若年層の対立として浮かび上がる。バーニー・サンダース上院議員の台頭はその文脈から読み取りやすい。

“社会主義者”のバーニー・サンダース上院議員が大統領になり、よしんば所得再分配が可能になるならば、逆説的に合衆国の民主主義は終わる、ということでもある。

The sexist double standard behind why millennials love Bernie Sanders February 4 2016 Washington Post

2 Questions for Bernie Sanders FEB. 4, 2016 The New York Times

Home-Field Advantage Is Only Part of Sanders's Appeal in New Hampshire February 8, 2016 — 10:15 PM JST Bloomberg Politics

サンダースを熱狂的に支持する若者たちは、民主主義を信じていない 2016年2月9日(火)18時32分 ニューズウィーク日本版

(一部抜粋)

 民主主義は崩壊しつつある。ハーバード大学のロベルト・フォアとヤスチャ・モンクが先ごろ発表した研究によると、政治や選挙についてだけでなく、民主主義そのものに対する失望が広がっているのだという。

 これは世界的な傾向だが、アメリカの若い世代でとくに顕著だ。1980年以降に生まれたアメリカ人で、民主主義国家に暮らすことが大切と答えた人の割合は30%に満たない。1970年以降に生まれたアメリカ人では、民主主義を「悪い」あるいは「非常に悪い」とした人が5人に1人を超える。1950年から1970年の間に生まれた人と比較してほぼ2倍の割合だ。

ナイジェリア、再びのビアフラ戦争は来たるか

石油の生み出す富が分離独立の夢を育み、内戦を引き起こし、最後は飢餓によって滅んだ例として、ビアフラ戦争(1967年~1970年)の悲劇が挙げられる。ナイジェリアから独立を画策したビアフラ共和国の経済的基盤はニジェール・デルタに湧き上がる原油だった。

40年前に終結のナイジェリア「ビアフラ戦争」、教育現場はいまだに「腫れ物にさわる」扱い 2008年05月22日 19:13 AFP BB NEWS

ニジェールと同じ語源を持つナイジェリアは北部にムスリム、南部にキリスト教及び土着信仰と分かれている。

アフリカ大陸での摩擦と紛争の多くは、マグレブ(アラブ系・ムスリム)とサブサハラ(ブラックアフリカ・キリスト教及び土着信仰)の分断線上で起きている。この例に洩れずナイジェリアもまた、国内に分断を抱えている訳だ。

そして、石油の富が、その分断を再び内戦に変えるのではないか。原油価格の下落は利権分配の原資そのものを減らし、分配を巡る政治的闘争は伏在している部族・宗教対立の激化へと容易に結びつくからだ。

ARGUMENT Nigeria Is Coming Apart at the Seams FEBRUARY 8, 2016 Foreign Policy

2015年4月2日のエントリーで取り上げたが、

2015年3月末、ナイジェリアの大統領選が実施されて、南部出身で当時現職のジョナサン大統領が落選した。新大統領となったムハンマド・ブハリ氏は北部出身のムスリムである。ナイジェリアの大統領は慣例として南北出身の大統領が交互に選出されてきた。

しかし、ジョナサン前大統領とその支持者の不満はくすぶり続けている。また、北部ではイスラム原理主義過激派のボコ・ハラムが健在である。

中共のバブル崩壊~原油価格の下落~FRBの利上げ~新興国から先進国への資金還流が始まっている。世界の貿易が縮小することで、新興国に原油を輸出してきた産油国ナイジェリアは危機に瀕しようとしている。

南北の部族対立・宗教対立、前年の大統領選に見られる利害対立、ボコ・ハラムの跳梁跋扈、ビアフラ戦争の遺恨、これらが原油価格の下落に従って噴き出すことになる。

“ボリバル革命”という共同幻想

チャベス前大統領の“ボリバル革命”が呪縛となって、ベネズエラのマドゥロ政権はここ2年世界で最も悲惨な経済という不名誉の中でもがいている。原油の50~60%を米国に輸出しながら、それを原資として国家予算の40%を社会福祉に回してきた。

原油価格が1バレル50~120ドルで高止まりしていた時期(2005年~2014年)は、チャベス政権が2002年のクーデターを乗り越えて相対的に安定した2期目(2004年~2007年)、全盛期の3期目(2007年~2013年)、任期半ばで倒れた4期目(2013年)と重なっている。

この外的要因を自らの功績と考えたかどうかは知らない。しかし、極左の“ボリバル革命”を打倒するカウンターとしての軍部はチャベス政権時にクーデターに失敗して、代替となりうる政治勢力が弱まっている。軍部が再度、クーデターなり何らかの打開策を見出さない限り、ベネズエラは“ボリバル革命”という共同幻想の中で緩やかに死んでいく。

These Are the World's Most Miserable Economies February 4, 2016 — 7:00 PM JST Bloomberg Business

与党・ベネズエラ統一社会党(PSUV)が“ボリバル革命”の一定の成果を保ちたければ、ラテンアメリカのポプリスモの究極の形のひとつとしての先達、メキシコの制度的革命党(PRI)のように左右両極を包摂する形で利害調整を行わなければならないはずだった。

本来、長期政権というものは往々にして左右両派の極端な勢力を切り捨てて、中道化していくものである。“ボリバル革命”の現在が中道というのならば、ラテンアメリカのポプリスモは度し難い。

北海油田に沈むスコットランド独立

原油価格のトレンド転換がスコットランド独立の経済的論拠をも破壊してしまった、というテレグラフ紙の記事。イングランドの視点から見ると、独立是非を問うた住民投票のタイミングが2014年9月だったのは、今から振り返ると絶妙だったことになる。イングランド側にとって、単なる幸運と言い切れないのは、原油価格は日米の通貨政策に左右されているということを知っていたか否かで決まる。

変動相場制に移行した以降の1974年~1985年(1バレル48ドル~120ドル)、プラザ合意以降の1986年~2004年(1バレル21ドル~48ドル)、テイラー・溝口介入と円キャリートレードの活発化以降の2005年~2014年(1バレル50ドル~120ドル)のそれぞれのトレンドから見て、2014年のFRBの量的緩和終了と日銀の質的量的緩和第2弾以降、2015年からは1バレル20ドル~50ドルのレンジに入ったと考えられる(2015年1月4日のエントリー参照)。

最低限、約10年間はこのトレンドが続く。となると、スコットランド独立派は原油価格の浮沈に自らの独立を懸けるならば、10年の雌伏を余儀なくされる。1990年代から続いた新興国への資金流入が還流し始めていることを考えると、約30年はこのトレンドが続く場合すらある。

Imagine the mess an independent Scotland would be in right now 7:44PM GMT 04 Feb 2016 The Telegrah

(一部抜粋・意訳)

More generous pensions, a fairer education system, protection from welfare cuts – all bankrolled by huge oil revenues which the SNP expected to come flooding in from the North Sea.

寛大な年金額が支払われ、公正な教育システムが運用され、あらゆる社会福祉予算の削減から守られるために、スコットランド国民党は北海から湯水のように湧き上がる原油の収入によって、これらすべての資金を賄おうとしていた。

Just as the discovery of North Sea oil transformed the prospects for Scottish nationalism in the 1970s, so the collapse of the oil price has destroyed its economic rationale today.

北海油田の発見は1970年代にスコットランド独立運動の見通しそのものを変えた、と同時に原油価格の崩落は現在の独立を担保する経済的合理性をも壊してしまった。

“愛国ポルノ”が蔓延する世界とは

ベネディクト・アンダーソンはその著作『想像の共同体』において、ナショナリズムの発生過程を紐解き、国民(ネイション)が想像によってつくられた政治的共同体である、と喝破・説明した。

政治的共同体には、過去と現在と未来を均質に貫く歴史的空間が存在している。そして、国語によって語られる神話と物語が国民を涵養する。

まさに現在の台湾人は国語によって語られる神話と物語を模索している。

例えば、侯孝賢の『悲情城市』(1989年)に始まり、魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督・脚本の『海角七号 君想う、国境の南』(2008年)、『セデック・バレ』(2011年)、『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2014年)から成る三部作、客家を取り上げた『一八九五』(2008年)、台湾生まれの日本人を取り上げた『湾生回家』(2015年)などの作品群が、それである。

これらの映画を通じて、外来政権の正統性をすべて認めた上に、いくつかのエスニック・グループを統合したひとつのネイションを創るという、国民の創生を行っている。ここに外省人とその政党である国民党の抱擁と接合をいかに行うかが彼らの課題だろう。

(耕論)快さの裏側に 辻田真佐憲さん、早川タダノリさん 2016年2月3日05時00分 朝日新聞

上記の朝日新聞に掲載された対談形式のコラムでは、現在の保守は、軍歌がつくられた当時の状況を認識せず、違う文脈で再利用している、などと云うのを読むと、いやいや左右両派いずれにせよ芸術(サブカルチャー含む)を政治利用するではないか、とは想う。ただし、我が国のリベラル・左翼には国民という視点がすっぽり抜けていることは間違いない。

国民をつくるための物語とはあくまでも虚構と入り混じった存在である、これは間違いない。しかし、それを信じて共有することで初めて国民の一体性が出来上がる。

国民の創生という観点からは、大日本帝国の支配下・影響下にあった北東アジアの国々はいずれもその創生の神話の構築に苦しんでいる。

韓国は、李承晩の大韓民国臨時政府に正統性を求めようとして、ついに破滅の道を辿ろうとしている。朝鮮半島統治の正統性は、李氏朝鮮→大日本帝国→連合国の軍政(ソ連と米国のふたつに分裂)→北朝鮮と韓国となっている。

中共は、対日勝利70周年式典を敢行したが、これは中華民国を放伐して正統性を得た立場を否定することになる。むしろ台湾では国民党~共産党の継続性が浮上する。対日戦勝利のプロパガンダと将来の両岸統一のためには国民党との接近は欠かせない。

そして、戦後日本のリベラル・左翼にとって、国民の帰るべき時空間とは1947年の日本国憲法の制定時の前後に限定されてしまう。ひとつの憲法典の創生された瞬間に彼らは舞い戻ってしまうのだ。

“戦後レジームからの脱却”によって、戦後レジームを肯定した上で新しいレジームをつくる段階に入った我が国では、彼らリベラル・左翼は国民の創生の神話・物語をつくる想像力を失いつつある。日本国憲法制定時の狭い時空間では、物語を再生産できる材料が少なすぎるのだ。

夫婦同姓を否定するために、それは明治中期以降につくられた制度と云うが、それは近代と近代の法体系、近代国家の歩みを否定するに等しい。その時、日本国憲法も否定される可能性があることにはついぞ気付かない。彼らはあたかも日本国憲法だけが、近世と近代とポストモダンを超越した時空に存在するかのように振る舞う。それでは唯一神に等しい。

それ故に“戦後レジームからの脱却”以降のレジームに語られる神話が萌芽を見せていても、その共同体の一体性を培う物語であるはずのものを“愛国ポルノ”と揶揄する他ないのである。

彼らの愛してやまない“護憲ポルノ”以外の物語はすべて唾棄すべき国民の神話・物語に映る。彼らの想像力が枯渇しつつあり、“愛国ポルノ”に代わる物語を提示できないからこそ、彼らの叫びはより狂気じみていく。

つまりは“愛国ポルノ”が蔓延する我が国は、健全化しつつあるということになる。真に危惧するべきは、言論の自由を抑圧する“ヘイトスピーチ”が呼号されて、言葉をポリティカル・コレクトネスの名の下に見えない地下水脈へと追いやるとき、その伏流がより危険な形で噴出することにある。欧米の極左・極右の急激な勃興がそれに他ならない。

「航行の自由」作戦にフィリピン加わる

米国とフィリピンの軍事協定がフィリピンの最高裁で合憲判決が出て、8ヶ所予定されている米軍のローテーション拠点の選定と部隊のローテーション展開が進むまで、今年一杯かかると思われる、

と、2016年1月13日のエントリーで述べたが、

人民解放軍が南シナ海の人工島での展開を進めるまでに、米軍とフィリピン軍の共同パトロールを行う計画のようだ。現在、人工島の12海里を航行・飛行しても、人民解放軍が目立った示威行動を行っていない。この経過から、米国-フィリピンともに、中共はどうやら口先だけなのではないかと、さらにエスカレートしてきたのかもしれない。

U.S. says open to patrols with Philippines in waters disputed with China Wed Feb 3, 2016 2:40am EST Reuters

2015年6月14日のエントリーで述べたように、

中国共産党が南シナ海で埋立を進めている人工島に滑走路や港湾を建設して、航空機や艦船の運用を開始した時点が戦争の阻止限界点になるだろう。おそらく2016年までには運用開始できる、と予測される。

人工島の埋立が第1段階、港湾などの建設が第2段階、艦船などの運用の開始が第3段階と、次第にエスカレートしていくが、周辺各国は復仇の原則に従って、同様に岩礁の埋立や港湾の建設や民間人の移住を進める。

現在審議されている安保法制の眼目は、南シナ海のシーレーン防衛のために集団自衛権が必須だという点にある。筆者は2015年の世界情勢を1939年のそれに近似する、と比定している。

すると、来たる2016年は1940年となる。日米戦争の阻止限界点として仏印進駐が挙げられるが、人工島の運用開始は中共VS日米豪・ASEANの阻止限界点として後世、挙げられるかもしれない。

超法規的アウンサンスーチーの登壇間近

ミャンマーの総選挙で過半数を獲得した国民民主連盟(NLD)の議員が首都ネピドーからの禁足令が出ている、とロイター電は伝える。アウンサンスーチー女史の大統領就任を阻む憲法規定を一時停止させる法案を提出する準備ではないか、との憶測を呼んでいる。

規定の一時停止であれば、議会の4分の3以上の賛成が必要な憲法改正ではないため、議席の25%を割り当てられている国軍が事実上の拒否権を発動できない。

憲法の規定の一時停止が、戒厳令などの非常措置を念頭に置いたものであれば、大統領就任のために憲法の精神を蔑ろにする行為は犯すべきではないだろう。民主的に選ばれた者が「法の精神」を破壊することになりかねない。憲法よりも法律が超越すると云う、超法規的な点ではナチス・ドイツの全権委任法の前例を思い起こすと良いだろう。

アウンサンスーチーは超法規的な存在への道をひた走っている。対する国軍はクーデターを考慮するだろう。

ミャンマー与党、議員の移動禁止 スー・チー氏大統領への布石か 2016年 02月 3日 16:49 JST ロイター

下記は2015年11月13日のエントリーの再掲。

アウンサンスーチー女史は「(次期大統領は)自らに権限がない」「大統領より上の存在になる」と発言して、自ら憲法典(第58条の規定)を無視する発言を行っている。

この発言の背景には外国籍の配偶者や子供がいる者は大統領になれない憲法の規定がある(第59条)。

さらに憲法改正(第436条の規定)には、人民院と民族院の二院制から成る連邦議会のそれぞれ定数75%以上の賛意を必要とし、かつその議会には25%の国軍指名枠の議員(第141条の規定)が存在するため、アウンサンスーチー女史が大統領になる道は予め塞がれているからである。

自らの子飼いの側近を大統領に据えて、院制を敷く思惑があるならば、上記の発言は政治的センスを問われる。しかも、国軍にはクーデターを起こす権限が憲法の規定にある(第40条)。

つまり、国軍は自らの影響力を奪取・喪失させない安全装置(フェイルセーフ)を備えた上で、政権交代に臨もうとしているのだ。

サラフィー主義が浸透する回族

新疆ウイグル自治区からイスラム原理主義過激派の分派が発生するのではないか、と思っていたが、豈図らんや漢民族が9割を占める甘粛省にサラフィー主義(サラフィズム)が浸透して、ジハード主義(ジハーディズム)が蔓延するのではないか、と危惧されつつある。

甘粛省の臨夏回族自治州に属する臨夏市は人口25万人の60%がムスリム(いわゆる回族)である。リトル・メッカと呼ばれるこの都市にサラフィー主義が浸透し始めていて、中国共産党の警戒するところとなりつつある。

共産党はサラフィー主義の学校を閉鎖し、聖職者を拘束するなど、サラフィー主義そのものを監視下に置いている。臨夏市のムスリムはサラフィー主義に接するうちに格差と不平等解消にジハード主義が有効であることを見出すかもしれない。

原理主義と過激派の回廊が、新疆ウイグル~旧ソ連圏のチュルク系国家~トルコ~隣接するシリアのISIS(イスラム国)支配地域へと繋がるよりも先に、甘粛省~内モンゴル自治区(内蒙古)~河北省~北京市・天津市が繋がるかもしれない。

In China, rise of Salafism fosters suspicion and division among Muslims FEBRUARY 1,2016 2:00AM Los Angels Times

Experts say that in recent years, Chinese authorities have put Salafis under constant surveillance, closed several Salafi religious schools and detained a prominent Salafi cleric. A once close-knit relationship between Chinese Salafis and Saudi patrons has grown thorny and complex.

Locals in Linxia say that in the city, relations are good, but in the countryside, where traditions are more entrenched, spiritual disagreements have created a deep social divide.

Although many Chinese Salafi are avowedly nonviolent and apolitical, their faith is fraught with risk, underscoring an increasingly strained relationship between the Chinese state and its Muslim citizen

"China discriminates against religious people — not only Salafis, but also people from other religions," said a local Salafi man who, like many interviewees in Linxia, requested anonymity given the sensitivity of the subject. "We don't have equal rights."

3年越しのUS-2輸出案件は実るか

新明和工業の救難飛行艇US-2をインドに輸出する見込みと報じられてから3年近く経とうとしているが、未だに成約していない(2013年3月24日のエントリー参照)。

防衛装備移転へ交渉=US2輸出も、2プラス2定期化—日インドネシア 2015 年 12 月 17 日 21:00 JST WSJ日本版

インドへの輸出案件が停滞しているうちに、2015年12月、日本とインドネシアの間で初の外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)が開催され、インドネシア側はUS-2への強い関心を示した。

このインドネシアの動きに触発されたのかは分らないが、インド海軍向けにUS-2を12機購入することを決定したという報道があった。報道では最大18機にまで増やせるオプション付きの契約とされる。

No Make in India, US-2 aircraft to be imported in flyaway condition  January 30, 2016 The Navhind Times

NEW DELHI: In a major shift, the Defence Ministry has decided to purchase all 12 US-2 amphibious aircraft from Japan in flyaway condition under government-to-government deal, much like India is pursuing the Rafale fighter procurement.

(中段省略)

The deal may be extended to 18 aircraft, going by the requirements of the Indian Navy, said the sources. The contract for 12 aircraft would have a clause of a follow-on order of six more in future, they said.

The aircraft, which is capable of taking off and land at sea surface is currently operated by the 31st Fleet Air Wing (71st Air Force, 71st Flight Squadron) at Iwakuni air base and Atsugi air base.

The aircraft is world’s only amphibian capable of landing on rough seas with a wave height of 3 meters. The US-2 and its predecessor model US-1A are currently in operation by Japan’s Ministry of Defence as STOL Search and Rescue Amphibian.

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