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苦悩するリベラル、エマニュエル・トッド

ベルギーの同時多発テロ事件について、CNNが「なぜベルギーは対テロ戦争の最前線なのか」という記事を挙げている。

ジハーディストの温床となったブリュッセルに住むイスラム系移民を襲う疎外感。その疎外感をもたらす背景としての人種差別と若年層の高い失業率がムスリムのギャングスターを作り出し、彼らの行き着く監獄が過激派の養成施設・テロリストの調達先になっている。

テロの温床を一掃するには、欧州に蔓延する若年層の失業を解消していくのが、迂遠なようで確実なのだろう。しかし、相次ぐテロと難民危機によるイスラムフォビアとナショナリズムが結合して、リベラル的な施策の導入を妨げる理由のひとつとなっている。

我が国からすれば右傾化がまだそれほど進んでいない今こそ、リベラル的な経済政策が求められているのに。

Why Belgium is Europe's front line in the war on terror Updated 1243 GMT (2043 HKT) March 24, 2016 CNN

エマニュエル・トッドが新著『シャルリとは誰か?』の発刊を期に朝日新聞のインタビューに応じていたが、後退するリベラルの苦悩を垣間見ることが出来る。

信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏 2016年2月11日16時53分 朝日新聞

彼が従来主張してきたように“移行期の危機”を迎えるアラブ・中東では、反作用としてイスラム原理主義が台頭している。しかし、スンニ派VSシーア派の対立は宗教戦争ではないと述べる。国家間の利害対立が宗教の名を借りているに過ぎない、ということだろう。近代化の中でムスリムの信仰は薄れており、拠り所を求める若者は別の信仰を捜しているうちに、破壊的なニヒリズムを行うISIS(イスラム国)へと惹きつけられている。

また欧米のムスリム観が対応の誤りに繋がっている。国家を統合する力の弱いアラブの独裁を巨視的に容認しなかったのが失敗であって、ブッシュ政権の新自由主義的アプローチがアラブの国家を解体してしまった、と。このアラブと新自由主義の相互作用が主権国家の概念を希薄化させた。

テロ後のフランス社会は変容し、不寛容の時代が訪れた。そもそもイスラム系テロリストはアラブ・中東から見れば欧米人なのだ、と云う。イスラム系テロリストを欧米社会から生まれた亜種として見るか、それともイスラムの亜種と見るかによって、その対応も変わってくるのだが、人々はイスラムフォビアに陥り、政教分離原則によって自己の主張を正当化して、問題はイスラムそのものにあるとするのが大半だ、と指摘する。

大勢としてイスラム系に対する排他的な空気が生まれている。フランスでは、カトリックの強かった地域と中間層、かつてヴィシー政権を支持した地域とその階層がデモの列に加わっている。元々はリベラルを表明するデモの第一列が、右派・ナショナリズムに入れ替わりつつ在る。

欧州でもアラブ・中東でも信仰の衰退と社会の分断が起きている。しかし、本当の危機は欧米と日本の社会に内在している。想起されるのは信仰システムの崩壊である。この信仰とは社会一般に信じられているイデオロギーや社会的規範も含まれる。唯一、信仰として残っているのは経済合理性であって、この反共同体的な信仰は何が良い生き方かは定義しない。

つまりはフィクションとしての宗教がせめぎあっている。キリスト教やイスラム教、グローバリズムやナショナリズムの戦いの中、リベラル的な価値観が欧州では後退せざる得ない、という訳だ。

リベラル的価値観の後退とともに分断される社会で何が起きているかと云うと、フランスでは手厚く保護されている中間層ではなく、労働者階級が崩壊している。多くがここに属するムスリムの若年層がテロを引き起こす。ムスリムはフランス国民ではない扱いを受け始め、テロ関与者からフランス国籍を取り上げようとしている。

ユダヤ系であるエマニュエル・トッドにとっては二重国籍制度はフランスの寛容性の表れであり、現状はユダヤ系から国籍を奪ったヴィシー政権を想起させる。もちろん国籍を奪ってもテロは止まないし、これからのフランス「新共和国」では中間層が下層にある若者を排除するようになる、と指摘する。

移民がいなくても教育などの不平等が格差を生み出す場合もあり、日本の社会には家族制度の延長から、平等と不平等の両方を受け入れる素地がある、とも指摘している。

欧米社会は、自国の内部が危機を生み出しているのを認め、自由・平等・博愛が失われつつあるのにもかかわらず、未だに自由・平等・博愛が存在しているかのような虚偽からの脱却が求められる、と結んでいる。
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