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メイド・イン・チャイナは安くない

オックスフォード・エコノミクス社の調べでは、米国の単位労働コストと中国のそれの間ではわずか4%の差しかなくなった。生産コストと物流コストを考慮すれば、もはや中国で同等の製品を生産して輸入する意味は皆無となった。

2015年7月18日のエントリーにあるように、

もともと2018年に米中の生産コストが逆転するという予測があった。これは経済誌フォーチュンの報道による。この報道よりも、米中の生産コストの逆転が2年も早まったことになる。

しかし、米国へのリショアリングはそう簡単ではない。米国では長年、海外(特に中国)にアウトソーシングしてきたために、熟練工は高年齢化し、技術継承できる人材層が薄くなりすぎている。

また、技術力を有した企業よりも『ジョブ・ショップ』と呼ばれる製造請負業者が活況を呈しており、そこでも労働者のミスマッチが起きており、派遣業者ですら充分に人材を供給できていない。

そして、米国への生産拠点回帰には、労組なし・法人税安・補助金付きを求める企業とそれに呼応する失業者と州の思惑が交錯する。

米国内の各州にとって工場誘致のための切り札は労組をなくすことだ。すべての労働者に組合費の支払いを義務付ける契約を禁じる法律を制定することで、労組の組織化を困難にしている。

世界の工場、中国に陰り 「労働コスト」日本を逆転 2015/12/6 1:30日本経済新聞 電子版

Made in China Not as Cheap as You Think March 17, 2016 — 7:00 AM JST Bloomberg

日本よりもはるかに高い中国の労働コスト、生産性向上を上回る給与上昇が問題に―中国紙 2016年3月23日(水) 16時30分 レコードチャイナ

2016年3月22日、北京青年報はこのほど、「中国の労働コストは日米を超えたか?」と題した記事を掲載した。

英リサーチ企業オックスフォード・エコノミクス社は驚くべきリポートを発表した。2003年、2012年、2016年と3つの時期において米国と中国の労働コストを比較したものだ。2003年時点では中国の労働コストは米国の4割前後。2012年では中国は米国にかなり接近し、2016年にはわずか4%しか差がないことが判明した。さらに日本の労働コストは2016年段階で中国のわずか70%しかないという。

なぜこのような状況に陥ったのか。労働コストとは単なる給料の多寡ではなく、一定の付加価値を生み出すために必要となる労働者のコストを意味する。つまり、たとえ給与が高くともそれ以上の付加価値を生み出せれば労働コストは低くなるわけだ。

中国では生産性向上よりも早いペースで給与が上昇したことが労働コストが上昇した原因となった。2003年から2016年にかけて中国製造業の賃金は倍増したが、生産性はこの伸び率に追いついていない。(翻訳・編集/増田聡太郎)

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ポピュリズムを育むリベラル

右派のポピュリズム政党、ドイツのための選択肢(AfD)は、既存政党の失策に乗じてドイツ各州議会での議席を獲得し続けている。

Angela Merkel's CDU suffers German state election setbacks 13 March 2016 BBC NEWS

ドイツ州議会選、反移民政党が躍進 政権与党は後退 2016年 03月 14日 08:00 JST ロイター

独州議会選で与党失速、各方面から首相に政策転換求める声 2016年 03月 14日 20:54 JST ロイター

AfDは欧州債務危機を契機にユーロ圏からの脱退を掲げて誕生した。

この新しい政党は、連邦議会選挙では比例代表制の5%阻止条項を突破できずに議席を獲得できていなかった。一方、州議会選挙では5%阻止条項を突破して、ハンザ同盟に由来する自由都市ブレーメンとハンブルク及び経済基盤の弱い旧東ドイツ各州で議席を獲得していた。

ドイツのイスラム化に反対するペギータ(西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者)との共闘関係を巡り、分裂したことで党勢が衰えるかに見えた。しかし、その後のムスリムによる難民危機の発生に伴って、その支持はドイツ全土に拡大しつつある。

2016年3月の州議会選挙は、AfDが強い旧東ドイツのザクセン=アンハルト州(得票率24.2%)にとどまらず、南部のバーデン=ヴュルテンベルク州(得票率15.1%)、ライン川に面したラインラント=プファルツ州(12.6%)でも議席を獲得した。

ザクセン=アンハルト州では、メルケル連邦首相の政権与党であるキリスト教民主同盟(CDU)に次いで、州議会の第2党に躍り出た。

おおよそポピュリストの伸長を招いているのはリベラル的政策の失敗である。現在、ドイツ連邦議会では第1党キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)と第2党社会民主党(SPD)による大連立政権が組まれており、批判票は新しいポピュリズム政党AfDに流れる選択肢しかない。

リベラルは外部環境の変化を理由に政策転換を行えば良い。しかし、政策の失敗と追及されるのを嫌がるために現状維持を選び、批判票の受け皿としてポピュリズムが育まれる。保守的なポピュリズムが勢力を伸ばす場合、排外主義者と非難することで自己のスタンスを守ることは出来るが、政策転換の機会は狭まっていく。

チョークポイントとしての北方領土

ロシアのショイグ国防相は、北方領土に地対艦ミサイル「バル」「バスチオン」と無人偵察機「エレロン3」を展開する、と述べた。さらに海軍基地の建設も検討する。

ロシアが北方領土における軍事力拡充の狙いとは何か。そもそも北方領土がロシアにもたらす利益とは何なのだろうか。

我々の視点からは対日交渉のカードとしての役割があると見られがちだが、サハリン州の税収40%を占める漁業権益とその産業集積地としての価値を持っている。

さらに安全保障上も見逃せない点がある。オホーツク海は戦略原潜が遊弋するロシアの内海となっており、国後水道・択捉水道は原潜の通過するチョークポイントとなっている。内海(オホーツク海)~国後水道・択捉水道~カムチャッカ半島(ペトロパブロフスク・カムチャツキー)と繋ぎ、北極海航路が活発化すればシーレーンの要衝ともなる。

Russia says to deploy new weapons on disputed Kurile islands Fri Mar 25, 2016 6:05am EDT Reuters

Russia will this year deploy some of its newest missile defense systems and drones on the Kurile islands where Moscow and Tokyo have rival territorial claims, Defence Minister Sergei Shoigu said on Friday.

The dispute over the islands, known as the Kuriles in Russia and the Northern Territories in Japan, has strained relations between the two countries since World War Two, when Soviet forces occupied four islands at the southern end of the chain.

The dispute is so acrimonious that Moscow and Tokyo have still not signed a formal peace treaty.

The new weapons were part of a drive to rearm military units already deployed in the Kuriles, Shoigu said, in comments broadcast on state TV.

"Coastal missile systems Bal and Bastion and new generation Eleron 3 drones will be deployed there this year," he told a meeting at the Defence Ministry.

The Bastion is a mobile defense system armed with two anti-ship missiles with a range of up to 300 km (188 miles). It has also been deployed in Crimea, which Russia annexed from Ukraine in 2014. The Bal anti-ship missile has a similar range.

Shoigu announced in October that Russia would build a military base on the Kurile islands.

サプライチェーンと経済回廊を巡る戦い

中共とメコン川流域5カ国(タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー)が海南省の三亜で首脳会議を開催した。

中共は雲南省からカンボジアが接する南シナ海へと至る縦断ルートをつくること、その縦断ルートのインフラ建設に自国の過剰に陥っている供給力を使うこと、縦断ルートを通じた経済交流によってASEANの陸側にある5カ国に対する影響力拡大を図ることを考えている。

中国、メコン流域開発を支援 周辺5カ国と首脳会議 融資枠1.1兆円の意向 2016/3/23 23:43 日経

具体策としてアジアインフラ投資銀行(AIIB)の活用、中共からの輸出品購入に関する約1兆1300億円の融資枠、インフラ整備のための約1740億円の融資枠が挙げられる。

インフラ整備よりも輸出品購入の融資枠が約10倍の規模を有している点で自国の供給過剰が透けて見える。

さらにインフラ整備には以下の課題が出てくるだろう。5カ国間の利害調整と法整備を行い、我が国との競合に打ち勝ち、サプライチェーンの育成を図るために供給過剰に陥っている自国の産業を移転しなければならない。

特に利害調整に時間を要する。例えば、タイはタクシン派と反タクシン派の戦いによっても、バンコク首都圏とイサーン(東北地方)の経済格差解消のためのインフラ整備といった政治的合意を作ることが叶わなかった。タイは生産年齢人口のピーク(2017年)を迎える前に中間層を底上げする機会を失った、と云えるだろう。

タイでは家計債務率が80%を超えており、家計消費支出が今後も伸び悩む。家計債務を政府債務に置き換える意味でもインフラ整備は必要だったのだ。

現在、ASEANにおける我が国のサプライチェーンの中核地という地位をタイが占めていて、ここをメコン川流域圏の南北、東西、南部の3つの経済回廊が連結する。ベトナム、ミャンマーの人件費はタイと中共の40~60%水準となっていて、この二国に直接投資が進むと思われる。

リベラルの対極にあるイスラム原理主義が反撃する

朝日新聞とのインタビューに応えるエマニュエル・トッドは、先進国における“システムとしての信仰”が失われつつあるのではないか、と危惧を抱いていた。社会全体に信じられる何か、共同体を結合する何かが壊れつつある、と。

信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏 2016年2月11日16時53分 朝日新聞

しかし、リベラルの信じる多様性(ダイバーシティ)が自己崩壊した様にも見える。同性婚を認める波が最高潮に達した余勢を駆って、大量の難民と不法移民を受け入れた結果、一挙に崩壊を招いたように見えるのだ。リベラルが掲げてきた信仰、多様性(ダイバーシティ)の危機にエマニュエル・トッドは嘆いている、というのが正しいのかもしれない。

そもそも信仰とは等しく虚構ではなかろうか。

欧州を統合するグローバリズムとその経済合理性とが手を携えて、欧州のリベラルは他の虚構を追いやってきた。逐われたカトリックは中南米で反撃の機会を伺い、極右扱いされるナショナリズムは中欧と東欧で奮闘している。

かくて欧州の中心部に残った虚構はリベラルとイスラム原理主義のふたつ。リベラルの対極にあるイスラム原理主義とその過激派がリベラルに反撃するのは自然であろう。

苦悩するリベラル、エマニュエル・トッド

ベルギーの同時多発テロ事件について、CNNが「なぜベルギーは対テロ戦争の最前線なのか」という記事を挙げている。

ジハーディストの温床となったブリュッセルに住むイスラム系移民を襲う疎外感。その疎外感をもたらす背景としての人種差別と若年層の高い失業率がムスリムのギャングスターを作り出し、彼らの行き着く監獄が過激派の養成施設・テロリストの調達先になっている。

テロの温床を一掃するには、欧州に蔓延する若年層の失業を解消していくのが、迂遠なようで確実なのだろう。しかし、相次ぐテロと難民危機によるイスラムフォビアとナショナリズムが結合して、リベラル的な施策の導入を妨げる理由のひとつとなっている。

我が国からすれば右傾化がまだそれほど進んでいない今こそ、リベラル的な経済政策が求められているのに。

Why Belgium is Europe's front line in the war on terror Updated 1243 GMT (2043 HKT) March 24, 2016 CNN

エマニュエル・トッドが新著『シャルリとは誰か?』の発刊を期に朝日新聞のインタビューに応じていたが、後退するリベラルの苦悩を垣間見ることが出来る。

信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏 2016年2月11日16時53分 朝日新聞

彼が従来主張してきたように“移行期の危機”を迎えるアラブ・中東では、反作用としてイスラム原理主義が台頭している。しかし、スンニ派VSシーア派の対立は宗教戦争ではないと述べる。国家間の利害対立が宗教の名を借りているに過ぎない、ということだろう。近代化の中でムスリムの信仰は薄れており、拠り所を求める若者は別の信仰を捜しているうちに、破壊的なニヒリズムを行うISIS(イスラム国)へと惹きつけられている。

また欧米のムスリム観が対応の誤りに繋がっている。国家を統合する力の弱いアラブの独裁を巨視的に容認しなかったのが失敗であって、ブッシュ政権の新自由主義的アプローチがアラブの国家を解体してしまった、と。このアラブと新自由主義の相互作用が主権国家の概念を希薄化させた。

テロ後のフランス社会は変容し、不寛容の時代が訪れた。そもそもイスラム系テロリストはアラブ・中東から見れば欧米人なのだ、と云う。イスラム系テロリストを欧米社会から生まれた亜種として見るか、それともイスラムの亜種と見るかによって、その対応も変わってくるのだが、人々はイスラムフォビアに陥り、政教分離原則によって自己の主張を正当化して、問題はイスラムそのものにあるとするのが大半だ、と指摘する。

大勢としてイスラム系に対する排他的な空気が生まれている。フランスでは、カトリックの強かった地域と中間層、かつてヴィシー政権を支持した地域とその階層がデモの列に加わっている。元々はリベラルを表明するデモの第一列が、右派・ナショナリズムに入れ替わりつつ在る。

欧州でもアラブ・中東でも信仰の衰退と社会の分断が起きている。しかし、本当の危機は欧米と日本の社会に内在している。想起されるのは信仰システムの崩壊である。この信仰とは社会一般に信じられているイデオロギーや社会的規範も含まれる。唯一、信仰として残っているのは経済合理性であって、この反共同体的な信仰は何が良い生き方かは定義しない。

つまりはフィクションとしての宗教がせめぎあっている。キリスト教やイスラム教、グローバリズムやナショナリズムの戦いの中、リベラル的な価値観が欧州では後退せざる得ない、という訳だ。

リベラル的価値観の後退とともに分断される社会で何が起きているかと云うと、フランスでは手厚く保護されている中間層ではなく、労働者階級が崩壊している。多くがここに属するムスリムの若年層がテロを引き起こす。ムスリムはフランス国民ではない扱いを受け始め、テロ関与者からフランス国籍を取り上げようとしている。

ユダヤ系であるエマニュエル・トッドにとっては二重国籍制度はフランスの寛容性の表れであり、現状はユダヤ系から国籍を奪ったヴィシー政権を想起させる。もちろん国籍を奪ってもテロは止まないし、これからのフランス「新共和国」では中間層が下層にある若者を排除するようになる、と指摘する。

移民がいなくても教育などの不平等が格差を生み出す場合もあり、日本の社会には家族制度の延長から、平等と不平等の両方を受け入れる素地がある、とも指摘している。

欧米社会は、自国の内部が危機を生み出しているのを認め、自由・平等・博愛が失われつつあるのにもかかわらず、未だに自由・平等・博愛が存在しているかのような虚偽からの脱却が求められる、と結んでいる。

プーチン大統領の“格付け会社”

ロシアは独自の信用格付け会社「ACRA」を設立した。ブルームバーグの記事では、プーチン大統領自身の格付け会社、と見出しが付いている。

「ACRA」の設立に併せて、新しいルールが施行されて、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とムーディーズ、フィッチ・レーティングスなど米英資本の格付け会社はソブリン債の格付けに規制がかかり、業務の縮小を余儀なくされる。

2015年1月から2月にかけて、S&Pとムーディーズが相次いで、外貨建て長期債(ソブリン債)格付けを非投資適格級(ジャンク級)に引き下げていた。

政治的思惑から引き下げられているのではないか、との反発に加えて、金融機関の格付けが取れず、国内の投資家の業務が滞っていたこともあり、年金基金、保険、銀行などが出資して「ACRA」が設立された。

ロシアでは、ウクライナ危機以降の経済制裁がつづき、原油価格の下落に自国通貨の下落が連動して、資本流出と財政悪化と経済成長鈍化を招いていた。

Vladimir Putin Starts His Own Ratings Firm March 18, 2016 — 6:00 AM JST Bloomberg Business

以前、2014年3月28日のエントリーなどで紹介したように、

米国の対ロシア経済制裁で一時、ビザ(Visa)とマスターカード(MasterCard)が一部銀行で使えなくなり、対応策としてロシア側では銀聯(UnionPay)とJCBに倣い、ロシア独自の決済システムを開発・導入するべき、とプーチン大統領が発言していたが、独自の信用格付け会社「ACRA」もそうした流れにある。

ロシア独自の決済システムを開発・導入する意図を明らかにしたプーチン大統領は、中共の銀聯(UnionPay)と我が国のJCBに言及して、その次のパラグラフでは、ロシア国外に流出した資本を再還流させること、給与所得を引き上げられる環境を整備することにも触れている。

しかし、進捗状況ははかばかしくない。政治経済の変数の増加でさらなる対応に追われていく上に、根本的な問題がロシアの社会にふたつ横たわっているからだ。

ひとつ目の問題は、欧州のような協調関係を作り出す周辺外交の積み重ねがなく、安定を生み出す安全保障の仕組みが構築されていないために、コーカサス山脈の南北ですり潰され続ける自国の軍隊。

ふたつ目の問題は、常に国外への自国資本の逃避か、国内の自国資本の横領を許さざる得ない、強権とは云いながらも法治が徹底されず、徴税組織の弱体な自国の行政。

このふたつの問題を解決するダイナミズム(つまりはボトルネックとそれを壊すブレイクスルー)には、ボトルネックとなっているエネルギー産業に依存した経済成長ではなく、中間層を育成できる製造業主体の経済成長がブレイクスルーとして必要であり、それを提供できるのは我が国だけという状況は変わっていない。

パラワン島から人工島を睨む

2014年4月に政府間合意された米比間の「防衛力強化に関する協力合意」(Enhanced Defense Cooperation Agreement)は、2016年1月にフィリピンの最高裁で合憲判断が下された。フィリピン憲法では外国軍の常駐を禁じているため、米国は便宜上、複数の基地を移動(ローテーション)しながら駐留する。また、フィリピンは米国以外の同盟国に基地を提供できる。

中国に対抗、フィリピン5基地を米軍拠点に 撤退から一転、防衛協力強化に合意 2016.3.19 12:57 産経ニュース

当初、フィリピンが米国に提示していたローテーション拠点は8ヶ所。対象地のうち4ヶ所はルソン島、2ヶ所はセブ島にあり、残り2ヶ所はパラワン島で係争中の南沙諸島近くにあった。

今回、米比間の戦略対話では以下の5ヶ所がローテーション拠点とされた。

パラワン島のプエルトプリンセサにあるアントニオ・バウティスタ空軍基地、ルソン島のバサ空軍基地、フォート・マグサイサイ陸軍基地、ミンダナオ島のルンビア空軍基地、マクタン島のマクタンベニト・エブエン空軍基地。フォート・マグサイサイ以外は空軍基地である。アントニオ・バウティスタ空軍基地は南沙諸島まで約350kmの位置にあり、最前線基地となる。

米軍のローテーション配備の詳細、指揮系統と運用形態などは決まっておらず、これから協議されることになるのだが、戦端が開かれない限り、民主的手続きが重視されない中共との時間差がますます問題になってくるだろう。

独立のドミノ倒しを狙うクルド人

シリア北部を実効支配するクルド人政党、民主統一党(PYD)のスポークスマンは、一方的にシリアの「連邦制」を宣言した。スイスのジュネーブにおける内戦の和平協議本格化を前にして、支配地域の自治権確立を目指した動きと云える。

すでに5つのクルド人勢力は、新たに“Kurdish National Alliance in Syria”という同盟をつくり、シリアに連邦制国家を導入するよう要求する、と2月にはスポークスマンが述べていた。

トルコ~シリア~イラク~イランに跨って分布するクルド人。イラクのクルド人はイラク戦争後に自治権を確立しており、現在内戦下にある自治政府は2016年11月までに独立の是非を問う住民投票を行う、と発表している。

シリアのクルド人が今後、自治権を確立したあとに独立を志向するのは、イラクの例からも明らかだと思われる。

Syrian Kurds set to announce federal system in northern Syria Wed Mar 16, 2016 1:39pm EDT Reuters

トルコ政府は、クルド労働者党(PKK)とシリアのクルド人政党である民主統一党(PYD)と、その戦闘部隊クルド人民防衛隊(YPG)は連携して行動している、と認識している。

PKKのテロはトルコ国内で頻発しており、イラクとシリアのクルド人の動向によって、トルコが態度を硬化させるのは目に見えている。

トルコには、約1400万人のクルド系のトルコ国民(クルド人)がいる。総選挙が2015年6月と同年11月に2回行われており、クルド系の左派政党・国民民主主義党(HDP)はそれぞれ80議席、59議席を獲得している。

クルド系トルコ人はトルコ国民として被選挙権と選挙権を行使している。つまり、テロ組織として認定されているPKK以外のクルド系トルコ人は目立って迫害されていない。ただし、議会内でのクルド人勢力の後退はテロの活発化に繋がっている、とも云える。

もともとトルコにはシリア北部に安全地帯をつくる構想があったが、シリア内戦へのロシア介入で頓挫し、さらにロシアと事実上の共闘関係にあるクルド人勢力によっても、実現を阻害されてきた。

また、エルドアン大統領が推進する大トルコ主義(汎テュルク主義)にとって、クルド人勢力の独立はテュルク系民族とのアクセスに対する政治的障壁となりかねない。大統領は、大トルコ主義の一環として死語と化しているオスマン語の公教育への導入を進めている。

つまり、第1次大戦後の小トルコ主義を採用した“戦後レジームからの脱却”をトルコのエルドアン大統領は行いたいのだが、ISIS(イスラム国)にせよ、クルド人勢力にせよ、利害が一致せずにコントロールできなければ、大トルコ主義の障害となってしまう。

アムネスティの発表によると、シリアのクルド人政党PYDと戦闘部隊のYPGは占領した領域に居住するクルド人以外の民族・宗派の人々を強制的に追い出している、という。こうした排他的姿勢と大トルコ主義が衝突する瞬間が、シリアのクルド人が独立を宣言する瞬間になるだろう。

クルド勢力が「連邦制」宣言へ 和平協議さらに複雑化 呼称を協議、支配圏確立急ぐ 2016.3.16 21:47 産経ニュース

 【カイロ=大内清】シリア北部を勢力圏とするクルド人組織「民主連合党」(PYD)のミルザル報道官は16日、産経新聞の電話取材に対し、北部地域のクルド勢力などが連合し支配地域での独立性を高める「連邦制」を一方的に宣言する考えを明らかにした。各組織の代表者ら約200人が同日、同地域の呼称などを協議しているという。

 シリア内戦をめぐっては、アサド政権を支援するロシアが、将来的な解決策として連邦制の導入に言及している。ただ、ジュネーブで再開された和平協議が本格化もしていない中でクルド勢力が支配圏確立に向けた動きを強めることは、事態をさらに複雑化させることにつながりそうだ。

 和平協議で政権側の交渉役を務めるジャアファリ氏は16日、「このような一方的な動きについてはコメントしない」とクルド勢力への不快感を露わにした。

 PYDやその軍事部門は、米国の支援を受けてイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)と対峙しているほか、一部の反体制派とも対立。反体制派との戦いではロシアとも連携を強めている。シリアのクルド人は従来、少数民族として従属的な立場にあったが、内戦の長期化とISの台頭の中で有力国の支援を引き出しつつ、勢力圏拡大を進めている格好だ。

 ただ、こうした動きは、トルコなど周辺国の神経を逆なでしている。

 国内で非合法組織「クルド労働者党」(PKK)と敵対するトルコは、PKKの実質的な傘下であるPYDの強大化を警戒。クルド勢力が独立性を高め、シリアが連邦化に向かう事態となれば、トルコ国内のクルド人を刺激する可能性もあるだけに、強く反発するのは間違いない。

 一方、和平協議を仲介するデミストゥラ国連特使は15日、政権側と反体制派がそれぞれ、移行政権作りなどの論点に関する考え方を文書で提出したと明らかにした。詳細は不明だが、同特使は、双方の主張を照合して協議の糸口を探り、両者が対面しての直接協議につなげたい考えだ。

 デミストゥラ氏は14日の協議再開に先立ち、今後の和平協議で連邦制導入論も議題となる可能性を示唆している。そんな中で、協議参加資格を与えられなかったクルド勢力が一方的に連邦化への動きを加速させることは、協議の行方に影響を及ぼす可能性がある。

 他方、ケリー米国務長官は15日、来週にもロシアを訪問し、プーチン大統領やラブロフ外相と会談すると発表した。ロシアが15日からシリア駐留軍主要部隊の撤収を開始したことを、和平協議前進に向けた機運醸成につなげる狙いがある。

国際海洋法に華夷秩序を持ち込む支那

中国の最高裁に当たる最高人民法院は、国際海事司法センターを創設すると発表した。『国際』と名付けられてはいるが、もちろん国際機関ではない。南シナ海の実効支配の強化に使うのだろう。中国共産党は、フィリピンがオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所にて申し立てている提訴に参加していない。

南シナ海問題、国際仲裁手続きへ 中国は反発 2015年 10月 30日 15:39 JST ロイター

こうした国際法を蔑ろにする外交方針は、米国のブッシュ・ジュニア政権時に似ているが、国際法秩序よりも華夷秩序への傾倒が感じられるし、“戦後レジームからの脱却”を反映するように新しいレジームを自国に有利なように構築する動きのひとつと云える。

2000年代、ブッシュ・ジュニア政権とその外交方針を主導していたネオコンは、自衛権を行使する際には先制攻撃も可能と主張したし、国際連合やNATOが利害対立で機能不全に陥ると、利害が合致する国々を糾合して有志連合を結成した。しかし、その当時ですら、イラク戦争はいくつかの安保理決議(687、1154、1441)に依拠していた。

国際法上の法源を(国際連合関連では)国連憲章や総会決議、安保理決議に求めることができる。国際法は、ほかに様々な条約や先例など慣習法の積み重ねによってつくられている。ただし、国際法に従うか否かは主権国家の判断が優越する。それゆえに国際法の執行は列強の軍事力によって担保されてきた。

つまり、列強は軍事力を行使するとき、同時に国際法をつくることもできる。裏返せば、先例のない国際法をつくるには圧倒的な軍事力で以って秩序をひっくり返さなければならない。歴史的な蓄積を無視して、新しい国際法とその秩序をつくるには、彼らは結局戦わなくてはならなくなる。

中国、「国際海事司法センター」を設置へ 2016年03月14日 BBC日本版

中国の最高人民法院(最高裁)は13日、領有権問題を扱う独自の「国際海事司法センター」を設置すると発表した。

現在開催中の全国人民代表大会(全人代)で活動報告を行った最高人民法院の周強院長は、「中国の国家主権、海洋権益やそのほかの核心利益を断固として守らなくてはならない」と述べた。

周院長は、新組織の詳細や果たす機能について触れなかったが、中国が「海洋大国」になることに貢献すると述べた。

中国は資源が豊富な南シナ海で、近隣国と領有権をめぐって対立しており、中国が進める人工島の建設で緊張がさらに高まっている。日本とも尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権を争っている。

中国は南シナ海、東シナ海で広範囲に領有権を主張しているが、フィリピンやベトナム、ブルネイ、マレーシア、台湾、日本の各国の領有権の主張と重なっている。

フィリピンは中国との領有権紛争で、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴。中国が「九段線」に基づいて主張する領有権は、両国とも署名した国連海洋法条約の下では無効だとしている。

一方で中国は常設仲裁裁判所に管轄権がないと主張し、訴訟に参加していない。

プーチン大統領、ヘゲモンの凱旋

2015年9月以降、ロシアがシリア内戦への軍事介入を始めたことが契機となって、急激なパラダイム・シフトがアラブ・中東地域に起こった。中東の覇権を握る覇者(ヘゲモン)が、合衆国からロシア連邦に替わった。

2月26日の停戦合意を経て事実上のGeneva3である和平協議が再開したことを受けて、ロシアは空爆における所与の目的を達したと考えて、防空・制空戦力を除く大部分の部隊撤退を敢行した。停戦及び和平協議の枠組みに参加していないISIS(イスラム国)とヌスラ戦線に米英の空爆は続いている。

ロシアは和平協議を軌道に乗せつつ、アサド政権を存続させて、シリア国内への一定の影響力を保持した。また、撤退によって発言権を増す。

ウクライナ危機によって制裁を行っている欧米諸国との関係改善の芽を残し、スンニ派のトルコとサウジアラビアの介入を牽制しつつ、アサド政権に対する圧力と影響力を保持しての撤退は時宜を得たものと云えるだろう。

米英はイラクからシリアに跨るISISの脅威を除去できていないし、トルコはクルド人のテロに悩まされ続け、サウジアラビアはふたつの内戦介入で泥沼に嵌り込んでいる。

和平協議では、新たな統治機構の設置や2017年9月までの大統領選を議論している。ロシアはアサド政権そのものが存続しなくても、後継政権にバース党系の誰かが担うことは容認する、と思われる。

Russia 'to pull its forces out of Syria' 10:11PM GMT 14 Mar 2016 The Telegraph

シリア介入、絶好の引き際 和平協議「主導権」狙い 戦費が重荷、内戦深入り回避も 2016年3月16日 毎日新聞

【シリア内戦の経過】
2011年03月
“アラブの春”が波及して南部ダルアーから反アサド政権デモ始まる
2011年04月
非常事態法撤廃の大統領令とともに無許可デモ禁止の大統領令、反政府デモ応ぜず鎮圧開始
2011年11月
アラブ連盟とトルコはシリア制裁開始、軍から離反した民兵との戦闘頻発

2012年02月
シリアに対する安保理決議は露中の拒否権で否決、反体制派の国民評議会が成立して内戦突入
2012年06月
反政府勢力はアナン前国連事務総長がまとめた最初の和平合意破棄、シリア難民は約18万人突破
2012年08月
アルジェリアのブラヒミ元外相が和平特使に就任
2012年10月
トルコがシリアに越境砲撃
2012年11月
暫定政権「シリア国民連合」をアラブ連盟とフランスほかが承認
2012年12月
中部ホムスで化学兵器使用の疑惑

2013年02月
シリア内戦の死者7万人突破
2013年05月
ヒズボラはアサド政権側に立って内戦介入、イスラエルはダマスカス近郊空爆、ブラヒミ特使辞任表明するも後任なく続投、シリア難民は約135万人突破
2013年06月
仏米はアサド政権側のサリンガス使用認定
2013年08月
ダマスカス近郊で化学兵器使用確認、内戦介入を討議するが英国議会は否決、米国も同調
2013年09月
アサド政権は化学兵器禁止条約への加盟を宣言、化学兵器廃棄で米露合意

2014年02月
シリア内戦の死者14万人突破
2014年04月
シリア国内3ヶ所で塩素ガス使用の疑惑
2014年09月
米国主導の有志連合はISIS(イスラム国)への空爆開始

2015年09月
ロシアはアサド政権を支援するため空爆開始
2015年12月
国連安保理はシリア和平の決議案採択

2016年02月
アサド政権とISISとヌスラ戦線除く反体制派の間で停戦合意
2016年03月
アサド政権と反体制派の和平協議再開、ロシアは主要部隊の撤退開始

パリ~ブリュッセル、戒厳令下の掃討戦

2015年12月、2回に渡って行われたフランスの地域圏議会選挙では、極右政党・国民戦線の第1党進出を危惧した内相が「(彼らが勝てば)内戦になる」と、批判した。

しかし、パリ同時多発テロ以降、非常事態宣言(事実上の戒厳令)が発令されて、今また延長されていることを踏まえれば、戦時下にあることは間違いない。

非常事態3カ月延長を可決、仏国会5月末まで 2016.2.17 11:27 産経ニュース

仏下院、対テロ法案可決、再発防止へ治安最優先 2016.3.9 10:19 産経ニュース

国民議会(下院、定数577)は非常事態宣言を5月26日まで延長する法案を可決、元老院(上院、定数348)はすでに通過している。宣言は3度目の延長となる。

さらに包括的な対テロ法案が、国民議会において賛成474、反対32で可決され、法案は元老院に送付される。法案は疑わしい人物を令状なしで4時間拘束することを可能とし、ISIS(イスラム国)支配地域からの帰還者を監視下に置き、スマートフォンのロック機能を解除する権限も含まれる。つまり、非常事態宣言が恒久化されることとなった。

仏テロ捜査中に銃撃戦、容疑者1人射殺 警官4人負傷 ベルギー首都 2016年03月16日 07:03 AFP BB NEWS

テロリストの策源地となっているベルギーのフランス語圏のワロン、もしくは首都のブリュッセルにも捜査の手が伸びている。

ベルギーとフランス両国の警察がブリュッセル南部フォレ地区で家宅捜索中に、発砲されてそのまま銃撃戦となった。現在も追跡中の容疑者のひとり、サラ・アブデスラムはパリ同時テロの襲撃発生から数時間後にベルギー国内に逃亡した。

高速鉄道でパリ~ブリュッセル間は約1時間半、宗教もカソリックが約7割強、インフラ企業ではガス・電気にGDFスエズ、金融にデクシアといったフランス合弁・傘下が多く、ユーロ圏でフランスとの資本の移動が自由である。

ベルギーは、1つの首都(ブリュッセル)、2つの自治地域(ワロンとフランデレン)、3つの言語共同体(ワロン語、ドイツ語、フラマン語)を持つ連邦国家である。連邦制を採用する過程で6つの警察組織が作られ、ブリュッセル首都圏ではフラマンとワロンの対立の中でムスリムが捜査の網をすり抜けていた。

二度の世界大戦において、一度目はドイツ帝国の通路として蹂躙され、二度目はアルデンヌの森を突破する機甲師団の陽動のために蹂躙されたベルギー。そして三度目はドイツの難民政策に振り回され、ベルギーからフランスへとテロリストが攻め込んでいる。

タイ海軍の憂鬱、その幕間劇

中共のメディア新浪網は、タイ海軍向けに039A型(元型)潜水艦3隻の売却が確定しており、これによってタイと米国の同盟関係が損なわれ、中共にとって利益がある旨、報道している。しかし、タイの潜水艦購入計画は2015年7月から進展が見られていなかった。

大陸国家と海洋国家の間に立つタイの政治の混迷は、内政ではタクシン派と反タクシン派の派閥抗争、外交では日中の投融資競争に現れており、潜水艦購入計画もその流れで頓挫している。

中国がタイに潜水艦を売却へ 「米タイ同盟関係を破壊だ」=中国メディアが「大はしゃぎ」 2016-03-14 16:27 サーチナ

もともとタイは、ドイツから中古の206型潜水艦を6隻購入しようとしていた。ドイツ海軍の206型潜水艦は、2010年以降に6隻退役が決まり、タイ海軍はこれらを購入して、2013年9月までに配備を目指していた。しかし、タクシン派と反タクシン派の派閥抗争に巻き込まれる形で購入計画は頓挫しており、中共から輸出用潜水艦039A型(元型)3隻を購入することになっていた。

2014年7月にタイ海軍は潜水艦を保有しないまま、潜水艦部隊司令部を開設、並びに訓練施設を建設してまで、潜水艦の輸入を切望している。しかし、2015年7月には費用を再検討するとして、一時保留となって以来、音沙汰がなかった(2015年7月3日のエントリー参照)。

一時保留になった契約内容は、039A型(元型)潜水艦を25年分割払い・無利子償還で3隻購入し、運用期間中のメンテナンス保証を付け、購入金額の約3倍にも及ぶタイの物産購入を約束する、という破格の条件であった。

これだけの好条件が保留となった背景には、タイ海軍の政治力の弱さもある。

タイ海軍は、第2次大戦までは日本から購入した艦船を使って、フランス・ヴィシー政権の海軍とも交戦している。しかし、戦後のピブン政権時代にクーデター未遂事件(マンハッタン反乱)を起こして、陸軍に制圧されて組織が解体されてしまった。

練度の積み重ねに時間の掛かる海軍にとって、これは致命的で、陸軍・空軍・警察(タイでは首相直属で階級も将官と佐官となっている)に比べて劣り、空母チャクリ・ナルエベトがチャワリット政権下の1997年に就役したが、アジア通貨危機にぶつかり、予算縮小の煽りを受けて、艤装がままならなかった。同時期に、空母の直衛艦としてタイと中国で共同開発されたフリゲートも同様の経緯をたどった(2015年7月24日のエントリー参照)。

現在、幕間劇の時間となっているタイ海軍の潜水艦購入が実現した場合、上記のような空母やフリゲート同様の喜劇に終わる可能性は高い。

すでにベトナムはロシアからキロ級潜水艦を購入して、インドから人材育成のスキームを受け入れている。緩衝国のカンボジアを挟んで、ベトナムへの警戒心は強いタイにとっては、タクシン派と反タクシン派の派閥抗争が自らの首を絞める結果になっている。第2次大戦でも最終的に連合国側に滑り込んだバランス外交も現時点では裏目に出ているのではなかろうか。

海洋国家の第一歩を踏み出すインドネシア

2015年3月の日本とインドネシアの首脳会談において、日本-インドネシア間の防衛協力覚書が交わされた。また、同時に約された日本-インドネシアの外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)が2015年12月に初開催された(2015年3月23日のエントリー参照)。

これを受けて、インドネシア周辺海域の海図作成に自衛隊の担当者が派遣される見込みとなった。驚くべきことに世界最多の島嶼より成り立つ国家でありながら海図がなかった訳だが、中共の台頭と自国の経済発展がなければ、こうした機会も訪れなかっただろう。

海図なし、ということは対潜能力も皆無ということに他ならない。これは中共にも云えることだが、平時より潜水艦やソナーによって情報を収集・解析して、その情報に基づき、対潜哨戒機を運用しなければ、日米と同じ海洋国家の列に加わるのは難しい。インドネシアはようやく海洋国家としての第一歩を踏み出すようだ。

日・インドネシア、南シナ海の安定で一致 中国めぐり温度差 2015年 12月 17日 20:43 JST ロイター

インドネシア海軍支援 自衛隊の担当者など派遣へ 3月14日 0時01分 NHK NEWS WEB

南シナ海に面するインドネシアの海軍の能力の向上を支援するため、日本政府は海図の作成を指導する自衛隊などの担当者を今月下旬にインドネシアに派遣することになり、インドネシア側としては、こうした技術を潜水艦の運用に役立てたい考えです。

日本政府は去年12月、インドネシアと初めてとなる外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2+2」(ツー・プラス・ツー)を開き、自衛隊によるインドネシア軍の能力の向上に向けた支援の強化など、防衛協力を深めることで一致しました。

インドネシアの外交筋によりますと、日本政府は今月下旬に自衛隊と海上保安庁の担当者をインドネシアに派遣し、インドネシア海軍に対して海底の地形などを記録した海図の作成のための技術指導を行うということです。

中国が人工島を造成するなど、軍事的な活動を活発化させる南シナ海に面しているインドネシアは、海軍の潜水艦部隊の増強を計画していて運用に必要な詳細な海図を作成するため、去年フランス製の最新鋭の測量艦を就役させたばかりです。

インドネシア海軍にとって、多くの島が存在する周辺海域で潜水艦を航行させるには正確な海図が不可欠で、関係者は日本の支援に強い期待を寄せています。


参考URL:
日・インドネシア外務・防衛閣僚会合 平成27年12月18日 外務省

アンダマン・ニコバル諸島、インド洋への門

インド洋の東、ベンガル湾に浮かぶアンダマン・ニコバル諸島は、マラッカ海峡の北西にあり、チョークポイントとなる海峡を抑える要地である。

中共がアフリカ、中東から輸入する鉱物燃料の約80%はマラッカ海峡を通過する。対するインドは、南北に伸びるアンダマン・ニコバル諸島を拠点に海峡の出口を封じ込める地政学的優位に立つ。

1942年、帝国海軍はインド洋へ空母5隻を展開させて英空母を撃沈し、スリランカの英海軍基地などを空爆したことがある。その際は、インド洋侵入に万全を期すためにアンダマン・ニコバル諸島を占領している。

中国共産党は、このシーレーン上に“21世紀の海上シルクロード”と呼称する貿易拠点を整備して、その港湾と島嶼に“真珠の首飾り”と呼称する軍事拠点を整備しようとしている。

As India Collaborates With Japan on Islands, It Looks to Check China MARCH 11, 2016 The New York Times

こうした中共の影響力拡大に対峙する我が国は、アンダマン・ニコバル諸島の中で最大の人口を抱える南アンダマン島にある民生用のディーゼル発電所の更新と整備について、インド側に提案しており、その準備となる基礎調査が行われる見込みだ。

アンダマン・ニコバル諸島は、先住民族の権利擁護と自然生物の保護などを理由にODA含む外資の受け入れを拒んできたが、今やインド政府の大きな政策変更の時期を迎えつつある。

諸島の行政府が置かれる南アンダマン島のポート・ブレアには空港があり、こちらも民生目的で整備しつつ、インド海軍が対潜哨戒機を展開し、島嶼周辺にSOSUS網とレーダー網を整備されることも可能だろう。

2014年9月、アンダマン・ニコバル諸島を管轄するインド軍司令官が諸島専用の艦隊を創設し、潜水艦を含め配備するべきであると発言している。アンダマン・ニコバル諸島を通じて、ベトナム~フィリピンなどへ支援を提供することは、我が国の国益に合致する。

一方、アンダマン・ニコバル諸島のすぐ北には“真珠の首飾り”のひとつとして、ミャンマー領の大小二つから成るココ諸島があり、当時のミャンマー軍事政権から借り受けた中共は現在まで実効支配を継続しており、島は無線傍受設備やレーダー基地としてベンガル湾の情報を収集している。

中国牽制…インド離島の空港整備 軍用視野、印首相来日時に提案へ 2014.7.26 11:13 産経ニュース

参考URL:
アジアの安全保障のカギを握るアンダマン・ニコバル諸島 2014/10/02 東京財団

波及する“個別のインティファーダ”

ドイツのハノーバー中央駅でISIS(イスラム国)に触発された15歳のモロッコ人少女が、パレスチナで頻発している一匹狼型のナイフテロを起こし、誰何した鉄道員に重傷を負わせた。

少女はトルコ-シリア国境に滞在中に過激派思想に感化されて、ドイツに住む母親の元に返されたあと、凶行に及んだ。

リベラル系のメディア報道が婦女子を前面に押し出して世論の同情を買おうとしたり、難民と不法移民の群れが有刺鉄線の前に婦女子を連れ出して国境を突破しようと試みている。

しかし、弱く哀れなイメージを抱きやすい婦女子もまた、テロリストとなるのでは難民受け入れの機運が萎むのも当たり前だろう。

Police Officer Stabbed By 15 Year Old Girl In ISIS Inspired Palestine-Style Kitchen Knife Attack 3 Mar 2016 Breitbart

2015年9月以降、パレスチナのヨルダン川西岸地区とガザ地区双方で、若者によるテロが頻発している。

イスラエル軍高官の話では、平日で平均15回、週末に平均40回の暴動が発生している。そのほとんど、約95%は組織的ではなく単独犯行であり、若年層の失業者など、将来に展望がなく追い詰められた一匹狼型の性質を有している。

例えば、ハサミを持って攻撃を試みたパレスチナ人の女学生に、10発の弾丸を撃ち込んで制圧する、といった事例も起きている(2015年12月3日のエントリー参照)。

一匹狼型の性質から“個別のインティファーダ”("Intifada of the Individuals")、台所にありそうな凶器で犯行に及んでいることから “ナイフ・インティファーダ”("Knife Intifada")と呼ばれている。

中国共産党の怖れるソビエト連邦崩壊の影

もはや信じがたいほどに跡形がなくなったが、約25年前にはソビエト連邦とワルシャワ条約機構が世界の半分を支配していた。

政治や経済や思想の領域を含めて世界の半分に影響を与えていた帝国の滅亡。

その責めと咎を負うのはゴルバチョフ書記長ひとりか、やはりソビエトの硬直化したシステムを更新できなかったことが原因か、それともすべては西側の攻勢に帰せられるべきか、おそらくはそれらが複合的に重なっているのだろうが、中国共産党はソ連崩壊に己の運命を重ねるのだろうか。

China's Greatest Fear: Dead and Buried Like the Soviet Union March 11, 2016 The National Interest

ナショナル・インタレスト誌は「ソビエトのように滅び、歴史に埋没することを怖れる中国共産党」という表題で論説を書いている。論説はソビエトとは違う、と述べている。

経済的に立ち遅れた足手まといの同盟国を抱えていないこと、世界のサプライチェーンの一部として組み込まれていること、何より冷戦にさらされていないことを挙げる。

足手まといの同盟国を抱えていないのは、中ソ対立と中越戦争によって共産主義の同盟国を持ち得なかったことが幸いしたに過ぎず、“一帯一路”に伴う過大な投融資と上海協力機構がワルシャワ条約機構のように重荷になるかもしれない。

世界のサプライチェーンの一部として組み込まれているのは、米国が我が国のキャッチアップに対抗するために、産業を情報通信分野に集中させつつ、それらの非戦略部門の組み立てなどは海外へアウトソーシングした外的要因を忘れてはならない。

冷戦にさらされていないにせよ、米国のピボットとインド洋~南シナ海~東シナ海に面した国々の反発に人民解放軍の攻撃が組み合わさったとき、対中封じ込めが行われる可能性は否定出来ない。

特に世界のサプライチェーンの一部となったということは、日米資本主義の決戦における両者の廉価な労働力の供給源として見出されたからに他ならない。現在の中国の繁栄はその結果としてもたらされた。

米国の産業競争力回復のための戦略的要地として中国が見出され、我が国は迂回貿易構造に組み入れた中韓の二国に、基幹部品やサービス(付加価値)を輸出して、非戦略部門の組み立てをさせて、完成品の製品とサービスを米国に輸出する。我が国は米国のゲームに乗って、そのルールを最大限に利用したのだ。

OECDとWTOが発表した付加価値ベースから見た貿易統計では、我が国の最大輸出相手先は中国ではなく米国であることが明示されていた。

貿易収支を付加価値ベースで見た場合、2009年の日本の対米貿易収支に関しては、貿易総額で見た220億米ドルから、付加価値で見れば360億米ドルへと、60%も増加することとなる。また対中貿易黒字は、付加価値で見ると20.8億米ドルにまで下落し、対韓貿易黒字も3.6億米ドルまで下落する。つまり、中韓との貿易が東南アジア諸国と代替可能であることを示唆している。

日米が撤退するに至り、彼らはどうやら“中所得国の罠(中進国の罠)”に陥ろうとしている。人口ボーナスも終わり、付加価値もなく残ったのは国有企業の過剰供給力だけ、となる。

軍事力の拡張や社会保障の拡大を支える資金力は、FRBの量的緩和と連動していたが、バブル崩壊とFRBの利上げで急速に資本逃避が起きており、人民元の資金供給量も減る。人民元の国際化で加速しかねない資本逃避に抗する選択肢は、資本勘定を厳格化するか、人民元切り下げを容認するかのいずれかと見られている。

彼らのサプライチェーンは我々にとって必ずしも要るものではなく、過剰供給力の捌き先を“一帯一路”に求めるとき、インド洋~南シナ海~東シナ海に面した国々との対立は深まり、集団安全保障の核となる上海協力機構に比重を傾けねばならないし、ソ連と衛星国のように閉じた経済になる道が待っているかもしれない。そのとき初めて、中国共産党にソビエト連邦崩壊の影が差す。

そして、リベラルの水晶は砕けた

ケルンの集団暴行事件、この蛮行を境に難民受け入れを求めるリベラルの論調は変わらないものの、一方的な擁護論は通じなくなった。

筆者は、これを21世紀の“水晶の夜”と見たが、どうやらリベラルの理想主義と、それらに対する全面的支持と、沈黙を余儀なくされた保守の従属とが砕け散ったように思われる(2016年1月12日のエントリー参照)。砕けた“水晶の夜”以後では、左右両派の先鋭化した対立が始まるだろう。

不幸で哀れな弱い難民というリベラルが抱く観念が崩れて、野蛮で愚かな犯罪者の群れにしてテロリスト志願者という保守が抱く観念と見事に合致して、難民受け入れの拒否という右派の主張がようやく正当化されるようになったからだ。

この観念の反転は、欧州のリベラルとムスリムが互いのポリティカル・コレクトネスを唱えて、むしろ事態を悪化させたことにも原因がある。今まで覆い隠されていたムスリム系移民の性的暴行の事例とその嗜好性が報道されるようになり、イスラムフォビアは一挙に拡大した。

ポーランドの雑誌の表紙には、“欧州をレイプするイスラム”を擬人化したセンセーショナルな絵が描かれて批判を浴びたが、ポリティカル・コレクトネスによって縛られていた反感は事件を契機に噴出して、外交にも影響を及ぼすようになった。

例えば、ベルリンで起きたロシア系ドイツ人少女を移民と見られる外国人男性数人が暴行したとされる、その疑惑を巡って、ドイツとロシアは外交的に舌戦を繰り広げた(2016年1月30日のエントリー参照)。その後、疑惑は少女の狂言であったと露見している。

'ISLAMIC RAPE OF EU
ROPE': POLISH MAGAZINE'S COVER CONTROVERSY ON 2/17/16 AT 7:55 AM Newsweek


Swedish police warn Stockholm's main train station is now overrun by migrant teen gangs 'stealing and groping girls'  13:45 GMT, 25 January 2016 Daily Mail

Parents: 15-year-old was murdered because he protected a Swedish girl from sexual harassment from an Arab student 14 januari 2016 kl 23.03 Fria Tider

そして、ケルンの集団暴行事件から約2ヶ月、難民キャンプを抱えるトルコと難民危機に見舞われているEUとの間で、なおも膨れ上がる難民・不法移民を送還する仮合意がなされた。

この合意を受けて、スロベニア政府はドイツに繋がる難民・不法移民の流入ルートを事実上閉鎖した。セルビアも同様の措置を採った。オーストリア政府はアフガニスタンにおける大規模な「難民・不法移民を受け入れない」キャンペーンを打って、同地からの難民・不法移民の流出を牽制している。

スロベニアやオーストリアの方針変更を見る限り、セルビアとの国境に不法侵入用のフェンスを築いて難民・不法移民の流入に否を突きつけたハンガリーのオルバン政権、もしくはレバノンの新聞に「移民を歓迎しない」という広告を出稿したり、キャンプに収容された難民から金品を使用料として没収しているデンマークの中道右派政権には先見性と構想力があったということになる。

逆に大連立政権となっているドイツの政策は合意形成が遅れがちになり、当座を凌ぐ場当たり的なものとなっている。

シリア内戦の停戦合意、トルコへの難民・不法移民送還の仮合意、バルカンルートの閉鎖などによって、難民・不法移民はバルカンルート上にある諸国に分散して、暴動や治安悪化を引き起こし、それに伴い被害を被る諸国の財政悪化とさらなるナショナリズムを誘発し、EU内の政治的不和を促進する、と思われる。

スロベニア 内務省「難民流入認めず」バルカンルート閉鎖 2016年3月9日 10時38分 毎日新聞

トルコ、送還難民受け入れ EUと大筋合意 2016年3月9日03時30分 朝日新聞

EU、移民送還実現へ加速 トルコのシリア難民移住も 2016.3.8 10:55 産経ニュース

ドイツ地方選控え、反移民政党に勢い 3州とも支持3位=世論調査 2016年 03月 4日 15:02 JST ロイター

オーストリア 難民流入抑止へ アフガンのメディアに広告 2016年3月2日 20時53分 毎日新聞

ドイツでの難民申請者、13万人が所在不明 政府 2016年02月26日 22:20 AFP BB NEWS

“接近阻止・領域拒否”を破る領域支配

人民解放軍が提唱する、“接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)”の戦略は、自前の空母打撃群を整備できない中共にとって、取りうる最善の選択肢ということであろう。

南シナ海にある西沙諸島(パラセル諸島)、南沙諸島(スプラトリー諸島)の島嶼を実効支配して航空基地をつくり、洋上制空によって敵艦船の接近を拒否しようとする戦略の方向性は理解できる。

What China Has Been Building in the South China Sea UPDATED October 27, 2015 The New York Times

Vietnam Objects to Chinese Oil Rig in Disputed Waters JAN. 20, 2016 The New York Times

Satellite Images: China Manufactures Land at New Sites in the Paracel Islands February 13, 2016 The Diplomat

中国、南シナ海に地対空ミサイル配備 衛星写真にはレーダー施設も 2016.02.17 ZAKZAK

A Glimpse Into China's Military Presence in the South China Sea FEBRUARY 18, 2016 | 21:29 GMT STRATFOR

中国が新たに環礁占拠か 「灰色」の中国船が常駐、フィリピン漁船追い払う 2016.3.2 12:38 産経ニュース

日本の潜水艦がフィリピン寄港へ、ベトナムにも護衛艦=関係者  2016年 03月 7日 10:06 JST ロイター

“接近阻止・領域拒否”戦略を打ち破るのに、最も安易な方法は復仇の原則に従って、同じく西沙諸島(パラセル諸島)と南沙諸島(スプラトリー諸島)の島嶼に、領有権を主張する台湾、ベトナム、フィリピンが航空基地をつくることだろう。ただし各国の国力から、それは無理であろうし、日米を始めとする海洋国家の協力が得られにくい。

西沙諸島(パラセル諸島)と海南島に対してはベトナムのダナン、南沙諸島(スプラトリー諸島)に対してはフィリピンのパラワン島が対抗する前線基地になるだろう。

海上自衛隊は今年4月、フィリピンのスービック湾に練習用の潜水艦と護衛艦2隻を寄港させ、うち護衛艦はベトナムのカムラン湾にも立ち寄る。

2015年11月に行われた日本とベトナムの防衛相会談で、海自の護衛艦がカムラン湾の新港へ寄港・補給することに合意していた(2015年11月1日のエントリー参照)。

海自、P3Cをベトナムに派遣 南シナ海めぐり中国をけん制 2016.02.18 ZAKZAK

海上自衛隊P-3C哨戒機がダナンに寄航、海軍と合同図上訓練 2016/02/19 15:03 JST配信 VIETJO

 海上自衛隊の派遣海賊対処行動航空隊21次隊のP-3C哨戒機2機が16日から18日にかけて、アフリカ東部ソマリア沖アデン湾での任務を終えて日本へ帰投する途中、南中部沿岸地方ダナン市に寄航しベトナム海軍との防衛交流を実施した。

 日本のP-3C哨戒機のベトナム訪問は、2014年年初のホーチミン市訪問と2015年5月のダナン市訪問に続き今回が3回目。21次隊はベトナム海軍司令部と合同で図上訓練を実施したほか、同軍の艦艇見学、P-3C哨戒機の装備・設備及び構造に関する研修などを行った。

 今回の訪問は、日本とベトナムの防衛協力の強化をアピールすることで、南シナ海の領有権を巡ってベトナムとの対立が続く中国をけん制する狙いがあった。

 これに先立ち、2015年5月、派遣海賊対処行動航空隊18次隊のP-3C哨戒機2機がダナン市に寄港。同年4月には外洋練習航海中の海上自衛隊の護衛艦「あさゆき(DD-132)」と「きりさめ(DD-104)」の2隻が、5月には海上保安庁のPLH型巡視船「やしま(PLH-22)」が同市に寄港している。

欧州懐疑派の敵はブリュッセルにあり

マーヴィン・キング前イングランド銀行総裁は、欧州連合(EU)を覆う経済停滞が、欧州議会の置かれたブリュッセルのテクノクラートによる「意図的な」財政緊縮策によってもたらされていると非難した。

例えば、2009年以降のギリシャの景気動向は戦間期の大恐慌の落ち込みよりも激しくなっており、政策に対する幻滅はユーロ圏の通貨統合~財政金融政策の統合をむしろ破壊していく、とテレグラフ紙上で述べた。

ベルギーの首都ブリュッセルは、欧州連合の首都としての役割も持ち、行政府や議会が置かれている。同時にイスラム原理主義過激派のテロリストの温床にもなっている。

Euro depression is 'deliberate' EU choice, says former Bank of England chief 1 MARCH 2016 • 9:46PM The Telegraph

さて、英国にとって有利なEU改革案が通った今、EU離脱を巡る国民投票に対して、独仏から注がれる眼は厳しい。フランス外相は直裁的な表現で、離脱するならば海峡トンネルで越境しようとする不法移民を止めない、と述べた。

英国がEU離脱なら、仏から移民流入させる─仏経済相=FT  2016年 03月 3日 19:24 JST ロイター

英が離脱すればEUは競争力低下の恐れ、国益に適わず=独財務相 2016年 03月 4日 02:36 JST ロイター

英のEU離脱後は「特別待遇」交渉困難に、残留すべき=独財務相 2016年 03月 4日 13:34 JST ロイター

英国では、EU離脱とEU残留それぞれの立場から、続々と声が上がる。大ロンドン市長はEU離脱を支持したが、金融街の中心であるシティー・オブ・ロンドンのマーク・ボリート政策委員長はEU残留を支持した。また、商工会議所代表はEU離脱を支持して辞任した。

英金融街シティーの自治体、EU残留支持を表明 2016年 03月 4日 11:25 JST ロイター

英商工会議所代表がEU離脱支持で辞任、キャメロン首相を批判 2016年 03月 7日 19:31 JST ロイター

EU離脱問題で英中銀が対応策、投票日前後にオペ追加実施 2016年 03月 8日 04:54 JST ロイター

シティーは欧州全体の金融センターとなっており、シティーの利害を代表するシティー・オブ・ロンドンがEU離脱反対なのは当然だろう。EU離脱となれば、本社機能をルクセンブルグなどに移転されて、金融センターとしてのロンドンの地位が低下、人材も流出して、富裕層向けの不動産市場も低迷しかねない。

現在、英国の財とサービスの輸出のうち、45%は欧州向けとなっている。一方、英国は旧植民地のコモンウェルスや米国、中共、日本との間で、EUとは関係なく独自に関税を交渉して決定できるようになるのも確かである。

南シナ海を支配するのは国際法秩序か華夷秩序か

2016年1月30日、米海軍第7艦隊のイージス駆逐艦カーティス・ウィルバーは、中共が実効支配する西沙諸島(パラセル諸島)のトリトン島の12海里を事前通知を必要としない無害通航権を行使して通過した。2回目の航行の自由作戦(freedom of navigation operation)である。

1回目は2015年10月27日、米海軍第7艦隊のイージス駆逐艦ラッセンによって、中共が埋立を行っている南沙諸島(スプラトリー諸島)のスービ礁の12海里を通航したものである。

前回と今回の違いは人工島と島嶼の違いに発する。人工島に領海はないが、島嶼には領海があり、外国の軍船は無害通航の場合に限り、領海を通過できる。

無害通航権は、国際海洋法に基づき外国の軍船であっても、武力行使、威嚇、演習、情報収集、宣伝、積荷や航空機の離発着、漁獲、測量、通信妨害などを行わず、領海を主張する国に対して無害であれば、事前通知なしに通航できる権利である。

しかし、中共は自国の法律を盾に外国の軍船は領海に入るには事前通知せよ、と主張する。これでは中共の国内法が国際法を優越することになる。中共の領海を通過するのに、中共の慈悲を乞うというのであれば、それは国際法秩序ではなく、華夷秩序が南シナ海に出現する。

U.S. carrier group sails into waters claimed by China 12:35 p.m. EST March 4, 2016 USA Today

China Rejects Latest US FONOP in the South China Sea February 02, 2016 The Diplomat

米艦、中国支配の島から12カイリ航行=南沙に続き西沙で作戦-南シナ海 2016/01/31-00:44 時事ドットコム

中国共産党は、“海洋における法の支配”という人類共通の公共財を利用して、安全なシーレーンを通り、貿易上の利益を得ながら、同時にそれを維持する費用を負担せず、それどころかその財を毀損する行為を行っている。

国際法の原則を否定する状況が継続すればどうなるか。はて伝統的な支那社会なるものは、西欧社会に起源を持つ国際法秩序と、その社会に属しているのか、という疑念を招いて、全体の国際法秩序が崩壊しかねない。

たしかに発展過程にある国家は、政治的権力の配分を変更せよ、と要求する。彼らは現在、領土や通貨について要求している。

しかし、人工島を巡る要求が通れば、国際法の領土・領海・領空の概念をすべて書き換えることになる。つまり、既存の国際法における権利の再分配ではないのだ。

南シナ海の紛争は、見方を変えれば国際法秩序を守る戦いと云える。

言論・信教の自由を侵害するエルドアン

トルコ政府の支持により、新聞社ザマン(Zaman)が警察に占拠され、これに抗議するデモ隊も鎮圧された。当局は、新聞社がフェトフッラー・ギュレン師率いる「ギュレン運動」との繋がりがあるとして弾圧に及んだ。「ギュレン運動」は師が始めた宗教的な色彩を持つ市民運動団体である。

Turkish police fire teargas at protesters at seized newspaper Saturday 5 March 2016 16.39 GMT The Guradians

Turkish police tear gas newspaper; EU 'worried' about media crackdown Saturday, Mar. 05, 2016 11:01AM EST The Globe and Mail

トルコ政権に批判的な大手紙が政府管理下に、各国から懸念の声 2016年03月06日 11:29 AFP BB NEWS

以前の2013年12月28日のエントリーでも取り上げたが、

従来、協力関係にあった公正発展党(AKP)と「ギュレン運動」は、2010年頃から関係に亀裂が生じていたが、2013年頃から「ギュレン運動」出身のテクノクラート、例えば司法関係者がパージされていた。同時期、「ギュレン運動」の放送局や新聞社(今回のザマン社)・予備校に対する閉鎖命令が出されていた。こうして権力闘争とともに三権分立が蔑ろにされ、言論・信教の自由が侵害され始めていた。

2014年12月16日のエントリーの時点でも、

ギュレン運動の関連団体のメディア幹部が拘束されており、今回の新聞社占拠とデモ隊鎮圧はこの流れにあると思われる。3年近く権力闘争が続くということは「ギュレン運動」の勢力が根強いことも示しているし、エルドアン大統領も独裁者としての権能を持っている訳ではないことも示している。しかし、徐々に言論・信教の自由が侵害されていることは間違いない。

そうりゅう型潜水艦と日米豪のスクラム

三菱重工業は豪州のアデレードにイノベーションセンターの建設を提案している、と現地の新聞紙が報じた。アデレードには豪州の国営潜水艦メーカーのASC社(ASC Pty Ltd)が置かれている。日豪共同生産に向けた動きが一歩進んだ。

ASC社は、元来そうりゅう型と同等の高張力綱の厚板溶接が出来ない、加えてナカシマプロペラ社と同等のプロペラは自製できないので、同型の700m潜航できる船体そのものが作れない以上、ノックダウン生産によるモンキーモデル(廉価版と言い換えても良い)しか残る選択肢はなかった。

つまり、最初の案が発表された2014年9月頃は完成品輸入案に過ぎなかった。2015年1月頃には日豪共同生産案が浮上した。

ところが、当時のアボット首相は解任動議を受け、党内の支持を挽回しようと次期潜水艦の入札に国営のASCが参加できる、と表明した。完成品輸入案からノックダウン生産方式による共同開発案が出て、ついにASC主体の合弁案と変わってしまった。

2015年3月、次期潜水艦プロジェクトの一環として「フューチャー・サブマリン・サミット」を開催、日独仏がパートナーとして浮上したと表明、技術移転・共同生産を前提とした入札プロセスを開始した。しかし、この会合に招待された三菱重工業と川崎重工業は参加しなかった。

よしんば入札でドイツ製(ティッセンクルップ傘下のホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船)もしくはフランス製(DCNS社)の船体ということになった場合、システムはフランスのタレス社が受注することになる。対するそうりゅう型では米国のレイセオン社。

独仏製では、艦船の相互リンクが出来ず、共同作戦に支障が出かねない。また、これらの潜水艦は寒冷な北大西洋での活動を主目的としており、水温変動の激しい南シナ海からインド洋に及ぶであろう豪州の作戦海域とでは、艦内の居住環境がそもそも合わない。

2015年4月には、この事態を憂慮した米国が豪潜水艦調達計画について日本製を採用するよう後押しした。それ以降は事あるごとに米国の意向が漏れ伝わるようになってきた。

しかして以前の2014年9月3日のエントリーで書いた通りに、収斂しつつある。

豪州政府は、そうりゅう型潜水艦について自国生産ではなくて完成品輸入を検討している。軍需産業の維持育成は雇用政策上も重要であるから、反発も大きい。しかも大洋に面している豪州は今後も財政の許す限り、海軍整備が不可欠となってくる。

南オーストラリア州は軍需産業で2万7000人、うち造船業で3000人雇用している。米国でも軍艦を建造するバス鉄工所(メイン州)とインガルス造船所(ミシシッピ州)は、その州の最大雇用主のひとつとなっている。

打開策としてはまず、そうりゅう型の豪州仕様向けモデルを三菱重工業と川崎重工業が1~2隻ずつ建造、次に豪州の潜水艦建造メーカー(ASC)に資本参加して、中韓系の人材採用を注意深く排除しながら、艦の整備から技術指導を行ない、ノックダウン生産、最終的にライセンス生産に移行して、次々世代級の潜水艦についても我が国が優先交渉権を持つ。

すでに豪州の軍需メーカーのうち、艦船部門はBAE(英国)、車両部門はジェネラル・ダイナミクス(米国)傘下となっている。

一方、我が国では新造艦にリチウム電池を採用して、豪州製のそうりゅう型よりも性能を高めておく、というのが常識的な線だろう。

アデレードに技術革新センター:三菱重工、潜水艦受注で[製造]  2016/03/04(金曜日) NNA ASIA

三菱重工業が、オーストラリアの次期潜水艦建造プロジェクトを正式に受注した場合、アデレードにイノベーション(技術革新)センターの建設を提案しているもようだ。同社の大宮英明会長が、3日付経済紙オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(AFR)に明らかにした。潜水艦の設計や、防衛以外の産業の研究拠点としても利用する計画。そうりゅう型潜水艦の受注を見据え、日本は三菱重工主導で外堀を埋めつつある。

三菱重工は、次期潜水艦プロジェクトはオーストラリアへの多角的な投資の始まりにすぎないとし、三菱グループの他社を含めて、従来の液化天然ガス(LNG)や石炭、アルミニウムなどの鉱業やエアコンのほか、風力発電や化学工場、航空機部品といった幅広い国際プロジェクトへの参画機会を見込んでいるという。

ターンブル首相は昨年12月の安倍晋三首相との会談で、日豪間でのイノベーション協力の深化で一致していた。

日本側は現在、オーストラリア向けの最初のそうりゅう型潜水艦を日本でなくオーストラリアで建造可能と主張している。一方、競合のドイツの造船企業ティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)はポート・アデレード近くにある政府系造船会社オーストラリアン・サブマリン・コーポレーション(ASC)の造船所ですべて建造することが理想的とすると共に、固定価格での契約とすることをアピールしている。

■アボット前首相がリーク?

また、2日付の全国紙オーストラリアンが、アボット前政権時に作成された国防白書の草案(機密文書)を元に、アボット前首相が「次期潜水艦の調達が以前の想定より遅らされた」とコメントした記事を掲載したことを受け、草案が何者かに漏えいされたとしてオーストラリア連邦警察が捜査を開始している。同紙の記者とアボット前首相は共に、関与を否定している。

また、AFRによると、日米政府関係者の一部で、アボット前首相が先月、ターンブル首相を差し置いて日本を訪問し、安倍首相と会食したことが、オーストラリアの次期潜水艦の入札に悪影響を与えるとの懸念がささやかれている。日本政府はアボット前首相を招待したことでターンブル政権を軽視したわけではないと主張し、日本の受注を推しているとされる米国政府は遺憾を示したという。

ネオコンの『裏切られた革命』

ネオコン(新保守主義者)には、永続的な革命論を説いたトロツキーの影響が垣間見られる。世界に民主主義を輸出する、といった姿勢はイラク戦争や色の革命に見られてきた。共産主義者が革命を輸出するのなら、こちらは民主主義を輸出するという具合だ。

トロツキーは一時、レーニンの後継に擬せられたが、官僚機構を支配するスターリンとの権力闘争に敗れて、亡命先のメキシコで暗殺される。彼はスターリンの一国社会主義に対比して永続革命論を説いていた。

ネオコンは、思想的にはトロキストが現実主義に目覚め、政治的には保守派勢力に転向して、党派としては民主党から共和党に鞍替えしたものだった。

民主党のふたりの大統領、ジョン・F・ケネディとリンドン・ジョンソンが、公民権運動に代表されるような社会改革を行って、リベラルの一大潮流を作り上げた。

これに対して、モンロー主義を支持する伝統的保守、公民権運動で民主党から離れた福音派、小さな政府を支持するリバータリアン、そしてネオコンに代表される反共主義者を結集させたのが、現在の共和党の姿である。

しかし、『フランス革命の省察』を著したエドマンド・バークがフランス革命とつづく革命戦争に遭遇したとき、保守が誕生したことを考えれば、イデオロギーを輸出していくネオコンの姿勢は、そもそも保守に馴染まないとも云える。

共和党・民主党異色の大統領候補二人がいずれも従前の世界政策に対して、伝統的な孤立主義に回帰している。

2016年2月26日のエントリーでも述べたように、

保守系のアメリカン・コンサヴァティブ誌は民主党の大統領候補、自称社会主義者のサンダース上院議員が最も孤立主義の傾向が強いと断じる。

また、共和党の大統領候補、資本主義の権化であるトランプ氏は1980年代の日米経済戦争の頃の対日観を以ってジャパン・バッシングを行っている。もとより平均的な米国人の北東アジアの認識においては日本も韓国も中国も同じであるが。

トランプ氏のジャパン・バッシングを批判するナショナル・インタレスト誌は、経済と軍事の両面において日本は競争者ではなく同盟国である、と指摘する。

OPEN LETTER ON DONALD TRUMP FROM GOP NATIONAL SECURITY LEADERS MARCH 2, 2016 War on The Rocks

GOP hawks declare war on Trump 03/02/16 05:55 PM EST Politico

伝統的な孤立主義に回帰する大統領候補、特に共和党の大統領候補に一番近いトランプ氏に対して、安全保障の政策を立案する専門家たちの反発は大きい。

117人の連名で公開書簡を送りつけたり、共和党にすら反旗を翻して、ネオコンの創始者アーヴィング・クリストルは「第三の候補を見出して支援するべき」と述べ、ロバート・ケーガンは「ヒラリー・クリントン女史で行くしか選択肢はない」と断じる。ネオコンが民主党に帰還する日も近いのかもしれない。

マラバール演習、南シナ海を睨む

米印の合同軍事演習マラバールに、我が国が今年から恒久的に参加することとなった。これは2014年9月の日印首脳会談「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップに関する東京宣言」でも合意されている。

米印日、南シナ海近くで年内に海上共同演習実施 2016年 03月 3日 03:05 JST ロイター

今年度のマラバール演習は、フィリピン北方海域で実施される見込みである、と米太平洋軍のハリス司令官が発表した。司令官は「インド、日本、豪州、米国並びに共通の意識を有する国々は国際法の許す限り、いかなる場所においても共同してパトロールする」と述べた。

2015年に初開催された日印豪の海上安全保障に関する協議、この協議に米国も参加することには充分な利益があるとも述べ、度々マラバール演習には参加していない豪州の名を挙げている。“対中封じ込め”の包囲環を閉じる役割は日米豪印4ヵ国が担うということだろう。

India, U.S., Japan to Hold Naval Drills Close to China's Waters March 2, 2016 — 8:36 PM JST Bloomberg Business

The U.S., India and Japan will hold joint naval exercises later this year in waters north of the Philippines, a move that's likely to irk nearby China as tensions rise over competing territorial claims in the region.

Admiral Harry Harris, head of U.S. Pacific Command, confirmed the location of the annual Malabar drills while speaking at a conference in New Delhi on Wednesday. The proposed area lies just northeast of the South China Sea, where the U.S. has spearheaded efforts to patrol waters near where China is building airstrips, lighthouses and ports to assert its claims.

"By being ambitious, India, Japan, Australia, the United States and so many other like-minded nations can aspire to patrol together anywhere international law allows," Harris said. No nation should perceive the patrols as a threat, he added.

China objected after an announcement in December that Japan would join the U.S. and India as a permanent member of Malabar this year. "Relevant countries should not provoke confrontation and create tension in the region," Chinese Foreign Ministry spokesman Hong Lei said.

"We all have a vested interest in ensuring our region remains secure, stable, and prosperous," Harris said, citing $5.3 trillion in trade that passes through the Indian Ocean and South China Sea each year. "How Indo-Asia-Pacific nations employ naval forces to support these economic interests matters greatly."

Last year, India, Japan and Australia also held the first round of a trilateral dialogue to discuss maritime security and freedom of navigation. Harris said it would be beneficial for the U.S. to join that group.

"Adding the U.S. into this dialogue can amplify the message that we are united behind the international rules-based order that has kept the peace and is essential to all of us," Harris said.

クルド人、難民申請の欺瞞

米国の老舗雑誌、アトランティック誌の論説は「クルド人とは誰なのか?」と問いかける。

クルド人と一概に云っても、地理的にはトルコ、シリア、イラク、イランの4カ国に跨って分布しており、エスニシティ(民族性)においては比較的同一であっても、ネイション(国民)として統合された世界観、政治的目標を必ずしも共有していない。

トルコでは、約1400万人のクルド系のトルコ国民(クルド人)とその居住地域は、エルドアン大統領率いる与党、公正発展党(AKP)の地盤でもあった。

Who Exactly Are ‘the Kurds’? FEB 25, 2016 The Atlantic

難民申請しているクルド人は、その多くが埼玉県蕨市と隣接する川口市に居住している。以下の読売新聞では、女性を暴行した犯人は難民申請中のトルコ人とされているが、まず間違いなくトルコ国籍のクルド人(クルド系トルコ人)であろう。

ネイション(国民)としてはトルコ人であり、エスニシティ(民族性)としてはクルド人である。ネイションとエスニシティがほぼ同一の我が国ではこの分け方は理解しづらい。

難民申請中に女性乱暴容疑、トルコ人2人逮捕 2016年02月22日 11時34分 読売新聞

「ご飯のクオリティ酷い」「私たちは動物ではない」不法在留外国人、国費負担の収容生活「改善」求めハンスト 2016.2.22 11:00 産経ニュース

はてさて欧州を襲うイスラムフォビアと同じように自ら「難民はその国で政治的自由を奪われ、財産を失ったあげく、その生命すら危うい哀れで弱い存在でなければならない」というイメージを貶める行為は、難民申請しているクルド人自身の政治的立場を弱くするだけだろう。

この辺の政治的センスは疑われるべきであって、

2016年2月12日のエントリーでも取り上げたが、

2015年10月25日にトルコ大使館前でトルコ人とクルド系トルコ人の間に騒擾があった。クルド系トルコ人は自らの意志で在外者投票のために大使館へ赴いて投票した。これはトルコ国民(ネイション)として選挙権を行使したということにほかならない。

この行為ひとつだけで彼らは難民ではないことになる。

難民条約(1951年の難民の地位に関する条約)では、難民の定義は以下の通り定められている。

難民条約第1条A(2)
(a)人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
(b)国籍国の外にいる者であること
(c)その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること

これらの要件に該当すると判断された人を条約難民と呼ぶ。

難民条約1条A(2)の(c)「国籍国の保護を受けることができない」「国籍国の保護を受けることを望まない者」は、在外者投票でトルコ国民としての権利を行使すれば、難民としての権利を行使することと相矛盾する。

これだけで難民認定基準を満たさない理由になる。クルド系トルコ人が難民に認定されないのは、彼らが難民でないからである、と自ら証明しているのであるから。

US-2現地生産に不可思議なし

2016年2月1日のエントリーの続報。

インド国防省筋は、新明和工業の救難飛行艇US-2をインドで現地生産する可能性がある、と述べた。以前の報道では現地生産を断念するとの報道があったが、インド国防省と国防関連企業は未だ諦めていないようだ。

そうりゅう型潜水艦を豪州が輸入するかしないかの案件と同様、現地仕様向けのモデルを国内で2機程度建造、次にインド国防関連企業と合弁を設立して、機の整備から技術指導を行ない、ノックダウン生産を進めるという流れは充分あり得るだろう。

2014年9月の日印首脳会談ではUS-2輸出の交渉加速と防衛装備品の共同開発が取り上げられているからだ。とは云えインドとの交渉はとかく時間が掛かる。2000年に戦略的パートナーシップを構築することで合意して、2014年に日印特別戦略的グローバル・パートナーシップを宣言するまでには15年の歳月を要している。

India Looks To Expand Aerospace Manufacturing Sector September 11, 2014, 11:33 AM AIN Online

Indonesia Could Trump India as Japan’s US-2 Partner  January 6, 2016, 1:34 PM AIN Online

No Make in India, US-2 aircraft to be imported in flyaway condition  January 30, 2016 The Navhind Times

新明和工業、インドに水陸両用艇の工場設立を検討 2016/03/01 (火) 10:00 インド進出支援ポータル

インド国防省の情報によると、大手輸送機器製造会社の新明和工業は、インドに水陸両用艇の生産工場を設立する可能性があると発表された。

去年、インド国防省は日本から新明和工業の水陸両用飛行艇「US-2」を6機購入することで合意しており、その後さらに6機を購入する方針を示している。今回の契約は日本政府が武器輸出を解禁してから初めて日本から武器装備が輸出される事例となる。

インド国防省の関係者の情報によると、新明和工業は世界的に需要の高い「US-2」をインドで生産し、インド国内市場およびグローバル市場向けに展開する計画だ。

(以下省略)

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