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覆水盆に返らず、されどリショアリングは進む

米国のリショアリングについて、興味深いロイターのコラムを読んだので、以前のリショアリング関連のエントリーを整理してみた。

結論としては、オバマ政権の個別政策はすべて失敗したが、それでもFRBが推進した量的緩和と、投資銀行が主導する金融経済からの脱却によって、人為的につくられたダイナミズムは製造業回帰を促進させていることは間違いない。ただし、それは労組なしの、社会保障(企業年金と企業の提供する医療保険)抜きの、請負派遣大盛況の歪なものであって、決して中間層にとっては黄金の1950年代へ戻ることではない。

コラム:米製造業に未来はあるか 2014年 01月 21日 16:06 JST ロイター

[17日 ロイター] - By Zachary Karabell

米製造業の運命以上に困難な問題は、ほかに数えるぐらいしかない。2008年以降に製造業の雇用が急速に失われたことで、米国の全盛期はもはや過ぎたのではないかという懸念も妥当性が増している。

最近の主要な米経済指標が経済回復の勢いを示しているとはいえ、雇用は相変わらず伸び悩んでいる。1979年のピーク時には2000万人弱だった製造業の就業者数は、今では1100万人と約半減している。

労働力人口が大幅に増加していることと合わせて考えると、製造業の現状はいっそう暗いものとなり、強い米国経済の核が空洞化しつつあるとの認識が広まった要因にもなっている。

故に、米政府が製造業の活性化と雇用回復に向けた「全米製造イノベーションネットワーク」構想を掲げていることは驚くべきことではない。

オバマ大統領は15日、長期的なハイテク産業の育成を目指す計画を明らかにした。ノースカロライナ州の「リサーチ・トライアングル」と呼ばれるローリー・ダーラム・チャペルヒル広域都市圏は、すでに主要な大学や多くの研究所の拠点となっているが、ここに半導体などハイテク産業を育成するための製造イノベーション研究所を創設しようというものだ。

米国であれ、どこの国であれ、未来の生産を担うテクノロジーに継続的な投資が必要なことは議論の余地がない。少なくともその点では、オバマ政権は正しい取り組みを行っていると言えるだろう。

しかしながら、こうしたテクノロジーやそれを生かした工場が賃金の高い中間層の職を生み出すという主張には欠点がある。政治的な論争では、製造業が回復すれば雇用も回復するという楽観論がよく聞かれるが、この2つは切り離して考えた方がいい。

問題は、生産低下によって定義づけられるような製造業の空洞化ではない。確かに、安価で単純な製品の多くは、米国以外の場所で低コストで製造されている。遠からずそうした製品は、もはや米国では製造されなくなるかもしれない。中国は世界の工場でなくなりつつある一方、ベトナムやフィリピンなどは、衣料品や家具、電子機器やプラスチック製品などの生産地として魅力を増しつつある。

米国の新しいイノベーション拠点が推進しようとしているハイエンドな製造業は、確かに世界中で需要がある。今のところ、中国など低コストの生産拠点も追いついておらず、故に中国は相当な額の高性能機器を特に日本やドイツから輸入している。だからこそ、高等教育研究機関が多く、高度な教育を受けた人材も豊富な米国は、この分野に注力すれば競争上の優位に立つことは可能なのだ。

だが、雇用創出になると話は別だ。ロボットや複雑なソフトウエアを駆使するこうしたハイテク工場は、数百人規模の雇用は生み出すかもしれない。このような工場で働く労働者は、1950年代の生産ライン作業員とは違う。シリコンバレーのエンジニアや開発者に近い。高度な技術が求められ、昔の工場の仕事に比べると求人数ははるかに少ない。

3Dプリンターや半導体といったハイテク製品に特化した数多くの製造拠点では、多くの人が期待するほど雇用は生み出されないだろう。

つまり、米製造業の再活性化は雇用をほとんど創出せずに行われる可能性があり、構造的な失業問題の解決にはならないということだ。

もちろん時がたてば、こうした新しい製造業に必要なスキルを身につけた人が増え、経済システム全体で新たな繁栄が生み出される可能性もある。だが当面、そうした変化に十分対応できない世代は今後も悪戦苦闘を余儀なくされるだろう。

新しい製造業への取り組みのなかでは、長期的に何が可能で、短期的には何が不可能かをしっかり見極めることが重要だ。失われた雇用や産業は取り戻すことができない。過去数十年間で何百万人もが職を失った問題を解決することもできない。

オバマ政権の構想は次世代の解決にはなるかもしれないが、社会から今取り残されている世代にとっては何の解決にもならない。われわれは対処を見誤ってはいけない。

次世代が未来を担えるようになるまで、失われた世代は何年も支援を必要とするはずだ。簡単に解決できるかのような「まやかし」は、悪い結果にしかならないだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


では、以前のエントリーを振り返っていこう。まず、それはアップル社のCEOのエピソードから始まる。

アップルのクックCEOが配当収入の受け取りを辞退した。アップルの前CEOスティーブ・ジョブズも報酬1ドルだった。これらをあざとい売名行為と受け取るかは各人の自由だが、クックCEOの他の発言「米国内への生産回帰を望む」「テレビ技術への関心がある」などから考えるに、アップルのCEOには素朴かつ健全な資本主義における企業家精神が発露していると見て良いだろう。

さらなる利潤を追求するために現在の報酬や配当を捨てて、禁欲的に労働を尊び、成長への投資を優先させるのは健全な企業家精神である。また既存概念に囚われず、常に“時間は貨幣である”ことを意識して、停滞を好まず新たな製品・サービスを提供しようとし、その際の優勝劣敗を受け入れる合目的姿勢も企業家精神の発露である。

米国において新自由主義偏重と投資銀行優遇の経済政策が浸食しているとは言え、マックス・ウェーバーが近代資本主義の発生を研究した際に見出した、プロテスタンティズムの生んだ資本主義の精神が、未だ宗教とともに健在であるところに米国の真の強靱さがある(ただし、この宗教に由来する強靱さが我が国のポストモダンとの乖離を生んでいる)。この点においては、幕末維新の下級武士の倫理観を基礎として近代資本主義を始めた我が国ですら米国よりもやや劣る。

と、2012年6月21日のエントリーと書いた。実際、2013年末「iPod」「iPhone」「iPad」は難しいが、新作の「Mac」の筐体は米国生産に戻り始めている。しかし、その筐体は『ジョブ・ショップ』と呼ばれる製造請負業者でつくられている可能性がある。それは、

ドル安局面で中国で部品生産、製品を組立加工して輸送するよりも国内生産する方が、コストが安くなっていることが、まず背景(それは記事に触れられてはいない)にある。

しかし、長年海外(特に中国)にアウトソーシングしてきたために、熟練工は高年齢化し、技術継承できる人材層が薄くなりすぎている。

また、技術力を有した企業よりも『ジョブ・ショップ』と呼ばれる製造請負業者が活況を呈しており、そこでも労働者のミスマッチが起きており、派遣業者ですら充分に人材を供給できていない有様らしい。

と、2012年3月10日のエントリーと書いたからだ。そして、リショアリングのダイナミズムに乗り遅れまいとする各州間の誘致競争は、GMやクライスラー、デトロイト市を破綻に追い込んだレガシーコストを企業に背負わせないことが前提となっている。その実態は、以下の2012年4月23日のエントリーに詳しい。

2010年の中国の1人あたり名目GDPは4382ドルで10年前の約2倍、このまま推移すれば、あと10年でメキシコの1人あたり名目GDPと並ぶ。人件費のみを理由とする限り、中国に生産拠点を置く意味がない。

そして、米国への生産拠点回帰には、労組なし・法人税安・補助金付きを求める企業とそれに呼応する失業者と州の思惑がある。

WSJの記事でもキャタピラーの工場移転が取り上げられていたが、こちらではカナダのオンタリオ州・ロンドンから米国インディアナ州・マンシーへ機関車工場を移転することになった。

労組のないマンシー工場の時給は12ドル~14ドル50セント。閉鎖されつつあるオンタリオ工場では、大半の労働者が労組に加盟し時給30ドル以上が支払われていた。マンシー工場の就職説明会に並んでいる1人が、パートタイムのサービス業で時給8ドル25セント、子ども2人を養っていることからして、これでも大きな所得の伸びなのだ。

米国内の各州にとって工場誘致のための切り札は労組をなくすことだ。すべての労働者に組合費の支払いを義務付ける契約を禁じる法律を制定することで、労組の組織化を困難にしている。

記事によると、インディアナ州はこうした法律を持つ23番目の州となった。2011年末時点の同州の製造業雇用者数は47万2500人と、2年前より7.6%増えた。ムーディーズ・アナリティクスのデータによると、過去10年のインディアナ州の製造業雇用者数は20%減少。これに対しイリノイ州は26%、オハイオ州は29%、ミシガン州は35%減だった。

労組は左翼やリベラルの集票基盤である。自治労や日教組などが極左活動家の政治的基盤になっている我が国は、民主党政権下で彼ら左翼とリベラルの無能振りを見せつけられているから労組の影響力が衰えることはあながち悪くはない。

とは言え労組が消え去ることが万能ではない。グローバリゼーションの巻き戻し「リショアリング」で先進国の給与水準がBRICSなどと同列になっては、イノベーションを興す文化的基盤が弱くなってしまうと思われる。

ここまで以前のエントリーの整理を終えるとして、上記のロイターのコラムはハイエンドを重視する場合、雇用数はそれほど増えないのではないか、と懸念する。それは正しいと思う。しかし、本質はイノベーションを興す文化的基盤を弱体化させかねないリショアリングの誘致競争ではなかろうか。

これは常態化しつつある。シアトルを企業城下町とするボーイング社ですら、次期777X生産地の決定までに年金削減と補助金拠出を同時に勝ち取ることが出来た。ボーイング社は、人件費と販管費の削減による営業利益の増益と、補助金や保証付きの低金利による経常利益の増益を手にする。まさしくグローバリズム=アメリカナイゼーション=新自由主義の時代は終わっている。不変なのは連邦政府、州政府に限らず、企業など利害関係者はロビイストを動かして、法律と予算を獲れるか否かだけだろう。

三菱重、米ボーイング777X翼の日本生産を提案=関係筋 2013年 11月 13日 06:24 JST ロイター

ボーイングが777Xで新たな生産地模索の可能性、労組と交渉余地も 2013年 11月 15日 01:36 JST ロイター

川崎重 、ボーイング 787向け製品の新工場建設 総投資額350億円 2013年 12月 9日 13:34 JST ロイター

[東京 9日 ロイター] - 川崎重工業 は9日、米ボーイング の「787型機」向け製品を生産する新工場を愛知県の既存工場隣接地に建設すると発表した。総投資額は約350億円。2015年3月に稼働し、主に787型機の派生機の胴体部品を生産する。

ボーイングは787型機について、220─250席クラスの「787─8」、250─290席クラスの「787─9」を生産しているが、新たに300─330席クラスの「787─10」をラインアップに加えると公表済み。

川重は、名古屋第一工場(愛知県弥富市)で787型機向けの製品を手がけており、今後の787シリーズの増産や787─10の生産開始に備え、生産能力を増強する。


米ボーイング 、週内にも777X生産地候補を絞り込みへ 2013年 12月 18日 11:28 JST ロイター

米ボーイング次世代大型機「777X」、シアトル近郊で生産へ 2014年 01月 6日 09:35 JST ロイター

[シアトル/ニューヨーク 3日 ロイター] -ボーイング(BA.N: 株価, 企業情報, レポート)は、次世代大型機「777X」の生産を旅客機の主要生産拠点であるワシントン州シアトル近郊で行うことになった。現地の従業員が3日、「777X」生産の鍵をにぎる労働協約を僅差で承認した。

ボーイングの商用機部門最高経営責任者(CEO)のレイ・コナー氏は声明で「ピュジェット・サウンド地域のボーイングの未来が、これまでないほど明るくなった」とし「これにより、複合技術の最前線に労力を投入でき、数千人の雇用を何年にもわたり維持することになる」と述べた。

労働協約案が否決された場合、ボーイングは新たな生産場所を探す必要があった。ボーイングは昨年11月に当初案が否決されたことを受け、全米に777X生産拠点候補を募集、22の州が名乗りをあげていた。承認は、現在777型機を生産しているシアトル近郊の工場を活用する方がリスクが少ないとみていたアナリストや投資家にとって好ましい結果となった。

承認された労働協約は、2016年までの現行協約に続くもので、期間8年、2024年まで。この間、従業員はストライキをすることができない。また、確定給付年金をやめ、新たなシステムに移行する。

3日の承認を受け、インスリー・ワシントン州知事は会見で「これから数十年にわたり、ジェット機を製造するのに最適な土地であり続けることになったことは非常に喜ばしい」と表明。

その上で年金など従業員の懸念について、最近議会で承認されたセーフガード対策があると説明した。この対策には、ボーイングへの助成金、ボーイングがワシントン州の777X関連の雇用を維持し、他の州に新たな777Xの生産拠点を設けないことが盛り込まれている。

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