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原油とルーブルが織りなすカスケード

ロシア経済は原油価格の下落に自国通貨の下落が後追いで連動して、資本流出と財政悪化と経済成長鈍化を招くようになっている。プーチン大統領とメドベージェフ首相が提唱し続けている、エネルギー資源依存型経済からイノベーション主導型経済への移行は日欧米の資本・技術導入が困難になり、ほとんど不可能事になりつつある。

2014年9月に原油価格は1バレル100ドル以下となった。2014年11月から12月にかけて、ロシア・ルーブルは年初来のレートから50%以上オーバーシュートした。ドル建て債務を精算するために、外貨準備高が急減して資本流出を止められない状態に陥っていた。しかし、2015年1月に原油価格が1バレル48ドルの下限に達してからは相対的安定に転じて、2015年2月から3月にかけて外貨準備高は3500億ドルから3600億ドルで推移するようになった。

ところが、2015年12月から2016年1月にかけて原油価格は1バレル40ドルを割り、次いで30ドルを割った。この原油価格の下落に併せて、ルーブルも値を下げ始めている。ただし、まだ外貨準備高の減少には繋がっていない。

Ruble sets new historic low against US dollar 20 Jan, 2016 11:07 RT

【ロシア中央銀行 外貨準備高推移】
2014年10月10日: 4517億ドル
2014年11月14日: 4206億ドル
2014年12月11日: 4146億ドル

2015年01月16日: 3794億ドル
2015年01月20日: 3781億ドル
2015年01月30日: 3763億ドル
2015年02月06日: 3747億ドル
2015年02月13日: 3683億ドル
2015年02月20日: 3646億ドル

2015年03月06日: 3567億ドル
2015年03月13日: 3517億ドル
2015年03月20日: 3529億ドル
2015年03月27日: 3608億ドル
2015年04月03日: 3553億ドル

2016年12月18日: 3689億ドル
2016年12月25日: 3702億ドル
2016年01月08日: 3681億ドル
2016年01月15日: 3683億ドル
2016年01月22日: 3693億ドル

Russian oligarchs lose $11bn in just 10 days during oil price crash 1:02PM GMT 17 Jan 2016 The Telegraph

フィナンシャル・タイムズは、プーチン大統領は経済の構造改革を拒否している、と指摘する。プーチン大統領の2期目(2004年~2008年)は、自由化推進派のアレクセイ・クドリン氏(元財務相)、ゲルマン・グレフ氏(元経済発展貿易相)を起用していた。大統領は、2期目の終わりに近づいた2008年2月8日『2020年までの発展戦略』を発表、大統領退任後のエネルギー資源依存型経済からイノベーション主導型経済への移行を目指した。

イノベーション主導型経済への移行を妨げるボトルネックは、その広大な国土ゆえのインフラの弱さにあった。特にウラル山脈の西側と東側の人口比重の違い、エネルギー資源の分布比重の違いがそこに拍車を掛けてきた。これが過度のエネルギー資源に依存した経済構造と効率性の悪さ、所得格差と男性の平均寿命低下・人口減少を生じさせていた。

エネルギー資源依存型経済からのブレイクスルーには、シベリア鉄道・バム鉄道の延伸及び複線化などウラル山脈の東西を繋ぐインフラの整備、日本など先進国からの資本・技術導入、イノベーティブな経済成長を果たすための企業家精神とそれを守る法秩序の確立を必要としている。

しかし、伝統的な支那社会と同様に、官吏となって利権を貪ることが富貴への最適な道なのだ。我が国や欧米など先進国と違い、新しい技術やサービスを作り出し、それを提供する企業家となることが富貴への最短ルートではない。

ロシア社会の支配者は、ロマノフ朝の大貴族からソ連邦のノーメンクラトゥーラ(世襲化した共産党官僚)へ、次いで市場経済導入の過程で形成されたオリガルヒ(ロシア経済を寡頭支配した資本家)からシロヴィキ(治安・国防官僚出身者による勢力)へと変遷してきた。

どちらにせよエネルギー資源産業に依存した経済構造が変更された訳ではない。税金を収めず国富を独占して、権威と権力がひとつの階級・階層に集中されるのも、ロシアの歴史に通底する特徴であった。

ソ連邦時代につくられたテトリスやチェブラーシカがカネ儲けの種となると分かった途端、著作権で争った件に垣間見られるように、企業家精神とそれを守る法秩序が欠如している。これは他の資源についても同じである。つまり、企業家が勃興する際に起きる不安定(利害関係の変化)を政治的強権でしか正せないことになる。

企業家精神の育成と法秩序の構築を無視してイノベーティブな経済成長を果たすためには、中国と同じように我が国の資本と技術が必要になる。しかしそれには日露間の講和条約は必須であるが、我が国の反応は鈍い。

特に、我が国の経済界にとっては、ウラル山脈の東側の人口の少なさはボトルネックであり、2006年のサハリン2の開発中止と国営ガスプロムによる権益奪取、2015年の北方漁業権の喪失などが続発して、法秩序未整備によるカントリーリスク以上の利益をもたらしてくれる希望が見出だせない。

3期目に入ったプーチン大統領の現在も、イノベーション主導型経済への転換は進まず、選択肢は“富の国外流出か、闇経済の国内拡大か”くらいしかなかった。せめて国外脱出を図るオリガルヒを締め上げ、シロヴィキの闇経済を容認するくらいしか出来なかった、と言える。

しかし、エネルギー資源依存型経済には明るい兆しもあった。中国をはじめとする新興国の“爆食”によって、モスクワとサンクトペテルブルクの二大都市圏のサービス業依存から、北コーカサスではダゲスタン(石油化学工業)、ウラルではチュメニ(石油工業)、南部ではクラスノダール(機械工業)と、それぞれ各地方の中核都市が発展した。

ウクライナ危機と欧米の経済制裁、チャイナ・ショックと原油安につづく新興国の通貨安は、モスクワとサンクトペテルブルク以外の地方都市を苦境に追い込んでいる。じわじわと給料遅配の事例が散見されるようになってきた。ソ連末期からエリツィン政権期に見られた物流停止やハイパーインフレーションの際に、庶民は郊外のダーチャ(菜園付き別荘)に頼った。国家財政が破綻するにしても、こうしたバッファーがロシアには存在している。

ロシア、賃金未払い頻発 制裁・原油安、企業の業績低迷 2016年1月20日05時00分 朝日新聞

[FT]プーチン氏の野望くじく経済低迷(社説) 2016/1/25 15:50 日経

 ロシアのプーチン大統領の地政学的な野望が経済とグローバル化の現実に打ち砕かれようとしている。原油価格の再急落とウクライナへの軍事介入を巡る欧米の経済制裁とが再び相まって、ロシア経済を圧迫している。ルーブルの下落が不況に転じて2年目を迎えたロシアを脅かしているこの危機的な状況は、少なく見積もっても2014年後半の最初の原油価格急落時と同じぐらい厳しいものだ。

 エネルギー価格と経済制裁以外にも、より根本的な問題がある。今世紀に入って最初の10年間のロシアの経済成長モデルが行き詰まってしまったことだ。その時期、原油収入の伸びが消費ブームを呼び、休止していた旧ソ連時代の生産施設が再稼働した。今それなりの経済成長を達成するには、新たな生産設備に十分な投資を行い、生産性を高めるしかない。しかし、近代化やプーチン政権下で腐敗が進んだ国家資本主義の制度改革の失敗が経済制裁で長期化し、投資を低迷させてしまった。

 ロシア政府は、過去2年間の孤立は輸入制度を通じた国内産業の発展の機会であるかのように見せようとした。しかし、そうした状況下でさえ、投資や海外の技術は必要となる。緊密に結びついた世界では、自給自足経済という選択肢はない。一方で、ロシアの中国への「方向転換」は、欧米の資金調達やノウハウに代わるものはないということを明確にした。

 ロシア政府にとって最も差し迫った課題はルーブルの急落だ。かつては考えられなかったほどの通貨の急落で、ロシアの購買力や生活水準は大きく損なわれた。クリミア併合以降のプーチン氏の高支持率も移ろいやすいようにみえる。ロシアが持つ3600億ドル以上の外貨準備の切り崩しや金利の大幅な引き上げ、通貨管理などの通貨下支え策はいずれも好ましいものではない。

■改革をことごとく回避してきたプーチン氏

 ロシアの経済的な苦境に対する真の長期的な解決策となるのは、経済を自由化し法の支配を強化する全面的な構造改革だけだ。しかし、プーチン氏は自身の支配力が弱まるのを恐れ、これまでそうした対応をことごとく回避してきた。プーチン政権下で利益を得てきた同氏の取り巻きなど、有力な既得権者も反対した。

 一方、改革が成功する真の可能性を生み出すには、プーチン氏の最初の2期で自由化推進派だった2人、元財務相のアレクセイ・クドリン氏か元経済発展貿易相のゲルマン・グレフ氏のうちどちらか1人を首相にするなどして復帰させることがほぼ間違いなく必要となる。プーチン氏は、この必要な政治的刷新を認めることはやはり気が進まないようだ。

 代わりに、プーチン氏は欧米による経済制裁の緩和を探っているようだ。ウクライナ東部の紛争に関して去年結ばれたミンスク合意の履行により建設的な姿勢を示し、側近を交渉役に任命した。4年に及ぶシリアの内戦を終わらせるための外交努力が強まると、同氏もシリアのアサド大統領に休戦するよう働きかけている。

 心からの取り組みであればこうした努力は歓迎すべきだ。しかし、欧州連合(EU)や米国は08年にロシアがジョージア(グルジア)に侵攻した時のように過去を水に流して「リセット」すべきではない。また、ミンスク合意が完全に履行されていなくても、シリア問題でのロシア政府の支援を維持するために経済制裁を解除するという薄汚れた合意を検討すべきでもない。

 今年の議会選挙と18年の大統領選挙を前に、プーチン氏は経済制裁の緩和を通じて経済成長をいくらか立て直して時間をかせぐことができる。しかし、改革を遅らせ続ければロシアの未来を損ない、世界の先進諸国にさらに後れを取ることになる。ロシアの生活水準が停滞し続ければ、結局のところプーチン氏自身の未来に極めて悪い影響を及ぼしかねない。

(2016年1月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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